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馬車の中で

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間もなくして馬車が到着した。

「やあ、コナン。どうしたんだ」

御者が降りてきた。

「その嬢ちゃん、大金を持っているんだ。道中が心配でお前を呼んだんだよ」

「そうか」

「で、どこに行くというのかね?」

「アリーナ修道院とか言っていたかな」

「アリーナか。かなり時間かかるな。まぁいい。嬢ちゃんは確かに心配だ。嬢ちゃん、馬車に乗ってくれ」

「はい」

わたくしは馬車に乗り込みました。

「わたくしはターニア・ウラです。よろしくお願い致しますわ」

わたくしは御者に挨拶をした。

「わたしはロイだ。宜しくね。では出発だ」

馬車は発車した。


「嬢ちゃん。なんだか訳ありのようだね」

御者が話しかけてきた。

「はい。わたくし、実家を飛び出してきたんです。もうわたくしは貴族ではありません。なので、ドレスを処分いたしました」

婚約指輪、婚約破棄は敢えて口にしなかった。

「そうか」

そういって御者は前を向きました。


馬車という乗り物にももう、縁がなくなるのかも。

平民になれば、自分の足で行動しなければならない。

景色は街中から、穀倉地帯に入りました。

なんて素敵な景色なのでしょう。


貴族ゆえ、穀倉地帯とはほぼ無縁。

新鮮に思えました。


空は次第に雲が広がり始めました。

「これは一雨あるかもしれないな」

御者がそう独り言ちた。

確かに降りそうだ。


しばらくすると、雨が降り出してきた。

空も暗くなってきた。


遠雷が鳴っている。

「どうしますか?」

わたくしは思わず御者に声をかけた。


「こんな平原では雷がどこに落ちるかわからないな」

家はない。人っ子一人いない。

一体どうすれば良いのか?


「雷が落ちないことを祈りながら、そのまま待とう。通り雨だしな」

御者は馬車を止め、中に入ってきた。


雨が降り始めた。

天井を強く叩きつける。

雷も近くなってきた。


わたくしは雷が大嫌い。

子供の頃は雷が鳴ると布団の中に隠れていました。


光った!!

わたくしは数を数え始めました。

光ってすぐに音が鳴れば近い証拠。

「1……2……3」

近い。

怖い。だけど、避難する場所がない。


馬たちは雨に濡れている。

土砂降り……。


雷は鳴り止んだ。

雨も上がってきた。

青空が戻り、再び炎天下に。


「もう大丈夫だな」

御者は馬たちを撫で、馬車を走らせた。


穀倉地帯を抜け、草原地帯に入った。

修道院に近づいている!!




「さあ、到着だ」

目の前には荘厳な造りの修道院があります。

わたくしの故郷とも言える孤児院はこの修道院の中にあります。


「ありがとう」

「ああ。達者でな」


馬車は立ち去りました。

わたくしは修道院を訪ねました。


そこには見覚えのある人がいました。
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