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アリステル王国へ
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ジェームス王子から呼ばれ、アリステル王国の王宮へ向かっている。
なんでも、王宮で晩餐会があるらしいのだ。
呼ばれたのはアルサ家全員。
通常、アリステル王国の場合は国内の王侯貴族のみで行われるが、ジェームスの好意により、特別に参加が叶った。
外は残暑が厳しい。
照りつける日差しもまるで刺すような感じだ。
蝉が去りゆく夏を惜しむかのように強く鳴いている。
遠くの山々は未だ深緑のままだ。
「行ってらっしゃいませ、マドレーヌ様」
送りに来たのはシャーロットだった。
「シャーロット、行って来るわね」
執事のトーマスもまた送りに来てくれた。
「御主人様、奥様、マドレーヌ様、フィル様」
マドレーヌは馬車に乗り込んだ。
最後にフィルが乗り、馬車は出発した。
それにしても暑い。
窓を開けたけれど、それでも暑い。
けれど、マドレーヌは寒さよりは暑さの方が強かった。
それは細身の体型だから、と思っていた。
そう言えば……。
アリステル王国は宝石の産地で有名で、貴重な宝石が採れるのだ。
その貴重な宝石は高額な値段で取引されていた。
ミハイルは婚約指輪をアリステル王国で買い付けたと言っていた。
世界でも希少な宝石を買ってくれたのだ。
しかし、そんなもの欲しくない!
所詮偽りの恋でしかなかったのだ。
そんな貴重な宝石を貢いでいる傍らでイルダに浮気をしていたのだから。
そして、惨めな最期を遂げた。
そして……その後の世界が存在するならば、再び希少な宝石をイルダに貢いでいるでしょう。
そして、イルダと結ばれているでしょう。
(もう知らないわ。あの人たち。好きになさいな)
アリステル王国は島国で他にも漁業で栄えている。
アリステル王国で採れる魚介類は美味で有名。
また、山もあるので、山の幸も堪能できる。
天然資源にも恵まれ、比較的裕福な国だ。
アルヴィンデル王国もそこそこ裕福な国だが、やはり、アリステル王国には敵わない。
「アリステル王国にお呼ばれされるなんて、凄いわ、マドレーヌ」
「お母様。私もまさかジェームス王子殿下に呼ばれるとは思いませんでしたわ」
「それでも私はミハイル王太子殿下との結婚を望んでいるけどな」
やはり、フィリップはミハイルとの結婚を望んでいた。
「私はミハイル王太子殿下は……」
で止まってしまった。
「どうした? マドレーヌ。ミハイル王太子殿下が嫌なのか?」
いい加減空気読んで欲しい……とマドレーヌは思った。
去る先日の舞踏会ではなぜミハイルと踊る事を拒否したのか。
勿論、ミハイルと結婚するのは懲り懲りだ。
「姉上は姉上の好きな人と結婚すれば良いじゃないか」
フィルはわかっている。
フィルはアルサ家の後継で次期当主。
その顔を持っていることをわかっていて発言しているのだ。
「ありがとう、フィル」
フィルのフォローに心から感謝した。
「フィル。私はミハイル王太子殿下より素敵な殿方は沢山いると思っているの」
「それが答えなのか? マドレーヌ」
「お父様。そうです」
なぜか馬車の中で家族会議になっている。
「王室と我がアルサ家はマドレーヌが生まれる前から交流がある」
「それはわかりますわ」
「私が王室の裁判官を務めてからな」
「でも、姉上の気持ちを尊重して下さいよ、父上」
「フィル、それもそうなんだがな」
「ミハイル王太子殿下にも意中の彼女はいるはずです」
(それが幼なじみのイルダなのよね)
「だが、私は憂慮している。王室との関係を」
(そっ……そんな。王室との関係が崩壊したら、それまでの間柄だったってヤツじゃないの?)
馬車は海の桟橋に着いた。
「ここから先は船に乗って行くぞ」
フィリップはそう言って馬車を降りた。
続いてレベッカ、マドレーヌ、フィルの順に降りた。
「ありがとうございました」
フィリップは御者に向かって軽く頭を下げた。
「アルサ家の者です宜しくお願いします」
フィリップは船頭に挨拶をした。
「話はジェームス王子殿下から聞いております。どうぞ」
一家は船に乗り込んだ。
「しまった!! 僕、船酔いしちゃうんだ」
そう言えばフィルは船酔いしてしまうことを思い出した。
以前もアリステル王国に旅行に行った時、船の中であげてしまったのだ。
「フィル。辛い時は我慢しなくて良いんだぞ」
フィリップが後ろを向き、フィルを宥めた。
夏の暑い中では海風が心地よい。
地平線が見える。
アリステル王国は少し離れているのだ。
海には海鳥たちが空に向かって羽ばたいている。
時折、魚が飛んでいる。
「いやぁ、この中で釣りをしたら最高だろうなぁ」
フィリップは釣りが趣味だ。
時折、釣った魚が食卓に上がることもあった。
「そうですわね、お父様」
実はマドレーヌも釣りをした事がある。
釣りをした事があるとはいえ、鮒釣りではなく、岩場で釣りをしていたのだ。
だから、船が苦手なフィルも一緒に釣りをしていた。
鳥たちが鳴いている。
「大丈夫なの? フィル」
レベッカがフィルを気遣っている。
「だ……大丈夫です、母上」
そして、船はつつがなくアリステル王国に着いた。
そして、桟橋から再び馬車に乗った。
馬車はジェームスが用意した馬車だった。
日はだいぶ傾き、地平線には夕日が眩しかった。
なんでも、王宮で晩餐会があるらしいのだ。
呼ばれたのはアルサ家全員。
通常、アリステル王国の場合は国内の王侯貴族のみで行われるが、ジェームスの好意により、特別に参加が叶った。
外は残暑が厳しい。
照りつける日差しもまるで刺すような感じだ。
蝉が去りゆく夏を惜しむかのように強く鳴いている。
遠くの山々は未だ深緑のままだ。
「行ってらっしゃいませ、マドレーヌ様」
送りに来たのはシャーロットだった。
「シャーロット、行って来るわね」
執事のトーマスもまた送りに来てくれた。
「御主人様、奥様、マドレーヌ様、フィル様」
マドレーヌは馬車に乗り込んだ。
最後にフィルが乗り、馬車は出発した。
それにしても暑い。
窓を開けたけれど、それでも暑い。
けれど、マドレーヌは寒さよりは暑さの方が強かった。
それは細身の体型だから、と思っていた。
そう言えば……。
アリステル王国は宝石の産地で有名で、貴重な宝石が採れるのだ。
その貴重な宝石は高額な値段で取引されていた。
ミハイルは婚約指輪をアリステル王国で買い付けたと言っていた。
世界でも希少な宝石を買ってくれたのだ。
しかし、そんなもの欲しくない!
所詮偽りの恋でしかなかったのだ。
そんな貴重な宝石を貢いでいる傍らでイルダに浮気をしていたのだから。
そして、惨めな最期を遂げた。
そして……その後の世界が存在するならば、再び希少な宝石をイルダに貢いでいるでしょう。
そして、イルダと結ばれているでしょう。
(もう知らないわ。あの人たち。好きになさいな)
アリステル王国は島国で他にも漁業で栄えている。
アリステル王国で採れる魚介類は美味で有名。
また、山もあるので、山の幸も堪能できる。
天然資源にも恵まれ、比較的裕福な国だ。
アルヴィンデル王国もそこそこ裕福な国だが、やはり、アリステル王国には敵わない。
「アリステル王国にお呼ばれされるなんて、凄いわ、マドレーヌ」
「お母様。私もまさかジェームス王子殿下に呼ばれるとは思いませんでしたわ」
「それでも私はミハイル王太子殿下との結婚を望んでいるけどな」
やはり、フィリップはミハイルとの結婚を望んでいた。
「私はミハイル王太子殿下は……」
で止まってしまった。
「どうした? マドレーヌ。ミハイル王太子殿下が嫌なのか?」
いい加減空気読んで欲しい……とマドレーヌは思った。
去る先日の舞踏会ではなぜミハイルと踊る事を拒否したのか。
勿論、ミハイルと結婚するのは懲り懲りだ。
「姉上は姉上の好きな人と結婚すれば良いじゃないか」
フィルはわかっている。
フィルはアルサ家の後継で次期当主。
その顔を持っていることをわかっていて発言しているのだ。
「ありがとう、フィル」
フィルのフォローに心から感謝した。
「フィル。私はミハイル王太子殿下より素敵な殿方は沢山いると思っているの」
「それが答えなのか? マドレーヌ」
「お父様。そうです」
なぜか馬車の中で家族会議になっている。
「王室と我がアルサ家はマドレーヌが生まれる前から交流がある」
「それはわかりますわ」
「私が王室の裁判官を務めてからな」
「でも、姉上の気持ちを尊重して下さいよ、父上」
「フィル、それもそうなんだがな」
「ミハイル王太子殿下にも意中の彼女はいるはずです」
(それが幼なじみのイルダなのよね)
「だが、私は憂慮している。王室との関係を」
(そっ……そんな。王室との関係が崩壊したら、それまでの間柄だったってヤツじゃないの?)
馬車は海の桟橋に着いた。
「ここから先は船に乗って行くぞ」
フィリップはそう言って馬車を降りた。
続いてレベッカ、マドレーヌ、フィルの順に降りた。
「ありがとうございました」
フィリップは御者に向かって軽く頭を下げた。
「アルサ家の者です宜しくお願いします」
フィリップは船頭に挨拶をした。
「話はジェームス王子殿下から聞いております。どうぞ」
一家は船に乗り込んだ。
「しまった!! 僕、船酔いしちゃうんだ」
そう言えばフィルは船酔いしてしまうことを思い出した。
以前もアリステル王国に旅行に行った時、船の中であげてしまったのだ。
「フィル。辛い時は我慢しなくて良いんだぞ」
フィリップが後ろを向き、フィルを宥めた。
夏の暑い中では海風が心地よい。
地平線が見える。
アリステル王国は少し離れているのだ。
海には海鳥たちが空に向かって羽ばたいている。
時折、魚が飛んでいる。
「いやぁ、この中で釣りをしたら最高だろうなぁ」
フィリップは釣りが趣味だ。
時折、釣った魚が食卓に上がることもあった。
「そうですわね、お父様」
実はマドレーヌも釣りをした事がある。
釣りをした事があるとはいえ、鮒釣りではなく、岩場で釣りをしていたのだ。
だから、船が苦手なフィルも一緒に釣りをしていた。
鳥たちが鳴いている。
「大丈夫なの? フィル」
レベッカがフィルを気遣っている。
「だ……大丈夫です、母上」
そして、船はつつがなくアリステル王国に着いた。
そして、桟橋から再び馬車に乗った。
馬車はジェームスが用意した馬車だった。
日はだいぶ傾き、地平線には夕日が眩しかった。
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