上 下
2 / 9

必死の説得

しおりを挟む
「…すまないが、もう一度頼めるか?私の聞き間違いの可能性も」
「間違ってないです兄上、私は旅に出たいと申し上げました。それで、兄上は周辺国に博学でいられるから詳しく教えていただきたくて。私はまず隣国がいいと思っているのですが…」

待て待て待て、私の弟が変なことを言い出してしまった。留学の時でさえ身を削る思いで送り出したというのに、今度は旅に出たいだと。しかも留学とは違いいつ帰ってくるかも分からないではないか。従者は何をしていたのだ。

申し訳なさそうに目を伏せる従者を視界の端にとらえ、変に行動力のある弟を止めることはできなかったのだと分かった。このまま認めるわけにもいかないし、どうするべきか…。

「すまないが、それは許可することはできない。丁度やって欲しい仕事があるのだ、それを終わらしてからまた考えてくれぬか?」
「仕事ですか?分かりました。どういった内容ですか?」本当はそんなものないのだがこうでもしないと引き留められない。さて、何を振ろうか。可愛くて賢い弟なら何でもこなしてくれるだろうが…。

そうだ!今問題の北部を解決してもらおう。あれなら少なくとも数年かかるであろうから終わった頃には気持ちも変わっているはずだ。無理難題を押し付けるようで悪いがこの際仕方ない。

「北部の件は知っているな?今だ有用な解決策は見つかっていない。それをクリスに頼みたいのだが」頼めるか?私の言葉に固まり、直ぐにぶつぶつと考えこんでしまった。

…それにしても、一瞬で事を理解し考えることができるなんてやはり私の弟は天才だな。

「それでは兄上、北部の件について解決策をまとめるため1度部屋に戻ります。一刻も早い解決を望んでいらっしゃることでしょうから精一杯頑張らせていただきますね」
「すまないが、頼んだぞ」うん、確かに早い解決に越したことはないのだが…これは他にも仕事を考えないと駄目かもしれない。
しおりを挟む

処理中です...