本当にそれ、鑑定ですか?

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番外編 第6話 敵襲なの

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 しばらくの間、お猫様をモフモフしていて気付いた事がある。このお猫様、まったく毛が抜けないのである。僕が胡坐をかいてその上にお猫様を乗せてモフモフを堪能したが、服や床にまったく毛が付いていなかったのです。

 スマホで調べたところ、猫って春頃から換毛期になって毛が抜けるって書いてあった。でも毛が1本も抜けないのは不思議だったのだ。やっぱりこれも神様だからなのかもしれない。



――― ピンポーン♪ ―――



 モフモフを堪能していたところ、玄関チャイムが鳴った。

『なんなのー!? 敵なのー!? にゃうーん』

 玄関チャイムの音に驚いてしまったお猫様は、座布団の下に潜り込んでしまった。でも残念ながら、頭が隠れているだけで可愛い尻尾が丸見えです。神様でも玄関チャイムには驚くんだね!

「だ、大丈夫ですよ神様。きっと母さんが来ただけです。ちょっと待ってて下さいね」

 ビビる神様を見て笑っちゃいそうになったけど、笑ったら怒られそうだから急いで玄関へ向かいます。

 ガラガラと玄関ドアを開けたら、予想通り母さんが居た。

「あ、春希くん起きてたんですね。てっきり寝てると思ってました」

「いらっしゃい、母さん。上がってよ」

 僕の母さんである黒川葉月くろかわはづきさんです。40代前半ですが、年齢の事を言うと怒られるので内緒です。身長は僕より低い150cmくらいで真っ黒な艶のあるショートカットです。今日はブラウスにカーディガン、フレアスカートを履いていた。子供の僕が言う事じゃないけど、どう見ても3児の母に見えません……。

 とりあえず母さんを客間に案内してみた。どうせ父さんと一緒に下見しているだろうし、家の案内は不要だと思います。

「わぁ、猫ちゃん!!」

『うにゃーん』

 母さんが座布団の後ろから顔だけ出して覗き込んでいるお猫様を発見し、不敬にも抱き上げてしまった。あぁ……ポッコリとしたお腹まで触ってしまっている。ふふ、母さん残念だけど、お猫様にお仕置き猫パンチされちゃうね!

 そう思って見ていたが、一向にお仕置き猫パンチが飛んでくる訳でもなく、お猫様は喉をゴロゴロと鳴らし母さんに甘えていた。

『もっとナデナデしてほしいの。ママさん上手なの』

「……解せぬ」

「可愛いー! どうしたの? この猫ちゃん」

 母さんがお猫様をモフモフしながら聞いてきた。どうやらお猫様の言葉は母さんには聞こえていないようだ。やっぱり僕だけなのか……。

「庭の祠に住み着いていたみたいで、母猫も見当たらないから保護してます」

「……祠? ふーん、お庭に迷い込んじゃったのかな? でもまあ可哀想だし、うちに連れて帰ろうかな……」

「えっ!?」

 母さんが恐ろしい事を言い出した。このお猫様を東京に連れて帰ろうと言うのか……。それはまずいぞ。東京に行ったとして、オシッコもウンチもしない猫なんて受け入れられるはずがない! 動物病院に連れて行かれ、きっと解剖されてしまう!!

「だって、春希くん一人じゃ世話なんて出来ないでしょ? 学校行ってる間とかどうするの?」

「うっ」

 母さんがいつになく真剣な表情で問い詰めて来た。うう、母さんは頑固なところがあるからな……。よし、嘘になっちゃうけど椎名さんに助けて貰おう。

「じ、実は大学の先輩と仲良くなってね、共同でお世話してくれる事になったんだよ。えっと、その人は3年生で、その、あんまり講義が無くって暇してるって言ってた!」

 ふぅ、何とか誤魔化せたはずだ。ごめんなさい椎名さん、今度お詫びに沢山買い物しますので許してください……。

「嘘ですね。春希くんが誤魔化す時、キョロキョロする癖があります。お父さんとそっくりですよ」

「ええぇ!?」

 まさか僕にそんな癖があったなんて……。しかも父さんと一緒とか、そんなところ似なくて良いのに……。

『もっと、もっとナデナデしてほしいの。ママさん好きなの……』

 ああ、僕の神様が母さんのテクニックに陥落しようとしている。まずい、どうしたら良いんだ!? もうこうなったら僕の気持ちを伝えるしかない。届け! 僕の思い!!

「と、東京になんて連れて行ったら、きっと逃げ出して車に轢かれて死んじゃうよ!? この子は僕が育てますー!」

 言ってしまった。今まで18年生きて来て、ここまで母さんに強く当たった事は無い。やばい、悲しませてしまっただろうか。

「ふふ……そんなところもお父さんにそっくりですね。分かりました、もし助けが必要になったらいつでも連絡してくださいね」

「う、うん」

 勢いで言ってしまったけど、何とかなったようだ。

『そ、そこは……らめぇ……なの~……』

 平和になった室内に、お猫様の声が響き渡った。良いよね母さんは、ニャーニャーウニャーンとしか聞こえて無いんだから……。

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