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記憶を思い出す

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婚約破棄を告げられクララはショックとやるせなさで朦朧としてしまい、どのように邸に戻ったのかを覚えていない。


その晩。クララは生々しい夢を見た。








☆★☆★



クララは宙に舞っていた。


空を舞うといったら、絨毯に乗るかペガサスに乗るか……だが、何か別な乗り物に乗っていた。

絨毯やペガサスよりも速い。


乗り物はひたすら海の上を飛んでいた。


(海?)


乗り物は左に傾いていた。


「このままだと飛行機は海に沈む!!」

(飛行機!?)


飛行機は今度は右に傾く。

そして、蛇行している。


「うわー」

男性の声がした。

「怖いわ」

女性が隣に座っている男性に抱きついた。


飛行機は左右にゆらゆら揺れている。


揺れは次第に酷くなってくる。


(このままじゃ死んじゃう!!)

クララは頭を抑えた。




(はっ!!)

そこで目が覚めた。


どこかで見覚えのある光景だった。

クララは思い出した。


自分は日本という国に生まれ、名前は神田まりも。

アラフォー、独身、社畜の三拍子が揃っていた。

おまけにキラキラネーム。


さらに思い出した。今の世界は生前プレーしていた『今宵は誰と睦まじく』の世界だった事を。

そして、その中のクララ・フェルトンという悪役令嬢に転生したという事を……。


飛行機は勿論墜落したのだろう。

お一人様でお気楽な海外旅行を楽しむはずだった。


婚約破棄……。

結婚は憧れだった。

しかし、出会いがなく、なかなか結婚できなかった。

婚活パーティーにも参加したし、マッチングアプリも利用した。

しかし、相手は見つからなかった。

条件が揃ったと思えば、相手から一方的に縁を切られていた。


結局、結婚に縁が無かった人生だった。


ゲームの内容はこうだった。

ヒロインは今回、ハッサンの浮気相手だったヴァネッサ。

ハッサンも攻略対象の一人。

ヴァネッサはシトゥ伯爵令嬢。


他にも、攻略対象者には運動神経が抜群な人や、ものづくりが得意な人、医者の卵や絵画が得意な人もいた。

なぜか、平民もいたっけ?


ハッサンとは所詮政略結婚。

王侯貴族は生まれながらにして婚約者がいる事が多い。

そんな事にもほとほと嫌気が差していた。


(そうよ。もう、王侯貴族なんて懲り懲りだわ!! 狙うならモブでしょう?)


今世こそは絶対に結婚するんだ!! と意気込んだ。

(結婚して家庭を持つの。平民と一緒になった方がより現実的だわ)


にゃん。

猫のリンがやってきた。


クララはリンを抱き上げた。


「リン、あのね、今度こそ私は結婚して家庭を持つ事にしたの!! そしてね、ヴァネッサと王太子殿下にギャフンと言わせてやるんだから!!」

前世は結婚できなかった。

しかも、結婚が決まったと思えば呆気なく破棄されてしまった。


結婚するの、今度こそ。
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