21 / 74
第21話 事情聴取ですか?
しおりを挟む
デートの翌日、月曜日である。やはり月曜日というのはちょっと憂鬱な気分になってしまう。
葉月ちゃんのお目覚めボイスが無かったら、ずっと寝ていたかもしれない。
昨日のデートを思い出す。最初は手を繋ぐ事を目標としていたけれど、終わってみればキスまでしてしまった。
今でも昨日のデートは夢だったんじゃないかと思う。それぐらい刺激的だった。
今日からまた学校やバイトが始まる。特にバイトの方は、葉月ちゃんとのデート代を稼ぐ為にも頑張ろうと思う。
いつもと同じ朝食を食べ、身支度を整えたら鑑定のお時間です。あと、ちょっとだけワックスの付け方がうまくなった気がする!
「占いの神様のお陰で葉月ちゃんと恋人になれました。ありがとうございます! 今日も一日、良い日でありますように……」
いつも以上に感謝を捧げ、神に祈った。
【中野薫】
T大学の2年生
彼女が出来ました。でも童貞です!
エッチなのは恋人が卒業してからです。だから童貞です!
いつまで我慢出来るかな? 童貞くん!
黒川葉月とは恋人同士です! おめでとうございます~。
※今日の運勢※
今日は多くの人があなたに注目をするでしょう。
決して気を緩めてはいけません。然もなければ、窒息するかもしれません。
「あれ、自分の紹介文がちょっと変わってるけど、運勢やばくない!?」
やばいです、危険なワードがあります。窒息ってなに? 溺れ死ぬの? どうしたらいいんだ?
と、とりあえず気を緩めない事が大事なのか? よし、気合を入れて行くか!
ビクビクとしながら家を出て、大学へ向かいます。
占いを見てしまったからかもしれないけど、やたらと視線に敏感になってます。いつもよりこっちを見ている人が多い気がする!
挙動不審になりながら、朝の集合場所である休憩スペースに到着です。既に修二と玲子さんは座っていて、雑談をしているようです。
「お、おまたせ~」
「おーっす薫、なにビクビクしてんだ?」
「おはようございます薫さん、不審者みたいですわよ?」
「ちょっと不吉な占いの結果が出てね。ビクビクしてるんだ」
「まじかー」
「只事じゃありませんわね」
二人の顔が真剣になってきた。まずは相談してみるしかないな。こんなこともあろうかと、自宅で占い結果をメモって来ました!
「これが結果なんだ……窒息って溺れ死ぬのかな……」
「『前半の多くの人があなたに注目をするでしょう。』っていうのは何となく分かったぜ。薫がイメチェンした結果、みんな気になって見てるんだと思うぜ」
「そうですわね。薫さんを知ってる人だったら二度見しちゃいますわ。後半は良く分かりませんが、取り敢えず水場に近づかない方がいいかもしれませんわね。お風呂とかも注意ですわ」
「やっぱそうだよね、気を付けるよ。じゃあ二人とも鑑定するよー」
二人を鑑定し、メモ帳に書いてテーブルの上に置いた。前の経験を活かし、短文でも書いて渡すことにしました!
【千葉修二】
※今日の運勢※
焼き芋を食べるとほっこりするニャン!
【天王寺玲子】
ヤンデレ度13%(+3)
※今日の運勢※
選択肢はCが正解です! 迷ったらどうぞ。
「普通だね」
「普通だな」
「全然普通じゃありませんわ! なんですのヤンデレ度って!?」
本当だ。よく見ると玲子さんのヤンデレ度が上がってた。確かカリスマ美容師に綺麗にしてもらった後、夜の街に二人で消えて行ったんだよね。
やっぱり嫉妬しちゃったのかな。前はギャルにも反応してたし……。そう言えばうちのバイト先にもギャルが居るけど、あの二人なら大丈夫なのだろうか……?
「女の子はみんなヤンデレなんだよ。きっと大丈夫だから安心してよ玲子さん」
「ヤンデレじゃありませんわ! そんな事を言ったら葉月ちゃんだってヤンデレですわね!」
「えっ? あ、葉月ちゃんは普通だと思うよ、玲子さんと違って」
「なんですって!?」
ぎゃおーん。玲子さん大暴れ! 助けて修二~。
「まあそれは良いとして、俺らの結果見ても薫は大丈夫そうだな。それより昨日はどうだったんだ?」
「そうですわ! デートどうでしたの!?」
玲子さんの食いつきがすごいです。グイグイ来ます。やめてそんなに見つめないで!
「えっと、うーん、色々あった……」
「なんですのそれは!? ハッキリと言いなさい!!」
玲子さんが詰め寄ってくる瞬間、1限開始の前に鳴る予鈴が聞こえて来た。授業に遅れちゃうから急がなきゃ!
「ご、ごめん。お昼に説明するからまた後で!」
「こ、こらー!!」
後ろで玲子さんが叫んでるけど、しょうがないよね。だって、こんな数分で話せる内容じゃないし……。
すまん修二、玲子さんをお願いします。
そうして僕は、二人を置き去りにして、教室へ向かうのだった。
◇
お昼休み、いつものカフェテリアに来たら既に修二と玲子さんが席に座っていた。カリスマ美容師の効果なのか、玲子さんがキラキラと輝いているから遠くからでも良く分かるよね。
玲子さんと目が合った瞬間、睨み付けるような視線を向けられ、手をクイックイッっとされました。
玲子さんが激おこかもしれない。お昼ご飯を買う前に、玲子さんのところへ行った方が良さそうだ。
「な、なんでしょうか玲子さん……。ぼ、僕、まだご飯買ってないんですけど……」
何だろう、声が震える。玲子さんの高貴なオーラをヒシヒシと感じる……。
「薫さん、私がご飯を買ってきてあげましたわ。どうぞ食べてくださいな」
「あ、ありがとうございます……」
玲子さんから、ちょっと豪華なハンバーガーセットを頂きました。でもこのコーラ、炭酸抜けてる気がするんだけどいつから居たの?
修二は何も喋らない。ずっと黙ったままうどんを食べている。何でだろう、ちょっとくらいフォローしてくれても良いと思うんだよね。
修二に視線を送っても無視されてます。ひどい!!
「い、いただきます……」
ハンバーガーは冷めてるけど美味しいです。玲子さんの冷たい視線が無ければもっと美味しい気がするね!
玲子さんがテーブルを指でトントンと叩き、早く食べろと急かして来ます。急いで口に入れ、炭酸の抜けたコーラで流し込みました。ヘニャヘニャになったポテトが強敵でした。
「ごちそうさまでした!」
「じゃあ薫さん、全部吐きなさい」
「ええぇっ!? 食べたばっかりなのに!? ここでですか……」
「違いますわ!! 昨日のデートの事ですわ!!」
「は、はい。すみません……」
やばい、玲子さんに冗談が通じない。修二は隣でうどんを噴き出して笑ってます。フォローしてくれればいいのに……。
「えっと、デートの待ち合わせ場所に行って……手を繋ぎました!」
「……それで?」
あれ。手を繋いだのか、やるじゃん! って褒めてくれるところじゃないのか?
「あと……イタリアンな料理のお店でお昼ご飯を食べました。……あ、あ~んとかやりました!」
「……あとは?」
あれ、これでもダメですか。……あ~んですよ? 今思い出すと恥ずかしかったな……。
「映画館で映画を見ました!」
「……何を言っているんですの? 映画を見に行ったのですから、当たり前でしょう?」
「ぴぃ!」
玲子さんが怖いです。……そっか、修二や玲子さんからしたら、ちゃんと告白したのかって事が知りたいんだよね。
「映画館で、告白して……お付き合いする事になりました!」
「やったな薫!!」
「最初からそう言えばいいのですわ!! おめでとうございます薫さん!」
良かった、正解でした。最初から言えば良かったのか。でも、二人とも喜んでくれて嬉しいな。
「ふふ、手を繋いだだけで帰ってきたら、どうしてくれようかと話してましたのよ?」
「告白しただけ立派だな!」
「僕だってやる時はやるんだよ? キスまでしちゃったもん」
「……え?」
「……は?」
何故だろう、二人とも固まってしまった。
キスしたよ? 回数まで記憶にないけど、いっぱいしました……。
「薫さん、噓はいけませんわよ?」
「そうだぞ薫、告白が成功して良かった、今はそれだけでいいだろ?」
全然信用されてない。確かに僕はヘタレてたと思うけど、キスしたんだよ? 葉月ちゃんの唇がすごく柔らかくて、いい匂いがして、幸せだったなぁ……。
でも信じてくれないのは悔しい……。
「だめだ信じてくれない……。あ、そうだ、そこまで言うんだったら玲子さん、賭けをしよう」
「賭けですの?」
「うん。玲子さんが葉月ちゃんに連絡して、昨日キスしたか確認するの。どう?」
「良いですわよ! 負けた方が大将のお店でご馳走するってことにしますわよ。いいですわね?」
「ふふ、ごちそうさまです!」
勝ったな!!
玲子さんがスマホを取り出し、シュシュシュッと高速でフリック入力を行い、葉月ちゃんにメッセージを送っている。
なんで女の子ってあんなに早くフリック入力が出来るのだろうか。不思議だ……。
「でも薫、本当だったとしてどっちからキスしたんだ?」
「もちろん僕だよ! 葉月ちゃんからもしてくれたよ?」
「マジかよ……」
ふふ、きっと葉月ちゃんが、『キスしました』って玲子さんに言ってくれるよね。大将のお店で飲み会か~、楽しみだ。
「……返信が来ましたわ……えっと……薫さんの勝ちですわ……」
「ふふふ、やっぱり僕の勝ちでしょ!? ゴチになります!」
葉月ちゃんありがとう! お陰で1食分の食費が浮きました。今度のデートでお返ししないとダメだね。
……あれ、玲子さんの様子がおかしいよ? 顔が真っ赤だし、修二も玲子さんのスマホを覗き込んで唸ってる。
「薫さん、こんなものを見せられてしまったら、もう私の完敗ですわ。日程は調整して葉月ちゃんも誘いましょう。お酒を飲ませなければオッケーですわ」
そう言って、玲子さんがスマホを見せてくれた。そこには、僕と葉月ちゃんがプリクラでキスしたときの『キス記念日』が表示されていた。
「えっ? あ、あれ? なんで~……?」
見た瞬間、顔が真っ赤になった。葉月ちゃんが誰にも見せちゃダメって言ってたよね? 玲子さんだったら良かったの? すごく恥ずかしい!!
「まさに試合に勝って勝負に負けたってやつだな。でも薫、見直したぜ!」
アワアワとしていたら、スマホに着信が来た。どうやらメッセージのようだ。
『先輩、大好きですよ♡』
葉月ちゃん可愛い! すぐに返信しよう。
『僕も葉月ちゃんが大好きだよ!』
ニヤニヤとスマホをいじっていたら、予鈴が鳴ってしまった。
「羨ましいですわね~」
「懐かしいな~」
熟練カップルの言葉が聞こえてきたが、聞かなかったことにしよう。
午後の講義は何だっけかな。頑張ろう……。
葉月ちゃんのお目覚めボイスが無かったら、ずっと寝ていたかもしれない。
昨日のデートを思い出す。最初は手を繋ぐ事を目標としていたけれど、終わってみればキスまでしてしまった。
今でも昨日のデートは夢だったんじゃないかと思う。それぐらい刺激的だった。
今日からまた学校やバイトが始まる。特にバイトの方は、葉月ちゃんとのデート代を稼ぐ為にも頑張ろうと思う。
いつもと同じ朝食を食べ、身支度を整えたら鑑定のお時間です。あと、ちょっとだけワックスの付け方がうまくなった気がする!
「占いの神様のお陰で葉月ちゃんと恋人になれました。ありがとうございます! 今日も一日、良い日でありますように……」
いつも以上に感謝を捧げ、神に祈った。
【中野薫】
T大学の2年生
彼女が出来ました。でも童貞です!
エッチなのは恋人が卒業してからです。だから童貞です!
いつまで我慢出来るかな? 童貞くん!
黒川葉月とは恋人同士です! おめでとうございます~。
※今日の運勢※
今日は多くの人があなたに注目をするでしょう。
決して気を緩めてはいけません。然もなければ、窒息するかもしれません。
「あれ、自分の紹介文がちょっと変わってるけど、運勢やばくない!?」
やばいです、危険なワードがあります。窒息ってなに? 溺れ死ぬの? どうしたらいいんだ?
と、とりあえず気を緩めない事が大事なのか? よし、気合を入れて行くか!
ビクビクとしながら家を出て、大学へ向かいます。
占いを見てしまったからかもしれないけど、やたらと視線に敏感になってます。いつもよりこっちを見ている人が多い気がする!
挙動不審になりながら、朝の集合場所である休憩スペースに到着です。既に修二と玲子さんは座っていて、雑談をしているようです。
「お、おまたせ~」
「おーっす薫、なにビクビクしてんだ?」
「おはようございます薫さん、不審者みたいですわよ?」
「ちょっと不吉な占いの結果が出てね。ビクビクしてるんだ」
「まじかー」
「只事じゃありませんわね」
二人の顔が真剣になってきた。まずは相談してみるしかないな。こんなこともあろうかと、自宅で占い結果をメモって来ました!
「これが結果なんだ……窒息って溺れ死ぬのかな……」
「『前半の多くの人があなたに注目をするでしょう。』っていうのは何となく分かったぜ。薫がイメチェンした結果、みんな気になって見てるんだと思うぜ」
「そうですわね。薫さんを知ってる人だったら二度見しちゃいますわ。後半は良く分かりませんが、取り敢えず水場に近づかない方がいいかもしれませんわね。お風呂とかも注意ですわ」
「やっぱそうだよね、気を付けるよ。じゃあ二人とも鑑定するよー」
二人を鑑定し、メモ帳に書いてテーブルの上に置いた。前の経験を活かし、短文でも書いて渡すことにしました!
【千葉修二】
※今日の運勢※
焼き芋を食べるとほっこりするニャン!
【天王寺玲子】
ヤンデレ度13%(+3)
※今日の運勢※
選択肢はCが正解です! 迷ったらどうぞ。
「普通だね」
「普通だな」
「全然普通じゃありませんわ! なんですのヤンデレ度って!?」
本当だ。よく見ると玲子さんのヤンデレ度が上がってた。確かカリスマ美容師に綺麗にしてもらった後、夜の街に二人で消えて行ったんだよね。
やっぱり嫉妬しちゃったのかな。前はギャルにも反応してたし……。そう言えばうちのバイト先にもギャルが居るけど、あの二人なら大丈夫なのだろうか……?
「女の子はみんなヤンデレなんだよ。きっと大丈夫だから安心してよ玲子さん」
「ヤンデレじゃありませんわ! そんな事を言ったら葉月ちゃんだってヤンデレですわね!」
「えっ? あ、葉月ちゃんは普通だと思うよ、玲子さんと違って」
「なんですって!?」
ぎゃおーん。玲子さん大暴れ! 助けて修二~。
「まあそれは良いとして、俺らの結果見ても薫は大丈夫そうだな。それより昨日はどうだったんだ?」
「そうですわ! デートどうでしたの!?」
玲子さんの食いつきがすごいです。グイグイ来ます。やめてそんなに見つめないで!
「えっと、うーん、色々あった……」
「なんですのそれは!? ハッキリと言いなさい!!」
玲子さんが詰め寄ってくる瞬間、1限開始の前に鳴る予鈴が聞こえて来た。授業に遅れちゃうから急がなきゃ!
「ご、ごめん。お昼に説明するからまた後で!」
「こ、こらー!!」
後ろで玲子さんが叫んでるけど、しょうがないよね。だって、こんな数分で話せる内容じゃないし……。
すまん修二、玲子さんをお願いします。
そうして僕は、二人を置き去りにして、教室へ向かうのだった。
◇
お昼休み、いつものカフェテリアに来たら既に修二と玲子さんが席に座っていた。カリスマ美容師の効果なのか、玲子さんがキラキラと輝いているから遠くからでも良く分かるよね。
玲子さんと目が合った瞬間、睨み付けるような視線を向けられ、手をクイックイッっとされました。
玲子さんが激おこかもしれない。お昼ご飯を買う前に、玲子さんのところへ行った方が良さそうだ。
「な、なんでしょうか玲子さん……。ぼ、僕、まだご飯買ってないんですけど……」
何だろう、声が震える。玲子さんの高貴なオーラをヒシヒシと感じる……。
「薫さん、私がご飯を買ってきてあげましたわ。どうぞ食べてくださいな」
「あ、ありがとうございます……」
玲子さんから、ちょっと豪華なハンバーガーセットを頂きました。でもこのコーラ、炭酸抜けてる気がするんだけどいつから居たの?
修二は何も喋らない。ずっと黙ったままうどんを食べている。何でだろう、ちょっとくらいフォローしてくれても良いと思うんだよね。
修二に視線を送っても無視されてます。ひどい!!
「い、いただきます……」
ハンバーガーは冷めてるけど美味しいです。玲子さんの冷たい視線が無ければもっと美味しい気がするね!
玲子さんがテーブルを指でトントンと叩き、早く食べろと急かして来ます。急いで口に入れ、炭酸の抜けたコーラで流し込みました。ヘニャヘニャになったポテトが強敵でした。
「ごちそうさまでした!」
「じゃあ薫さん、全部吐きなさい」
「ええぇっ!? 食べたばっかりなのに!? ここでですか……」
「違いますわ!! 昨日のデートの事ですわ!!」
「は、はい。すみません……」
やばい、玲子さんに冗談が通じない。修二は隣でうどんを噴き出して笑ってます。フォローしてくれればいいのに……。
「えっと、デートの待ち合わせ場所に行って……手を繋ぎました!」
「……それで?」
あれ。手を繋いだのか、やるじゃん! って褒めてくれるところじゃないのか?
「あと……イタリアンな料理のお店でお昼ご飯を食べました。……あ、あ~んとかやりました!」
「……あとは?」
あれ、これでもダメですか。……あ~んですよ? 今思い出すと恥ずかしかったな……。
「映画館で映画を見ました!」
「……何を言っているんですの? 映画を見に行ったのですから、当たり前でしょう?」
「ぴぃ!」
玲子さんが怖いです。……そっか、修二や玲子さんからしたら、ちゃんと告白したのかって事が知りたいんだよね。
「映画館で、告白して……お付き合いする事になりました!」
「やったな薫!!」
「最初からそう言えばいいのですわ!! おめでとうございます薫さん!」
良かった、正解でした。最初から言えば良かったのか。でも、二人とも喜んでくれて嬉しいな。
「ふふ、手を繋いだだけで帰ってきたら、どうしてくれようかと話してましたのよ?」
「告白しただけ立派だな!」
「僕だってやる時はやるんだよ? キスまでしちゃったもん」
「……え?」
「……は?」
何故だろう、二人とも固まってしまった。
キスしたよ? 回数まで記憶にないけど、いっぱいしました……。
「薫さん、噓はいけませんわよ?」
「そうだぞ薫、告白が成功して良かった、今はそれだけでいいだろ?」
全然信用されてない。確かに僕はヘタレてたと思うけど、キスしたんだよ? 葉月ちゃんの唇がすごく柔らかくて、いい匂いがして、幸せだったなぁ……。
でも信じてくれないのは悔しい……。
「だめだ信じてくれない……。あ、そうだ、そこまで言うんだったら玲子さん、賭けをしよう」
「賭けですの?」
「うん。玲子さんが葉月ちゃんに連絡して、昨日キスしたか確認するの。どう?」
「良いですわよ! 負けた方が大将のお店でご馳走するってことにしますわよ。いいですわね?」
「ふふ、ごちそうさまです!」
勝ったな!!
玲子さんがスマホを取り出し、シュシュシュッと高速でフリック入力を行い、葉月ちゃんにメッセージを送っている。
なんで女の子ってあんなに早くフリック入力が出来るのだろうか。不思議だ……。
「でも薫、本当だったとしてどっちからキスしたんだ?」
「もちろん僕だよ! 葉月ちゃんからもしてくれたよ?」
「マジかよ……」
ふふ、きっと葉月ちゃんが、『キスしました』って玲子さんに言ってくれるよね。大将のお店で飲み会か~、楽しみだ。
「……返信が来ましたわ……えっと……薫さんの勝ちですわ……」
「ふふふ、やっぱり僕の勝ちでしょ!? ゴチになります!」
葉月ちゃんありがとう! お陰で1食分の食費が浮きました。今度のデートでお返ししないとダメだね。
……あれ、玲子さんの様子がおかしいよ? 顔が真っ赤だし、修二も玲子さんのスマホを覗き込んで唸ってる。
「薫さん、こんなものを見せられてしまったら、もう私の完敗ですわ。日程は調整して葉月ちゃんも誘いましょう。お酒を飲ませなければオッケーですわ」
そう言って、玲子さんがスマホを見せてくれた。そこには、僕と葉月ちゃんがプリクラでキスしたときの『キス記念日』が表示されていた。
「えっ? あ、あれ? なんで~……?」
見た瞬間、顔が真っ赤になった。葉月ちゃんが誰にも見せちゃダメって言ってたよね? 玲子さんだったら良かったの? すごく恥ずかしい!!
「まさに試合に勝って勝負に負けたってやつだな。でも薫、見直したぜ!」
アワアワとしていたら、スマホに着信が来た。どうやらメッセージのようだ。
『先輩、大好きですよ♡』
葉月ちゃん可愛い! すぐに返信しよう。
『僕も葉月ちゃんが大好きだよ!』
ニヤニヤとスマホをいじっていたら、予鈴が鳴ってしまった。
「羨ましいですわね~」
「懐かしいな~」
熟練カップルの言葉が聞こえてきたが、聞かなかったことにしよう。
午後の講義は何だっけかな。頑張ろう……。
0
お気に入りに追加
136
あなたにおすすめの小説

貞操観念逆転世界におけるニートの日常
猫丸
恋愛
男女比1:100。
女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。
夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。
ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。
しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく……
『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』
『ないでしょw』
『ないと思うけど……え、マジ?』
これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。
貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる