【完結】メイドに裏切られました。婚約破棄を受け入れたら、隣国の皇帝に溺愛されました。

hikari

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皇帝からの手紙

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まだまだ寒い冬の朝。

吐く息は白く濁ってやがて消える。

トントン。

ドアをノックする音がする。

「はい」

そこに現れたのは侍女のサラだった。

「サラ」

「ハーマイオニー様。ハイヴァランド帝国の皇帝陛下からお手紙が来ています」

「え!? 何なのだろう?」

ハーマイオニーはサラから手紙を受け取ると、つぶさにチェックした。

手紙にはこう書かれていた。


『親愛なるハーマイオニー・シモンズ様 突然のお便り、失礼します。先日の事を覚えているかな? 私だ。アーサーだ。弓騎士のきみの事は忘れない。私はきみを気に入った。もしよかったら、宮殿に来きてもらえないかな? 来月、夜会を行う事にした。 アーサー・グレン・ハイヴァランドより』



まさか……。



まさか……。




まさか……。



まさか皇帝直々に手紙が来るとは思っていなかった。

「アーサー皇帝陛下が私に」

手が震えてしまった。


「どうなさいました? ハーマイオニー様」

「サラ。私、ハイヴァランド帝国の夜会に呼ばれたわ」

「そうだったんですね」

ハイヴァランド帝国の夜会とはどんなものなのだろう?


ヴェルシム王国の夜会には参加した事が何度もあるが、ハイヴァランド帝国は大国だ。

一体どんな夜会が催されているのだろう?


「凄いですわ、ハーマイオニー様。ハイヴァランド帝国の夜会とは」

「ええ。わたくしも気になるわ」


それにしても、なぜ、アーサーはハーマイオニーのフルネームと住所を知っていたのか?

たった一度会っただけなのに、なぜそこまで調べたのだろう?


「サラ」

「どうなさいました?」

「皇帝陛下はなぜわたくしの名前を知っているのでしょう?」

「よくわかりません」


ますます怖くなってきた。


しかし、アーサーは威厳こそあるものの、暴力を振るうような怖さとは違うのだ。


「ただの王室に仕える弓騎士だというのに」

しかし、懸命に調べたのは確かだ。




(もしかして……。わたくしはアーサー皇帝陛下に気に入られたのかしら?

だとしたら、モヴァーラ帝国の侵略を受けそうな事を伝えれば、戦争を回避できるかもしれない。

アーサー皇帝陛下なら解決してくれるかもしれないわ)

ハーマイオニーは一縷の望みをアーサーに託す事にした。


「サラ、もしかしたらね」

「もしかしたら……ですか?」

「モヴァーラ帝国との戦争を回避できるかもしれないわ」


サラにはモヴァーラ帝国と戦争になりそうな事は既に伝えておいた。

もし、戦争になればジダンと共に戦地に送られるからだ。


「そうですね。戦争が回避できるなら、それに越したことはありませんわ」

ハーマイオニーは腹を決めた。
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