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マックス王子との出会い
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優しい春の日差しは絶好の絵画日和だった。
リンジーは春の花を中心とした風景画を描こうと思っていた。
郊外へ遠征し、絵筆を取り出した。
リンジーと共に絵を描いているのは友人のキャサリン。
キャサリンは平民だが、学園時代からの親友だった。
キャサリンもまた絵描きだった。
二人は咲き乱れる花を背景に絵を描いていた。
うぐいす色の髪にうぐいす色の目。
髪を2つに分け、みつあみをしている。
キャサリンとは学園の絵描き同士として出会った。
友人関係には身分は関係なかった。
しかし、キャサリンの母親は男爵令嬢だった。
「ねえ、リンジー。どうして婚約指輪を外しているの?」
キャサリンはリンジーの左薬指を指さして、尋ねてきた。
「それはね……」
と言いかけるとキャサリンは眉根を寄せた。
「言いたくなければ言わなくて良いんだよ」
「ううんいいの。わたくしはサイラス王子殿下と婚約破棄したの」
「そうだったんだ」
キャサリンは悲しげな顔を見せた。
「あんなに仲良くしていたのに?」
「そうなんだけどね……人生ってわからないものよ」
そう言ってため息をついた。
「でも、またチャンスはあるわ! だってリンジーは魅力的だもの」
「そう言ってくれてうれしいわ」
リンジーは努めて明るく振る舞った。
「そうね」
「だってわたくし、ヤン様に振られても平然としていたでしょ?」
「そうね。リンジーはメンタルが強いわね」
メンタルが強そうに装っているだけ。
本当はヤンに振らてた時も心の奥底から泣いていた。
ヤンはまだ独身だから、もう一度チャンスがあるのかもしれないけれど、サイラスの場合はイベイラと既に婚約している。
ガルシア公爵ご令息がイベイラを離さなければ良いけれど……。
でも、浮気を知ったガルシア公爵ご令息は離婚を切り出すに決まっている。
仮にあの二人が成立しても、天は黙っていない。
絶対に罰が当たる。地獄に落ちるに決まっている。
「ねえ、リンジー」
「どうしたの? キャサリン」
因みに、キャサリンはヤンのことを知っていた。
ヤンは学園時代の同級生でスミス公爵ご令息だった。
「なんか……ヤン様はキャサリンの事好きだったわよね」
「何言っているの、リンジー。冗談はやめて。平民の私とヤン様が結ばれるわけないでしょ!?」
確かに……。
身分差の夫婦が成立したという話はあまり聞かない。
しかし、かの昔、ある公爵家に平民女性が嫁いだという話は聞いたことがあるが、そんなの稀だ。
「ヤン様が仮に私に好意があっても、成立はしないわね。ヤン様には申し訳ないけれど」
「わたくしは応援したいわ」
「やだ。だから悪い冗談はよしてよ、リンジー」
「ごめん……」
「いいの。私は平民と結婚するから」
ヤンはキャサリンが好きだった。
キャサリンのことを常に凝視していた。
ことある毎に髪型や服装を褒めていた……。
極めつけは「うぐいす色の髪の毛の女性が好みなんだ」
と言っていた。
二人で絵を描いていたら、そこに金髪で目がスカイブルーの男性が現れた。
これは……。
マックス王子!?
しかし、なぜマックス王子が!?
「「マックス王子殿下、こんにちは」」
二人はマックス王子に挨拶をした。
「二人とも、今日も素敵な絵を描いているね」
キャサリンは平民でいながら絵の才能だけは王侯貴族から評価されていた。
「リンジー。君に話したいことがある。ここにいたのか。君に会いたくて方々探しまわったんですよ」
「もしかして、わたくしの家まで行ったのですか?」
「勿論だ。君がいる場所をアボット伯爵夫人から聞いた」
「お母様に?」
「そして、ここにたどり着いたらきみがいた、というわけだ。用事がある。小一時間付き合って欲しい」
用事ってなんだろう……。
――マックス王子殿下がなぜ私に?
「ちょっと来て欲しい」
と言ってリンジーの手を取って、木陰に呼び出された
「リンジー。この度は弟の身勝手な行為に対して謝罪をしたい」
「いいえ、わたくしはもう吹っ切れましたわ」
嘘だ。今もこころの中でわだかまっている。
「リンジー。弟は不倫をしているかもしれないんだ。本人はイベイラ夫人が離婚したと言っているけれど、僕は信じていない」
「サイラス王子殿下のことはもうどうでもいいんです。わたくしは常に明日に向かって生きているんです」
またしても嘘をついた。
「リンジー。弟が勝手に婚約破棄をしたことで、君を傷つけてしまった。僕は兄として弟の失態の責任を取らせてもらいたい」
「サイラス王子殿下のことで、マックス王子殿下が責任を取るのですか?」
――マックス王子殿下がなぜサイラス王子殿下の尻拭いを?
マックス王子殿下は責任感の強い性格だったのね。
「弟のために不快な思いをさせてしまった。僕としてもどう詫びれば」
「いいえ、マックス王子殿下は悪くないですわ。わたくしに原因があるんですの」
またしても嘘だ。
婚約破棄をしたのは絵描きのリンジーよりもクラリネット奏者のイベイラを選んだ。
さらに、リンジーの背が高すぎることも原因の一つだった。
しかし、それだけで婚約破棄など理不尽極まりなかった。
「そうだ。今度王宮で舞踏会がある。是非来て欲しい」
「ありがとうございます」
「まあ、アボット伯爵家は元々招待する予定でいるんだけど、ご友人も招待しますよ」
「え? 良いのですか?」
「彼女の絵は素晴らしい。王侯貴族の評価も高い。特別に招待させていただきたい」
「あ……はい。ありがとうございます」
リンジーは春の花を中心とした風景画を描こうと思っていた。
郊外へ遠征し、絵筆を取り出した。
リンジーと共に絵を描いているのは友人のキャサリン。
キャサリンは平民だが、学園時代からの親友だった。
キャサリンもまた絵描きだった。
二人は咲き乱れる花を背景に絵を描いていた。
うぐいす色の髪にうぐいす色の目。
髪を2つに分け、みつあみをしている。
キャサリンとは学園の絵描き同士として出会った。
友人関係には身分は関係なかった。
しかし、キャサリンの母親は男爵令嬢だった。
「ねえ、リンジー。どうして婚約指輪を外しているの?」
キャサリンはリンジーの左薬指を指さして、尋ねてきた。
「それはね……」
と言いかけるとキャサリンは眉根を寄せた。
「言いたくなければ言わなくて良いんだよ」
「ううんいいの。わたくしはサイラス王子殿下と婚約破棄したの」
「そうだったんだ」
キャサリンは悲しげな顔を見せた。
「あんなに仲良くしていたのに?」
「そうなんだけどね……人生ってわからないものよ」
そう言ってため息をついた。
「でも、またチャンスはあるわ! だってリンジーは魅力的だもの」
「そう言ってくれてうれしいわ」
リンジーは努めて明るく振る舞った。
「そうね」
「だってわたくし、ヤン様に振られても平然としていたでしょ?」
「そうね。リンジーはメンタルが強いわね」
メンタルが強そうに装っているだけ。
本当はヤンに振らてた時も心の奥底から泣いていた。
ヤンはまだ独身だから、もう一度チャンスがあるのかもしれないけれど、サイラスの場合はイベイラと既に婚約している。
ガルシア公爵ご令息がイベイラを離さなければ良いけれど……。
でも、浮気を知ったガルシア公爵ご令息は離婚を切り出すに決まっている。
仮にあの二人が成立しても、天は黙っていない。
絶対に罰が当たる。地獄に落ちるに決まっている。
「ねえ、リンジー」
「どうしたの? キャサリン」
因みに、キャサリンはヤンのことを知っていた。
ヤンは学園時代の同級生でスミス公爵ご令息だった。
「なんか……ヤン様はキャサリンの事好きだったわよね」
「何言っているの、リンジー。冗談はやめて。平民の私とヤン様が結ばれるわけないでしょ!?」
確かに……。
身分差の夫婦が成立したという話はあまり聞かない。
しかし、かの昔、ある公爵家に平民女性が嫁いだという話は聞いたことがあるが、そんなの稀だ。
「ヤン様が仮に私に好意があっても、成立はしないわね。ヤン様には申し訳ないけれど」
「わたくしは応援したいわ」
「やだ。だから悪い冗談はよしてよ、リンジー」
「ごめん……」
「いいの。私は平民と結婚するから」
ヤンはキャサリンが好きだった。
キャサリンのことを常に凝視していた。
ことある毎に髪型や服装を褒めていた……。
極めつけは「うぐいす色の髪の毛の女性が好みなんだ」
と言っていた。
二人で絵を描いていたら、そこに金髪で目がスカイブルーの男性が現れた。
これは……。
マックス王子!?
しかし、なぜマックス王子が!?
「「マックス王子殿下、こんにちは」」
二人はマックス王子に挨拶をした。
「二人とも、今日も素敵な絵を描いているね」
キャサリンは平民でいながら絵の才能だけは王侯貴族から評価されていた。
「リンジー。君に話したいことがある。ここにいたのか。君に会いたくて方々探しまわったんですよ」
「もしかして、わたくしの家まで行ったのですか?」
「勿論だ。君がいる場所をアボット伯爵夫人から聞いた」
「お母様に?」
「そして、ここにたどり着いたらきみがいた、というわけだ。用事がある。小一時間付き合って欲しい」
用事ってなんだろう……。
――マックス王子殿下がなぜ私に?
「ちょっと来て欲しい」
と言ってリンジーの手を取って、木陰に呼び出された
「リンジー。この度は弟の身勝手な行為に対して謝罪をしたい」
「いいえ、わたくしはもう吹っ切れましたわ」
嘘だ。今もこころの中でわだかまっている。
「リンジー。弟は不倫をしているかもしれないんだ。本人はイベイラ夫人が離婚したと言っているけれど、僕は信じていない」
「サイラス王子殿下のことはもうどうでもいいんです。わたくしは常に明日に向かって生きているんです」
またしても嘘をついた。
「リンジー。弟が勝手に婚約破棄をしたことで、君を傷つけてしまった。僕は兄として弟の失態の責任を取らせてもらいたい」
「サイラス王子殿下のことで、マックス王子殿下が責任を取るのですか?」
――マックス王子殿下がなぜサイラス王子殿下の尻拭いを?
マックス王子殿下は責任感の強い性格だったのね。
「弟のために不快な思いをさせてしまった。僕としてもどう詫びれば」
「いいえ、マックス王子殿下は悪くないですわ。わたくしに原因があるんですの」
またしても嘘だ。
婚約破棄をしたのは絵描きのリンジーよりもクラリネット奏者のイベイラを選んだ。
さらに、リンジーの背が高すぎることも原因の一つだった。
しかし、それだけで婚約破棄など理不尽極まりなかった。
「そうだ。今度王宮で舞踏会がある。是非来て欲しい」
「ありがとうございます」
「まあ、アボット伯爵家は元々招待する予定でいるんだけど、ご友人も招待しますよ」
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