【完結】メイドに裏切られました。婚約破棄を受け入れたら、隣国の皇帝に溺愛されました。

hikari

文字の大きさ
上 下
3 / 13

報告

しおりを挟む
ハーマイオニーは父のジダンと母のポリーに今回のエイドリアンとの婚約破棄を報告する事にした。


勿論、政略結婚なので、勘当される事は覚悟した。


場所は応接間。

「一体何の用だ? ハーマイオニー」

「はい。お父様、お母様。わたくしはエイドリアン様と婚約破棄をしました」


「何だと!?」

ジダンは立ち上がった。

「す……すみません。わたくしが不甲斐ないばかりにこのような事態を招いてしまって」

ジダンはソファーに腰をおろした。

そして、眉毛を吊り上げた。

「で!? なぜそうなったのかい?」

「はい。実はエイドリアン様は以前シモンズ家でメイドを務めていたシェリーと密かに交際をしていたのです。わたくしもそれには驚きました。それで……一方的に婚約破棄されてしまいました」

涙が頬を伝って床にソファーに落ちる。

政略結婚とはいえ、ハーマイオニーはエイドリアンを愛していた。そして、信じていた。


「そういう事だったのか。で、シェリーはハーマイオニーとエイドリアンが婚約していたのは承知だったよな。シモンズ家に仕えていた時からも既に婚約していたのだからな」

ジダンはパイプに火をつけ、続けた。

「まあ、もっとも報酬でいとも容易く就職先を変えてしまうような人間だ。このような事があっても何らおかしくはないな」

「そうね。あの子なら、そういう事はしかねないわ」

勘当されるどころか、非難のベクトルはシェリーに向かった。


「シェリー。あいつは私の前で誓ったな。『一生涯かけてお仕え申し上げます』とな。それがあっさりとゴンザレス家に行ってしまうんだからな。呆れたもんだ」

シェリーが小賢しい人物には思えなかった。

むしろ、従属的で忠実な人物だった。

それがまさか……だった。


それに、エイドリアンもハッキリと「愛している」と言ってくれた。

二人は嘘八百を言った。


「エイドリアン様もシェリーの美味しい料理に惹かれたのかしら?」

「そうみたいです、お母様。何でもわたくしは弓しか取り柄が無いとか罵倒してきたのです。しまいにはお父様まで貶してきたので、わたくしは堪忍袋の緒が切れました」

「そう……か。私のことも貶してきたのか」

「そうです。騎士道以外に何も取り柄が無いかのように」

「それは仕方ないな。よし、わかった。今回の婚約破棄はハーマイオニーには全く非が無かったという事だな。悪いのはエイドリアンとシェリーだ。うむ。あの二人にはいつか天罰が下るだろうね。こんな事態を引き起こしておいて、ただで済むわけがない!」

「そうね。人の不幸の上に幸せを築こうとしているのだから、絶対に罰は当たるわ」


本当に罰が当たって欲しい。

そう願った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

先祖返りした私は、家族にも周りにも気味の悪い存在だと思われて生きてきましたが、自分らしく生きることにしたら運命の人に出会えました

珠宮さくら
恋愛
アデル国に生まれたラウラ・ヴェルニエは、黒髪黒目をしているということで両親や兄妹、周りから散々な扱われ方をして生きてきた。 それが、養子先となったイネス国では真逆な扱いをされることになるとは知らずに養子となって新しい家族に恥をかかせまいと奮闘するのだが、そのうち散々言われている通りに自分らしく生きることにした途端、世界が一変してより良い方向に向かうことになるとは思いもしなかった。

美人の偽聖女に真実の愛を見た王太子は、超デブス聖女と婚約破棄、今さら戻ってこいと言えずに国は滅ぶ

青の雀
恋愛
メープル国には二人の聖女候補がいるが、一人は超デブスな醜女、もう一人は見た目だけの超絶美人 世界旅行を続けていく中で、痩せて見違えるほどの美女に変身します。 デブスは本当の聖女で、美人は偽聖女 小国は栄え、大国は滅びる。

悪役令嬢の私が婚約破棄?いいでしょう。どうなるか見ていなさい!

有賀冬馬
恋愛
マリアンヌは悪役令嬢として名高い侯爵家の娘だった。 そんな彼女が婚約者のシレクサ子爵から婚約破棄を言い渡される。 しかし彼女はまったくショックを受ける様子もなく……

身分違いの恋に燃えていると婚約破棄したではありませんか。没落したから助けて欲しいなんて言わないでください。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるセリティアは、ある日婚約者である侯爵令息のランドラから婚約破棄を告げられた。 なんでも彼は、とある平民の農家の女性に恋をしているそうなのだ。 身分違いの恋に燃えているという彼に呆れながら、それが危険なことであると説明したセリティアだったが、ランドラにはそれを聞き入れてもらえず、結局婚約は破棄されることになった。 セリティアの新しい婚約は、意外な程に早く決まった。 その相手は、公爵令息であるバルギードという男だった。多少気難しい性格ではあるが、真面目で実直な彼との婚約はセリティアにとって幸福なものであり、彼女は穏やかな生活を送っていた。 そんな彼女の前に、ランドラが再び現れた。 侯爵家を継いだ彼だったが、平民と結婚したことによって、多くの敵を作り出してしまい、その結果没落してしまったそうなのだ。 ランドラは、セリティアに助けて欲しいと懇願した。しかし、散々と忠告したというのにそんなことになった彼を助ける義理は彼女にはなかった。こうしてセリティアは、ランドラの頼みを断るのだった。

婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。

国樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。 声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。 愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。 古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。 よくある感じのざまぁ物語です。 ふんわり設定。ゆるーくお読みください。

悪役令嬢は王子の溺愛を終わらせない~ヒロイン遭遇で婚約破棄されたくないので、彼と国外に脱出します~

可児 うさこ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。第二王子の婚約者として溺愛されて暮らしていたが、ヒロインが登場。第二王子はヒロインと幼なじみで、シナリオでは真っ先に攻略されてしまう。婚約破棄されて幸せを手放したくない私は、彼に言った。「ハネムーン(国外脱出)したいです」。私の願いなら何でも叶えてくれる彼は、すぐに手際を整えてくれた。幸せなハネムーンを楽しんでいると、ヒロインの影が追ってきて……※ハッピーエンドです※

私を婚約破棄に追い込んだ令嬢は、あなた以外の男性とお付き合いしてるのはご存知ですか。

十条沙良
恋愛
あなたはご存知ですか?カミラは他の男性ともお付き合いしてる事を。

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

処理中です...