上 下
9 / 11

★終焉

しおりを挟む
「アンドリュー様、大変です」

突如近衛兵のフィンがやってきた。

「フィン。どうした!? やけに狼狽しているけど、何があったんだ。かいつまんで説明してくれ」

フィンはあわてふためいている。


「はい。アンドリュー様。隣国モナールが我が国に侵攻を開始したのです」


聞いていなかった。

確かに、モナール帝国がレガローグの領土を欲しがっていたのは知っていた。

まさか本当に侵攻してくるとは夢にも思わなかった。

「大変になりましたわね」

イザベラの顔も引きつっている。

「イザベラ。大丈夫だ。お前は俺の命よりも大切な存在だ。絶対に護るぞ!」

「頼もしいですわ、アンドリュー様」


イザベラは抱きついてきた。

「とにかく、フィン。城のまもりを固めるようにはしているだろうな?」


「いえ、それが既に敵に包囲されました」


「何っ!?」


城が既にモナール軍に包囲されただと?


「それに、アンドリュー様。国王陛下と共に賞金首にかけられています」


『影武者?』

俺は影武者を作ることにした。

そして、俺とイザベラは国外へ逃亡すれば良い。


「おい、フィン」

「はい、なんでしょうアンドリュー様」


「アレクとシェーラはいないか?」


「アレクとシェーラですか?」


「そうだ」


アレクは俺と体型も似ているし、顔も若干似ている。

シェーラはイザベラに体型がそっくりだ。顔は似ていないが、メイクで誤魔化せば何とかなる。

「はい。しかし、アレクは捕まってしまいました」

「なっ! 何だと?」


「敵は奇襲をかけてきました。こちらが身構えるよりも早く襲いかかってきました」


くっ……。


「アレクが捕まったか。じゃあグレンを出せ!」

グレンは俺よりも遥かに身長が高いが、三白眼という共通点がある。

「グレンも既に捕まりました」


「なっ!!」

「我々が捕虜になるのも時間の問題です」


「父上は?」

「国王陛下様も既に捕まってしまったのなではないでしょうか。兎にも角にも城が陥落するのも時間の問題です」


「何ぃ!?」

と、その時。


「敵だ!」


という聞き慣れない声がした。


「何者だ!」

俺は大声で叫んだ。


数人の武装した男が俺の執務室に入ってきた。


「あなたがレガローグの王太子のアンドリューだな?」

「貴様一体何者だ!」

「モナール帝国の者だ。皇帝陛下の命令です。あなたを捕まえにきました」

「なぬっ」

「そして、こちらは王太子妃でしょうか?」

別の男がイザベラを指さした。

イザベラが危ない!!

「貴様! イザベラだけには指一本触れさせないぞ!」

「しかし、もうあなたがたには猶予はありません」


「連行です!」


「何ぃ」


俺はモナールの兵士に両脇を取られた。


イザベラもまた、捕まってしまった。


「イザベラは関係ないだろ」

悪あがきもしておくものだ。このままではイザベラが危ない。


イザベラだけは護りたい。


「王太子妃ゆえ、彼女にも来てもらう」


俺たちはそのまま手足を縛られてしまった。


そして、馬車に乗せられた。

俺たちの姿はまるで芋虫のようだった。


城は赤々と燃えていた。





気づけばモナール帝国まで連行され、牢屋に入れられた。


牢屋には父上も母上もいた。


なぜ、こうなったのだろうか?


しかも、ここは独房。

イザベラとも引き離されてしまった。


愛するイザベラ……護れなかった……。


まさか、自分が囚人になるなど夢にも思わなかった。


ああ……イザベラ。



これは恐らくエドワードの裏切りに違いない。


エドワードはモナールに内通していたのだろう。

情報が全て漏れている。


エドワード。ふざけるな!!


俺は鉄格子を思い切り蹴った。


「おい、見張り番!」


「何ですか。アンドリュー」


「葉巻を寄越せ!」


「残念ながらここでは葉巻は据吸えません」


何ぃ?


葉巻を吸わないとストレスが溜まって仕方がない!!


イライラフルMAX!!


「あなたはもう王太子ではないのです」


そを、なのわかっちゃいるさ。


「近々帝国裁判があるので、それに出廷してもらう。それまで大人しくしているんだな」


クソ、クソ、クソクソ、クソ

俺は鉄格子を蹴った。


葉巻も吸えない。自由もない。イザベラとも抱き合えない。


俺は哀れな子猫ちゃんに成り下がってしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹が公爵夫人になりたいようなので、譲ることにします。

夢草 蝶
恋愛
 シスターナが帰宅すると、婚約者と妹のキスシーンに遭遇した。  どうやら、妹はシスターナが公爵夫人になることが気に入らないらしい。  すると、シスターナは快く妹に婚約者の座を譲ると言って──  本編とおまけの二話構成の予定です。

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

私を「ウザイ」と言った婚約者。ならば、婚約破棄しましょう。

夢草 蝶
恋愛
 子爵令嬢のエレインにはライという婚約者がいる。  しかし、ライからは疎んじられ、その取り巻きの少女たちからは嫌がらせを受ける日々。  心がすり減っていくエレインは、ある日思った。  ──もう、いいのではないでしょうか。  とうとう限界を迎えたエレインは、とある決心をする。

婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。

夢草 蝶
恋愛
 侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。  そのため、当然婚約者もいない。  なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。  差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。  すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?

妹と婚約者を交換したので、私は屋敷を出ていきます。後のこと? 知りません!

夢草 蝶
恋愛
 伯爵令嬢・ジゼルは婚約者であるロウと共に伯爵家を守っていく筈だった。  しかし、周囲から溺愛されている妹・リーファの一言で婚約者を交換することに。  翌日、ジゼルは新たな婚約者・オウルの屋敷へ引っ越すことに。

【完結】愛されていた。手遅れな程に・・・

月白ヤトヒコ
恋愛
婚約してから長年彼女に酷い態度を取り続けていた。 けれどある日、婚約者の魅力に気付いてから、俺は心を入れ替えた。 謝罪をし、婚約者への態度を改めると誓った。そんな俺に婚約者は怒るでもなく、 「ああ……こんな日が来るだなんてっ……」 謝罪を受け入れた後、涙を浮かべて喜んでくれた。 それからは婚約者を溺愛し、順調に交際を重ね―――― 昨日、式を挙げた。 なのに・・・妻は昨夜。夫婦の寝室に来なかった。 初夜をすっぽかした妻の許へ向かうと、 「王太子殿下と寝所を共にするだなんておぞましい」 という声が聞こえた。 やはり、妻は婚約者時代のことを許してはいなかったのだと思ったが・・・ 「殿下のことを愛していますわ」と言った口で、「殿下と夫婦になるのは無理です」と言う。 なぜだと問い質す俺に、彼女は笑顔で答えてとどめを刺した。 愛されていた。手遅れな程に・・・という、後悔する王太子の話。 シリアス……に見せ掛けて、後半は多分コメディー。 設定はふわっと。

[完結]本当にバカね

シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。 この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。 貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。 入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。 私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。

【完結】旦那様は、妻の私よりも平民の愛人を大事にしたいようです

よどら文鳥
恋愛
 貴族のことを全く理解していない旦那様は、愛人を紹介してきました。  どうやら愛人を第二夫人に招き入れたいそうです。  ですが、この国では一夫多妻制があるとはいえ、それは十分に養っていける環境下にある上、貴族同士でしか認められません。  旦那様は貴族とはいえ現状無職ですし、愛人は平民のようです。  現状を整理すると、旦那様と愛人は不倫行為をしているというわけです。  貴族の人間が不倫行為などすれば、この国での処罰は極刑の可能性もあります。  それすら理解せずに堂々と……。  仕方がありません。  旦那様の気持ちはすでに愛人の方に夢中ですし、その願い叶えられるように私も協力致しましょう。  ただし、平和的に叶えられるかは別です。  政略結婚なので、周りのことも考えると離婚は簡単にできません。ならばこれくらいの抵抗は……させていただきますよ?  ですが、周囲からの協力がありまして、離婚に持っていくこともできそうですね。  折角ですので離婚する前に、愛人と旦那様が私たちの作戦に追い詰められているところもじっくりとこの目で見ておこうかと思います。

処理中です...