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モブに接近!!

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この日も生憎の雨。

春に3日の晴れなしとはよく言ったものだ。

でも、雨の日はクララにとって楽しい日だった。

雨の日ファッションが楽しみだったからだ。

雨の日の服は晴れの日の普段着よりもお金をかけていたからだ。

長靴は特にそうだった。


モブのトールに迫ってみることにした。


無視はされるけれども、それでもマークやスティーブンには挨拶をしていた。


(それにしても、どうしてヒロインは王太子を選んだんだろう?)

そう。実はゲームを一通りプレーをしていた。

王太子、マーク、スティーブン、フリードリヒ、トールの順に制覇していた。

(もしかして、最初に攻略したのが王太子だったから?)

勿論、トールは平民だったので、最後だった。

王子様のような風貌の平民という設定だった。

トールルートのエンディングは平民として暮らす……だった。


(ヒロインはやはり平民なんかに興味持つわけないよね……)

このゲームについて、ネットの掲示板を見ていたけれど、王太子から攻略する人が多数だった。

ところが、敢えて平民のトールを選んでいる人もいた。

トールルートはあまり刺激がない。

やはり、平民なので、平民としか生きられない。

『公爵令嬢が平民と一緒になるなんて身分差も大きい』という意見が圧倒的多数だった。

モテないアラフォー独女はお姫様願望から、「結婚するなら、王太子よね」という気分から、王太子を選んだ。


そして、悪役令嬢クララは何かとヒロインの邪魔をした。

が、唯一、トールの時だけは邪魔をしなかった。

だから、トールは簡単に攻略できた。


(そうね。だから、ヴァネッサはトールだけには興味がないんだろうな)


クララは婚約破棄をしてから、貴族社会に嫌気が差していた。

なぜ、生まれながらにして婚約者がいるのか?

本人の気持ちはまるで無視。

だったら、モブよね!!


「やあ、おはよう!」

ふと、我に返った。

いつも通り。フリードリヒがやってきた。

もう、わかっている。

「はい、宿題」

「ありがとう♪」

フリードリヒはノートを受け取った。


「なあ」

なぜかマーク。

「お前、娼婦なんだってな」

まんま声優の立川銀河!

セクシーなバリトンの声!!

「違うわ!」

「嘘つかない方がいいぞ」

そう言ってマークは立ち去った。


娼婦……違うのに。


トールは読書をしている。

「おはよう! トール」

「おはよう、クララ」

そうよ。平民が一番だわ!!

「ねえ、トール」

「はい、何でしょう?」

「何の本、読んでいるの?」

「これ……。ヴァレンティン王国の騎士の話だ」

ヴァレンティン王国とは隣国で現在、内戦を起こしている。

国王と王弟が争っているのだ。

それは王位継承権の争いだという。

「騎士の話?」

「そう。騎士のジョシュ・コリンズの話」

ジョシュ・コリンズは有名な騎士。

クララも勿論知っている。

なぜなら、教科書に出てくるから。

「その本、読み終わったら、貸してくれるかな?」

「いいよ」


読書で少しずつ、トールに接近する!!
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