上 下
7 / 12

兄弟喧嘩 ※サウル視点

しおりを挟む
サウルは執務室で葉巻を吸っている。

騎士団の纏めの仕事など、やっていてやらないに等しい。

殆ど、執務室で葉巻を吸い、ヴィルジニアと雑談を交わしている。

「槍の修行をしている」と国王に伝えてくれと近衛騎士に言っている。

それで、通っている。

だから、国王は仕事をしているものだと思っている。

ヴィルジニアはお菓子を食べている。

ヴィルジニアはエレオノーレと違い、太りやすい体質ではない。

だから、いくらお菓子を与えても太らない。

そこが魅力だった。


「ヴィルジニア」

「はい、王太子殿下」

「愛しているよ」


サウルとヴィルジニアの結婚式の日取りは決まっていた。

エレオノーレと婚約破棄後、新たに婚約したのがヴィルジニアだ。

ヴィルジニアとの結婚には両親の反対があった。

しかし、エレオノーレは自己管理がなっていないから太った、そんな人を王太子妃に迎え入れるわけにはいかない、と言ったら、国王は折れた。

しかし、王妃と姉、弟2人は受け入れてくれなかった。

それでも、これはサウルとヴィルジニアとの関係だ。

そんなこと、家族には何の関係も無い。


嫁姑の確執は有名な話だが、王妃はエレオノーレを気に入っていた。

そして、ヴィルジニアを嫌っている。

それもそうだ。

ヴィルジニアがサウルを奪ったようなものだからだ。


国王と王妃も政略結婚だ。

だからだろう、「恋愛結婚はけしからん!」という考えだった。

それでも、強く押し切った。

自分の人生は自分でプロデュースする。

そういうスタンスだ。


サウルは葉巻が大好きだ。

騎士の仕事ができないのも、葉巻を我慢できないからだ。

だから、仕事をしているフリをして、執務室で葉巻を吸っているのだ。


トントン。

ドアをノックする音がした。

「誰だ?」

メイドもこの時間は来ない。

サウルが槍の修行をしていると思っているからだ。



「兄さん」

この艶のあるテノールの声は!?

弟で第二王子のパウルだ。


「パウルだな。何の用だ」

「兄さん。どうしてここにいるんですか?」

「お前こそどうしてここに来た?」

「たまたま前を通ったら笑い声がしたから、いるんじゃないか? と思ってね」

くっ。しくじった。

「兄さん。どうしてエレオノーレと婚約破棄したんだ」

「あんなデブにどこに魅力があるんだ? そんなものを俺に押し付けるのか?」

「エレオノーレは根は悪い人間ではない」

「じゃあ、お前が結婚すればいいじゃないか」

「いいよ。僕が結婚するから。いいのか? 後悔しないのか?」

「お前、正気で言ってる?」

「勿論、正気だとも」

「じゃあ、好きにすればいい」



と、そこに声がした。

「大変だ! カタリーナ王女が誘拐された!!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。 卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。 理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。 …と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。 全二話で完結します、予約投稿済み

玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。 昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。 入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。 その甲斐あってか学年首位となったある日。 「君のことが好きだから」…まさかの告白!

さようならお姉様、辺境伯サマはいただきます

夜桜
恋愛
 令嬢アリスとアイリスは双子の姉妹。  アリスは辺境伯エルヴィスと婚約を結んでいた。けれど、姉であるアイリスが仕組み、婚約を破棄させる。エルヴィスをモノにしたアイリスは、妹のアリスを氷の大地に捨てた。死んだと思われたアリスだったが……。

悪役公爵の養女になったけど、可哀想なパパの闇墜ちを回避して幸せになってみせる! ~原作で断罪されなかった真の悪役は絶対にゆるさない!

朱音ゆうひ
恋愛
孤児のリリーは公爵家に引き取られる日、前世の記憶を思い出した。 「私を引き取ったのは、愛娘ロザリットを亡くした可哀想な悪役公爵パパ。このままだとパパと私、二人そろって闇墜ちしちゃう!」 パパはリリーに「ロザリットとして生きるように」「ロザリットらしく振る舞うように」と要求してくる。 破滅はやだ! 死にたくない!  悪役令嬢ロザリットは、悲劇回避のためにがんばります! 別サイトにも投稿しています(https://ncode.syosetu.com/n0209ip/)

お姉様は嘘つきです! ~信じてくれない毒親に期待するのをやめて、私は新しい場所で生きていく! と思ったら、黒の王太子様がお呼びです?

朱音ゆうひ
恋愛
男爵家の令嬢アリシアは、姉ルーミアに「悪魔憑き」のレッテルをはられて家を追い出されようとしていた。 何を言っても信じてくれない毒親には、もう期待しない。私は家族のいない新しい場所で生きていく!   と思ったら、黒の王太子様からの招待状が届いたのだけど? 別サイトにも投稿してます(https://ncode.syosetu.com/n0606ip/)

転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?

朱音ゆうひ
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!  「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」 王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。 不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。 もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた? 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)

虐げられるのは嫌なので、モブ令嬢を目指します!

八代奏多
恋愛
 伯爵令嬢の私、リリアーナ・クライシスはその過酷さに言葉を失った。  社交界がこんなに酷いものとは思わなかったのだから。  あんな痛々しい姿になるなんて、きっと耐えられない。  だから、虐められないために誰の目にも止まらないようにしようと思う。  ーー誰の目にも止まらなければ虐められないはずだから!  ……そう思っていたのに、いつの間にかお友達が増えて、ヒロインみたいになっていた。  こんなはずじゃなかったのに、どうしてこうなったのーー!? ※小説家になろう様・カクヨム様にも投稿しています。

【完結】スクールカースト最下位の嫌われ令嬢に転生したけど、家族に溺愛されてます。

永倉伊織
恋愛
エリカ・ウルツァイトハート男爵令嬢は、学園のトイレでクラスメイトから水をぶっかけられた事で前世の記憶を思い出す。 前世で日本人の春山絵里香だった頃の記憶を持ってしても、スクールカースト最下位からの脱出は困難と判断したエリカは 自分の価値を高めて苛めるより仲良くした方が得だと周囲に分かって貰う為に、日本人の頃の記憶を頼りにお菓子作りを始める。 そして、エリカのお菓子作りがエリカを溺愛する家族と、王子達を巻き込んで騒動を起こす?! 嫌われ令嬢エリカのサクセスお菓子物語、ここに開幕!

処理中です...