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ハーマイオニーは父のジダンと母のポリーに今回のエイドリアンとの婚約破棄を報告する事にした。
勿論、政略結婚なので、勘当される事は覚悟した。
場所は応接間。
「一体何の用だ? ハーマイオニー」
「はい。お父様、お母様。わたくしはエイドリアン様と婚約破棄をしました」
「何だと!?」
ジダンは立ち上がった。
「す……すみません。わたくしが不甲斐ないばかりにこのような事態を招いてしまって」
ジダンはソファーに腰をおろした。
そして、眉毛を吊り上げた。
「で!? なぜそうなったのかい?」
「はい。実はエイドリアン様は以前シモンズ家でメイドを務めていたシェリーと密かに交際をしていたのです。わたくしもそれには驚きました。それで……一方的に婚約破棄されてしまいました」
涙が頬を伝って床にソファーに落ちる。
政略結婚とはいえ、ハーマイオニーはエイドリアンを愛していた。そして、信じていた。
「そういう事だったのか。で、シェリーはハーマイオニーとエイドリアンが婚約していたのは承知だったよな。シモンズ家に仕えていた時からも既に婚約していたのだからな」
ジダンはパイプに火をつけ、続けた。
「まあ、もっとも報酬でいとも容易く就職先を変えてしまうような人間だ。このような事があっても何らおかしくはないな」
「そうね。あの子なら、そういう事はしかねないわ」
勘当されるどころか、非難のベクトルはシェリーに向かった。
「シェリー。あいつは私の前で誓ったな。『一生涯かけてお仕え申し上げます』とな。それがあっさりとゴンザレス家に行ってしまうんだからな。呆れたもんだ」
シェリーが小賢しい人物には思えなかった。
むしろ、従属的で忠実な人物だった。
それがまさか……だった。
それに、エイドリアンもハッキリと「愛している」と言ってくれた。
二人は嘘八百を言った。
「エイドリアン様もシェリーの美味しい料理に惹かれたのかしら?」
「そうみたいです、お母様。何でもわたくしは弓しか取り柄が無いとか罵倒してきたのです。しまいにはお父様まで貶してきたので、わたくしは堪忍袋の緒が切れました」
「そう……か。私のことも貶してきたのか」
「そうです。騎士道以外に何も取り柄が無いかのように」
「それは仕方ないな。よし、わかった。今回の婚約破棄はハーマイオニーには全く非が無かったという事だな。悪いのはエイドリアンとシェリーだ。うむ。あの二人にはいつか天罰が下るだろうね。こんな事態を引き起こしておいて、ただで済むわけがない!」
「そうね。人の不幸の上に幸せを築こうとしているのだから、絶対に罰は当たるわ」
本当に罰が当たって欲しい。
そう願った。
勿論、政略結婚なので、勘当される事は覚悟した。
場所は応接間。
「一体何の用だ? ハーマイオニー」
「はい。お父様、お母様。わたくしはエイドリアン様と婚約破棄をしました」
「何だと!?」
ジダンは立ち上がった。
「す……すみません。わたくしが不甲斐ないばかりにこのような事態を招いてしまって」
ジダンはソファーに腰をおろした。
そして、眉毛を吊り上げた。
「で!? なぜそうなったのかい?」
「はい。実はエイドリアン様は以前シモンズ家でメイドを務めていたシェリーと密かに交際をしていたのです。わたくしもそれには驚きました。それで……一方的に婚約破棄されてしまいました」
涙が頬を伝って床にソファーに落ちる。
政略結婚とはいえ、ハーマイオニーはエイドリアンを愛していた。そして、信じていた。
「そういう事だったのか。で、シェリーはハーマイオニーとエイドリアンが婚約していたのは承知だったよな。シモンズ家に仕えていた時からも既に婚約していたのだからな」
ジダンはパイプに火をつけ、続けた。
「まあ、もっとも報酬でいとも容易く就職先を変えてしまうような人間だ。このような事があっても何らおかしくはないな」
「そうね。あの子なら、そういう事はしかねないわ」
勘当されるどころか、非難のベクトルはシェリーに向かった。
「シェリー。あいつは私の前で誓ったな。『一生涯かけてお仕え申し上げます』とな。それがあっさりとゴンザレス家に行ってしまうんだからな。呆れたもんだ」
シェリーが小賢しい人物には思えなかった。
むしろ、従属的で忠実な人物だった。
それがまさか……だった。
それに、エイドリアンもハッキリと「愛している」と言ってくれた。
二人は嘘八百を言った。
「エイドリアン様もシェリーの美味しい料理に惹かれたのかしら?」
「そうみたいです、お母様。何でもわたくしは弓しか取り柄が無いとか罵倒してきたのです。しまいにはお父様まで貶してきたので、わたくしは堪忍袋の緒が切れました」
「そう……か。私のことも貶してきたのか」
「そうです。騎士道以外に何も取り柄が無いかのように」
「それは仕方ないな。よし、わかった。今回の婚約破棄はハーマイオニーには全く非が無かったという事だな。悪いのはエイドリアンとシェリーだ。うむ。あの二人にはいつか天罰が下るだろうね。こんな事態を引き起こしておいて、ただで済むわけがない!」
「そうね。人の不幸の上に幸せを築こうとしているのだから、絶対に罰は当たるわ」
本当に罰が当たって欲しい。
そう願った。
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