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第234話 ミウちゃんSide 嫁の居ぬ間に!?

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「えっ、明日ユウタ来るの!?」

 メイドの美奈子さんと雑談をしていたところ、東京で暮らしているあーしの旦那様が来てくれる事を知った。でも残念な事に、あーしはアリスの実家に行かないといけないのだ。

「奥様がそう仰っておりました。ユウタ様がお考えになられた動画を撮影するらしく、私がメイド役で出演する事になったのです。ユウタ様の他にソフィアさんという監督さんと千代ちゃんという方が来られるそうです」

「あー、例の動画か~……千代ちゃんも来るんだ。でも岸総理に依頼されて直ぐに動くなんてユウタも働き者だよねー。まぁグータラな旦那より全然良いからオッケーっしょ!」

「そうですね、ユウタ様は積極的に家事もするそうですから理想的な旦那様かと。お料理はイマイチなようですが……」

「あはは……料理はもう少し頑張らないとダメかな? でもそっかぁ、明日ユウタ来るのに会えないのかぁ」

 別にユウタの作る料理がマズって訳じゃないけど、味の濃い料理が好きっぽい。男の子だからかな?

「美羽お嬢様は琴音様のお宅で会合でしたね。何か大事なお話があると聞きましたが?」

「詳しい話は分からないんだけど、あーしの他に夏子さんと桜ちゃん、あとアリスが集まるらしいよ。メンバー的にユウタに関する打ち合わせかな~」

「なるほど……ではお泊りですね」

 ユウタが京都に来るタイミングを狙ったのかもしれない。つまりこれはユウタに聞かれたくない大事な話なのだろう……。

 あーしが居ない間はママがユウタを独占だから嫌な予感がする。ユウタってばママにデレデレだし、ママもユウタにデレデレなのだ。あれ、ユウタの嫁ってあーしだよね?

「そうだ美奈子さん、会合が終わったら直ぐに帰って来るからそれまでユウタが無理しないように見張っててね? ママの事だからユウタを独り占めするっしょ」

「ふふ、そうかもしれません。先ほど奥様がエステに向かわれました」

「くっ、あーしの旦那なのにママったら。ママに取られないようにしっかりとお願いね!」

「はい、畏まりました。ユウタ様が奥様に取られないように身を挺してお守り・・・・・・・・させて頂きます」

「さすが美奈子さん、よろしくねー!!」

 美奈子さんがニッコリと眩しい笑顔で頷いてくれた。いつもキリっとした表情なのに、こんな笑顔もするんだなぁ……。

 最近のママはエステに通ったり美容室に通ったり、年甲斐もなく張り切っているのだ。ユウタはあーしの旦那っていう事を忘れているんじゃないかな? でも美奈子さんがママからユウタを守ってくれるなら安心だ。

 この時あーしはまだ理解していなかった。ママよりも危険な女性がすぐ傍に居るという事を……!



   ◇



「美羽、こっちですわ~!」

「ごめんごめん、ちょっと遅れた~」

「もうみんな集まっていますわ、急いで下さいまし」

 朝早くから移動したのに電車のダイヤが乱れてアリスの実家に着くのが遅れてしまった。どうやら既に他の人は着いているらしい。

 和風なアリスの実家にしては珍しい洋室の客間に進むと、夏子さんと桜ちゃんが並んで座っていた。

「ごめんなさい、遅れましたー!」

「大丈夫よ、まだ約束の時間まで少しあるから」

 ユウタのお嫁さん達の中に序列というものは存在しないけど、みんな自然と一番年上で頼れるお姉さんの夏子さんを慕っている。夏子さんはおっとりとした優しい女性で、最近は妊娠したからか母性を強く感じる。一番最後に仲間入りしたあーしにも優しくしてくれるお姉さんなのだ。

「だいぶ寒くなりましたね。お茶をどうぞ」

「ありがとう桜ちゃん!」

 アリスと並んで座って桜ちゃんに淹れてもらったお茶を飲んで一息。桜ちゃんはユウタの動画配信を陰ながらサポートしてくれている優しい子だ。アリスとは仲の良い姉妹みたいな関係だし、あーしももう少し仲良くしたいと思っている。

「美羽もせっかくユウタちゃんが京都に来てくれるのに残念ですわね」

「残念だけどユウタもお仕事だからね。あーしはユウタを応援するって決めてるんだ」

「あら、私だってユウタちゃんを応援していますわよ? ふふ、今頃は撮影を開始しているのかしら」

「たぶん打ち合わせしてるんだと思う。あーしは明日の朝一で帰るから、もしかしたら動画に飛び入り参加しちゃおうかなー」

 どんな動画になるのか知らないけど、あーしとユウタのイチャイチャを動画にするのも良いと思う。





 しばらく雑談をしていると、琴音さんが二人の女性と一緒に入室してきた。一人はお手伝いさんでもう一人はテレビで良く見た有名人だった。

 琴音さんはマジでユウタの子を妊娠したらしく、常にお手伝いさんを一人付けて何があっても大丈夫なようにサポート体制を整えているらしい。そしてもう一人の女性は……。

「みなさん初めまして、総理大臣の岸です。今日はお忙しいところ集まって頂きましてありがとうございます」

 そう、テレビで良く見る総理大臣だった。キッシーの愛称で親しまれる……というよりも、ネットでネタにされまくっている色物系なお方だ。でも最近はセックス義務化にユウタを上手く利用する事で支持率を回復させていた。

 そんな総理大臣がわざわざ足を運んで相談に来たのだ。どんな内容なのか知らないが相手は総理大臣、気を引き締めないと何をさせられるか分からない。なので基本的に夏子さんが総理大臣の相手をして、他のメンバーがフォローする形になった。

 自己紹介と軽い雑談をした後、遂にキッシーが斬り込んで来た。

「実はですね、ユウタ様にご快諾・・・して頂いた『男子中学生DCセックス義務化の広報大使』の件でご相談させて頂きたいのです」

 キッシーが『ご快諾』という部分を強調して伝えてきた。あれは何も考えていないユウタが勢いで決めちゃった感じだ。アホなユウタを可愛がって良いのはお嫁さんだけなのにー!

「はぁ……広報大使ですか……。ユウタ君の写真でも提供すれば良いでしょうか?」

 おおっと、ここで夏子さんの深い溜息作戦が炸裂したー! 『あんたが勝手に決めたやつでしょ? 私達のユウタは渡さないわよ!! プンスコ』って感じのオーラを感じる。これが女の闘いなのかー!?

「もちろん写真もご提供頂けると助かりますが、やはりセックス義務化をアピールするためにはインパクトのあるイベントが必要だと思うのです」

 そんな夏子さんを見てもクスクスと笑う仕草をするキッシーさん、政治家だけあって交渉事には強いんだなー。

「もう十分にアピール出来ていると思いますが……。あの、正直に申しましてあまりユウタ君に負担が掛かる事はしたくないのです」

 夏子さんの鋭い視線が総理を射抜く。良く見たら桜ちゃんとアリスもキリっとした視線を向けている。よし、あーしも負けてらんないっしょ!! キリッ!

「みなさんの懸念も重々に承知しております。ですが、これも日本のためなのでございます。そしてこのセックス義務化の成功の鍵はユウタ様であると確信しております。内閣府の調査結果によれば、セックス義務化により来年の今頃には第一次ベビーブームが到来していると試算しております。それと……」

 キッシーの演説が始まった。ユウタが如何に優れた男性であるかを力説され、そしてそのユウタを射止めたあーし達が羨ましいとアゲアゲしまくる演説を聞いていたら、ちょっとくらい協力するのもやぶさかでないって感じになってしまう。夏子さんをはじめとしたお嫁さん達のキリっとした顔が和らいだ。

 演説が終わり、夏子さんがみんなの顔を見た後、ゆっくりと話し出した。

「う~ん……確かにあれだけの男子中学生が種付けしたらベビーブームになってもおかしくないと思います。ですが、私達はユウタ君が今以上にメディア露出する事で起こるであろう数々の問題を懸念しています」

 今はネット配信とカレーのCMくらいでしか知る事のないユウタだけど、男子中学生DCセックス義務化の広報大使になったらニュース番組で大々的に放送されるような気がする。

 ユウタの優しい性格や少しアホなところがお茶の間に流れたら一気にファンが増えるだろう。そうなったら危険な行為をする過激なファンも増えたり、更に海外からユウタを襲おうとする人が出て来るかもしれない。

「ユウタ様はとても素敵な男性です。なのでみなさんが心配されるもの良く分かります」

 キッシーさんがウンウンと優しく微笑んだ。そして私達一人一人の顔をジックリと見た後、ハッキリとした声で宣言した。

「日本政府はユウタ様の安全を確保するため、ユウタ様を人間国宝へ認定させる事をお約束・・・致します」

「人間国宝……!?」

 え、マジで? ユウタが人間国宝? ヤバいっしょ!! みんなも驚愕とした表情を浮かべている。あの『検討する』ばっかりなキッシーが『お約束』してくれたのだ。

 公の場での証言じゃない口約束だろうけど、アリスが録音しているはずだ。

「ユウタ様が人間国宝になられましたら政府一丸となってユウタ様をお守りすることをお約束致します。そうですね、まずは諸外国からの横槍をしっかりと防ぎますし、常に何名かでコッソリと警護をお付け致します」

「……」

「もちろんユウタ様のご関係者様の警護もお任せ下さい。何せユウタ様は日本の宝でございます。あと……」

「ま、まだあるんですか?」

 夏子さんが完全に総理に手玉に取られている。でもキッシーさんの言う事はとても魅力的だ。美奈子さんの話だと海外のスパイとかがユウタを狙っているとか言っていたし、私達家族も守ってくれるなら安心して暮らせるだろう。

「これは既に実行済みなのですが、政府としてユウタ様の周囲に変なちょっかいを出さないように主要マスメディアに言明しております。もちろん西園寺家の睨みというのもありますが、ユウタ様に要らぬ心労を掛けなくて良いかと思いますよ」

 総理の提案はとても魅力的に思えた。だってあーしの旦那様は素敵な男の子だし、今のまま配信していればそのうち世界中で話題になるはずだ。話題になって何か被害が出てからじゃ遅いし、今から動画配信をストップするのも難しいだろう。動画配信はユウタの楽しみでもあるから止めるのも可哀想だし……。

 他のみんなも頷いているけど、問題はキッシーさんの言う『インパクトのあるイベント』だ。

「……なるほど。総理のご配慮はとても有難く思います。ですがその、実際に広報大使としてのお仕事はどのような事をお考えですか?」

「実はセックス義務化の実施案内のサイトを作成しているのですが、そこでセックスカタログに登録して頂く女性向けの説明資料にユウタ様をお借りしたいのです」

「なるほど……?」

 キッシーの話は思ったよりも簡単で拍子抜けしてしまった。他のみんなも首を捻っているのだ。

「ふふ、ここからが本題です。先ほどのインパクトのあるイベントと言いましたが、ユウタ様ご本人によるセックス義務化のデモンストレーション、つまり実際にセックスカタログから女性を選び種付けをするドキュメンタリーを撮影させて頂きたいのでございます」

「……実演!?」

「セックスカタログの女性は公募とさせて頂きますが、ユウタ様へお渡しするカタログに載る女性は政府関係者や身元が保証出来る安全な女性とさせて頂きます。もちろんユウタ様が引き受けて下さるか確認してからとなりますが、彼は喜んで引き受けて下さるような気がするのです。台本無しで本番さながらのリアリティを追求したいので、ユウタ様のご関係者様にはカタログへの登録を遠慮して頂きます。なので、これはお嫁さんであるみなさんへ『産地直送プレミアム搾精権』の使用許可のお願いでございます」

「……」

 みんながハッとした顔になり、キッシーがここへ来た本当の理由を理解した。『産地直送プレミアム搾精権』、言い換えれば『合法浮気種付けチケット』だ。お嫁さん全員の了解が得られた時、公募で選んだ女性に直接種付け出来るサービス。どこかの議員が旦那に頼まれて作ったシステムって聞いた事があるけど、こんなシステムを使う男性はまず居ないのだ。

 つまりキッシーさんは私達に旦那の浮気を認めろと言ってきたのだ。ユウタの浮気か……あれ、別に今更一人増えたところで問題ないんじゃ? どうせワンナイトラブっしょ?

 どうやらみんなもあーしと同じ事を思ったのか、思い思いに話し始めた。

「つまり『産地直送プレミアム搾精権』という事ですね。ユウタ君はどんな女の子を選ぶのかしら。きっと私と同じようなお姉さん系ね」

「ユウタさんには『産地直送プレミアム搾精権』を使わせてあげると約束していたので問題ありません。ふふ……私と似た黒髪ロングの女性を選ぶはずです」

「ユウタちゃんは直ぐに浮気しますけど、ちゃんと私のところへ戻って来てくれるから安心ですわ。それにユウタちゃんを満足させてあげられるのは私だけですわ~!」

「『産地直送プレミアム搾精権』って言ったって1回エッチするだけっしょ? ユウタはあーしとラブラブだからね、全然オッケーっしょ!」

 みんなはキッシーさんからどんな無理難題が来るのかとドキドキしていたからか、思ったより簡単な内容で楽しそうに話し始めた。ユウタの女性を惹きつける魅力は制御出来ないし、どうしようもないっていう事をみんな理解しているのだ。

「えっ、みなさん本当に良いんですか!? あの、旦那さんが他の女性と種付けセックスですよ……?」

 逆に快諾されると思っていなかったであろうキッシーさんがオロオロしていたのが面白かった。

 そうしてユウタの知らないところでセックス義務化のデモンストレーションが決定したのだった。



   ◇



「ふぅ、やっと帰って来れた。ユウタどこにいるかな~」

 アリスの実家に一泊した翌日、やっと家に帰って来れた。何度もユウタに連絡をしてみたけど繋がらなかったのだ。美奈子さんやママもダメだった。もしかしたらみんなで撮影とやらを頑張っていたのかもしれない。

 お手伝いさんにユウタの居場所を聞いたところ、自室で休んでいるという情報をゲットした。急いでエレベーターに乗り込んだところで小さな影が入り込むのが見えた。

「えへへ、美羽ちゃん久しぶり~!」

「おー! ビアンカじゃん~。いつの間に来てたん?」

 ちっこくて可愛い天使のような少女だった。いつもよりニコニコと笑顔を振りまいているし、何か良い事があったのかもしれない。

「先週から日本に来てたんだけどね、昨日は雪乃おばさんに呼ばれてお泊りしたんだ~」

「…………ママが?」

 ママの大親友であるフローラおばさんが泊っているのか。あーしが東京に行く時にそんな話は無かったような……? なんだろう、嫌な予感がした。

「これからおにーちゃんのお部屋に行くんでしょ? うひひ、ビアンカちゃんも一緒に行ってあげるねっ!」

「……おにーちゃん?」

 いつも猫を被った毒舌幼女が嬉しそうにおにーちゃんと呼ぶのは誰だろうか?

「ユウタっていうおにーちゃんだよ? うへへ、昨日はた~くさんエッチしちゃったんだ~。あ、でも安心してよね美羽ちゃん、ゴム付けてたから妊娠してないからねっ!」

「はあっ!? 何それ聞いてないんだけどっ! あんたあーしの旦那と何やってんのよ!!」

「そんな怒らないでよ美羽ちゃん~。だって私達は竿姉妹でしょ?」

「竿姉妹って何よー!!」

 やっぱりユウタには魔性の魅力があるのだ。ちょっと目を離すと女性が寄って来る。くっ、美奈子さんが身を挺して守ってくれるって言ってたのにどうしてこうなった?

 早歩きでユウタの部屋に向かって歩いているが、さも当然の如くビアンカが着いて来た。こうなったらユウタに全部確認するしかないっ!

 マスターキーでユウタの部屋を勝手に開けて入ってみれば、あろうことかベッドの上で美奈子さんと繋がったままスヤスヤと眠る旦那の姿が……。やられた!!

「美奈子さんの裏切り者ー!!」

「うわ~、おにーちゃんって絶倫なのね? うふふ、次はも~っと搾り取ってあげるんだから」

 大きな声を出してしまったが二人ともピクリともしなかった……。
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