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第31話 親戚になりますか?
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玲子さんのお家はトイレも綺麗でした。やっぱりお金持ちのお家は凄いんだね。それに比べて僕のボロアパートは酷いよね。あんな家に葉月ちゃんを呼んで良いのだろうか?
客間に戻る途中に気が付いたけど、廊下も広くて床がピカピカで、所々に絵が飾ってあったりしてビックリしました。美術の心得なんてないので、上手な絵だなって感想しかありませんけどね!
こんなお金持ちのお嬢様とうちの兄貴が付き合って良いのかな。冷静になって考えてみたら、いくら紫苑さんがオカルト好きだからと言って娘と結婚までさせようと思うのだろうか? 僕だったら絶対に有り得ないね。変な宗教とかと疑っちゃうよ。何かあるのかもしれない。あとで聞いてみようと思う。
色々と考えながら、トイレからゆっくりと時間を掛けて客間に戻って来た。
パッと見たところ恵子さんは居なくなっていて、代わりに違うメイドさんが控えていました。テーブルでは女性3人が楽しそうに会話してます。あぁ、帰りたい。せめて修二も連れて来れば良かった……。
親戚の家に一人で来ちゃった感じかな? すごく心細いです。
「あらお帰りなさい薫さん」
「すみません、席を外してました」
玲子さんがニコッと笑ってくれました。何だろう、嫌な予感がする。
「ちょっと早いですけど、お夕飯を用意しますので葉月ちゃんと食べて行って下さいね。私も夜は東京に戻るので、帰りは車で家まで送りますわ」
「先輩良かったですね、お夕飯が楽しみです」
「うふふ、とっておきのステーキを用意しますわ。あと赤ワインも飲み頃なようですので、是非楽しんで行って下さいね」
「あ、はい……ありがとうございます」
もう逃げ場は無かった。葉月ちゃんはすごく楽しそうだ。僕も気にせずに楽しもうかな!
「そういえば先輩、賭けは私の勝ちですね!」
「そういう事になるのかな? まあ葉月ちゃんと夕飯食べるくらい、いつでも大丈夫だよ」
「ふふ……ありがとうございます。じゃあ今度予定決めて夕飯食べましょうね!」
葉月ちゃんと夕飯を食べることが決定しました。別に賭けの報酬じゃなくても良いけど、何かあるのかな……。あれか、お高いお店か!!
「何ですの二人して、賭けなんてしていましたの?」
「私も気になるわ、薫さん教えて下さい」
うっ! 何故だろう、紫苑さんにお願いされると断れない。やっぱりスキルなのか?
言いたくないのにスラスラと口から言葉が出てしまった。
「えっと、今日の僕の運勢が『お世話になったお手伝いさんを調べると良い事があるかも♪』って内容でした。良く分からなかったので葉月ちゃんに相談したら、葉月ちゃんがそれは『メイドさんにエッチな検査をする』って事だと言いだして、絶対に違うって言ったんですけど、その結果を賭けていたんです」
「ふ~ん、結果的にメイドさんにエッチな検査したようなものね。あんな結果なんですもの」
うう……紫苑さんの言う通りエッチな検査と言っても変じゃないよね。名探偵葉月ちゃんが正しかったのか……。
もうここまで来たら開き直って色々と聞いちゃおう!
「そういえば紫苑さんは最初から僕の占いの事を疑問に思わなかったって聞きましたけど、何か理由とかあるんですか?」
思い切って聞いちゃいました。やっぱしさ、オカルト好きで片付けるには無理だよね。今日呼ばれたのだって、きっと僕の鑑定を確かめるためなんだと思う。それにいつもの玲子さんと違って強引だった気がするんだよね。必ず紫苑さんのところへ僕を連れて行くっていう意気込みを感じたのです。
「うふふ……薫さんは良く分かってらっしゃるのね。そうですわね、丁度良いですから最初から説明しましょうか」
そう言って紫苑さんは部屋に残されたメイドさんを部屋から追い出した。部屋には僕たち4人だけになっちゃいました。
「天王寺家というのはかなり古い歴史を持っているのですが、代々当主にのみ伝えられている事がありますの。もちろん玲子ちゃんも知らないし、うちの旦那も知らないわ」
「……えっと、そんな大事な話を聞いて良いのでしょうか?」
「ええ大丈夫よ。玲子ちゃんは次期当主だし、薫さんは当事者、葉月ちゃんは薫さんの奥さんになるのでしょう?」
「はい、先輩と結婚します!!」
もう結婚するのは決定なのか……。別に嫌じゃないよ?
僕が当事者っていう事は、この鑑定能力に関係があるのかも。
「今では国のあらゆる分野で先頭に立っている天王寺グループですが、皆さんはご存じかしら? 例えば……」
紫苑さんから出てくる会社の名前は良く聞いたことがある有名な会社ばかりです。みんな首を縦に振っているけど、僕はポカーンと口を開けるのが精一杯です。
そういえば天王寺グループって聞いたことがあったかも。大きな病院があったり、総合商社があったり、広告代理店もあった気がする。他にもあった気がするけど、グループ会社だったのか。
え、玲子さんって単なるお嬢様じゃなくて、超エリートなお嬢様なの? そんな超大企業の総裁と一緒にご飯食べるの? やばい、知らなければ良かった……。
「その天王寺グループですが、創始者である天王寺久美子が一代で築き上げた会社です」
すごい。久美子さんがどんな人なのか知らないけど、日本の発展に大きく貢献した凄い人なんだな……。
「その天王寺久美子は、薫さんと同じ特別な目を持っていたそうです。身内の中では天眼と呼ばれていましたが、聞いた限りでは物や人物など色々な情報が読み取れたそうです」
「……ええぇぇ」
「本当ですの!?」
「先輩と一緒です!!」
まさかの僕と同じ体験をした人が居たなんて思ってもみなかった。つまり久美子さんは鑑定を使ってうまく成り上がったという事なのか……。
「天王寺久美子の場合、薫さんのような今日の運勢が占えたという記録は無いのですが、物の価値が値段で表示されたり、使用用途が細かく書いてあったりしたそうです」
「僕は物の鑑定をしても大した情報は得られないですね。例えばこの珈琲カップを鑑定すると……」
僕は目の前にある珈琲カップを注視し、鑑定を行ってみた。
【珈琲カップ】
うーん、濃い青が綺麗な高級そうなやつだね!
きっと高いから、割っちゃだめだよ?
やっぱり僕の鑑定だと、物の鑑定はイマイチな感じがする。久美子さんの鑑定だと、このカップは何十万円です! とか表示されたのだろうか。
物によっては使い方とか応用が表示されるのかな。例えば科学や化学、医療とか、このチート能力があれば答えが表示されるようなものだもんね。そりゃ発展もするか……。
珈琲カップの内容を紙に書いてみんなに見せた。
「……これって先輩の感想ですか?」
「ふふ、葉月ちゃんの言う通りですわ。薫さんの感想を書いてもしょうがないですわよ」
「あの……これがいつも玲子さんが信仰している神様のお言葉ですよ?」
「……神様にも得手不得手はありますのね!」
やっぱり久美子さんの鑑定と僕の鑑定はちょっと違う物のようだ。久美子さんがどうだったか分からないけど、僕の鑑定は使用回数もあるし、どっちかと言うと占いや人物鑑定に特化している気がする。
久美子さんが会社を大きくして成り上がった経緯を聞くと、使用回数なんて無かったんじゃないかと思う。それこそ漫画やラノベのような鑑定能力のような気がするね。
どっちの鑑定が欲しかったかと言われたらもちろん僕の鑑定だ。だって、この鑑定が無かったら僕の周りの大切な人を助けることが出来なかった。何より、葉月ちゃんとも恋人になれていなかったかもしれない。
確かに漫画やラノベのような鑑定能力に憧れるかもしれないけど、平凡な僕が使いこなせる訳がない。高価なものを見つけて換金して、そのうち悪い人に捕まって悪用されてお終いな気がする。そういう意味では、久美子さんが凄い人だったという事が良く分かった。
「どうやら玲子さんのご先祖様の天眼と僕の鑑定は、ちょっと別物のようですね」
「そうかもしれません。ですが天王寺家の家訓として、『天眼の持ち主とは可能な限り強い縁を結ぶように』と残されています。本当は楓が薫さんと夫婦になってくれれば良かったんですけどね」
「……先輩は私と結婚するので楓さんにはあげません!」
「うふふ……安心して下さい葉月ちゃん。占いのお導きで楓は薫さんのお兄様と縁が出来ました。きっとうまく行くでしょう。なので葉月ちゃん、今後は私たちも親戚同士です。仲良くしましょうね」
いつの間にか葉月ちゃんと紫苑さんが握手をしていた。
僕の知らない間に兄貴も結婚する事になってるし、大丈夫なのだろうか?
つまりこのまま行くと玲子さんとも親戚になるのか……? 修二とも親戚か!?
もう考えるのをやめよう。まず第一に兄貴が楓さんと上手く行くとも限らないし!
「最後に一つだけ。玲子ちゃんも含めてですけど、薫さんの目の事は絶対に漏らしてはいけませんよ? 玲子ちゃんは修二君に強く言っておいて頂戴ね」
やっぱり紫苑さんがラスボスだったね。この人の命令には逆らえそうにないです。でもそんなラスボスがバックに居てくれるだけで安心する。ラスボスが仲間になった!!
「奥様、ご夕食の用意が出来ました」
ドアがノックされ、メイドさんからお呼びが掛かりましたので移動だそうです。テーブルマナーとか全然知らないけど大丈夫だろうか……?
◇
豪華な食堂に移動すると、そこには兄貴と楓さんが並んで座っていた。なんでいるの?
まさにイメージは中世ヨーロッパ貴族の豪華な食堂です。立派な長いテーブルに装飾の施された背の高い椅子、そして天井からシャンデリアが輝き部屋を煌びやかに演出している。
そんなところに女装した兄貴がちんまりと座っているのは、違和感しか感じない。なんで女装なのだろうか……。
今日の兄貴のファッションは、金髪のロングツインテールに白と黒のロリータ服を着ている。楓さんと髪色が一緒だから、遠くから見たら姉妹のように見える。楓さんも同じようなロリータファッションです。すごく新鮮で良いと思います!
「あ、カ、カオル~!」
「ダメですよヒナタちゃん、お行儀よく座ってましょうね」
部屋に入って来た僕を見つけたからか、悲痛な声を上げた兄貴がこっちに来ようとしたが、手を楓さんに捕まれてしまっていた。
確か今朝から楓さんは埼玉にある僕の実家に行って、兄貴と会ってくるって話じゃなかったっけ? 埼玉から兄貴を連れて来たのか……。楓さんの行動力はすごいなぁ。まさか兄貴も会った当日に彼女の実家に拉致されるなんて思ってもみなかっただろうね。しかもこんな豪邸に。
僕たちも席に案内され、僕の隣に葉月ちゃん、その隣に玲子さんが座った。一見硬そうに見えた椅子だけど、包み込むような柔らかさで最高です!
僕の対面に兄貴が、その隣に楓さん、紫苑さんと並んでいます。僕はもう慣れたけど、兄貴はほとんど知らない人で目がキョロキョロしてて面白い。
「まあ! 貴方が薫さんのお兄様なのね、可愛いわ~」
「は、初めまして中野日向です……」
紫苑さんの兄貴に対する第一印象はクリアできたのかな? 女装してる男だけど良いのだろうか……。
そこから軽く自己紹介を行い、各々が会話を楽しんでいる。
そして豪華な夕食が始まった。
まずは前菜とスープが運ばれてきた。前菜は瑞々しいサラダです。色鮮やかな野菜が綺麗で、サッパリとしたドレッシングが美味しい。
スープはコーンスープで、初デートの時に飲んだコーンスープがインスタントだったんじゃないかと思うくらいに美味しかった。
僕は葉月ちゃんと一緒に料理の感想を言い合ってを楽しんでいるが、対面の兄貴はと言えば、さっきからチラチラとこっちに視線を向けて助けを求めている。
何故なら、兄貴は紫苑さんから根掘り葉掘り個人情報を引き出されているからである。
「日向さんは卒業してからのご就職先は決まっているのかしら?」
「い、いえ、まだ就職活動中で内定もありません……」
彼女の家に連れてこられたら超大企業の社長面接だもんね。僕だったら泣いて逃げ出しちゃうかもしれない。
「どんな就職先を希望しているの?」
「え、えっとぉ、人事とか総務とか……そう言った縁の下の力持ち的なお仕事がしたい……です」
兄貴も文系だけど、営業とかは向いてなさそうだもんね。
「……そうですね、天王寺総合医療センターで事務員が不足していると聞いていますので、そこで働いて貰いましょう。ここから近いですから、楓ちゃんもそれでいいわね?」
「……えっ」
「はいお母さま。ヒナタちゃんは私が支えます」
「うふふ、しっかりとサポートするのですよ」
兄貴が口を開けて放心している。
あれぇ? いつの間にか兄貴の就職先が決まっちゃいました。しかもこの家に住み込みで通うような感じがするよ?
グループのトップが採用したら、もう決定だよね……。
「良かったですね先輩。お兄様の就職先が決まりました!」
「うん、きっとうちの母も安心してると思う」
「カ、カオル助けて~!」
葉月ちゃんも祝福してくれたし、きっと実家の両親も喜んでくれるだろう。
両親からしたら、就職先も探さないで家でゴロゴロして女装イベントに参加する長男が、超大企業に就職が決まったのだ。めでたい!!
「もうヒナタちゃん、お食事中に大声を出してはいけませんよ? 調教が必要かしら?」
「ひぃ!」
どうやら既に兄貴と楓さんの間には、上下関係が出来上がっているような気がする。今日一日で一体なにがあったのだろうか?
そういえば兄貴を鑑定した事なかったし、やってみようかな。
アタフタしている兄貴を視界に収め、鑑定してみた。兄貴は必死にウインクして何かの合図を送って来ているけど、知りませーん! 調教されてる兄貴を想像しながら鑑定してみた!
【中野日向】
埼玉の私立大学に通う4年生。既に卒業の単位を取得済みだが、就職活動で挫折し女装コスプレを楽しんでいる。
その日、彼に転機が訪れた。
朝から鳴る玄関チャイムを不審に思いつつも出てみると、金の髪が美しい天使が立っていた。
彼女は家に上がり込むと両親に挨拶、そして結婚を前提にお付き合いしている事を暴露した。そしてこれから千葉の実家へ行き、両親に挨拶を行うと言ってしまったのだ。
困惑する両親だが、天王寺グループのネームバリューは凄かった。
掌返しで笑顔で送り出す両親を見て、彼は出荷される牛のような気分になっていた。
千葉へ行く途中に女装道具一式を買った彼女を見て、彼はただただ付いていくだけで精一杯だった。
でも彼は思った。グイグイと引っ張ってくれる彼女も良いかなって、美人だし。
彼はボーっとしながら手を引かれ、気が付いたらラブホテルに連れ込まれていた。初めてのラブホテルに困惑するが、女装コスプレをさせられた。
なるほど、着替えるためにラブホテルに来たのかと思ったその時、彼はベッドに四肢を縛り付けられてしまったのだ。
困惑する彼に彼女は言った。「いっぱい甘やかしてあげますからね♡」と……。
そこから彼の天国が始まった。
動けない体全体にキスをする彼女。
終いには目隠しまでされ、甘い囁きを聞きながら全身を溶かされていく。
彼が達しそうになる度、彼女のコントロールによりお預けされ、彼は泣きながら懇願した。
そして彼女は甘く囁きこう言った。「ヒナタちゃんはもっと我慢出来ます。我慢したら最後は気持ちいいですよ♡」……と。
どれくらいの時間が経っただろうか。
手足の自由を奪われ、視界も塞がれた彼には、耳から伝わる彼女の甘い声と、初めて味わる未知の快楽に戸惑っていた。そして彼は、もう彼女の事しか考えられなくなっていたのだ。
涙も枯れ果て、体中の体液が無くなったと感じた瞬間、彼の下半身が感じた事の無い優しさに包まれた。
そして彼は天国へ旅立った。
気が付いた時には膝枕をされ、綺麗な胸と慈悲深い聖母のような笑顔を浮かべる彼女を見た。
そして彼は、身も心も彼女に支配されてしまったのだった……。
従順になった彼は、千葉の家に来るまでずっと彼女に手を引かれていた。
食堂に案内されて来るカオルの顔を見た瞬間、我に返った彼は叫んだ。
「あ、カ、カオル~!」と……。
これから先、彼に待ち受ける調教という名の愛がどういったものなのか、まだ誰も知らない。
※今日の運勢※
玄関のチャイムが鳴ったら強制的に楓ルート突入です! 諦めて下さい♪
「……」
いや、長すぎない? 今までこんなに長い説明文無かったよね? しかも気になってた内容を全部説明してくれたし……。
これもレベルアップが関係しているのだろうか。今日は何度目の鑑定か忘れたが、頭痛や眩暈が全くない。
内容から察するに、兄貴は童貞を卒業してしまったのか……。でもよく見ると、あの愛読書の内容と一緒な気がする。兄貴も満更じゃなさそうだし、お幸せに!! 僕は高級な赤ワインを片手に、こっそりと兄貴を祝福した。
「この赤ワイン、すごく香りが良くて美味しいですね」
「気に入って頂けてうれしいわ。遠慮なくどうぞ」
普段ワインなんて飲まない僕だけど、この赤ワインはすごく美味い。口にワインを含んだ瞬間、フルーティーな香りが爆発した。
メインのステーキもすごく美味しい。ナイフを入れた瞬間、スッと溶けるように切れて、口に運ぶと肉が溶けて無くなった。今まで食べて来たステーキは何だったのだろう。このお肉を食べてしまったら、もう他の肉が食べられなくなるのかもしれない。
料理を堪能していたが、さすがにそろそろ兄貴も構ってあげないとダメかな……?
「兄貴良かったね。毎日美味しいご飯が食べられるよ」
「う、うん。嬉しいけど……ボクこれからどうなっちゃうんだろう……」
兄貴が不安そうな目で僕を見つめてくる。いや、僕に言われてもどうしようもないし……。
よく見たら兄貴の首回りに赤いところがたくさんあるぞ……。あれってキスマークか!
「ヒナタちゃんは今日からここで私とお勉強です。大学を卒業するまで、みっちりと天王寺家の作法を教えてあげますからね。……あと、夜はいっぱい可愛がってあげます♡……」
「う、うん……」
楓さんの最後の言葉は聞こえなかったけど、兄貴が顔を真っ赤にしていることから、エッチな内容だったのだろう。兄貴が羨ましいと思ってしまった。
僕が羨ましそうな顔をしていたからだろうか。僕の耳元で葉月ちゃんが囁いてきた。
「……私たちもいっぱいエッチしましょうね」
「う、うん……」
そうだった。僕にはこんな可愛い彼女がいるんだった。僕には勿体ないほどの彼女が。うん、大事にしよう。
葉月ちゃんとコッソリとイチャイチャしていたところ、紫苑さんがご機嫌な感じで聞いてきた。
「そうだわ葉月ちゃん、ご両親は薫さんとのお付き合いについて何か言ってるのかしら?」
「う~ん、お母さんは特に反対してないですけど、お父さんはイマイチです。騙されてるんだろとか、先輩の事を悪く言ってました」
いや、葉月ちゃんのお父さんの気持ち良く分かるからあんまり責めないであげてよ。だって付き合って1ヶ月くらいしか経ってないのに、同棲だ結婚だって騒いでる娘を心配するのは普通だと思います。
「そうなのね……。私が後押しをしておいてあげるわ」
「ありがとうございます! 良かったですね先輩」
「……そうだね」
僕は何て答えて良いのか分からず、引き攣った笑みを浮かべて曖昧な返事をするのが精一杯だった。
葉月ちゃんのお父さんにラスボスの魔の手が迫る!
その後、色々と雑談をしたりしながら、夜の7時前に夕食会は終了した。
玄関から外に出ると、黒塗りの高級車が待機していた。これから兄貴を残し、玲子さんと葉月ちゃんの3人で東京へ帰るのである。
「薫さん、葉月ちゃん、また何時でも遊びに来てくださいね」
「ご馳走様でした。また機会がありましたらお願いします。あと、うちの兄貴を宜しくお願いします」
「お夕飯美味しかったです、ご馳走様でした。父にもシオンちゃんの事を伝えておきますね!」
遠くで放心した兄貴の顔が見える。大丈夫だよ兄貴、楓さんが幸せにしてくれるから……。
「さあ早く戻りますわよ。修二さんが浮気してないか心配ですもの」
修二の浮気か……、無いと思うけどなぁ。あ、玲子さんにとってはエロ本とかも浮気だったっけ……。
今日も濃い一日だった。たまには何もない平和な一日を過ごしたいです。
そうして僕たちは、千葉の天王寺家を後にして東京に戻ったのであった。
◇おまけの葉月ちゃんパパの受難◇
最近は会社の売上も好調で全て上手く行っていた。休日も対応しなければならない日々が続いていたが、嬉しい事に今日は久しぶりに家でゆっくりする事が出来た。
だがしかし、娘は彼氏とデートに行ってしまったらしく、ママと二人寂しく夕飯を食べていた。
思えば葉月が小さい頃から、家族3人で夕食を食べる事が私の幸せだったと思う。それなのに、あの薫とかいう男は何なのだ。葉月と付き合って1ヶ月でプロポーズだと!? 許せん!!
「パパ顔が怖くなってるわよ~」
「そ、そうかな?」
「どうせ葉月ちゃんの事を考えてたんでしょ~。もう葉月ちゃんも良い年なんだから、子離れしないとダメよ~」
「で、でもまだ葉月は18だし、あの薫とか言う男もどんな奴なのか分かったもんじゃないだろ!?」
「もう、大きな声出さないの! 葉月ちゃんから聞いてる限り、良さそうな男の子だけどね~」
「す、すまん……」
そうなのである。あの男がどんな奴なのか、サッパリ分からないからムカムカするのだ。今度、例の喫茶店に偵察に行ってみるか……。
そんな事を考えていたら、急にスマホの着信音が聞こえて来た。はぁ、まさかトラブルか? せっかくの休日に仕事はしたくない……。
「パパ、電話鳴ってるわよ。出ないでいいの?」
「きっとトラブルだ。出たくないが、そうも言ってられないな……」
重い腰を上げ、スマホの着信画面を覗き込んでみたが、全く知らない番号だった。私の個人番号を知っている人なんて限られている。ましてや登録してない人物など思い浮かばなかった。
でも何故か、この電話には絶対に出ないといけない予感がした。震える指先で受話ボタンを押し、話しかけてみた。
「もしもし……」
『あら、お久しぶりです。紫苑ですわ』
相手の声を聞いた瞬間、背筋がピンッと伸びて自然とお辞儀をしていた。
「ご無沙汰しております天王寺様。本日はどうなされましたか?」
『うふふ、そんなに畏まらなくてもいいわよ。私と黒川さんの仲じゃない~』
「い、いえ、そう言う訳にも……」
どうしたと言うのだろうか。あの天王寺紫苑様から直接電話が掛かってくるなんて信じられない。でもこの声は本物だ。声を聞いただけで震え上がるこのお方こそ経済界の女帝、忘れる訳がない。
『今日はね、お宅の葉月ちゃんと素敵な夕食会をしたのよ~。楽しかったわ』
「う、うちの葉月ですか!?」
何故天王寺様から葉月の名前が出てくるのだ? 葉月は薫とか言う奴とデートだろう? さっぱりわからん……。
『そうなのよ。薫くんと一緒に遊びに来てくれたの。あ、そうそう、私と黒川さんね、もしかしたら親戚になるかもしれないのよね~』
「し、親戚ですか!?」
ど、どういう事だ? 何故私と天王寺様が親戚になるのだ?
『あら、だって薫くんと葉月ちゃん結婚するかもしれないんでしょう? 薫くんのお兄さんがうちの次女の楓と結婚する予定なのよ。知らなかったの?』
「……は?」
寝耳に水である。葉月と薫とやらの話はまだ分かる。喫茶店で仲良くなった経緯があるからだ。しかし薫とやらの兄と天王寺家の次女が結婚だと? 大ニュースじゃないか! 葉月の話を聞いた限り、薫とやらの家はごく一般的な庶民だ。そんな家柄の男があの天王寺家の次女と結婚が可能なのか……?
『そういう事だから、明日うちにいらっしゃい。一緒に将来のお話をしましょうね、楽しみにしてるわ。あぁそれと、私は薫くんと葉月ちゃんを気に入ってるから変なちょっかい出しちゃダメよ? じゃあまた明日、待ってるわ』
一方的に電話を切られてしまった。どういう事だ、訳が分からない。俺は夢を見ているのか?
「パパ大丈夫? どうしたの?」
スマホを見ても通話履歴が残っている。夢じゃないのか……。
「葉月は今日、どこに行ったか聞いているか?」
「ん~確か薫くんと一緒に千葉のお友達の実家に遊びに行くって言ってたわね。もうそろそろ帰ってくるんじゃないかしら?」
「今の電話の相手が天王寺紫苑様だった……。聞いたところによると葉月は天王寺紫苑様と一緒に夕食を食べたそうだ」
「えぇ!? あの天王寺紫苑様と!?」
「しかも葉月が薫とやらと結婚した場合、親戚になるから宜しくと言われた。あと、明日呼び出された。一緒に将来の話をしようと……」
「ど、どういう事なのかしら……」
どうしたら良いんだ。今まで生きて来た中で、ここまでの窮地に立たされた事は無い。俺の手の届かないところで何が起こっているんだ……。
「ただいま~」
しばらく途方に暮れていたところ、玄関から葉月の声が聞こえて来た!
「あれ、二人とも立ったままどうしたんですか?」
言われて気が付いたが、ママと二人して立ったままフラフラと彷徨っていたようだ。落ち着こう。深呼吸をして席に着いた。
「葉月ちゃん、良かったら今日の出来事とか教えてくれる?」
「いいですよ」
ママ、ナイス!! まずは話を聞こう。
「今日は先輩と一緒に、千葉にある玲子さんの実家に遊びに行きました」
「玲子さんって誰かしら? お母さん初めて聞いたわ~」
「そうでしたっけ? 先輩のお友達で天王寺玲子さんと言います。すごく綺麗な人ですよ!」
ここでまさかの天王寺玲子様が出て来た! 天王寺家の長女で次期当主と言われている才女だ。
「すごい豪邸にお邪魔して、紅茶とケーキを頂いてシオンちゃんとお喋りしてました」
「……ブハッ!」
「もう! お父さん汚いです!!」
し、シオンちゃんだと!? そんな畏れ多い事を言ったのか?
「葉月ちゃん、その後はどうしたの?」
「えっと、お夕飯をご馳走になりました。すごく美味しい料理でした! あ、あと……」
「まだ何かあるのか!?」
聞いているだけのつもりが話しかけてしまった。本当に夕飯をご馳走になっていたなんて……。
「あー、先輩のお兄様と会いましたよ。可愛い方でした。玲子さんの実家で楓さんと同棲するっぽいですね」
「ほ、本当だったのか……」
「あ、あとお父さんに宜しく伝えて欲しいって言われました。お父さんはシオンちゃんと会ったことあったんですね。世界は狭いですね~」
あぁ……明日は仕事キャンセルして千葉に行くしかないな……。
「ママ、明日一緒に行ってくれる?」
「もう、しょうがないですねパパは」
そうして私は、千葉へ行く事が決定してしまった。
恨むぞ薫とやら!!
客間に戻る途中に気が付いたけど、廊下も広くて床がピカピカで、所々に絵が飾ってあったりしてビックリしました。美術の心得なんてないので、上手な絵だなって感想しかありませんけどね!
こんなお金持ちのお嬢様とうちの兄貴が付き合って良いのかな。冷静になって考えてみたら、いくら紫苑さんがオカルト好きだからと言って娘と結婚までさせようと思うのだろうか? 僕だったら絶対に有り得ないね。変な宗教とかと疑っちゃうよ。何かあるのかもしれない。あとで聞いてみようと思う。
色々と考えながら、トイレからゆっくりと時間を掛けて客間に戻って来た。
パッと見たところ恵子さんは居なくなっていて、代わりに違うメイドさんが控えていました。テーブルでは女性3人が楽しそうに会話してます。あぁ、帰りたい。せめて修二も連れて来れば良かった……。
親戚の家に一人で来ちゃった感じかな? すごく心細いです。
「あらお帰りなさい薫さん」
「すみません、席を外してました」
玲子さんがニコッと笑ってくれました。何だろう、嫌な予感がする。
「ちょっと早いですけど、お夕飯を用意しますので葉月ちゃんと食べて行って下さいね。私も夜は東京に戻るので、帰りは車で家まで送りますわ」
「先輩良かったですね、お夕飯が楽しみです」
「うふふ、とっておきのステーキを用意しますわ。あと赤ワインも飲み頃なようですので、是非楽しんで行って下さいね」
「あ、はい……ありがとうございます」
もう逃げ場は無かった。葉月ちゃんはすごく楽しそうだ。僕も気にせずに楽しもうかな!
「そういえば先輩、賭けは私の勝ちですね!」
「そういう事になるのかな? まあ葉月ちゃんと夕飯食べるくらい、いつでも大丈夫だよ」
「ふふ……ありがとうございます。じゃあ今度予定決めて夕飯食べましょうね!」
葉月ちゃんと夕飯を食べることが決定しました。別に賭けの報酬じゃなくても良いけど、何かあるのかな……。あれか、お高いお店か!!
「何ですの二人して、賭けなんてしていましたの?」
「私も気になるわ、薫さん教えて下さい」
うっ! 何故だろう、紫苑さんにお願いされると断れない。やっぱりスキルなのか?
言いたくないのにスラスラと口から言葉が出てしまった。
「えっと、今日の僕の運勢が『お世話になったお手伝いさんを調べると良い事があるかも♪』って内容でした。良く分からなかったので葉月ちゃんに相談したら、葉月ちゃんがそれは『メイドさんにエッチな検査をする』って事だと言いだして、絶対に違うって言ったんですけど、その結果を賭けていたんです」
「ふ~ん、結果的にメイドさんにエッチな検査したようなものね。あんな結果なんですもの」
うう……紫苑さんの言う通りエッチな検査と言っても変じゃないよね。名探偵葉月ちゃんが正しかったのか……。
もうここまで来たら開き直って色々と聞いちゃおう!
「そういえば紫苑さんは最初から僕の占いの事を疑問に思わなかったって聞きましたけど、何か理由とかあるんですか?」
思い切って聞いちゃいました。やっぱしさ、オカルト好きで片付けるには無理だよね。今日呼ばれたのだって、きっと僕の鑑定を確かめるためなんだと思う。それにいつもの玲子さんと違って強引だった気がするんだよね。必ず紫苑さんのところへ僕を連れて行くっていう意気込みを感じたのです。
「うふふ……薫さんは良く分かってらっしゃるのね。そうですわね、丁度良いですから最初から説明しましょうか」
そう言って紫苑さんは部屋に残されたメイドさんを部屋から追い出した。部屋には僕たち4人だけになっちゃいました。
「天王寺家というのはかなり古い歴史を持っているのですが、代々当主にのみ伝えられている事がありますの。もちろん玲子ちゃんも知らないし、うちの旦那も知らないわ」
「……えっと、そんな大事な話を聞いて良いのでしょうか?」
「ええ大丈夫よ。玲子ちゃんは次期当主だし、薫さんは当事者、葉月ちゃんは薫さんの奥さんになるのでしょう?」
「はい、先輩と結婚します!!」
もう結婚するのは決定なのか……。別に嫌じゃないよ?
僕が当事者っていう事は、この鑑定能力に関係があるのかも。
「今では国のあらゆる分野で先頭に立っている天王寺グループですが、皆さんはご存じかしら? 例えば……」
紫苑さんから出てくる会社の名前は良く聞いたことがある有名な会社ばかりです。みんな首を縦に振っているけど、僕はポカーンと口を開けるのが精一杯です。
そういえば天王寺グループって聞いたことがあったかも。大きな病院があったり、総合商社があったり、広告代理店もあった気がする。他にもあった気がするけど、グループ会社だったのか。
え、玲子さんって単なるお嬢様じゃなくて、超エリートなお嬢様なの? そんな超大企業の総裁と一緒にご飯食べるの? やばい、知らなければ良かった……。
「その天王寺グループですが、創始者である天王寺久美子が一代で築き上げた会社です」
すごい。久美子さんがどんな人なのか知らないけど、日本の発展に大きく貢献した凄い人なんだな……。
「その天王寺久美子は、薫さんと同じ特別な目を持っていたそうです。身内の中では天眼と呼ばれていましたが、聞いた限りでは物や人物など色々な情報が読み取れたそうです」
「……ええぇぇ」
「本当ですの!?」
「先輩と一緒です!!」
まさかの僕と同じ体験をした人が居たなんて思ってもみなかった。つまり久美子さんは鑑定を使ってうまく成り上がったという事なのか……。
「天王寺久美子の場合、薫さんのような今日の運勢が占えたという記録は無いのですが、物の価値が値段で表示されたり、使用用途が細かく書いてあったりしたそうです」
「僕は物の鑑定をしても大した情報は得られないですね。例えばこの珈琲カップを鑑定すると……」
僕は目の前にある珈琲カップを注視し、鑑定を行ってみた。
【珈琲カップ】
うーん、濃い青が綺麗な高級そうなやつだね!
きっと高いから、割っちゃだめだよ?
やっぱり僕の鑑定だと、物の鑑定はイマイチな感じがする。久美子さんの鑑定だと、このカップは何十万円です! とか表示されたのだろうか。
物によっては使い方とか応用が表示されるのかな。例えば科学や化学、医療とか、このチート能力があれば答えが表示されるようなものだもんね。そりゃ発展もするか……。
珈琲カップの内容を紙に書いてみんなに見せた。
「……これって先輩の感想ですか?」
「ふふ、葉月ちゃんの言う通りですわ。薫さんの感想を書いてもしょうがないですわよ」
「あの……これがいつも玲子さんが信仰している神様のお言葉ですよ?」
「……神様にも得手不得手はありますのね!」
やっぱり久美子さんの鑑定と僕の鑑定はちょっと違う物のようだ。久美子さんがどうだったか分からないけど、僕の鑑定は使用回数もあるし、どっちかと言うと占いや人物鑑定に特化している気がする。
久美子さんが会社を大きくして成り上がった経緯を聞くと、使用回数なんて無かったんじゃないかと思う。それこそ漫画やラノベのような鑑定能力のような気がするね。
どっちの鑑定が欲しかったかと言われたらもちろん僕の鑑定だ。だって、この鑑定が無かったら僕の周りの大切な人を助けることが出来なかった。何より、葉月ちゃんとも恋人になれていなかったかもしれない。
確かに漫画やラノベのような鑑定能力に憧れるかもしれないけど、平凡な僕が使いこなせる訳がない。高価なものを見つけて換金して、そのうち悪い人に捕まって悪用されてお終いな気がする。そういう意味では、久美子さんが凄い人だったという事が良く分かった。
「どうやら玲子さんのご先祖様の天眼と僕の鑑定は、ちょっと別物のようですね」
「そうかもしれません。ですが天王寺家の家訓として、『天眼の持ち主とは可能な限り強い縁を結ぶように』と残されています。本当は楓が薫さんと夫婦になってくれれば良かったんですけどね」
「……先輩は私と結婚するので楓さんにはあげません!」
「うふふ……安心して下さい葉月ちゃん。占いのお導きで楓は薫さんのお兄様と縁が出来ました。きっとうまく行くでしょう。なので葉月ちゃん、今後は私たちも親戚同士です。仲良くしましょうね」
いつの間にか葉月ちゃんと紫苑さんが握手をしていた。
僕の知らない間に兄貴も結婚する事になってるし、大丈夫なのだろうか?
つまりこのまま行くと玲子さんとも親戚になるのか……? 修二とも親戚か!?
もう考えるのをやめよう。まず第一に兄貴が楓さんと上手く行くとも限らないし!
「最後に一つだけ。玲子ちゃんも含めてですけど、薫さんの目の事は絶対に漏らしてはいけませんよ? 玲子ちゃんは修二君に強く言っておいて頂戴ね」
やっぱり紫苑さんがラスボスだったね。この人の命令には逆らえそうにないです。でもそんなラスボスがバックに居てくれるだけで安心する。ラスボスが仲間になった!!
「奥様、ご夕食の用意が出来ました」
ドアがノックされ、メイドさんからお呼びが掛かりましたので移動だそうです。テーブルマナーとか全然知らないけど大丈夫だろうか……?
◇
豪華な食堂に移動すると、そこには兄貴と楓さんが並んで座っていた。なんでいるの?
まさにイメージは中世ヨーロッパ貴族の豪華な食堂です。立派な長いテーブルに装飾の施された背の高い椅子、そして天井からシャンデリアが輝き部屋を煌びやかに演出している。
そんなところに女装した兄貴がちんまりと座っているのは、違和感しか感じない。なんで女装なのだろうか……。
今日の兄貴のファッションは、金髪のロングツインテールに白と黒のロリータ服を着ている。楓さんと髪色が一緒だから、遠くから見たら姉妹のように見える。楓さんも同じようなロリータファッションです。すごく新鮮で良いと思います!
「あ、カ、カオル~!」
「ダメですよヒナタちゃん、お行儀よく座ってましょうね」
部屋に入って来た僕を見つけたからか、悲痛な声を上げた兄貴がこっちに来ようとしたが、手を楓さんに捕まれてしまっていた。
確か今朝から楓さんは埼玉にある僕の実家に行って、兄貴と会ってくるって話じゃなかったっけ? 埼玉から兄貴を連れて来たのか……。楓さんの行動力はすごいなぁ。まさか兄貴も会った当日に彼女の実家に拉致されるなんて思ってもみなかっただろうね。しかもこんな豪邸に。
僕たちも席に案内され、僕の隣に葉月ちゃん、その隣に玲子さんが座った。一見硬そうに見えた椅子だけど、包み込むような柔らかさで最高です!
僕の対面に兄貴が、その隣に楓さん、紫苑さんと並んでいます。僕はもう慣れたけど、兄貴はほとんど知らない人で目がキョロキョロしてて面白い。
「まあ! 貴方が薫さんのお兄様なのね、可愛いわ~」
「は、初めまして中野日向です……」
紫苑さんの兄貴に対する第一印象はクリアできたのかな? 女装してる男だけど良いのだろうか……。
そこから軽く自己紹介を行い、各々が会話を楽しんでいる。
そして豪華な夕食が始まった。
まずは前菜とスープが運ばれてきた。前菜は瑞々しいサラダです。色鮮やかな野菜が綺麗で、サッパリとしたドレッシングが美味しい。
スープはコーンスープで、初デートの時に飲んだコーンスープがインスタントだったんじゃないかと思うくらいに美味しかった。
僕は葉月ちゃんと一緒に料理の感想を言い合ってを楽しんでいるが、対面の兄貴はと言えば、さっきからチラチラとこっちに視線を向けて助けを求めている。
何故なら、兄貴は紫苑さんから根掘り葉掘り個人情報を引き出されているからである。
「日向さんは卒業してからのご就職先は決まっているのかしら?」
「い、いえ、まだ就職活動中で内定もありません……」
彼女の家に連れてこられたら超大企業の社長面接だもんね。僕だったら泣いて逃げ出しちゃうかもしれない。
「どんな就職先を希望しているの?」
「え、えっとぉ、人事とか総務とか……そう言った縁の下の力持ち的なお仕事がしたい……です」
兄貴も文系だけど、営業とかは向いてなさそうだもんね。
「……そうですね、天王寺総合医療センターで事務員が不足していると聞いていますので、そこで働いて貰いましょう。ここから近いですから、楓ちゃんもそれでいいわね?」
「……えっ」
「はいお母さま。ヒナタちゃんは私が支えます」
「うふふ、しっかりとサポートするのですよ」
兄貴が口を開けて放心している。
あれぇ? いつの間にか兄貴の就職先が決まっちゃいました。しかもこの家に住み込みで通うような感じがするよ?
グループのトップが採用したら、もう決定だよね……。
「良かったですね先輩。お兄様の就職先が決まりました!」
「うん、きっとうちの母も安心してると思う」
「カ、カオル助けて~!」
葉月ちゃんも祝福してくれたし、きっと実家の両親も喜んでくれるだろう。
両親からしたら、就職先も探さないで家でゴロゴロして女装イベントに参加する長男が、超大企業に就職が決まったのだ。めでたい!!
「もうヒナタちゃん、お食事中に大声を出してはいけませんよ? 調教が必要かしら?」
「ひぃ!」
どうやら既に兄貴と楓さんの間には、上下関係が出来上がっているような気がする。今日一日で一体なにがあったのだろうか?
そういえば兄貴を鑑定した事なかったし、やってみようかな。
アタフタしている兄貴を視界に収め、鑑定してみた。兄貴は必死にウインクして何かの合図を送って来ているけど、知りませーん! 調教されてる兄貴を想像しながら鑑定してみた!
【中野日向】
埼玉の私立大学に通う4年生。既に卒業の単位を取得済みだが、就職活動で挫折し女装コスプレを楽しんでいる。
その日、彼に転機が訪れた。
朝から鳴る玄関チャイムを不審に思いつつも出てみると、金の髪が美しい天使が立っていた。
彼女は家に上がり込むと両親に挨拶、そして結婚を前提にお付き合いしている事を暴露した。そしてこれから千葉の実家へ行き、両親に挨拶を行うと言ってしまったのだ。
困惑する両親だが、天王寺グループのネームバリューは凄かった。
掌返しで笑顔で送り出す両親を見て、彼は出荷される牛のような気分になっていた。
千葉へ行く途中に女装道具一式を買った彼女を見て、彼はただただ付いていくだけで精一杯だった。
でも彼は思った。グイグイと引っ張ってくれる彼女も良いかなって、美人だし。
彼はボーっとしながら手を引かれ、気が付いたらラブホテルに連れ込まれていた。初めてのラブホテルに困惑するが、女装コスプレをさせられた。
なるほど、着替えるためにラブホテルに来たのかと思ったその時、彼はベッドに四肢を縛り付けられてしまったのだ。
困惑する彼に彼女は言った。「いっぱい甘やかしてあげますからね♡」と……。
そこから彼の天国が始まった。
動けない体全体にキスをする彼女。
終いには目隠しまでされ、甘い囁きを聞きながら全身を溶かされていく。
彼が達しそうになる度、彼女のコントロールによりお預けされ、彼は泣きながら懇願した。
そして彼女は甘く囁きこう言った。「ヒナタちゃんはもっと我慢出来ます。我慢したら最後は気持ちいいですよ♡」……と。
どれくらいの時間が経っただろうか。
手足の自由を奪われ、視界も塞がれた彼には、耳から伝わる彼女の甘い声と、初めて味わる未知の快楽に戸惑っていた。そして彼は、もう彼女の事しか考えられなくなっていたのだ。
涙も枯れ果て、体中の体液が無くなったと感じた瞬間、彼の下半身が感じた事の無い優しさに包まれた。
そして彼は天国へ旅立った。
気が付いた時には膝枕をされ、綺麗な胸と慈悲深い聖母のような笑顔を浮かべる彼女を見た。
そして彼は、身も心も彼女に支配されてしまったのだった……。
従順になった彼は、千葉の家に来るまでずっと彼女に手を引かれていた。
食堂に案内されて来るカオルの顔を見た瞬間、我に返った彼は叫んだ。
「あ、カ、カオル~!」と……。
これから先、彼に待ち受ける調教という名の愛がどういったものなのか、まだ誰も知らない。
※今日の運勢※
玄関のチャイムが鳴ったら強制的に楓ルート突入です! 諦めて下さい♪
「……」
いや、長すぎない? 今までこんなに長い説明文無かったよね? しかも気になってた内容を全部説明してくれたし……。
これもレベルアップが関係しているのだろうか。今日は何度目の鑑定か忘れたが、頭痛や眩暈が全くない。
内容から察するに、兄貴は童貞を卒業してしまったのか……。でもよく見ると、あの愛読書の内容と一緒な気がする。兄貴も満更じゃなさそうだし、お幸せに!! 僕は高級な赤ワインを片手に、こっそりと兄貴を祝福した。
「この赤ワイン、すごく香りが良くて美味しいですね」
「気に入って頂けてうれしいわ。遠慮なくどうぞ」
普段ワインなんて飲まない僕だけど、この赤ワインはすごく美味い。口にワインを含んだ瞬間、フルーティーな香りが爆発した。
メインのステーキもすごく美味しい。ナイフを入れた瞬間、スッと溶けるように切れて、口に運ぶと肉が溶けて無くなった。今まで食べて来たステーキは何だったのだろう。このお肉を食べてしまったら、もう他の肉が食べられなくなるのかもしれない。
料理を堪能していたが、さすがにそろそろ兄貴も構ってあげないとダメかな……?
「兄貴良かったね。毎日美味しいご飯が食べられるよ」
「う、うん。嬉しいけど……ボクこれからどうなっちゃうんだろう……」
兄貴が不安そうな目で僕を見つめてくる。いや、僕に言われてもどうしようもないし……。
よく見たら兄貴の首回りに赤いところがたくさんあるぞ……。あれってキスマークか!
「ヒナタちゃんは今日からここで私とお勉強です。大学を卒業するまで、みっちりと天王寺家の作法を教えてあげますからね。……あと、夜はいっぱい可愛がってあげます♡……」
「う、うん……」
楓さんの最後の言葉は聞こえなかったけど、兄貴が顔を真っ赤にしていることから、エッチな内容だったのだろう。兄貴が羨ましいと思ってしまった。
僕が羨ましそうな顔をしていたからだろうか。僕の耳元で葉月ちゃんが囁いてきた。
「……私たちもいっぱいエッチしましょうね」
「う、うん……」
そうだった。僕にはこんな可愛い彼女がいるんだった。僕には勿体ないほどの彼女が。うん、大事にしよう。
葉月ちゃんとコッソリとイチャイチャしていたところ、紫苑さんがご機嫌な感じで聞いてきた。
「そうだわ葉月ちゃん、ご両親は薫さんとのお付き合いについて何か言ってるのかしら?」
「う~ん、お母さんは特に反対してないですけど、お父さんはイマイチです。騙されてるんだろとか、先輩の事を悪く言ってました」
いや、葉月ちゃんのお父さんの気持ち良く分かるからあんまり責めないであげてよ。だって付き合って1ヶ月くらいしか経ってないのに、同棲だ結婚だって騒いでる娘を心配するのは普通だと思います。
「そうなのね……。私が後押しをしておいてあげるわ」
「ありがとうございます! 良かったですね先輩」
「……そうだね」
僕は何て答えて良いのか分からず、引き攣った笑みを浮かべて曖昧な返事をするのが精一杯だった。
葉月ちゃんのお父さんにラスボスの魔の手が迫る!
その後、色々と雑談をしたりしながら、夜の7時前に夕食会は終了した。
玄関から外に出ると、黒塗りの高級車が待機していた。これから兄貴を残し、玲子さんと葉月ちゃんの3人で東京へ帰るのである。
「薫さん、葉月ちゃん、また何時でも遊びに来てくださいね」
「ご馳走様でした。また機会がありましたらお願いします。あと、うちの兄貴を宜しくお願いします」
「お夕飯美味しかったです、ご馳走様でした。父にもシオンちゃんの事を伝えておきますね!」
遠くで放心した兄貴の顔が見える。大丈夫だよ兄貴、楓さんが幸せにしてくれるから……。
「さあ早く戻りますわよ。修二さんが浮気してないか心配ですもの」
修二の浮気か……、無いと思うけどなぁ。あ、玲子さんにとってはエロ本とかも浮気だったっけ……。
今日も濃い一日だった。たまには何もない平和な一日を過ごしたいです。
そうして僕たちは、千葉の天王寺家を後にして東京に戻ったのであった。
◇おまけの葉月ちゃんパパの受難◇
最近は会社の売上も好調で全て上手く行っていた。休日も対応しなければならない日々が続いていたが、嬉しい事に今日は久しぶりに家でゆっくりする事が出来た。
だがしかし、娘は彼氏とデートに行ってしまったらしく、ママと二人寂しく夕飯を食べていた。
思えば葉月が小さい頃から、家族3人で夕食を食べる事が私の幸せだったと思う。それなのに、あの薫とかいう男は何なのだ。葉月と付き合って1ヶ月でプロポーズだと!? 許せん!!
「パパ顔が怖くなってるわよ~」
「そ、そうかな?」
「どうせ葉月ちゃんの事を考えてたんでしょ~。もう葉月ちゃんも良い年なんだから、子離れしないとダメよ~」
「で、でもまだ葉月は18だし、あの薫とか言う男もどんな奴なのか分かったもんじゃないだろ!?」
「もう、大きな声出さないの! 葉月ちゃんから聞いてる限り、良さそうな男の子だけどね~」
「す、すまん……」
そうなのである。あの男がどんな奴なのか、サッパリ分からないからムカムカするのだ。今度、例の喫茶店に偵察に行ってみるか……。
そんな事を考えていたら、急にスマホの着信音が聞こえて来た。はぁ、まさかトラブルか? せっかくの休日に仕事はしたくない……。
「パパ、電話鳴ってるわよ。出ないでいいの?」
「きっとトラブルだ。出たくないが、そうも言ってられないな……」
重い腰を上げ、スマホの着信画面を覗き込んでみたが、全く知らない番号だった。私の個人番号を知っている人なんて限られている。ましてや登録してない人物など思い浮かばなかった。
でも何故か、この電話には絶対に出ないといけない予感がした。震える指先で受話ボタンを押し、話しかけてみた。
「もしもし……」
『あら、お久しぶりです。紫苑ですわ』
相手の声を聞いた瞬間、背筋がピンッと伸びて自然とお辞儀をしていた。
「ご無沙汰しております天王寺様。本日はどうなされましたか?」
『うふふ、そんなに畏まらなくてもいいわよ。私と黒川さんの仲じゃない~』
「い、いえ、そう言う訳にも……」
どうしたと言うのだろうか。あの天王寺紫苑様から直接電話が掛かってくるなんて信じられない。でもこの声は本物だ。声を聞いただけで震え上がるこのお方こそ経済界の女帝、忘れる訳がない。
『今日はね、お宅の葉月ちゃんと素敵な夕食会をしたのよ~。楽しかったわ』
「う、うちの葉月ですか!?」
何故天王寺様から葉月の名前が出てくるのだ? 葉月は薫とか言う奴とデートだろう? さっぱりわからん……。
『そうなのよ。薫くんと一緒に遊びに来てくれたの。あ、そうそう、私と黒川さんね、もしかしたら親戚になるかもしれないのよね~』
「し、親戚ですか!?」
ど、どういう事だ? 何故私と天王寺様が親戚になるのだ?
『あら、だって薫くんと葉月ちゃん結婚するかもしれないんでしょう? 薫くんのお兄さんがうちの次女の楓と結婚する予定なのよ。知らなかったの?』
「……は?」
寝耳に水である。葉月と薫とやらの話はまだ分かる。喫茶店で仲良くなった経緯があるからだ。しかし薫とやらの兄と天王寺家の次女が結婚だと? 大ニュースじゃないか! 葉月の話を聞いた限り、薫とやらの家はごく一般的な庶民だ。そんな家柄の男があの天王寺家の次女と結婚が可能なのか……?
『そういう事だから、明日うちにいらっしゃい。一緒に将来のお話をしましょうね、楽しみにしてるわ。あぁそれと、私は薫くんと葉月ちゃんを気に入ってるから変なちょっかい出しちゃダメよ? じゃあまた明日、待ってるわ』
一方的に電話を切られてしまった。どういう事だ、訳が分からない。俺は夢を見ているのか?
「パパ大丈夫? どうしたの?」
スマホを見ても通話履歴が残っている。夢じゃないのか……。
「葉月は今日、どこに行ったか聞いているか?」
「ん~確か薫くんと一緒に千葉のお友達の実家に遊びに行くって言ってたわね。もうそろそろ帰ってくるんじゃないかしら?」
「今の電話の相手が天王寺紫苑様だった……。聞いたところによると葉月は天王寺紫苑様と一緒に夕食を食べたそうだ」
「えぇ!? あの天王寺紫苑様と!?」
「しかも葉月が薫とやらと結婚した場合、親戚になるから宜しくと言われた。あと、明日呼び出された。一緒に将来の話をしようと……」
「ど、どういう事なのかしら……」
どうしたら良いんだ。今まで生きて来た中で、ここまでの窮地に立たされた事は無い。俺の手の届かないところで何が起こっているんだ……。
「ただいま~」
しばらく途方に暮れていたところ、玄関から葉月の声が聞こえて来た!
「あれ、二人とも立ったままどうしたんですか?」
言われて気が付いたが、ママと二人して立ったままフラフラと彷徨っていたようだ。落ち着こう。深呼吸をして席に着いた。
「葉月ちゃん、良かったら今日の出来事とか教えてくれる?」
「いいですよ」
ママ、ナイス!! まずは話を聞こう。
「今日は先輩と一緒に、千葉にある玲子さんの実家に遊びに行きました」
「玲子さんって誰かしら? お母さん初めて聞いたわ~」
「そうでしたっけ? 先輩のお友達で天王寺玲子さんと言います。すごく綺麗な人ですよ!」
ここでまさかの天王寺玲子様が出て来た! 天王寺家の長女で次期当主と言われている才女だ。
「すごい豪邸にお邪魔して、紅茶とケーキを頂いてシオンちゃんとお喋りしてました」
「……ブハッ!」
「もう! お父さん汚いです!!」
し、シオンちゃんだと!? そんな畏れ多い事を言ったのか?
「葉月ちゃん、その後はどうしたの?」
「えっと、お夕飯をご馳走になりました。すごく美味しい料理でした! あ、あと……」
「まだ何かあるのか!?」
聞いているだけのつもりが話しかけてしまった。本当に夕飯をご馳走になっていたなんて……。
「あー、先輩のお兄様と会いましたよ。可愛い方でした。玲子さんの実家で楓さんと同棲するっぽいですね」
「ほ、本当だったのか……」
「あ、あとお父さんに宜しく伝えて欲しいって言われました。お父さんはシオンちゃんと会ったことあったんですね。世界は狭いですね~」
あぁ……明日は仕事キャンセルして千葉に行くしかないな……。
「ママ、明日一緒に行ってくれる?」
「もう、しょうがないですねパパは」
そうして私は、千葉へ行く事が決定してしまった。
恨むぞ薫とやら!!
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