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兄弟喧嘩 ※サウル視点

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サウルは執務室で葉巻を吸っている。

騎士団の纏めの仕事など、やっていてやらないに等しい。

殆ど、執務室で葉巻を吸い、ヴィルジニアと雑談を交わしている。

「槍の修行をしている」と国王に伝えてくれと近衛騎士に言っている。

それで、通っている。

だから、国王は仕事をしているものだと思っている。

ヴィルジニアはお菓子を食べている。

ヴィルジニアはエレオノーレと違い、太りやすい体質ではない。

だから、いくらお菓子を与えても太らない。

そこが魅力だった。


「ヴィルジニア」

「はい、王太子殿下」

「愛しているよ」


サウルとヴィルジニアの結婚式の日取りは決まっていた。

エレオノーレと婚約破棄後、新たに婚約したのがヴィルジニアだ。

ヴィルジニアとの結婚には両親の反対があった。

しかし、エレオノーレは自己管理がなっていないから太った、そんな人を王太子妃に迎え入れるわけにはいかない、と言ったら、国王は折れた。

しかし、王妃と姉、弟2人は受け入れてくれなかった。

それでも、これはサウルとヴィルジニアとの関係だ。

そんなこと、家族には何の関係も無い。


嫁姑の確執は有名な話だが、王妃はエレオノーレを気に入っていた。

そして、ヴィルジニアを嫌っている。

それもそうだ。

ヴィルジニアがサウルを奪ったようなものだからだ。


国王と王妃も政略結婚だ。

だからだろう、「恋愛結婚はけしからん!」という考えだった。

それでも、強く押し切った。

自分の人生は自分でプロデュースする。

そういうスタンスだ。


サウルは葉巻が大好きだ。

騎士の仕事ができないのも、葉巻を我慢できないからだ。

だから、仕事をしているフリをして、執務室で葉巻を吸っているのだ。


トントン。

ドアをノックする音がした。

「誰だ?」

メイドもこの時間は来ない。

サウルが槍の修行をしていると思っているからだ。



「兄さん」

この艶のあるテノールの声は!?

弟で第二王子のパウルだ。


「パウルだな。何の用だ」

「兄さん。どうしてここにいるんですか?」

「お前こそどうしてここに来た?」

「たまたま前を通ったら笑い声がしたから、いるんじゃないか? と思ってね」

くっ。しくじった。

「兄さん。どうしてエレオノーレと婚約破棄したんだ」

「あんなデブにどこに魅力があるんだ? そんなものを俺に押し付けるのか?」

「エレオノーレは根は悪い人間ではない」

「じゃあ、お前が結婚すればいいじゃないか」

「いいよ。僕が結婚するから。いいのか? 後悔しないのか?」

「お前、正気で言ってる?」

「勿論、正気だとも」

「じゃあ、好きにすればいい」



と、そこに声がした。

「大変だ! カタリーナ王女が誘拐された!!」
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