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出会い頭

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この日も小雨が降っていた。

小雨程度ではやはりランニングを中断するわけにはいかない。


エレオノーレはランニングをする事にした。


ランニングに着ているスポーツ用の服は特注品。

やはり、大きいサイズともなれば、入手は難しい。


ドヴォルザーク家は仕立て屋とも関係がある。

そこでいつもエレオノーレの服を発注かけているのだ。


最初は筋トレから入る。

これがルーティンだ。


筋肉をつけなければ意味がない。

エレオノーレは筋肉が付きにくい体質らしい。

身体のどこを触っても、皮下脂肪にしか触れない。

「1……2」

筋トレはきつい。

いかに自分が重いかがわかる。


何度やめたいと思った事か。

いや、何度か挫折した。

挫折してはリバウンドし、挫折してはリバウンドし……を繰り返していた。

サウルからは「またどうせ諦めるんだろう?」と言われていた。

しかし、婚約破棄までされてしまったら、やめないわけにはいかない。

やはり、悔しい。


サウルとは政略結婚だったけれど、政略結婚を超えて恋人同士であった。

結婚は秒読みとまで言われていた。

しかし、まさかの婚約破棄。

親友、ヴィルジニアの裏切りにも繫がった。


「私が痩せていれば……」

と、何度思った事か。


しかし、後悔先立たずだ。

後悔からは何も生まれない。

これから先どうするか……だ。


だから、運動を続けるのだ。


サウルと婚約破棄してから、一度も運動を欠かしていない。

運動は気づけば習慣になっていた。


「痩せればまた結婚のチャンスに恵まれる!!」

手に力を込め、必死に筋トレをする。

腹筋、背筋、スクワット……。

最初は筋肉痛が酷かった。

その時が一番「やめたい」と思っていた。


筋トレが終わると、次はウォーミングアップのストレッチ。


ストレッチが終わると、いよいよランニングに出る。


夏の朝は涼しい。

秋の気配を感じる。


エレオノーレはひたすら走る。

身体からは汗が滲み出る。


街中まで繰り出す。

そこで、突き当りを右に曲がった時だった。


長い金髪を後ろで束ね、スカイブルーの瞳に長身の男性。

鷲鼻……。サウル!?

一瞬、胸が高鳴った。


「あれ、エレオノーレじゃないの」

よくよく見ると、サウルの弟で第二王子のパウルだった。

「おはようございます、パウル王子殿下」

パウルはどこかいそいそとしていた。

何かあったのか?


「エレオノーレ、聞きたい事がある」

「何ですか?」

「姉上を見かけなかったか?」

「いいえ、見ていませんが」

「そうか……」

「カタリーナ王女殿下に何かあったのですか?」

「実は姉上が行方不明になってしまったんだ」


カタリーナに何かがあったのだ。
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