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シモーネサイド 攻略対象者
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いつもの教室の中、いつもの朝。
外は相変わらず雪が降っている。
教室の中は寒い。
細身のシモーネだが、寒さには強い。
「シモーネさん、おはよう」
茶髪で豚鼻、分厚いメガネの奥には腹黒さとスケベ根性を兼ね備えた目、薄い唇。
広すぎる額に細身で背の低い平民男。
この男こそが厄介者のアンドレイだ。
アンドレイは平民なので、勿論姓はない。
とりあえず、ここは無視。
「ねえ、シモーネさんってば」
しつこいのだ。
無視された時点で気付け!! と思うがこの男は空気が読めない。
シモーネは頭を抱えた。
「おっは~」
緑の髪を2つに分けてメガネを掛け、三編みしている背の低いハイテンションな女性。
それが友人のアイナだった。
「ねえ、アイナ」
シモーネはアイナの肩を叩いた。
「どうしたの?」
「あのね……」
シモーネはアイナの耳に右手を添え、ひそひそ話を始めた。
「アイナ。あのね。アンドレイったら本当に空気読めないの。嫌だわ。ベアトリスとくっつけば良いのに」
「本当よね」
「ねえ、ねえ、アンドレイ」
アイナがアンドレイを引き止めた。
「なんですか? アイナさん」
「あのね。ベアトリスがアンドレイのこと気に入っていたわよ」
「え? 僕にはそう思えないけどね」
それがもはやお決まり。
これでいつも平行線。
やはり、少なからずシモーネの事が好きなのだ。
余談だが、アイナもアンドレイに触られたことがある。
肩に猫の毛がついている、と言って触ったのだ。
勿論、アイナは猫を飼っていない。
ベアトリスはシモーネがモテモテなのを面白く思っていないようだ。
しかも、その妹のフィリッパから婚約者を横取りした。
フィリッパは2つ下の学年。
どうやら、医者を目指しているようだ。
ベアトリスは次期マジョ家の当主になることより、侯爵当主の教育を受けている。
ベアトリスの話だと、マジョ家に男子はおらず、長女のベアトリスが後継の白羽の矢が立った。
ベアトリスは次期侯爵ということもあってか、モテないのだ。
だからか、アンドレイも振り向きもしない。
アンドレイは次期侯爵の夫という立場も嫌なのだろう。
それもそうだ。
妻を立てる立場なのだから。
しかし、貴族に成り上がりたいという気持ちはないのだろうか?
「ねえ、アンドレイ」
「はい?」
「あんたさ、貴族の夫になりたいって思わないの?」
「思わない。僕は平民でいいよ」
結局これがお決まりの答え。
アンドレイは小柄な体格の癖に、騎士団入りを目指している。
そして、女王陛下に気に入られ、貴族入りをしたいと思っているのだ。
どのみち、貴族願望はあるのだ。
もっとも、騎士団入りは難しい。
なぜなら、アンドレイは鈍感だからだ。
あまつさえ、運動神経が鈍い。
こんな男が騎士団に入団できるなら、誰でも騎士団に入団できる。
「おはよう、アントニオ」
アントニオがこの日は頭をオールバックにしてやって来た。
アントニオは学園の日はいつもオールバックにしてくる。
「おはよう、シモーネ、アイナ」
「ねえ、聞いてよ。相っ変わらず、アンドレイが寄って来るんだけど」
「困ったな……」
アントニオは腕を組んだ。
この件に関しては何度もアントニオの方からアンドレイに言ってもらっているのだが、アンドレイは懲りない。
アントニオと婚約しても、結局、解決の糸口は見つからない。
「ねえ、かわいそうよね」
と、アイナ。
「やあ、おはよう!!」
そこにやってきたのは茶色い髪を逆立て、長身でがっちりの侯爵令息、セルジオ・クラークだ。
セルジオもまた、シモーネに興味があるみたいだ。
セルジオは騎士団長を目指している。
そう。こういう紳士な人ほど騎士団に向いているのだ。
運動神経も抜群のスポーツマンタイプだ。
アンドレイなど、戦場に出たら、真っ先に攻撃される。
そして、あっさりと葬られる。
しかし、セルジオなら、先頭を切って戦える。
余談だが、セルジオの母親は王室専属の管理栄養士を務めている。
「セルジオ、聞いてよ」
アンドレイの話はアントニオだけではない。
セルジオにも相談していた。
「ああ、またアンドレイのヤツか?」
「そうなの」
「あいつ、懲りないな。残念ながら、付きまといに関する校則は無いから、生徒指導の方でも指導しようがないんだよな」
もっとも、ヤツが一回の指導で改善するはずはない、とは思っている。
事実、何度も担任教師から何度も注意を受けているからだ。
改善されるのは一時的なもの。
ほとぼり冷めると再び嫌がらせをしてくるのだ。
もっとも、向こうは嫌がらせだと思ってはいないだろうけど。
だから、余計にタチが悪いのだ。
アンドレイは鏡を見て髪を弄っている。
そして、決まって「俺ってイケてるだろ」と言ってウインクする。
もはや、儀式になっている。
アンドレイは信仰を持っている。
アンドレイの信仰は平民らしく、民間信仰をしている。
自然神を崇めているのだ。
勿論、信仰はシモーネと異なる。
それをいいことに、「アンドレイが宗教の勧誘してくる!!」
と言っているのだ。
しかも、アンドレイの宗教は汚い話、朝にコップ一杯のお小水を飲むのだ。
それだけでも、ドン引き。
しかし、お小水は体に良いとかで、この信仰では推奨されているのだ。
お小水が体に良い……という話はアンドレイと同じクラスになって初めて知ったのだ。
アンドレイが尿を飲んでいるのを誰かが目撃したのだという。
そうしたら、宗教で推奨されている……と言い出したそうだ。
それもあってか、アンドレイは健康オタクで、健康に関する知識だけは豊富だ。
「おはよう!!」
ひょろ長い長身で、小麦色の肌。
深緑色の肩まである髪をうねらせ、緑の瞳に、尖った鷲鼻。
なぜか、薄着。
侯爵令息のフランシスコ・ジャクソンだ。
彼もまた、シモーネに気がある異性の一人だ。
親は占い師兼天気予報士。
彼自身は医師を目指している。
「あら、フランシスコじゃないの。おはよう」
フランシスコにもまた、アンドレイのことは相談済み。
「また、何かされてないかい?」
何かされていない……とは勿論、アンドレイのことだ。
「今朝から挨拶してきたのよ。勿論、無視してやったけど」
「困ったなぁ。懲りないな、あの平民男!」
「そうよ。平民と公爵令嬢では身分不相応でしょう?」
「だな。酷すぎるな」
シモーネがアントニオと婚約しても、セルジオとフランシスコは友達の関係だ。
外は相変わらず雪が降っている。
教室の中は寒い。
細身のシモーネだが、寒さには強い。
「シモーネさん、おはよう」
茶髪で豚鼻、分厚いメガネの奥には腹黒さとスケベ根性を兼ね備えた目、薄い唇。
広すぎる額に細身で背の低い平民男。
この男こそが厄介者のアンドレイだ。
アンドレイは平民なので、勿論姓はない。
とりあえず、ここは無視。
「ねえ、シモーネさんってば」
しつこいのだ。
無視された時点で気付け!! と思うがこの男は空気が読めない。
シモーネは頭を抱えた。
「おっは~」
緑の髪を2つに分けてメガネを掛け、三編みしている背の低いハイテンションな女性。
それが友人のアイナだった。
「ねえ、アイナ」
シモーネはアイナの肩を叩いた。
「どうしたの?」
「あのね……」
シモーネはアイナの耳に右手を添え、ひそひそ話を始めた。
「アイナ。あのね。アンドレイったら本当に空気読めないの。嫌だわ。ベアトリスとくっつけば良いのに」
「本当よね」
「ねえ、ねえ、アンドレイ」
アイナがアンドレイを引き止めた。
「なんですか? アイナさん」
「あのね。ベアトリスがアンドレイのこと気に入っていたわよ」
「え? 僕にはそう思えないけどね」
それがもはやお決まり。
これでいつも平行線。
やはり、少なからずシモーネの事が好きなのだ。
余談だが、アイナもアンドレイに触られたことがある。
肩に猫の毛がついている、と言って触ったのだ。
勿論、アイナは猫を飼っていない。
ベアトリスはシモーネがモテモテなのを面白く思っていないようだ。
しかも、その妹のフィリッパから婚約者を横取りした。
フィリッパは2つ下の学年。
どうやら、医者を目指しているようだ。
ベアトリスは次期マジョ家の当主になることより、侯爵当主の教育を受けている。
ベアトリスの話だと、マジョ家に男子はおらず、長女のベアトリスが後継の白羽の矢が立った。
ベアトリスは次期侯爵ということもあってか、モテないのだ。
だからか、アンドレイも振り向きもしない。
アンドレイは次期侯爵の夫という立場も嫌なのだろう。
それもそうだ。
妻を立てる立場なのだから。
しかし、貴族に成り上がりたいという気持ちはないのだろうか?
「ねえ、アンドレイ」
「はい?」
「あんたさ、貴族の夫になりたいって思わないの?」
「思わない。僕は平民でいいよ」
結局これがお決まりの答え。
アンドレイは小柄な体格の癖に、騎士団入りを目指している。
そして、女王陛下に気に入られ、貴族入りをしたいと思っているのだ。
どのみち、貴族願望はあるのだ。
もっとも、騎士団入りは難しい。
なぜなら、アンドレイは鈍感だからだ。
あまつさえ、運動神経が鈍い。
こんな男が騎士団に入団できるなら、誰でも騎士団に入団できる。
「おはよう、アントニオ」
アントニオがこの日は頭をオールバックにしてやって来た。
アントニオは学園の日はいつもオールバックにしてくる。
「おはよう、シモーネ、アイナ」
「ねえ、聞いてよ。相っ変わらず、アンドレイが寄って来るんだけど」
「困ったな……」
アントニオは腕を組んだ。
この件に関しては何度もアントニオの方からアンドレイに言ってもらっているのだが、アンドレイは懲りない。
アントニオと婚約しても、結局、解決の糸口は見つからない。
「ねえ、かわいそうよね」
と、アイナ。
「やあ、おはよう!!」
そこにやってきたのは茶色い髪を逆立て、長身でがっちりの侯爵令息、セルジオ・クラークだ。
セルジオもまた、シモーネに興味があるみたいだ。
セルジオは騎士団長を目指している。
そう。こういう紳士な人ほど騎士団に向いているのだ。
運動神経も抜群のスポーツマンタイプだ。
アンドレイなど、戦場に出たら、真っ先に攻撃される。
そして、あっさりと葬られる。
しかし、セルジオなら、先頭を切って戦える。
余談だが、セルジオの母親は王室専属の管理栄養士を務めている。
「セルジオ、聞いてよ」
アンドレイの話はアントニオだけではない。
セルジオにも相談していた。
「ああ、またアンドレイのヤツか?」
「そうなの」
「あいつ、懲りないな。残念ながら、付きまといに関する校則は無いから、生徒指導の方でも指導しようがないんだよな」
もっとも、ヤツが一回の指導で改善するはずはない、とは思っている。
事実、何度も担任教師から何度も注意を受けているからだ。
改善されるのは一時的なもの。
ほとぼり冷めると再び嫌がらせをしてくるのだ。
もっとも、向こうは嫌がらせだと思ってはいないだろうけど。
だから、余計にタチが悪いのだ。
アンドレイは鏡を見て髪を弄っている。
そして、決まって「俺ってイケてるだろ」と言ってウインクする。
もはや、儀式になっている。
アンドレイは信仰を持っている。
アンドレイの信仰は平民らしく、民間信仰をしている。
自然神を崇めているのだ。
勿論、信仰はシモーネと異なる。
それをいいことに、「アンドレイが宗教の勧誘してくる!!」
と言っているのだ。
しかも、アンドレイの宗教は汚い話、朝にコップ一杯のお小水を飲むのだ。
それだけでも、ドン引き。
しかし、お小水は体に良いとかで、この信仰では推奨されているのだ。
お小水が体に良い……という話はアンドレイと同じクラスになって初めて知ったのだ。
アンドレイが尿を飲んでいるのを誰かが目撃したのだという。
そうしたら、宗教で推奨されている……と言い出したそうだ。
それもあってか、アンドレイは健康オタクで、健康に関する知識だけは豊富だ。
「おはよう!!」
ひょろ長い長身で、小麦色の肌。
深緑色の肩まである髪をうねらせ、緑の瞳に、尖った鷲鼻。
なぜか、薄着。
侯爵令息のフランシスコ・ジャクソンだ。
彼もまた、シモーネに気がある異性の一人だ。
親は占い師兼天気予報士。
彼自身は医師を目指している。
「あら、フランシスコじゃないの。おはよう」
フランシスコにもまた、アンドレイのことは相談済み。
「また、何かされてないかい?」
何かされていない……とは勿論、アンドレイのことだ。
「今朝から挨拶してきたのよ。勿論、無視してやったけど」
「困ったなぁ。懲りないな、あの平民男!」
「そうよ。平民と公爵令嬢では身分不相応でしょう?」
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