本当にそれ、鑑定ですか?

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番外編 第5話 ママさん?

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 耳元から、ニャーニャーという可愛い声がする。もう朝だろうか? 少し目を開けて見たが、辺りは暗闇に包まれていた。

『……おなか……ぺこぺこなの……』

 ふと横を向けば、可愛い茶トラの子猫がちょこんとお座りしていた。枕元に置いてある時計を見ると、0時を過ぎたくらいだった。

 寝付いたところでお猫様に起こされてしまったため、ボーっとしてしまう。だけど、次第にお猫様から向けられる視線が強くなってきた気がする。

『ミルクほしいの』

 時計から視線をお猫様に移したところ、ミルクを要求されてしまった。そうか、生まれたばかりの神様は子猫と同じように夜中もミルクが必要なのか……。あれ、大学が始まったら子猫のお世話とかどうしたら良いのだろうか……?

『早くミルクほしいの』

 そんな事を考えて居たら、お猫様が僕の顔をペロペロしてきた。ああ、猫の舌ってザラザラしているのか。まだ子猫だからか、全然痛くないぞ。このまま寝てしまいそうだ……。

『はやくするのー!』

「ぎゃー! ごめんなさい~」

 お猫様がキレちまったようです。勢い良く僕の鼻を噛んできました。あんまり痛くないけど、突然だから驚いてしまったのだ。




 ミャウミャウと鳴きながらミルクを飲むお猫様を見ていたら、眠くなってきた。新しい家に来て早々、色々な事があった。初めての一人暮らしだけど、料理は何とか出来た。豚の生姜焼きは合格点が貰える出来だったのだ。

 そうか、僕は一人暮らしじゃなくて、お猫様と一緒の生活なのか。引っ越し初日から、念願の一人暮らしは終わってしまったのだ。神様と同居始めました!

 ミルクを飲むお猫様の頭をナデナデしてみる。うん、癒される……。

『おなかいっぱいなの!』

「……良かったです」

 食後のお掃除なのか、お猫様がペロペロと毛繕いをしていた。僕は哺乳瓶を片付け、座布団を持って来てお猫様をそっと乗せた。

『寝るの!』

「はい、おやすみなさい……」

 お猫様の言葉を最後に、僕は深い眠りについたのだった……。



   ◇



 窓から入る日差しを浴び、僕は自然と目が覚めた。少し寝不足な感じだけど、起きようと思う。横を向き座布団を見れば、可愛い子猫が丸くなって寝ていた。

 お猫様を起こさないようにゆっくりと布団から出て、布団を押入れに仕舞った。だがしかし、布団を仕舞う音でお猫様を起こしてしまったようだ。

『おはようなの』

「おはようございます、神様」

 お猫様は仰向けになり、両前足が頭の上に来ていて、あざといポーズを取っている。まるでバンザイしているような格好だ。そして手をグーパーとリズムよく開いていた。もう我慢できない!!

 僕はスマホを取り出し、あざといお猫様の動画撮影を行ったのであった……。




 お猫様にミルクを上げてから自分の朝食を食べる。昨日の夕飯で残ったご飯があったので、温めて鮭フレークで食べました。ご飯を食べ終わった後、ふと疑問に思った。このお猫様、うちに来てからトイレ行ってないような……。もしかしてどこかでオシッコとかしちゃったのだろうか!?

「あの……神様。ちょっと良いですか?」

『んにゃ?』

 毛繕いしているところに話しかけたからだろうか、後ろ脚をピーンと上に上げてお腹の方をペロペロしている状態でこちらを見て来た。可愛い……。

「その……オシッコとかウンチはどこでしているのでしょうか?」

『神様はオシッコもウンチもしないの』

「……」

 さも当たり前のような回答に、僕は固まってしまった。お猫様は何事も無かったかのように毛繕いを再開してしまった。あれ、それだったらもしかしてミルクじゃなくても良いのだろうか?

「あのあの、神様。もう一つ良いでしょうか?」

『んにゃ?』

 また脚をピーンと上げた状態でこちらを向いてくれた。その体勢、辛くないですか?

「もしかして神様は、普通の子猫と違う食べ物を召し上がっても良いのでしょうか……?」

『…………ミルクより美味しいものが……あるの?』

 お猫様の顔が、まさにフレーメン反応を起こした猫のような驚愕した表情になってしまいました。急いでスマホのカメラアプリを起動し、お猫様の写真をゲットしました!

「多分ですけど、ミルクより美味しい物は沢山あると思います。ちゅる~んとか。……えっと、ミルクじゃなければ夜中とか神様がお腹を空かせた時に、お一人でも召し上がれるお供えが出来ればいいな~と。食べてはいけない物とかありますか?」

『……嘘なの。ミルクより美味しい物なんて存在するはずがないの! でも、チャレンジしてみようかな……なの。神様に食べられない物はないの!! 美味しいものだったら何でも食べられるの!!!』

 不安と期待の入り混じった感じでソワソワしているお猫様に、今日のお昼ご飯は猫缶を買ってみようと思ったのだった……。


 そうだ、言っておかないといけない事があったのだ。自分の尻尾にじゃれつくお猫様の邪魔するのは悪いと思ったが、ビックリさせてしまうかもしれないからね。

「今日ですけど、もう少ししたら僕の母さんが来るんです。大丈夫でしょうか?」

『ママさんなの? よゆーよゆーなの』

 お猫様は興味がないようで、自分の尻尾にじゃれつくのを再開してしまった……。

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