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中級冒険者の章

第85話 おにーちゃんはおしまい?

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「七海さん、これお土産ですー。もちろんクリスマスプレゼントは別に用意してあるのでお楽しみですよー」

「えっ、いいの!? ユウ君ありがとう!」

 スペースコロニーを探索した翌朝、ベッドの横に鎮座する持ち帰り金庫をペカっと開けたところ、小さな小箱が出て来ました。これは昨日のガチャで手に入れたルナ様の特選プレミアムコスメセット、見た目は片手で持てるサイズの小箱です。

 コスメセットって言うから口紅とかマスカラが入っている小箱かと思ったら、開けてビックリ大きな鏡付きの化粧箪笥、いわゆるドレッサーが登場したのです。質量保存の法則を無視したアイテムです。ヤバいわよ!

「うわっ、凄い! こんなに種類があるし全部自動でやってくれるの!? うわぁ、髪までセットしてくれるんだ」

 やはりボクの目に間違いはなかった。近未来の技術を惜しみなく投入して作り上げたというプレミアムなお化粧マシーンです。モニターをポチポチするだけで理想の私に大変身ってやつですよ。七海さんはキャッキャとテンション爆上げで操作している。何やらドレッサーから手が出て来てお化粧してくれています。しゅごい……。

「古代エルフの森に行けたらガチャのラインナップも更新されるかな……? 幸せの薬が出たらいいな~」

 メイクアップされる七海さんを見ながらボクは考えた。もうガチャで狙う方がいいんじゃないかと。昨日のスペースコロニーを冒険してボクは悟った……ガチで攻略するのは絶対に無理だと。ひ弱なボクがゲームのようにバッサバッサと敵を薙ぎ払い無双するのは不可能だ。ボクを知っている人ならみんなそう思うよね?

 でも一つ問題がある。現実世界に持って行くには不思議なダンジョンで持ち帰り金庫をゲットしないとダメなのだ。レアアイテムを持って探索して死んだら全部パーなのです。

 まあ、その悩みも解決です。なんと、持ち帰り金庫を確実にゲットする手段を手に入れたのである!!




――ビアンカちゃんにルナ様の事がバレた後の事である。




 ギルドでビアンカちゃんにルナ様の事を囁かれたが、幸いにも深く追求される事もなく、『ルナならいいよ~。だってオ〇ホと変わんないじゃん?』って言われたのだ。ビアンカちゃんの中ではアンドロイドのルナ様をそんな風に見ているのかもしれないけど、ボクには一人の人間としか見れません。お優しいルナ様ですよ。しゅき。

 まあそんな感じで許して貰えたのでガチャから出たスキルについて聞いてみたのです。

「実はアイテム召喚っていうスキルと変身魔法っていうスキルが出たんです。これってどういうスキルなんですか?」

「銀カプセルからスキル2個だとぉ!? あ、ありえん……どういう事だ……いや、俺にはこのマッスルボディがある……テロメア様もきっと喜んで下さるだろう……」

 またボクへの嫉妬心がメラメラと湧き出て来たギルマスさんです。あちゃー。

「もう筋肉はナーバスだなぁ。そんなんじゃテロメア様に嫌われちゃうぞ♪ ほら、お店の裏で筋トレでもしてきなよ」

「…………そうだな、筋トレするか」

 最近のギルマスは情緒不安定ですねぇ。ダークなオーラを感じます。そんな可哀想なギルマスはビアンカちゃんに追い払われてしまいました。

 大丈夫だよギルマス。きっとテロメア様が慰めてくれるよ!

「ふぅ、暑苦しいのが居なくなって良かった~。じゃあビアンカちゃんが教えてあげるね♡ 二つとも名前の通り――」

 ビアンカちゃんの説明を要約するとこういう事らしい。


【アイテム召喚】
消耗品限定でダンジョン内で手に入れた事のあるアイテムを1回だけ選んで召喚出来る。
※武器、盾、指輪や装飾品はNGです。


 どうやらこのスキルは回復薬やマッキュといった消耗品を1回だけ召喚出来るらしいのです。ハラペコで死ぬ確率も減るし、いいかもしれない。

 キュピーンと閃いたボクは試しに実験してみた。その結果、このスキルのお陰で持ち帰り金庫を召喚する事が出来るようになったのだ。まさにボクのためにあるような素敵なスキルです。

 これがあれば幸せの薬をゲットしても安心です!


「――それでね、変身魔法は女の子になれちゃうんだよー♪」

「な、なんだってー!?」

「まあ身長とか体重、おっぱいの大きさとか、体を大きく変化させるには賢さのステータスが重要だからね~。朝にでも試してみてね」

 ボクの体が女の子に……?

 つまり姫ちゃんになれるんですかー!?

 あのEカップが自分のものに…………ゴクリ。




 そんな感じで昨日の事を思い出していたら七海さんのメイクアップが終わったらしい。

「みてみてユウ君。どうかな?」

「むむむっ!?」

 そこには美女が居た。美女という一言では言い表せない程の美しさ、あぁどうしてボクの語彙力はこんなにも乏しいのだろうか。目がパッチリと強調され唇がプルンプルン、そして髪がサラサラで綺麗なのだ。もうそれ以上言えません。許して下さい。

「超美人ですー!!」

「うふふ、ありがとう」

 七海さんはお化粧しなくても美人だからね。そんな美人が完璧なお化粧したらどうなるか、言うまでもないですよ。つまり超美人です。

 こんなに驚かされたならボクも驚かせるのがマナーだと思ったのでアレをやる事にしました。初挑戦だけどいけるっしょ!

「実はボク、女の子に変身する魔法が使えるようになったんです。実際に触れた事のある女性限定らしいんですけど、ちょっとやってみてもいいですか?」

「えっ、本当!? 私、妹とか欲しかったんだよね~」

 さて、ここで重要なのが誰に変身するかという事だ。ビアンカちゃん曰く、ボクの賢さでは体を大きく変化させることが出来ないと言っていた。つまり七海さんのように背が高くておっぱいおっきい美女は不可能である。

 では姫ちゃんはどうだろうか。身長は同じくらいだからいけるかもしれないけど、おっぱいおっきいから無理な気がする。それに姫ちゃんだと七海さんの精神衛生上よろしくない。『何で姫ちゃんなの? お仕置きしよっか』と言ってくるに違いない。

 つまりボクと同じくらいの身長で、あんまりおっぱいおっきくなくて、そして七海さんがビックリしない女性に変身するしかないという事です。

 そうです。ボクはルナ様を思い浮かべて変身魔法を使いました。いっけぇぇぇぇええ!

「――ほわっ!?」

「――きゃっ」

 魔法を使った瞬間、ボクの体が白く光った。まるでアニメのエッチなシーンを邪魔する白い柱のような演出でした。目が開けていられない光量ですね。体全体がくすぐったい感じになり、自分が生まれ変わるのが分かった。

「これが……ボク?」

 ドレッサーの前に駆け寄り鏡を見れば、昨夜ボクを特訓してくれたアンドロイドのルナ様が映っていた。でもおかしい、顔はルナ様というよりもユウタなのである。あれぇ?

 夜空に煌めく流星のような銀髪は腰まで届き、赤いドレスを押し上げる自己主張の強いツンツンとしたお胸が誇らしい。小振りなのにツンツンなんだよ、いいよね♪

 そして愛棒を徹底的に扱いてくれた白いロンググローブが肘先まで覆っている。ふむ、どうやら服装もセットで付いてくるようですね。親切設計だなー。

 パンツはどうなのかとスカートをゆっくりと上げてみれば、そこにはやる気満々な愛棒さんが……愛棒さん?

「えええええぇぇえええ!? 何でここだけ男の子なのー!?」

 ルナ様と同じ黒いセクシーパンツから顔を覗かせる愛棒さん、その姿は手を挙げて挨拶しているみたいです。

『あちゃ~、やっぱりおにーちゃんの賢さじゃ完全な女の子になれなかったね~』

 どこからかビアンカちゃんの声が聞こえたような気がした。

「ねぇユウ君。その女、誰をモデルにしてるのかな……? 実際に触れた事のある女性なんでしょ……? 私、すっごく気になるな~」

「ぴぃ!?」

 鏡越しにニコリと笑う七海さんが見えた。や、ヤバイぞ……。

「あ、あのあのっ、これはですね、そのぉ」

「ちょっとベッドの上でお話しよっか。うふふ、気持ち良~く喋れるようにしてあげるね」

「はうぅ、ダメです、ちょっ、ああー!?」

 そうしてボクは、七海さんにルナ様の事をゲロってしまったのでした。だってさ、ロンググローブにローションを浸して愛棒さんに被せるんだよ? ヌルヌルシコシコですよ? そこから先は言うまでもないですよね……。

 鏡に映るボク達は、まるで百合カップルのように見えてドキドキしました。
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