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噂話
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いつも通りの学園の朝。
空は珍しく青空が広がっている。
とはいえ、北東の方角から冷たい風が吹いてくる。
まだまだ真冬の寒さは抜けない。
ヒロインのシルヴィアと言えば、今日はウィリアムと一緒にいる。
シルヴィアは笛が上手だ。
縦笛、横笛どちらもできる。
歌もうまい。
ヒロインだけあって、シルヴィアはモテモテ。
やはり、あの八重歯がチャーミングポイントになっているのだろう。
ゲイルは今日はいない。
どこに行ったのやら。
ゲイルは滅多に学園を休まない。きっとどこか遊びに行ったのだろう。
攻略対象であるからには他の女性と一緒にいるとは思いがたい。
アーノルドは机に伏せて寝ている。
いつも深夜まで勉強しているのだろう。
ゴードンは相変わらず読書をしている。
「おはよう、アレクシア!」
ふと後ろを向くとヴィクトリアがいた。
ヴィクトリアは普段はおだんごヘアだが、今日は髪を下ろしている。
「おはよう、ヴィクトリア! あれ? 今日は髪型が違うね」
「あは。イメチェンなんだ」
ヴィクトリアはおしゃれ好き。
ピアスも日によって変わる。
しかも、大量に所持している。
今日のヴィクトリアのピアスは花柄のピアスだった。
このオイフィーア学園は校則がゆるく、ピアスもメイクもネイルも暗黙の了解で許可されている。
「ねえ、知っている?」
「どうしたの、ヴィクトリア」
「あのね、隣国アルキューオネ帝国のアーサー皇子が行方不明なんだって」
アレクシアは「え!?」と思った。
アルキューオネ帝国はバビロン帝国から侵略を受けていた。
このバビロン帝国はやがてこのミレイナー王国まで攻めてくるとも言われていた。
そこで合点がいった。
バビロン帝国が攻めてきて、アレクシアは囚えられることを。
「もしかしたら、既に亡くなっているのかも!?」
「それは私も思ったんだけど、どうやらアルキューオネ帝国の兵士が皇子をどこかに逃したとかいう話よ」
「そうなんだ……。で、アーサー皇子は無事なのかしら?」
「無事だと思うわ」
と、そこで突然ゴードンが立ち上がった。
ゴードンは本を本棚に返してきた。
読み終わったのだろう。
教室には本棚が設置されている。
本は主に寄付でなっているもの。
その大半がゴードンが寄付していたのだ。
「ゴードン。パン屋の息子にしてはお金を潤沢に持っている気がする」
アレクシアは不思議に思っていた。
「そうね。でもほら。『パティパティ』は繁盛店だから、その位のお金はあるんじゃないの?」
というのがヴィクトリアの見解だった。
確かに、『パティパティ』は繁盛店だ。
この近辺でも有名なお店だし、『パティパティ』を知らない人はほぼ皆無とも思われる。
シルヴィアは今度は教科書を持って、アーノルドのところへ行っている。
勉強を教わるのだろう。
わからない問題はわからない。
わからないから、教えてもらう。
そういう謙虚な面もシルヴィアが好かれる理由なのかもしれない。
それに、アーノルドもわからない問題について質問されるのも嫌な顔しないだろう。
ましてや、モテモテのシルヴィアなら尚更。
「そうそう。『パティパティ』のパンって美味しいよね」
とヴィクトリア。
「そうよね。ヴィクトリアは何のパンが好き?」
「私はクリームパンと三色パンかな? アレクシアは?」
「私はチョコレートパンとチーズパンかな」
アレクシアはチョコレートが大好き。
転生前から好きだった。
転生前はチョコレート中毒と言えるほどチョコレートが好きだった。
でも、転生してもこんなに美味しいチョコレートパンは食べた事が無かった。
「アレクシアはチョコレートが好きなのね」
転生後もチョコレート中毒は相変わらず。
「シルヴィアってモテモテで羨ましい」
と、ヴィクトリア。
「そうね。シルヴィアはどんな男の人も虜にしてしまうからね」
ヒロインだもの。当たり前。
シルヴィアは逆ハーレムなのだから。
「シルヴィアが羨ましい?」
そこへジェシカが現れた。
「シルヴィアよりジェシカの方がモテモテよ」
とジェシカの取り巻きの一人のササ。
「シルヴィアは何でもできるけど、ジェシカほどカリスマ性はないわ」
と、また取り巻きの一人のカレン。
「うふふふ。あははは。シルヴィアなんか王太子殿下に選ばれなかったじゃない」
勝ち誇ったかのようにジェシカが言う。
「だって。王太子殿下は元々は私との政略結婚だったのよ」
「ぷはっ。それで捨てられて……。シルヴィアと秤にかけて私を選んだの」
え!?
「王太子殿下がシルヴィアとも浮気していたと言うこと?」
「シルヴィアの場合は片思いね。空しく終わったわ。そして私が次期王妃にふさわしいと王太子殿下が言ってくれたわ。あんたなんか王妃に向かないのよ」
アレクシアは両手の拳に力を入れた。
「どうしたの? 負け犬。最後はシルヴィアに嫉妬?」
尚も勝ち誇ったかのような言い草。
「ジェシカの方がシルヴィアなんかよりずっと上だわ」とササ。
「そう言うことよ。おーほほほほほ」
「何て嫌なヤツ」
ヴィクトリアが泣きそうになっていた。
本当の悪役令嬢はジェシカじゃない!!
ジェシカは確かゲームの中ではシルヴィアにはライバル心燃やすキャラでは無かったはず。
そもそも、ジェシカというキャラ自体出てこなかった。
やはり、原作と違う。
松田樹里亜の世界はまた崩れていく。
空は珍しく青空が広がっている。
とはいえ、北東の方角から冷たい風が吹いてくる。
まだまだ真冬の寒さは抜けない。
ヒロインのシルヴィアと言えば、今日はウィリアムと一緒にいる。
シルヴィアは笛が上手だ。
縦笛、横笛どちらもできる。
歌もうまい。
ヒロインだけあって、シルヴィアはモテモテ。
やはり、あの八重歯がチャーミングポイントになっているのだろう。
ゲイルは今日はいない。
どこに行ったのやら。
ゲイルは滅多に学園を休まない。きっとどこか遊びに行ったのだろう。
攻略対象であるからには他の女性と一緒にいるとは思いがたい。
アーノルドは机に伏せて寝ている。
いつも深夜まで勉強しているのだろう。
ゴードンは相変わらず読書をしている。
「おはよう、アレクシア!」
ふと後ろを向くとヴィクトリアがいた。
ヴィクトリアは普段はおだんごヘアだが、今日は髪を下ろしている。
「おはよう、ヴィクトリア! あれ? 今日は髪型が違うね」
「あは。イメチェンなんだ」
ヴィクトリアはおしゃれ好き。
ピアスも日によって変わる。
しかも、大量に所持している。
今日のヴィクトリアのピアスは花柄のピアスだった。
このオイフィーア学園は校則がゆるく、ピアスもメイクもネイルも暗黙の了解で許可されている。
「ねえ、知っている?」
「どうしたの、ヴィクトリア」
「あのね、隣国アルキューオネ帝国のアーサー皇子が行方不明なんだって」
アレクシアは「え!?」と思った。
アルキューオネ帝国はバビロン帝国から侵略を受けていた。
このバビロン帝国はやがてこのミレイナー王国まで攻めてくるとも言われていた。
そこで合点がいった。
バビロン帝国が攻めてきて、アレクシアは囚えられることを。
「もしかしたら、既に亡くなっているのかも!?」
「それは私も思ったんだけど、どうやらアルキューオネ帝国の兵士が皇子をどこかに逃したとかいう話よ」
「そうなんだ……。で、アーサー皇子は無事なのかしら?」
「無事だと思うわ」
と、そこで突然ゴードンが立ち上がった。
ゴードンは本を本棚に返してきた。
読み終わったのだろう。
教室には本棚が設置されている。
本は主に寄付でなっているもの。
その大半がゴードンが寄付していたのだ。
「ゴードン。パン屋の息子にしてはお金を潤沢に持っている気がする」
アレクシアは不思議に思っていた。
「そうね。でもほら。『パティパティ』は繁盛店だから、その位のお金はあるんじゃないの?」
というのがヴィクトリアの見解だった。
確かに、『パティパティ』は繁盛店だ。
この近辺でも有名なお店だし、『パティパティ』を知らない人はほぼ皆無とも思われる。
シルヴィアは今度は教科書を持って、アーノルドのところへ行っている。
勉強を教わるのだろう。
わからない問題はわからない。
わからないから、教えてもらう。
そういう謙虚な面もシルヴィアが好かれる理由なのかもしれない。
それに、アーノルドもわからない問題について質問されるのも嫌な顔しないだろう。
ましてや、モテモテのシルヴィアなら尚更。
「そうそう。『パティパティ』のパンって美味しいよね」
とヴィクトリア。
「そうよね。ヴィクトリアは何のパンが好き?」
「私はクリームパンと三色パンかな? アレクシアは?」
「私はチョコレートパンとチーズパンかな」
アレクシアはチョコレートが大好き。
転生前から好きだった。
転生前はチョコレート中毒と言えるほどチョコレートが好きだった。
でも、転生してもこんなに美味しいチョコレートパンは食べた事が無かった。
「アレクシアはチョコレートが好きなのね」
転生後もチョコレート中毒は相変わらず。
「シルヴィアってモテモテで羨ましい」
と、ヴィクトリア。
「そうね。シルヴィアはどんな男の人も虜にしてしまうからね」
ヒロインだもの。当たり前。
シルヴィアは逆ハーレムなのだから。
「シルヴィアが羨ましい?」
そこへジェシカが現れた。
「シルヴィアよりジェシカの方がモテモテよ」
とジェシカの取り巻きの一人のササ。
「シルヴィアは何でもできるけど、ジェシカほどカリスマ性はないわ」
と、また取り巻きの一人のカレン。
「うふふふ。あははは。シルヴィアなんか王太子殿下に選ばれなかったじゃない」
勝ち誇ったかのようにジェシカが言う。
「だって。王太子殿下は元々は私との政略結婚だったのよ」
「ぷはっ。それで捨てられて……。シルヴィアと秤にかけて私を選んだの」
え!?
「王太子殿下がシルヴィアとも浮気していたと言うこと?」
「シルヴィアの場合は片思いね。空しく終わったわ。そして私が次期王妃にふさわしいと王太子殿下が言ってくれたわ。あんたなんか王妃に向かないのよ」
アレクシアは両手の拳に力を入れた。
「どうしたの? 負け犬。最後はシルヴィアに嫉妬?」
尚も勝ち誇ったかのような言い草。
「ジェシカの方がシルヴィアなんかよりずっと上だわ」とササ。
「そう言うことよ。おーほほほほほ」
「何て嫌なヤツ」
ヴィクトリアが泣きそうになっていた。
本当の悪役令嬢はジェシカじゃない!!
ジェシカは確かゲームの中ではシルヴィアにはライバル心燃やすキャラでは無かったはず。
そもそも、ジェシカというキャラ自体出てこなかった。
やはり、原作と違う。
松田樹里亜の世界はまた崩れていく。
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