本当にそれ、鑑定ですか?

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第45話 もしかして、お仕置き中ですか?

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 ハードな顔合わせだったけど無事に終わる事が出来ました。そろそろお暇しようかなって思ったけど、そういう訳にも行かなかった。

「せっかくですからお夕飯を食べて行って下さい。日向さんも薫さんに会いたがっていましたよ?」

「わ、分りました」

 ラスボスからは逃げられないってどこかで聞いたことがあるけど、本当でした。しょうがないから美味しい料理をご馳走になろう。その前に愛する奥様へ連絡しておかないといけません。

 ちょっと席を外してスマホをポチポチして電話を掛けます。もう夕方だから葉月ちゃんお家に居るかな?

『もしもし?』

「あ、葉月ちゃんこんばんは。もうお家ついた?」

『はい、いまお母さんと夕飯作ってます。今日は手作りハンバーグですから楽しみにしてて下さいね!』

 うぅ、先制攻撃を食らってしまった。この場合、何て答えたら良いのだろうか? この状況、実家で見たことあるぞ。夕飯が出来上がってから、飲み会で夕飯要らないって親父が電話してきて母さんがキレてたやつだ……。親父の教訓を活かせるか!?

「ご、ごめん葉月ちゃん。紫苑さんから夕飯食べて行けって言われちゃって、その……今日はお家で夕飯食べれそうにないです……」

『そうですか……。早く帰って来て下さいね?』

「はい!」

 僕は親父と同じでヘタレでした。次からは紫苑さんの夕食のお誘いは断ろう! 出来るかな……?





 その後は紫苑さんと雑談しながら時間を過ごし、食堂に案内された。前回と同じ煌びやかな食堂です。いつもここで夕飯を食べているのだろうか?

 紫苑さんが僕の対面に座って雑談をしていると、入口から楓さんと兄貴が入って来た。楓さんは落ち着いた感じのセーターにスカートという普通の恰好だが、何故か兄貴はコスプレしていた。銀髪の長いポニーテールに黒いフリフリがいっぱい付いたドレスを着ている。ドレスのスカートが短く、白いニーソックスだ……。僕には何のコスプレなのか分からないけど、良いのだろうか?

「兄貴久しぶり、元気だった?」

「や、やぁカオル、元気だよ?」

 何故疑問形なのだろうか。しかも何故かもじもじとしている。トイレでも我慢しているのだろうか?

「楓さんもこんばんは。いつも兄貴がお世話になってます」

「こんばんは中野さん、ヒナタちゃんのお世話は任せて下さい」

 ……まさか本当にお世話していると返事が返って来るなんて思わなかった。やっぱり楓さんはどこかぶっ飛んでいる気がする。楓さんは美人秘書さんと話が出来たのだろうか?

「それじゃあ夕食を頂きましょうか」

 紫苑さんの一言でお手伝いさんがぞろぞろと入って来た。そしてテーブルの上には中華料理の乗った大皿がたくさん置かれていった。玉子がコーティングされ黄金色に輝くチャーハン、灼熱のマグマのような麻婆豆腐、天使の羽が生えた餃子など、見ただけで美味しいと分かる料理の数々が並んでいる。

 料理を運んでくれたお手伝いさんは撤収して、飲み物などを配膳してくれるお手伝いさんが2人残りました。このお屋敷にはいったい何人の従業員が居るのだろうか……。

「さあ好きなだけ食べて頂戴ね。薫さんはビールでいいかしら?」

「はい、いただきます」

 ビールなんて一人暮らしの時は絶対に飲めなかったな。主に金銭的な問題で。ここ最近は毎晩のように何かしらお酒を頂いています。ダメ人間になってしまいそうだ。

 美味しい料理とお酒を頂きながら、兄貴のここ最近のお話を聞きます。

「兄貴は最近はどんな事しているの?」

「うぇっ!? さ、最近は何もしてないというかさせてくれないというか……そんな感じ……だよ?」

 どういう事だろう? 言っている意味が分からない。兄貴はオロオロしながら隣に座る楓さんの方をチラチラと様子を伺い、楓さんはすまし顔で麻婆豆腐を食べている。あれすごく辛そうだけど顔色一つ変えてないぞ……。やたらとモジモジしている兄貴が気になる。

「ふーん、つまりニートか。正月はどうするの? 実家帰るの?」

「えぇ!? ど、どうしよう……」

 兄貴はさっきからずっと楓さんに視線を送っているが、無視されている。もしかして喧嘩しているのだろうか?

「お正月はヒナタちゃんと一緒にお義父様とお義母様に新年のご挨拶へ行きます。この家での行事もありますので、遅くなるかもしれませんが」

「そうねぇ。うちもお正月は親戚とかたくさん集まるからね」

 それを聞いた兄貴は顔が真っ青になっている。そりゃそうだ。この家に集まる親戚とかが兄貴を見ても、『誰だこいつ?』って思われるだろう。

「大丈夫ですよヒナタちゃん。お正月はお部屋でゆっくりしてて構いませんから」

「ホッ……」

 兄貴の顔色が少し戻った。僕がこの家に住んだら生きた心地がしないような気がする。でもずっとモジモジしている兄貴はちょっと面白かった。

 兄貴はこの家でどんな生活をしているのだろうか? まあ趣味のコスプレはさせて貰っているから問題ないのかな?

「そういえばカオル、本当に結婚するの?」

「うん。葉月ちゃんが卒業したら結婚するよ」

「良いですね中野さんは。私も早く結婚したいです。お母様、ヒナタちゃんと結婚させて下さい」

「まだダメよ、お姉ちゃんが結婚してからね」

 どうやら兄貴の結婚はまだ先のようだ。兄貴が結婚するとしたら修二と玲子さんが結婚してからになるのか……。あの二人はいつ結婚するのだろうか?




 時間も進み、良い感じに盛り上がってきたので楓さんに聞いちゃおうかな!

「そういえば楓さん、優香さんからお話聞いた?」

「ええ、優香お姉さまとは上手く行きそうです。あの人って私よりもすごいんですよ? まさに私の師匠です!」

 楓さんが目をキラキラとさせながら喜んでいる。つまり『ヒナタちゃん共有ハッピーエンド【妾だっていいじゃない! 幸せだもの】』ルートに突入したって事か……。美人秘書さん、お幸せに!

「僕は来週から優香さんとお仕事する事になったから、優香さんのメンタルが良い方向になるのなら僕も嬉しいよ」

「か、カオルは何の話をしているの? カエデちゃんがこんなに喜んでるとボク怖いんだけど……」

「ふふ、ヒナタちゃんは何も気にしないで良いんですよ……今夜は眠れないかもしれませんが……」

 ダメだ、楓さんの顔が蕩けてる。きっと今夜、兄貴は大変な事になってしまうのだろう……、頑張って下さい。

 そうして楽しい夕食を頂き、僕は一人東京へ帰るのだった……。



   ◇◇



 最寄り駅まで車で送って貰い、そこから電車で帰って来た。もうすぐ夜の8時だけど、街はサラリーマンで賑わっていた。サラリーマンを遠くに見ながら、速足で自宅へ向かう。一人で歩いていると寂しくて、早く葉月ちゃんに会いたくなってくるのだ。とりあえずもう少しで家に着くって連絡しておこうかな。

 少し息を切らせながら歩き、やっとマンションに着いた。僕の愛する彼女が待っている、早く帰ろう……。はやる気持ちを抑え、エレベーターに乗り込む。僕も家族の一員として認められ、カードキーを渡されたのである。

 エレベーターが止まり、玄関まで走った。一秒でも早く葉月ちゃんに会いたかった。鍵を開けて玄関ドアを開けると、メイド服の葉月ちゃんが待っていた!

「た、だたいま……」

「ふふ……お帰りなさいませ旦那様♪」

 天使が居た! 僕の天使が待っててくれた! いつものエッチなメイド服だけど、髪型がツインテールになってて可愛すぎる。僕は急いで靴を脱いで、葉月ちゃんを抱きしめてしまった。

「葉月ちゃんに会いたかったんだ。寂しかった」

「もう、しょうがないですね旦那様は」

 葉月ちゃんもギュッと抱きしめてくれた。葉月ちゃんの甘い香りが、一日の疲れを吹き飛ばしてくれる。もうずっとこのままで居たい……。

「まずは手洗いうがいしてきてください。話はそれからですよ」

「うん……」

 僕は葉月ちゃんに背中を押され、洗面所へ連れていかれた。そして手洗いうがいが終わったら、もう一度抱き合ってキスをした。今日の僕はいつもより積極的かもしれない。

「ん……今日の旦那様はお酒の匂いがします。いっぱい飲んだんですか?」

「紫苑さんに勧められてビールをちょっとね。ごめんね葉月ちゃん、夕飯一緒に食べれなくて……」

「ふふ……大丈夫ですよ。さぁリビングへ行きましょう」

 葉月ちゃんが先に行ってしまった。僕は葉月ちゃんの後ろ姿を見ながら追いかけた。揺れるツインテール、フワフワと揺れる短いスカートとニーソックスに目を奪われた。このまま背後から抱きしめてイチャイチャしたい……。

 リビングにはお義母さんだけが居て、葉月ちゃんはキッチンに行ってしまった。

「ただいまです。遅くなってすみませんでした」

「良いのよ~お仕事ですもの。さぁご飯食べましょうか。お母さんお腹がペコペコよ」

「えっ!? まだ食べて無かったんですか?」

「そうよ~。葉月ちゃんが手作りハンバーグを薫くんに食べて貰うんだって張り切っちゃって。お腹いっぱいかもしれないけど、食べてあげてくれる?」

 葉月ちゃんが作ってくれた手作りハンバーグ、これを食べないでどうするというのだ! 僕のお腹は膨れているけど、食べない訳にいかないな。

 どうやら今からハンバーグを焼くようだ。少し時間あるから自室で筋トレして少しでも消化しておこう! 僕は腕立て伏せ、腹筋、スクワットと、慣れない筋トレをやって少しでも消化するように頑張った!

 手や足、腹筋がピクピクしてきた頃、良い匂いがしてきた。そろそろ戻ってお手伝いしよう。リビングに向かうと良い匂いが広がった。食欲をそそる、肉の焼けた匂いだ。お箸やお皿など、少しだけどお手伝いしました。

「じゃあ旦那様、私が初めて作ったハンバーグです。食べて下さい!」

「葉月ちゃんが作ったハンバーグ……良い焼き具合で肉汁が溢れて美味しいそうだね! いただきます!」

 ハンバーグを口に入れた瞬間、肉汁が口全体に溢れて来た。僕のお腹はほぼ満腹なのに、いくらでも食べられそうだ。それくらいにおいしい!

「ど、どうですか旦那様……?」

 葉月ちゃんがちょっと不安そうに聞いてきた。初めての料理で不安なのかもしれない。早く安心させてあげないと!

「今まで食べたハンバーグの中で一番美味しいよ。最高です!」

「良かった……」

「あらあら、良かったわね葉月ちゃん。本当にこのハンバーグ美味しいわよ~」

 紫苑さんのお宅で食べた料理も美味しかったけど、やっぱり僕はこの人達と食べる料理の方が美味しいと思う。単純に味とかの差ではなく、この家族で食べる食事が最高に幸せなのだ。

 もし次に遅くなることがあっても、出来るだけ家で食べよう。この人達との時間を多く取りたいと強く思った。

 そして何よりも、この眩しい笑顔のお嫁さんと一緒に居たいと思ったんだ。
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