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うさぎなんです
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「ごめんなさい」
ある晴れた日に王宮の庭園で儚げな美少女は傲慢な侯爵令息のお誘いを断った。
「なんだ、と。子爵家のくせに我が侯爵家を…貴様何様のつもりだ!せっかく私が恩恵を授けてやろうとしているのに」身分を盾にやりたい放題してきた侯爵令息は断られたことなどなかった。身分以外に誇れるものなどない…。
「あの、実はウサギなんです」
「はっ?」
「いえ、だからウサギなんです」
「だが、耳は?いや、人間…」
自分をウサギだと言った少女はウサギの耳を出す。少女の神々しいまでの白く輝く毛並みに見たものは皆目を奪われることだろう。
「獣人!?いや、しかし、あれは伝説上の話だと…(ブツブツ)」
「ふふ、私の可愛い婚約者を困らせているのは誰だい?」
タイミングよく現れたのは少女の婚約者でこの国の王太子。とてもよい笑顔で侯爵令息を見る。
「!!殿下、いえ、これは」つい先程とは打って変わって萎縮して微かに震えている。
「レオン様、私バラしてしまいましたわ」少女は必然的に上目遣いで見る。
「はぁ、仕方ないね。この愚か者がいけないんだよね?まぁ、あと数日後には発表されることだし」裏では冷酷無慈悲、悪魔の生まれ変わりだと噂される王太子も可愛い婚約者を前にしては甘々になる。
この世界は人間が9割、獣人が1割存在する。そして獣人は人間に対して圧倒的に人数が少なく、普段は人間の姿をとっているためその姿を確認することは難しい。事実ここ数十年で伝説上の存在だと認識されていた、ただ少しの例外を除いて。そう、この国、シスリア王国の王族、またそれに連なる者たちは獣人を知っている。何故ならシスリア王国には古い言い伝えが存在するから。
その昔神様はこの世界に様々な種類の獣人をお創りになった。そして、その者らに特殊な力をお与えになったと。
しかし、これは偽りの歴史であったとシスリア王国だけが知っている。
ここからがシスリア王国にだけ伝わる話。
神様はウサギの獣人を創る際に余りの可愛さに争いが起き、ウサギの獣人が不幸になることを恐れた。神様は誰にも虐げられず、不幸になることがないようにとウサギの獣人にだけ特別な力を授けたのだ。そしてこの事は当時から神様が目を付けていた人間にだけ伝えられた。
「受け入れられるでしょうか?」
「大丈夫だよ、私がいる。それにリアは可愛いからね」
「私、頑張りますわ」
レオンの言葉にリアは顔を赤く染めながら答えた。
「仲が宜しいようで、母は嬉しいですわ」
傲慢な侯爵令息を見送ってから庭園でお茶をしていた2人のもとへ王妃がリアを愛でようとやってきた。
「お義母様!」リアは王妃に素晴らしい笑顔を向ける。
「はぅ、リアはなんて可愛いのでしょう。レオンには勿体なく思ってしまいますね。神様が心配なさったのも当然です」
「母上!」
「あらあら、落ち着きがない子は嫌われますよ」
「レオン様落ち着いてください。その、私、レオン様だから、婚約を受けたんです!」頬を赤めて言うリアにその場にいる者は皆心を奪われ、レオンはもう何度目か分からず悶えそうになる。
「まぁ、まぁ。私は邪魔者ですか?リアをもう少し愛でていたかったのですが…。仕方ありませんわね…また後で私のもとへ来てくださいな」王妃は二人の雰囲気を感じて名残惜しそうにその場を離れた。
「はい」
「リア今は私だけを見て」
「うぅ、見てますって」
「ふふ、可愛いなぁ~(チュッ)」
リアは恥ずかしさの余りウサギの耳を出して顔を隠してまう。
「リア、リ~ア。顔を見せて?リアの可愛い顔が見たい」
止まることを知らない溺愛ぶりにリアはますます赤くなる。護衛やメイドはそのリア様子を見て癒され、その雰囲気に絆されてしまう。後に分かったことだがこの日のメイドの日記にはリアがどれほど可愛く、素晴らしいかが長々と書かれていたそうだ。
その数日後にリアとレオンの正式な発表があった。そしてその数年後に王妃になったリアの姿を見た国民は皆一様に保護欲を掻き立てられ、シスリア王国が更に発展したのは言うまでもない。
「王妃様の為に」「王妃様の為なら」
レオンが退位してリアが表舞台から消え、年老いて亡くなってからもシスリア王国は栄光を極めた。また数十年、数百年後に現れる新たな命を想って……。
ある晴れた日に王宮の庭園で儚げな美少女は傲慢な侯爵令息のお誘いを断った。
「なんだ、と。子爵家のくせに我が侯爵家を…貴様何様のつもりだ!せっかく私が恩恵を授けてやろうとしているのに」身分を盾にやりたい放題してきた侯爵令息は断られたことなどなかった。身分以外に誇れるものなどない…。
「あの、実はウサギなんです」
「はっ?」
「いえ、だからウサギなんです」
「だが、耳は?いや、人間…」
自分をウサギだと言った少女はウサギの耳を出す。少女の神々しいまでの白く輝く毛並みに見たものは皆目を奪われることだろう。
「獣人!?いや、しかし、あれは伝説上の話だと…(ブツブツ)」
「ふふ、私の可愛い婚約者を困らせているのは誰だい?」
タイミングよく現れたのは少女の婚約者でこの国の王太子。とてもよい笑顔で侯爵令息を見る。
「!!殿下、いえ、これは」つい先程とは打って変わって萎縮して微かに震えている。
「レオン様、私バラしてしまいましたわ」少女は必然的に上目遣いで見る。
「はぁ、仕方ないね。この愚か者がいけないんだよね?まぁ、あと数日後には発表されることだし」裏では冷酷無慈悲、悪魔の生まれ変わりだと噂される王太子も可愛い婚約者を前にしては甘々になる。
この世界は人間が9割、獣人が1割存在する。そして獣人は人間に対して圧倒的に人数が少なく、普段は人間の姿をとっているためその姿を確認することは難しい。事実ここ数十年で伝説上の存在だと認識されていた、ただ少しの例外を除いて。そう、この国、シスリア王国の王族、またそれに連なる者たちは獣人を知っている。何故ならシスリア王国には古い言い伝えが存在するから。
その昔神様はこの世界に様々な種類の獣人をお創りになった。そして、その者らに特殊な力をお与えになったと。
しかし、これは偽りの歴史であったとシスリア王国だけが知っている。
ここからがシスリア王国にだけ伝わる話。
神様はウサギの獣人を創る際に余りの可愛さに争いが起き、ウサギの獣人が不幸になることを恐れた。神様は誰にも虐げられず、不幸になることがないようにとウサギの獣人にだけ特別な力を授けたのだ。そしてこの事は当時から神様が目を付けていた人間にだけ伝えられた。
「受け入れられるでしょうか?」
「大丈夫だよ、私がいる。それにリアは可愛いからね」
「私、頑張りますわ」
レオンの言葉にリアは顔を赤く染めながら答えた。
「仲が宜しいようで、母は嬉しいですわ」
傲慢な侯爵令息を見送ってから庭園でお茶をしていた2人のもとへ王妃がリアを愛でようとやってきた。
「お義母様!」リアは王妃に素晴らしい笑顔を向ける。
「はぅ、リアはなんて可愛いのでしょう。レオンには勿体なく思ってしまいますね。神様が心配なさったのも当然です」
「母上!」
「あらあら、落ち着きがない子は嫌われますよ」
「レオン様落ち着いてください。その、私、レオン様だから、婚約を受けたんです!」頬を赤めて言うリアにその場にいる者は皆心を奪われ、レオンはもう何度目か分からず悶えそうになる。
「まぁ、まぁ。私は邪魔者ですか?リアをもう少し愛でていたかったのですが…。仕方ありませんわね…また後で私のもとへ来てくださいな」王妃は二人の雰囲気を感じて名残惜しそうにその場を離れた。
「はい」
「リア今は私だけを見て」
「うぅ、見てますって」
「ふふ、可愛いなぁ~(チュッ)」
リアは恥ずかしさの余りウサギの耳を出して顔を隠してまう。
「リア、リ~ア。顔を見せて?リアの可愛い顔が見たい」
止まることを知らない溺愛ぶりにリアはますます赤くなる。護衛やメイドはそのリア様子を見て癒され、その雰囲気に絆されてしまう。後に分かったことだがこの日のメイドの日記にはリアがどれほど可愛く、素晴らしいかが長々と書かれていたそうだ。
その数日後にリアとレオンの正式な発表があった。そしてその数年後に王妃になったリアの姿を見た国民は皆一様に保護欲を掻き立てられ、シスリア王国が更に発展したのは言うまでもない。
「王妃様の為に」「王妃様の為なら」
レオンが退位してリアが表舞台から消え、年老いて亡くなってからもシスリア王国は栄光を極めた。また数十年、数百年後に現れる新たな命を想って……。
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