ラブホの勇者達

ryuze

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ラブホ・トゥーザ・アナザーワールド

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山城:主人公、男28歳。未婚。身長174 cm、体重62 kg、営業マン。
麻田:山城の後輩。男25歳。未婚。身長168 cm 体重 56 kg。一般平均な身なりで黒縁眼鏡。

地方での仕事終わり、男二人が駅前で立ち往生していた。

麻「先輩まずいです、悪天候で新幹線運転見合わせみたいです」
山「この大雪ではな…、ここらで野宿したら凍え死ぬぞ」
麻「そうなんですけど、ここらへんまともに泊まれそうな場所ないですよ」
山「この際、暖がとれればどこでもいい。ネカフェとかないの?」
麻「それがなくて…、泊まるなら一般民家かラブホテルの二択です」
山「…」
山「どっちがいい?」
麻「どっちも嫌です」
山「…」
麻「…」
山「一般の方に迷惑かけるわけにはいかんしな、ラブホテルにいくぞ」
麻「…」
麻「まあ、そっちの方が確実ですかね」
山「大雪さえふらなければ…、ホテル代は意地でも経費で落とそう」
麻「そうですね」

黒いコートを着た男二人はラブホテルに到着した。

店「お二人様でご利用ですか?」
山「別々でお願いします」
店「少々お待ちください」
山「…」
麻「…」
山「(ぐっ…、沈黙がキツイな、なんでこんなことに…)」
麻「(久々にこんな冷や汗かいてるな)」
店「お待たせいたしました」
店「大変申し訳ないのですが、ただいま一部屋しか空きがありません、いかがなさいますか」
山・麻「!?」
山「…」
麻「…」
山「じゃあ、それでお願いします」
麻「!?」
山「(しょうがないだろうが…!)」
麻「(はあ…)」
山「せっかくなら、可愛い女の子の後輩と来たかったわ」
麻「同じくです、血迷って僕相手に変な事やらかさないでくださいよ」
山「するわけないだろ馬鹿が」

部屋に入ると、営業で疲れ果てた二人は寝具(バスローブ)に着替えて、即爆睡した。
そして翌日…

麻「先輩!起きてください!早く!」
山「うぅ…、あ、そこは優しく触ってください…」
麻「どんな夢みてんですか、それより大変なんですって!」
山「うぅ…、一時間延長でおねがいしますぅ…」
麻「(何をだよ…)」
山「もうちょっと下めで…、あーそこそこ」
麻「おらあああ!」

麻田の飛び膝蹴りで、山城は現実に引き戻された。

山「いい夢見てたのに邪魔すんじゃねえよ!」
麻「それはよかったですね、でも僕たちまだ夢から覚めれていないようなんです…」
山「何言ってんだ、突然。お前ポエマーかよ」
麻「百聞は一見に如かずです、外見てみてくださいよ」
山「ったく…」

山城が窓を見ると、そこに田舎の雪景色などなく、どこぞのRPGでみたような街並みが広がっていた。

山「ええ、ここどこよ」
麻「少し散策しましたが、全く別の場所みたいなんです」
山「は?俺らが寝てる間にラブホテルが移動したんか?それとも俺ら二人とも夢遊病者?」
麻「どっちでもないです」
麻「それに、町の人たちの視線が完全に不審者を見る目だったんですよ」
山「それお前の問題じゃねえか?」
麻「確かにバスローブで散策したんで、それはまずかったかもしれないです」
山「ちゃんと装備していかないとそりゃそうなるわ」
山「ほら、この漆黒の鎧(スーツ)で…ってあれ?」
麻「今頃気づいたんですか、僕らの持ち物、全部なくなってますよ」
山「うそ!?財布は!?スマホは!?あの子の連絡先は!?」
麻「全部ドブです」
山「ぁ…、ぁ………、ぁぁ……」
麻「(白目向いて泡吹いてる…、こんな先輩みたくなかった)」
麻「あの、僕の物ももちろん全部なくなってました」
麻「あるものっていったら、このバスローブと履いてるパンツですね」
麻「ぼ、冒険の始まりにしてはあんまりですね、ははは」
山「…ぁ…、ぁ……」

その後、山城は放心状態で10分くらい瞳孔ガン開きだった。

山「すまない、気を失ってしまった」
麻「無理もないです」
山「とりあえず、この変な世界から出ないといけないよな」
麻「そうですね」
山「でも、どうすりゃいいんだ?」
山「初期装備バスローブとパンツだけで、町すらまともに歩けないぞ」
麻「僕、あの町の人のゴミを見るような視線はもう浴びたくないです…」
山「うむう…」
山「…」
山「わかった…、この世界の警察署に出頭しよう」
麻「!?」
山「いいか、この世界が俺たちはただの不審者だ、勇者でも魔王でもなんでもねえ」
山「ならばやることは一つ。不審者は不審者らしく正々堂々警察にいくべしだ」
山「いわゆる大和魂ってやつだ」
麻「日本馬鹿にしないでください」
山「ともかく今は自らの足で情報収集だ」
山「困ったときは警察へ、だろう?」
麻「多分捕まる側ですが、そうかもしれませんね」

男二人は、周囲の痛い視線を浴びながら、警察署を探していた。

山「思ったより周りからの視線がキツイな」
麻「当然ですよ、ピンクのバスローブでペアルックの男二人があるいていたら」
山「いや、さっきチラッと見えたお前の白ブリーフに回りがドン引きなんだと思うぞ」
麻「なんで言うんすか…、先輩が言わなければバレなかったのに!」
山「いや、男だったら誰でもいじるだろ」
麻「なら、僕も言わせてもらいますけどね」
麻「先輩のトランクスのデザインもクソダサいですよ」
麻「なんですか、そのイチゴ柄のトランクス」
麻「僕の白ブリーフの方が全然マシですよ」
山「な、お前、いつ確認しやがった!」
麻「先輩寝相悪いから、早朝からほぼパン一だったじゃないですか」
麻「大体、僕の場合はたまたま白ブリーフの日に当たっちゃっただけで、常時そういうパンツを着脱してる先輩より、9:1の比率で僕の方がマシですよ」
山「あのな?」
山「これも好きで穿いてるわけじゃないからね」
山「これは俺が俺自身に課した試練だから」
山「社会の窓が空いてたその瞬間から一気に社会的に崖っぷちになるぞっていう自分への戒めっていうかな」
山「あえてリスクを負うことで逆に社会の窓全開というハイリスクを回避するっていう諸刃の剣だからね、これは」
麻「それハイリスクノーリータンですよね」
山「お前だって言えた身じゃないだろう!低確率で白ブリーフ丸見えなわけだから!」
山「だいたいな?俺は意識的にリスクを負っているわけだが、お前の場合は無意識のうちにリスクを負っちゃっているわけ、わかるかこの違いが」
山「意識的にやってる俺の方が何十枚も上手なんだよ」
麻「そんな戯言言ってないで、まともなパンツ一枚買って穿いてきてくれませんか」
麻「あと、この白ブリーフはたまたま他のパンツを洗濯し忘れてしょうがなく穿いてきただけで…」
山「言い訳は見苦しいぞ」
麻「ああもう、先輩がヒートアップするから人だかりできちゃったじゃないですか」
山「いやお前も同罪だろうが」
山「あーあ、現在進行形で黒歴史刻んじゃってるよ、もう脱いじゃおうかなこのパンツ」
麻「自殺行為ですよ!早まらないでください!」
山「実は一回人前でやってみたかったんだよね、それじゃあ麻田、アディオス…」
麻「やめてくれええ!」

二人が言い争っていると、そこにおっかない鎧を着た兵士がそこに現れ仲裁に入るのであった。

続く
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