【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します

hikari

文字の大きさ
上 下
6 / 11

魔法を習う

しおりを挟む
キャサリンは錬金術こそできるものの、魔法はまったくもって駄目だった。

魔物が出る世の中では魔法ができなければ命が危うくなる。


姉のセシリアは聖女だ。

聖女は聖女の学校に行き、聖女課程を修了しななければ聖女にはなれない。

キャサリンは聖女への道を進まずに、錬金術を習うことにしたのだ。


しかし、魔物の多い世の中。

キャサリンは魔法を使いたい、と思った。


魔物に出会えば、エドワードを盾にするしかなかった。


いくら貴族令嬢とはいい、何もかもエドワード任せにするわけにはいかない。

キャサリン自身も強くならなくてはいけないのだ。


キャサリンは街中に住む魔法使いのアリーナに魔法を教わる事にした。


アリーナは有名な魔法使いだった。

かつて、勇者たちと共に魔物退治にでかけた。

そして、多大なる貢献をしたという事で、国からも評価されている。


晩冬の晴れた空の下。


キャサリンはアリーナの元を訪ねた。

「キャサリン・アメリア・フレミングと申します。魔法を習いに来ました」


「キャサリン様。お待ちしていました。全てはフレミング公爵から話を伺っています。どうぞ中へ」


白い布を頭からすっぽりかぶった女性が言った。

見たからに、いかにも魔法使いだ。


「私は錬金術こそはできるものの、魔法はからっきしダメです。でも、外は魔物でいっぱいです。私は魔法を習いたいのです」


「大丈夫ですよ。魔物なんかちょちょいのちょいですからね」

外見からは想像のできない、陽気なキャラクターのようだ。


「魔法の習得って難しいですか?」

「いや、錬金術ができれば簡単なのであります」

「そうなんですか」

「はーい。そうでーす」


キャサリンは目の前の人物が随分と胡散臭い人物のようにも思えてならなかった。


「魔物を倒すためには風、炎、水、土、雷と5つの属性の魔法。つまり、『エレメント魔法』と呼ばれる魔法と光と闇、そして無属性の魔法と計8種類の魔法があります。他にも私は専門外ですが、召喚魔法という伝説の生き物を呼び出す魔法もあるんですよ」

「色々あるんですね」

「で、キャサリン様は何を覚えたいのですか?」 

「私は……何が良いかな?」


「そうそう。魔法を覚えるには魔導書が必要なんです」

「魔導……書!?」

「はーい。魔導書です。魔導書を読むと魔法が習得できる仕組みです」

「なるほど……」


「キャサリン様は学園時代に魔法を取らなかったようですが、なぜ魔法をとらなかったのですか?」


「それは……その当時はまだ魔物もそんなに活発化していませんでしたし……平和ボケしていましたわ」

実際にそうだった。

何かあれば護衛が護ってくれるからだった。


だから、魔法を選ばずに錬金術を選んだのだ。

「錬金術ができれば基礎は同じですわ。錬金術も書物を読みますよね?」


「あ……はい」


アリーナは魔導書と思しい書物を数冊持ってきた。


「この魔導書は炎系の魔法『ファイア』ですわ」

ファイア。ファイア、ファイアー、ファイエストだったっけ?

キャサリンは何となく知っていた。

「ファイア、ファイアー、ファイエストとなるんだ」


当たっていた。

そして、風がウインド、ウインダー、ウィンデスト。

雷がサンダー、サンダーアー、サンデスト。

土がガイア、ガイアー、ガイエスト。

水がウォーター、ウォーターラー、ウォーテスト。


だった気がする……。


「キャサリン様。とりあえずこの魔導書を読んでみて下さい」

アリーナはキャサリンに魔導書を手渡した。

キャサリンは魔導書を手に取り、読んだ。


なんだか力が漲ってくる……。

体中が熱くなってくる。

何だか手先から炎が出そうな感じがする。


「さあ、キャサリン様。炎を出してみて下さい」

キャサリンは思い切り『ファイア』と叫んだ。


すると、右手の手先から炎がほとばしる。

やった!

キャサリンはガッツポーズになった。


「ファイアがうまくいったから、次はファイアーにいってみましょうか」

「はい」

キャサリンはファイアーを唱えた。

炎の威力が先程と変わらない。


「あー。失敗ですね。ファイアーができなければファイエストは唱えられませんね。まだまだ経験値が足りません」

経験値……。

魔物を倒すと得られるもの……と聞いたことがある。


「魔物を倒さないとダメなんですか?」

「はい。そうです」


そん……な。

魔物を倒すなど聞いていなかった。


「ファイアが唱えられれば次は『ウィンド』にいきましょうか」 


「はい」

「でも、今日のレッスンはここまでにしましょう」

「ありがとうございました」



キャサリンが立ち上がろうとした時、アリーナが制した。

「まあ、お茶でも召し上がっていってくださいませ~」

「あ、はい。お言葉に甘えて」

アリーナは踵を返した。

しばらくして、アリーナがティカップを2つ持ってやってきた。


「いや~、キャサリン様、素敵ですわ。私はキャサリン様を好きになってしまいそうですわ」


好きになる!?

でも、アリーナは女でしょう?


キャサリンは思わず笑ってしまった。


「いえいえ。私は……」

「キャサリン様。どうぞ」

アリーナはカップを差し出した。


カップに鼻を近づけ臭いを嗅いでみる。

ほのかに香るミントの匂い。


「いただきます」


「どうぞ、召し上がってくださいませ」

キャサリンはハーブティーが大好き。

何だかこれから魔法習得が楽しみになる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹が公爵夫人になりたいようなので、譲ることにします。

夢草 蝶
恋愛
 シスターナが帰宅すると、婚約者と妹のキスシーンに遭遇した。  どうやら、妹はシスターナが公爵夫人になることが気に入らないらしい。  すると、シスターナは快く妹に婚約者の座を譲ると言って──  本編とおまけの二話構成の予定です。

妹と婚約者を交換したので、私は屋敷を出ていきます。後のこと? 知りません!

夢草 蝶
恋愛
 伯爵令嬢・ジゼルは婚約者であるロウと共に伯爵家を守っていく筈だった。  しかし、周囲から溺愛されている妹・リーファの一言で婚約者を交換することに。  翌日、ジゼルは新たな婚約者・オウルの屋敷へ引っ越すことに。

私を「ウザイ」と言った婚約者。ならば、婚約破棄しましょう。

夢草 蝶
恋愛
 子爵令嬢のエレインにはライという婚約者がいる。  しかし、ライからは疎んじられ、その取り巻きの少女たちからは嫌がらせを受ける日々。  心がすり減っていくエレインは、ある日思った。  ──もう、いいのではないでしょうか。  とうとう限界を迎えたエレインは、とある決心をする。

令嬢が婚約破棄をした数年後、ひとつの和平が成立しました。

夢草 蝶
恋愛
 公爵の妹・フューシャの目の前に、婚約者の恋人が現れ、フューシャは婚約破棄を決意する。  そして、婚約破棄をして一週間も経たないうちに、とある人物が突撃してきた。

婚約破棄寸前だった令嬢が殺されかけて眠り姫となり意識を取り戻したら世界が変わっていた話

ひよこ麺
恋愛
シルビア・ベアトリス侯爵令嬢は何もかも完璧なご令嬢だった。婚約者であるリベリオンとの関係を除いては。 リベリオンは公爵家の嫡男で完璧だけれどとても冷たい人だった。それでも彼の幼馴染みで病弱な男爵令嬢のリリアにはとても優しくしていた。 婚約者のシルビアには笑顔ひとつ向けてくれないのに。 どんなに尽くしても努力しても完璧な立ち振る舞いをしても振り返らないリベリオンに疲れてしまったシルビア。その日も舞踏会でエスコートだけしてリリアと居なくなってしまったリベリオンを見ているのが悲しくなりテラスでひとり夜風に当たっていたところ、いきなり何者かに後ろから押されて転落してしまう。 死は免れたが、テラスから転落した際に頭を強く打ったシルビアはそのまま意識を失い、昏睡状態となってしまう。それから3年の月日が流れ、目覚めたシルビアを取り巻く世界は変っていて…… ※正常な人があまりいない話です。

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。

恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。 キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。 けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。 セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。 キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。 『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』 キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。   そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。 ※ゆるふわ設定 ※ご都合主義 ※一話の長さがバラバラになりがち。 ※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。 ※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。

婚約破棄を申し込まれたので、ちょっと仕返ししてみることにしました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約破棄を申し込まれた令嬢・サトレア。  しかし、その理由とその時の婚約者の物言いに腹が立ったので、ちょっと仕返ししてみることにした。

処理中です...