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突然の春?

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「…このご令嬢について調べてきてくれ」
「分かりました」…えっ、ティラナ侯爵家のご令嬢?クリス様にもとうとう春がやってきたのか!

執務室を出て思わずガッツポーズをしそうになった。あの夜には早々に逃げ出され出会いなんてまずないと思い諦めていたのに。………
「…ティラナ侯爵家にクリス様が仰るようなご令嬢はいなかった気がするが、調べるしかないか」


なるほど、調べれば調べる程闇の深い家だ。過去には他国の王女や我が国の皇女が降嫁している格式高い家だと思っていたのだが。

しかし、これは…サーシャ様に同情なされただけなのか?


「昨日仰られたご令嬢の資料になります。…ご存知だったんですか?」
「ん?まぁ、薄々感じていただけだ」表向きは完璧な立ち振舞いをしているようですが、クリス様には筒抜けだったようです。この人はいったいどれだけ目と耳があるのか…。敵にまわすと厄介この上ないですが、誰もクリス様に敵対しようなんて思わないのでご安心を。いるとしたらそれは本当の阿保ですね。

例えば彼のような…

ティラナ侯爵はクリス様が数日で集められた証拠に有無を言わさず、陛下により断罪されました。どんどん顔が青くなっていくティラナ侯爵を見ると少し気の毒な気がしますが、自業自得なので、誰も手を差しのべることはありませんでした。


「今回の件はクリス様が主導で動かれたとのこと、いやはや素晴らしい手腕に感服いたしますな」
「ふっ、褒められても何もでないぞ」陛下は大変満更でもないようですが、少し前にサーシャ様を迎えに行かれたためクリス様はこの場にはおりません。どうやら同情だけではないようで…嬉しい発表がなされるのもそう遠くない日になりそうです。

何においても味方でありたいものです。
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