王子は新たな旅立ちへの準備がしたい

水姫

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式典

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「今は駄目です!クリス様には来月ある式典に参加していただかなくては…私たちの努力が水の泡になってしまいます!」私たちの主人であるクリス様が突然旅に出ると言い出してしまった。早急に北部問題を解決したと思ったら行動力の塊過ぎます。

クリス様は兄上である国王様を立てることを第1に考えていらっしゃるようで、幼い頃からあまり表に出ようとはされませんでした。着飾らせていただけるのは唯一自身の誕生パーティくらいです。

しかし!今回ばかりは譲れません。クリス様は私たちを大切に思ってくださっているので、情に訴えて引き留めることに成功しました。せっかくの祝いの場、クリス様が主役として目立っていただかなくては。

クリス様は基本なんでも着こなしてくださいますが、やはり主役のための衣装というのは特別なものがありまして、普段絶対身に付けていただけないような色合いやデザインを選ばせていただきました。


「…これ着るんだよね?」
「私たちが丹精込めて準備したものでございます。お髪にも合いますし、何よりクリス様の雰囲気にぴったりで…」
「もう、大丈夫だ。十分伝わった。せっかく準備してくれたものを無下にはできないし、私から見ても素晴らしい出来だと思う。有り難く着させて貰うよ」

最初は凄く嫌そうなお顔をされましたが、私たちによる圧で見事約束をしていただけました。これを着て表舞台に立つクリス様はきっと素晴らしいでしょう。こうしてはいられない。衣装が負けないようにもう少し手を加えなくては…。



「クリス、今時間いいか?」
「兄上いかがなさいましたか?」
「5日後の式典の件だが、打ち合わせをしておきたくてな」でないと私にすべて任せて逃げるだろう。滅多にない弟の晴れ舞台は盛大にしなくてはいけない。例え本人が望んでいなくても。
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