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★明るみになった疑惑 ※オリヴィア視点
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念願が叶い、オリヴィアはエイブラハムと結婚した。
オリヴィアはエイブラハムに感謝していた。
オリヴィアは視力が悪い。
平民だった頃はメガネをかけていなかった。
ゆえに、遠くを見るときにはいつも目を細めていた。
その時に
『睨みつけられた』
と言われ、ボカスカに殴られた事もあった。
トラウマレベルの出来事だった。
視力が悪いために、人間関係もうまく構築していけなかった。
しかし、ゲルソン家に入ってから、義理の父親がメガネを買ってくれた。
それからというもの、遠くのものを見るときには目を細めたり、窄めたりしていた。
それでも、視力の悪いのはコンプレックスだった。
しかし、エイブラハムは違った。
視力の悪いオリヴィアを選んでくれたのだ。
メガネが可愛いから……だった。
「エイブラハム様~。私は次期公爵夫人になれるんですよね」
「勿論だとも」
エイブラハムは目を細めながら言った。
「私は玉の輿に乗ったんだ! ぅわ~い!!」
オリヴィアは有頂天だった。
そう。元々は平民の出自。
それが母親のマルシマがゲルソン伯爵に見初められた。
気づけば伯爵令嬢になっていた。
ゲルソン伯爵の前妻アイラの肖像画があり、度々気にはなっていた。
しかし、ゲルソン伯爵は前妻より、現伯爵夫人のマルシマを好んでいた。
それがためか、あまりアイラの事は口にしなかった。
常に、マルシマ愛している、マルシマ愛しているを口にしていた。
と、オリヴィアの中では記憶している。
そして、前妻との娘であり、義理の姉に当たるリンダを余り可愛がる事は無かった。
リンダはいつもお下がりの服を着せられていたが、オリヴィアには新品のドレスや宝石を買ってもらえた。
そこまでしてくれるゲルソン伯爵が実の父親のようだった。
母のマルシマはオリヴィアがまだ幼い時期に離婚。
実父は農夫だった。
そして、テオエール王国の穀倉地帯に住んでいた。
そう。
オリヴィアは農民の出自だったのだ。
父親は愛人を作っていて、度々家に連れ込んでいた。
そして、逃げるようにしてオリヴィアはマルシマと共にマルシマの実家へ転がり込んだ。
母親の実家も農家。
闘牛用の牛を育てていた。
ゲルソン伯爵は闘牛を好んでいた。
牛を見に来たゲルソン伯爵と牛舎で出会った。
一目惚れだった。
それからというもの、ゲルソン伯爵とマルシマはスピード婚だった。
1ヶ月足らずで伯爵邸で生活する事になった。
そして、義理の姉のドレスや宝石も好きにするように言われた。
オリヴィアはドレスや宝石が珍しかった。
平民でいた時は宝石など雲の上の存在だった。
ちなみにマルシマは視力が良い。
視力の悪さは父親譲りだった。
何でも良くしてくれる義父は実父とは大違い。
母親を一途に愛してくれている。
そして、前妻の娘、義理の姉を家から追い出した。
母への愛を感じた。
エイブラハムは頭を掻いていた。
「オリヴィア。やっぱりメガネは素敵だ」
「ありがとうございます。エイブラハム様」
エイブラハムはオリヴィアのメガネを気に入ってくれている。
メガネを買ってもらえたのも、貴族に成り上がったから。
もしも、母がゲルソン伯爵に見初められなかったら、オリヴィアはエイブラハムと結婚する事は無かった。
それを思うと、オリヴィアは嬉しくて、嬉しくて涙が出てきた。
スミス公爵夫人であり、義理の母でもあるクレアもメガネをかけていた。
やはり、母親への憧れか?
オリヴィアは義母に対して羨望の気持ちを持ち始めた。
「ねぇ、エイブラハム様。私とお母様、どちらが良いの?」
「それは……」
エイブラハムは絶句した。
「ねぇ、エイブラハム様ってばあ」
「う……うん」
「もしかしてお義母様の方が好きなの?」
「あは。あはははは……」
エイブラハムは何か秘密めかしている。
もしや、
マ
ザ
コ
ン
オリヴィアは歯ぎしりをした。
「エイブラハム様はお義母様ファーストだったのね? このマザコン男」
「待って待ってよ。早合点し過ぎだよオリヴィア」
「だーって。私とお義母様どちらが良いって聞いたら急に黙っちゃって」
「それはな……」
「もういいわ、エイブラハム様」
とそこへドアを叩く音がした。
「何だ? はい」
そこへ執事のフェリペが来た。
「エイブラハム様。警察が参りした」
「それで?」
「エイブラハム様に聞きたい事があるのだとか」
「エイブラハム様。まだ何か隠し事?」
オリヴィアは訝しく思った。
「失礼します。王国警察の者です。エイブラハム様に用事があり、来ました」
「なっ……何だよ。俺は何も疚しいことはしていない。清廉潔白だ」
「しかしですね、エイブラハム様。あなたが領地内でねずみ講を働いていた話は有名な話でして」
「うるせぇ! 俺はねずみ講などしていない! どこに証拠があって言っているかな、警察だか何だか知らねえけどよ」
エイブラハムがテーブルを叩きつけた。
「これです」
「何っ」
書類には
エイブラハム・サウル・スミス
と署名がある。
「知らない。誰かが勝手に俺の名を使って書いたのだろう?」
「では、証人を呼ぼう。ハリス、来て下さい」
そこに初老の男性が現れた。
「間違いなくこの人です」
「なっ……」
「という事で身柄を確保させていただきます」
のち、エイブラハムはねずみ講の疑いで王国警察隊に逮捕。
裁判によって有罪が確定され、爵位を剥奪された。
そんな筈では……。
オリヴィアは落胆の至りだった。
オリヴィアはエイブラハムに感謝していた。
オリヴィアは視力が悪い。
平民だった頃はメガネをかけていなかった。
ゆえに、遠くを見るときにはいつも目を細めていた。
その時に
『睨みつけられた』
と言われ、ボカスカに殴られた事もあった。
トラウマレベルの出来事だった。
視力が悪いために、人間関係もうまく構築していけなかった。
しかし、ゲルソン家に入ってから、義理の父親がメガネを買ってくれた。
それからというもの、遠くのものを見るときには目を細めたり、窄めたりしていた。
それでも、視力の悪いのはコンプレックスだった。
しかし、エイブラハムは違った。
視力の悪いオリヴィアを選んでくれたのだ。
メガネが可愛いから……だった。
「エイブラハム様~。私は次期公爵夫人になれるんですよね」
「勿論だとも」
エイブラハムは目を細めながら言った。
「私は玉の輿に乗ったんだ! ぅわ~い!!」
オリヴィアは有頂天だった。
そう。元々は平民の出自。
それが母親のマルシマがゲルソン伯爵に見初められた。
気づけば伯爵令嬢になっていた。
ゲルソン伯爵の前妻アイラの肖像画があり、度々気にはなっていた。
しかし、ゲルソン伯爵は前妻より、現伯爵夫人のマルシマを好んでいた。
それがためか、あまりアイラの事は口にしなかった。
常に、マルシマ愛している、マルシマ愛しているを口にしていた。
と、オリヴィアの中では記憶している。
そして、前妻との娘であり、義理の姉に当たるリンダを余り可愛がる事は無かった。
リンダはいつもお下がりの服を着せられていたが、オリヴィアには新品のドレスや宝石を買ってもらえた。
そこまでしてくれるゲルソン伯爵が実の父親のようだった。
母のマルシマはオリヴィアがまだ幼い時期に離婚。
実父は農夫だった。
そして、テオエール王国の穀倉地帯に住んでいた。
そう。
オリヴィアは農民の出自だったのだ。
父親は愛人を作っていて、度々家に連れ込んでいた。
そして、逃げるようにしてオリヴィアはマルシマと共にマルシマの実家へ転がり込んだ。
母親の実家も農家。
闘牛用の牛を育てていた。
ゲルソン伯爵は闘牛を好んでいた。
牛を見に来たゲルソン伯爵と牛舎で出会った。
一目惚れだった。
それからというもの、ゲルソン伯爵とマルシマはスピード婚だった。
1ヶ月足らずで伯爵邸で生活する事になった。
そして、義理の姉のドレスや宝石も好きにするように言われた。
オリヴィアはドレスや宝石が珍しかった。
平民でいた時は宝石など雲の上の存在だった。
ちなみにマルシマは視力が良い。
視力の悪さは父親譲りだった。
何でも良くしてくれる義父は実父とは大違い。
母親を一途に愛してくれている。
そして、前妻の娘、義理の姉を家から追い出した。
母への愛を感じた。
エイブラハムは頭を掻いていた。
「オリヴィア。やっぱりメガネは素敵だ」
「ありがとうございます。エイブラハム様」
エイブラハムはオリヴィアのメガネを気に入ってくれている。
メガネを買ってもらえたのも、貴族に成り上がったから。
もしも、母がゲルソン伯爵に見初められなかったら、オリヴィアはエイブラハムと結婚する事は無かった。
それを思うと、オリヴィアは嬉しくて、嬉しくて涙が出てきた。
スミス公爵夫人であり、義理の母でもあるクレアもメガネをかけていた。
やはり、母親への憧れか?
オリヴィアは義母に対して羨望の気持ちを持ち始めた。
「ねぇ、エイブラハム様。私とお母様、どちらが良いの?」
「それは……」
エイブラハムは絶句した。
「ねぇ、エイブラハム様ってばあ」
「う……うん」
「もしかしてお義母様の方が好きなの?」
「あは。あはははは……」
エイブラハムは何か秘密めかしている。
もしや、
マ
ザ
コ
ン
オリヴィアは歯ぎしりをした。
「エイブラハム様はお義母様ファーストだったのね? このマザコン男」
「待って待ってよ。早合点し過ぎだよオリヴィア」
「だーって。私とお義母様どちらが良いって聞いたら急に黙っちゃって」
「それはな……」
「もういいわ、エイブラハム様」
とそこへドアを叩く音がした。
「何だ? はい」
そこへ執事のフェリペが来た。
「エイブラハム様。警察が参りした」
「それで?」
「エイブラハム様に聞きたい事があるのだとか」
「エイブラハム様。まだ何か隠し事?」
オリヴィアは訝しく思った。
「失礼します。王国警察の者です。エイブラハム様に用事があり、来ました」
「なっ……何だよ。俺は何も疚しいことはしていない。清廉潔白だ」
「しかしですね、エイブラハム様。あなたが領地内でねずみ講を働いていた話は有名な話でして」
「うるせぇ! 俺はねずみ講などしていない! どこに証拠があって言っているかな、警察だか何だか知らねえけどよ」
エイブラハムがテーブルを叩きつけた。
「これです」
「何っ」
書類には
エイブラハム・サウル・スミス
と署名がある。
「知らない。誰かが勝手に俺の名を使って書いたのだろう?」
「では、証人を呼ぼう。ハリス、来て下さい」
そこに初老の男性が現れた。
「間違いなくこの人です」
「なっ……」
「という事で身柄を確保させていただきます」
のち、エイブラハムはねずみ講の疑いで王国警察隊に逮捕。
裁判によって有罪が確定され、爵位を剥奪された。
そんな筈では……。
オリヴィアは落胆の至りだった。
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