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カタリーナ王女が無事に保護され、以来、パウルがドヴォルザーク邸に来る事が増えた。
この日もまたパウルが邸を訪ねてきた。
なぜ、そこまでもしてパウルは来るのか?
エレオノーレは疑問に思った。
しかし、すぐに氷解する事になる。
「エレオノーレ様。サウル王子殿下がやって参りました」
メイドのアリス。
「ありがとう。今、行くわ」
エレオノーレはいつも通り、応接間に迎え入れた。
サウルの笑顔がいつもより光って見えた。
一体何が始まろうというのか?
「サウル王子殿下。今日はどのようなご要件ですか?」
サウルはにこやかに言った。
「今日はね、兄上の話と……ちょっとしたご報告」
ハッサンに何かあったのか?
それにご報告?
サウルは結婚が決まったというのか?
だとしても、結婚の報告をわざわざドヴォルザーク邸に来て言うものなのだろうか?
「王太子殿下に何かあったのですか?」
「あったよ。やっぱり因果応報という言葉通りだ」
一体何が起きたのだろう?
「兄上は実は怪しい商売をしていたんだ」
「怪しい商売……ですか?」
「王太子たる身分の者がやるものではないね」
「で、どうなったのですか?」
「実は姉上が保護された後の話」
「はい」エレオノーレは耳をそばだてた。
サウルは続けた。
「逮捕されたザキソン伯爵の自供通り、ザキソン伯爵を始め、多くの貴族たちに怪しい投資話を持ちかけていたんだ」
「そっ……そうなんですか?」
「そして、裁判にかけられて、兄上は流罪にあったんだ」
流罪……。
それは死刑の次に重いものとされている。
「勿論、王位剥奪」
(そうでしょうね)
「それで……次期王太子になるのはこの僕なんだ」
「そうだったんですね」
(な~んだ。ご報告ってサウル王子殿下が王太子になるだけの話だったのね)
「で、ご報告なんだけど」
「えっ!? ご報告ってサウル王子殿下が王太子になる今の話ではなかったんですか?」
「違うよ」
何なのだろう。
「もしかして……誰かと結婚が決まったのですか?」
「そう。その通り。よくわかったね。感が鋭いね」
「おめでとうございます。そう言う話なんですね。でも、お相手は誰なんですか?」
「それは……キミだよ」
サウルはエレオノーレを指さした。
「えっ!? わたくしですか? 何かの御冗談では?」
「冗談ではない。本気だ」
サウルの顔つきが真剣になった。
「兄上はエレオノーレを幸せにできなかった。いや、僕はね実は……兄上が羨ましかった。エレオノーレのような美人と結婚できる事を」
「は……はい」
「受け取ってもらいたいものがある」
サウルは小さな小箱を取り出した。
そして、中を開けた。
中には宝石が嵌め込まれた指輪が入っていた。
「腕を出して」
「は……はい」
サウルは指輪を装着させた。
宝石はまばゆいばかりに光を放っていた。
この日もまたパウルが邸を訪ねてきた。
なぜ、そこまでもしてパウルは来るのか?
エレオノーレは疑問に思った。
しかし、すぐに氷解する事になる。
「エレオノーレ様。サウル王子殿下がやって参りました」
メイドのアリス。
「ありがとう。今、行くわ」
エレオノーレはいつも通り、応接間に迎え入れた。
サウルの笑顔がいつもより光って見えた。
一体何が始まろうというのか?
「サウル王子殿下。今日はどのようなご要件ですか?」
サウルはにこやかに言った。
「今日はね、兄上の話と……ちょっとしたご報告」
ハッサンに何かあったのか?
それにご報告?
サウルは結婚が決まったというのか?
だとしても、結婚の報告をわざわざドヴォルザーク邸に来て言うものなのだろうか?
「王太子殿下に何かあったのですか?」
「あったよ。やっぱり因果応報という言葉通りだ」
一体何が起きたのだろう?
「兄上は実は怪しい商売をしていたんだ」
「怪しい商売……ですか?」
「王太子たる身分の者がやるものではないね」
「で、どうなったのですか?」
「実は姉上が保護された後の話」
「はい」エレオノーレは耳をそばだてた。
サウルは続けた。
「逮捕されたザキソン伯爵の自供通り、ザキソン伯爵を始め、多くの貴族たちに怪しい投資話を持ちかけていたんだ」
「そっ……そうなんですか?」
「そして、裁判にかけられて、兄上は流罪にあったんだ」
流罪……。
それは死刑の次に重いものとされている。
「勿論、王位剥奪」
(そうでしょうね)
「それで……次期王太子になるのはこの僕なんだ」
「そうだったんですね」
(な~んだ。ご報告ってサウル王子殿下が王太子になるだけの話だったのね)
「で、ご報告なんだけど」
「えっ!? ご報告ってサウル王子殿下が王太子になる今の話ではなかったんですか?」
「違うよ」
何なのだろう。
「もしかして……誰かと結婚が決まったのですか?」
「そう。その通り。よくわかったね。感が鋭いね」
「おめでとうございます。そう言う話なんですね。でも、お相手は誰なんですか?」
「それは……キミだよ」
サウルはエレオノーレを指さした。
「えっ!? わたくしですか? 何かの御冗談では?」
「冗談ではない。本気だ」
サウルの顔つきが真剣になった。
「兄上はエレオノーレを幸せにできなかった。いや、僕はね実は……兄上が羨ましかった。エレオノーレのような美人と結婚できる事を」
「は……はい」
「受け取ってもらいたいものがある」
サウルは小さな小箱を取り出した。
そして、中を開けた。
中には宝石が嵌め込まれた指輪が入っていた。
「腕を出して」
「は……はい」
サウルは指輪を装着させた。
宝石はまばゆいばかりに光を放っていた。
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