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投資 ※サウル視点
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サウルは王太子でいる傍ら、仕事はしている。
それは、騎士たちを取り纏める仕事だ。
しかし、副業もしていた。
本業だけでは贅沢はできない。
元より、王室は贅沢禁止だった。
それは貧民に配慮しての話だ。
しかし、そんなのはサウルにとって知ったことではない。
贅沢は敵だ。そんな時代は終焉に向かっていると思っている。
姉や弟たちは質素そのものだ。
「質素な生活なんかやってられるか!! 俺は王太子だ!!」
道端の石を蹴飛ばした。
石は転がっていった。
サウルの副業とは投資を持ちかけることだった。
投資をすれば儲かる。
そう言ってお金をもらう。
この仕事は実に儲かるし、面白い。
皆、口車に簡単に乗ってしまうのだ。
人間というのは欲深いもので、儲かると言えば飛びつくのだ。
「ふん。世の中馬鹿ばかりだ」
サウルは葉巻を取り出した。そして、火をつけた。
歩き葉巻は勿論ご法度だ。
しかし、そんな事知ったこっちゃない。
「俺は王太子だ。この国は俺の庭だ。俺の好きなようにして良いのだ」
サウルは思い切り煙を吐き出した。
夏の日差しが叩きつけるように照らす。
サウルは夏が大嫌いだ。
なぜなら、暑さに弱く、また、エレオノーレが夏生まれだからだ。
エレオノーレとは所詮政略結婚だ。
本人の意思を無視した結婚など、真っ平ごめんだ。
サウルはオスカー・ペルソナの元へ行った。
オスカーはペルソナ侯爵令息だ。
勿論、投資をしていることは家族は知らない。
ペルソナ家は侯爵だが、大した金持ちではない。
それゆえ、この設け話にはいとも簡単に乗ってきた。
いい鴨だった。
「おい、オスカー」
オスカー家ではサウルは顔パスだ。
王太子というだけで、何の躊躇なく入れてくれる。
「はい、王太子殿下」
「オスカー。更新だ」
「はい」
「13万ソトだ」
「あ……はい」
この男は天然だ。
オスカーは大人しく金を出した。
「いつか必ず運が向いてくるはずだから、気長に待つんだな」
「はい、王太子殿下。気長に待ちます」
「気長に待つ」を謳い文句にすれば、大半の人が契約を更新してくれる。
何とも便利な言葉だ。
次はベンジャミン・ザキソンの元に行った。
ベンジャミンはザキソン伯爵当主だ。
ザキソン家は伝統のある伯爵家だ。
そのくせ、持ち合わせは少ない。
だからだろう、投資の話に乗ってきたのだ。
ザキソン家も勿論顔パス。
「ベンジャミン」
「はい、王太子殿下」
「契約の更新だ」
「でも、全く儲からないではないですか」
疑念をつのらせているようだ。
ここで、便利な言葉の出番だ。
「そのうち、運はついてくる。今は辛抱だ。必ず儲かるから」
「わかりました」
「では23万ソトだ」
「はい」
サウルはお金を受け取った。
馬鹿な奴らだ。
こんな手口に引っかるなんて実に愚かだ。
それは、騎士たちを取り纏める仕事だ。
しかし、副業もしていた。
本業だけでは贅沢はできない。
元より、王室は贅沢禁止だった。
それは貧民に配慮しての話だ。
しかし、そんなのはサウルにとって知ったことではない。
贅沢は敵だ。そんな時代は終焉に向かっていると思っている。
姉や弟たちは質素そのものだ。
「質素な生活なんかやってられるか!! 俺は王太子だ!!」
道端の石を蹴飛ばした。
石は転がっていった。
サウルの副業とは投資を持ちかけることだった。
投資をすれば儲かる。
そう言ってお金をもらう。
この仕事は実に儲かるし、面白い。
皆、口車に簡単に乗ってしまうのだ。
人間というのは欲深いもので、儲かると言えば飛びつくのだ。
「ふん。世の中馬鹿ばかりだ」
サウルは葉巻を取り出した。そして、火をつけた。
歩き葉巻は勿論ご法度だ。
しかし、そんな事知ったこっちゃない。
「俺は王太子だ。この国は俺の庭だ。俺の好きなようにして良いのだ」
サウルは思い切り煙を吐き出した。
夏の日差しが叩きつけるように照らす。
サウルは夏が大嫌いだ。
なぜなら、暑さに弱く、また、エレオノーレが夏生まれだからだ。
エレオノーレとは所詮政略結婚だ。
本人の意思を無視した結婚など、真っ平ごめんだ。
サウルはオスカー・ペルソナの元へ行った。
オスカーはペルソナ侯爵令息だ。
勿論、投資をしていることは家族は知らない。
ペルソナ家は侯爵だが、大した金持ちではない。
それゆえ、この設け話にはいとも簡単に乗ってきた。
いい鴨だった。
「おい、オスカー」
オスカー家ではサウルは顔パスだ。
王太子というだけで、何の躊躇なく入れてくれる。
「はい、王太子殿下」
「オスカー。更新だ」
「はい」
「13万ソトだ」
「あ……はい」
この男は天然だ。
オスカーは大人しく金を出した。
「いつか必ず運が向いてくるはずだから、気長に待つんだな」
「はい、王太子殿下。気長に待ちます」
「気長に待つ」を謳い文句にすれば、大半の人が契約を更新してくれる。
何とも便利な言葉だ。
次はベンジャミン・ザキソンの元に行った。
ベンジャミンはザキソン伯爵当主だ。
ザキソン家は伝統のある伯爵家だ。
そのくせ、持ち合わせは少ない。
だからだろう、投資の話に乗ってきたのだ。
ザキソン家も勿論顔パス。
「ベンジャミン」
「はい、王太子殿下」
「契約の更新だ」
「でも、全く儲からないではないですか」
疑念をつのらせているようだ。
ここで、便利な言葉の出番だ。
「そのうち、運はついてくる。今は辛抱だ。必ず儲かるから」
「わかりました」
「では23万ソトだ」
「はい」
サウルはお金を受け取った。
馬鹿な奴らだ。
こんな手口に引っかるなんて実に愚かだ。
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