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新しい家

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漁師町イマロームはせわしなく漁師たちが行き交っていました。

傾きかけた日差しがわたくしたちを照らします。

降ろされた場所は栄えた町でした。

パーシヴァルさんの家は木造の平屋建ての家でした。


木造の平屋建てはわたくしにとっては本当に珍しい。

ゲルソン邸は鉄筋でできていたからです。



「事情はルイスから伺いました。大変でしたね。はい。初めまして。私がパーシヴァルです」

大柄で茶髪。頭がもじゃもじゃな男性が自己紹介をしました。

「そして、こちらが妻のポリー」

同じく茶髪で焦げ茶色のショートヘア、ぽっちゃりした女性が頭を下げました。

「そしてこちらが息子のクリスだ」

輝くような金髪、スカイブルーの瞳、長身で細身、鼻筋が通っていて、厚い唇が特徴の男性が頭を下げました。

クリスと名乗る男性はなぜ金髪なのだろう? と一瞬私は思いました。

両親は茶髪でぽっちゃりしているというのに、両親に似ない人もいるんだなーとわたくしは感じました。

「我々は漁師です。漁で生計を立てています。早朝になったら、俺とクリスは漁にでかける。朝はポリーと共に朝食を食べると良いでしょう」

パーシヴァルはもじゃもじゃな頭を掻きながらそう言いました。

「初めまして。わたくしはゲルソン伯爵令嬢のリンダと申します。宜しくお願い致しますわ」

わたくしは深々とおじぎをしました。

「よろしくね、リンダ様」

突如、クリスさんがわたくしに手を差し出してきました。


え!?

握って良いの?

突然の出来事にわたくしはたじろいでしまいました。

「は……はい。クリス様」

わたくしは思わず様をつけてしまっいました。

服装はいかにも漁師らしい、いかつい格好をしていたものの、外見はどこかの王侯貴族のような風貌。

それでも彼はやはり漁師であり、平民なのです。


わたくしはクリスの手を握りました。

何だか……緊張しました。

異性の手を握るなんて…………。


身体中が熱くなるのを感じました。




「私はリンダ様の侍女のシンシアと申します。宜しくお願いします」

シンシアもまた一礼をしました。


「さあ、今日は長旅で疲れたことでしょう。ゆっくりしていくがよい」

「そうですわね。みな様。夕飯にしましょう」

そう言えばお腹がすいた。

気づけば夕刻。

今朝から何も食べていませんでした。

「さあ、中に入った入った!」

パーシヴァルさんが威勢よく言いました。

元気の良さはいかにも漁師らしい。


「あのー、パーシヴァルさん、ポリーさん、クリスさん」

「なんですか? リンダお嬢様」

「わたくしのことは『リンダ』と呼んでくださいませんか? それと、敬語もいりません」

「でも……それはできませんよ」

と、ポリーさん。

「わたくしはもうゲルソン伯爵家の人間ではありません。身分は既に剥奪されました。わたくしは平民です。平民に『様』も敬語も必要ありません」

「そうか……。リンダ様、いや、リンダがそれを望むならそうしよう」

「ありがとうございます!!」

わたくしはもう平民。

平民として生きる事に決めたのです。

「そして、明日は捕れた魚を市場に売りに行って欲しいんだ。クリスと一緒にな」



「「はい!!」」


これから漁師としての生活が始まります。


漁師として生きるのは新鮮味があります。








「夕食はこれから作りますわ」

「わたくしもお手伝いいたしますわ」

「私もです」

「ありがとう!!二人共」




わたくしは料理を作るのを手伝いました。


「はい、これを刻んで」

わたくしは不慣れな手で野菜を刻みました。


貴族令嬢。料理を作るのはいつも使用人たちの仕事でした。

シンシアは慣れた手付きで魚を切っていました。


「ここにミルクを入れてちょうだい」

わたくしは鍋にミルクを入れました。



――料理って楽しい!!


わたくしは料理に楽しさを感じました。

今後は平民と結婚して、平民として生きるのだから、料理を覚えないと!!


「ありがとう。できたわ!!」


食べ物は湯気を上げて美味しそうでした。


「さあ、テーブルに並べて!」

テーブルはゲルソン邸にあるテーブルよりも半分以上小さい。


(これが平民の生活なんだ)


わたくしはシンシアと共に食べ物をテーブルの上に並べました。

「さあ、席について」

わたくしは促されるまま、椅子に座りました。


「では、いただきます」


わたくしはスープを口に含みました。


美味しい!!


自分で作った料理がこんなに美味しいだなんて。

わたくしは感動しました。


「とっても美味しいですわ」

「ありがとう。貴族令嬢に家庭料理が気に入ってもらえて良かったよ」


平民の家庭料理にわたくしは心から感動しました。


わたくしは次に魚のフライを口にしました。

美味しっ!!

「ポリーさん、とても美味しいです」

すると、向かい側でクリスさんが笑いました。




クリスさんの笑顔、素敵……。

えくぼが特徴的だった。

やっぱり王子様みたい。

平民であるのが勿体無い!!




わたくしはそう思いました。


「私もこの魚のフライ美味しいと思いますわ」

シンシアも笑顔です。


「実は明日は僕が料理当番なんだ」





へぇー。

男の人でも料理するのね。


あー!!

わかった!!

漁師飯だ!!



わたくしはますます平民の暮らしが楽しく感じてきました。


「明日の朝は早い。今日はもう寝ると良い」

そうパーシヴァルさんが促してくれました。




わたくしは夕食のあと、寝ることにしました。
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