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エレオノーレはついにこの日を迎えた。
サウルと共にバージンロードを歩く。
まさか、自分がこんな日を迎えるだなんて思わなかった。
しかも、王族と結婚だなんて……。
前世は貧困に遭い、わずか4年でこの世を去った。
貧困から王族へ。
王子様と結婚だなんて夢想した事も無かった。
否、王族云々より、結婚すら考えた事が無かった。
王太子とヴィルジニアは隣国ズッシン王国に流罪になった。
ズッシン王国はそれこそ弱者に住みにくい国。
二人は罪人となり、社会的弱者へと成り下がった。
王太子が投資を持ちかけているなど、知らなかった。
王太子と別れて良かった……と心底感じた。
「おめでとう、エレオノーレ」
ジョヴァンナだった。
ジョヴァンナはかねてより婚約していたレックス・ヴォルネーゼと一緒だった。
新緑を思わせるようなうぐいす色の髪に切れ長の目。通った鼻に健康的な褐色の肌。
二人は既に結婚をしていた。
ジョヴァンナはヴォルネーゼ公爵に嫁いだのだ。
ヴォルネーゼ公爵は筆頭公爵。
「ありがとう、ジョヴァンナ」
「おめでとうございます」
「ありがとう、レックス」
レース編みと宝石が施されたウェディングドレスには感無量だった。
貧民時代は宝石とは全く無縁だったからだ。
「本当に幸せそうね、エレオノーレ」
「ありがとう」
でも、やはり新婚のジョヴァンナとレックスも幸せそうだ。
「おめでとうございます、エレオノーレ」
カタリーナだった。
「ありがとうございますわ、カタリーナ王女殿下」
「サウルと離れて良かったわね」
「本当にそうですわ」
「塞翁が馬ね」
「そう思いますわ」
「サウルがエレオノーレを不快にさせた分、パウルが幸せにしてくれるはずよ」
カタリーナはウインクした。
「サウルは今、貧民になったわ。ズッシン王国の国王陛下は独裁。しかも、貧民には容赦無い弱肉強食の国。この国と違って治安も良くないらしいからね」
未だに存在する弱肉強食の国。
エレオノーレは国に殺されたようなものだった。
対してこの国は弱者にやさしい。
貧民に対しては定期的に炊き出しを行っている。
炊き出しはなんと、サウルや宰相などが行っている。
食べ物の配給も滞る事が無い。
「パウルは純粋な心の持ち主。とってもやさしいわよ。サウルとは違うわ」
サウルと言って頭の上に指を二本突き立てた。
確かに……と思った。
「わたくし、パウル王子殿下のお陰でとっても幸せですわ」
ドレスをたくしあげた。
「エレオノーレは私の妹みたいな存在だからね」
カタリーナの優しさにも触れた。
皆から祝福され、充実した1日だった。
了
サウルと共にバージンロードを歩く。
まさか、自分がこんな日を迎えるだなんて思わなかった。
しかも、王族と結婚だなんて……。
前世は貧困に遭い、わずか4年でこの世を去った。
貧困から王族へ。
王子様と結婚だなんて夢想した事も無かった。
否、王族云々より、結婚すら考えた事が無かった。
王太子とヴィルジニアは隣国ズッシン王国に流罪になった。
ズッシン王国はそれこそ弱者に住みにくい国。
二人は罪人となり、社会的弱者へと成り下がった。
王太子が投資を持ちかけているなど、知らなかった。
王太子と別れて良かった……と心底感じた。
「おめでとう、エレオノーレ」
ジョヴァンナだった。
ジョヴァンナはかねてより婚約していたレックス・ヴォルネーゼと一緒だった。
新緑を思わせるようなうぐいす色の髪に切れ長の目。通った鼻に健康的な褐色の肌。
二人は既に結婚をしていた。
ジョヴァンナはヴォルネーゼ公爵に嫁いだのだ。
ヴォルネーゼ公爵は筆頭公爵。
「ありがとう、ジョヴァンナ」
「おめでとうございます」
「ありがとう、レックス」
レース編みと宝石が施されたウェディングドレスには感無量だった。
貧民時代は宝石とは全く無縁だったからだ。
「本当に幸せそうね、エレオノーレ」
「ありがとう」
でも、やはり新婚のジョヴァンナとレックスも幸せそうだ。
「おめでとうございます、エレオノーレ」
カタリーナだった。
「ありがとうございますわ、カタリーナ王女殿下」
「サウルと離れて良かったわね」
「本当にそうですわ」
「塞翁が馬ね」
「そう思いますわ」
「サウルがエレオノーレを不快にさせた分、パウルが幸せにしてくれるはずよ」
カタリーナはウインクした。
「サウルは今、貧民になったわ。ズッシン王国の国王陛下は独裁。しかも、貧民には容赦無い弱肉強食の国。この国と違って治安も良くないらしいからね」
未だに存在する弱肉強食の国。
エレオノーレは国に殺されたようなものだった。
対してこの国は弱者にやさしい。
貧民に対しては定期的に炊き出しを行っている。
炊き出しはなんと、サウルや宰相などが行っている。
食べ物の配給も滞る事が無い。
「パウルは純粋な心の持ち主。とってもやさしいわよ。サウルとは違うわ」
サウルと言って頭の上に指を二本突き立てた。
確かに……と思った。
「わたくし、パウル王子殿下のお陰でとっても幸せですわ」
ドレスをたくしあげた。
「エレオノーレは私の妹みたいな存在だからね」
カタリーナの優しさにも触れた。
皆から祝福され、充実した1日だった。
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