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第184話 姫ちゃん先輩の泣き落とし大作戦

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《時は遡り、ユウタがこの世界に迷い込んでしばらくした時の事である》



 この世界に迷い込んで夏子さん達に保護された日、ボクが違う世界から迷い込んでしまった事を証明するため、二人に漫画雑誌やコーラ、ポテチを提供した。ポテチはその場でお酒のおつまみになっちゃったけど、コーラは夏子さん経由でどこかの会社へ送られたのです。夏子さんの事だから、バレないように中身だけ送ったのかもしれない。

「ふんふん、ふふ~ん♪」

 それからしばらく経ち、主夫として家事を頑張るボクは、夕飯の支度をしようとご機嫌な鼻歌を歌いながら冷蔵庫を開けました。夕飯はスタミナ丼とか良いかもしれない、そう思って冷蔵庫の中身を物色していたところ、怪しげな瓶を見つけたのでした。

 ラベルも無くキャップに刻印もありません。ちょっと薄い茶色の液体です。新しい調味料かな? 蓋を開けて匂いを嗅いで見ましょう。……クンカクンカ。

「こ、これは!?」

 そう、この何と表現して良いのか分からないコーラの匂いがするのです。コーラの匂いを伝えるのって難しいですよね?

「夏子さーん!! この瓶って何ですかー?」

 ボクは居ても立っても居られなくなり、瓶を持って夏子さんの居るリビングへ駆け込んだのでした。

「あら、そうだったわ。昨日お友達に依頼していたサンプルが出来たのよ~」

「おおおお!! つまりコーラをコピー出来たんですね?」

「ごめんなさい、正確なコピーは出来なかったわ。色々な香辛料が使われている事までは分かったらしいんだけど、完全な配合までは難しいそうなの」

「そうなんですね……。でもこれ、凄くコーラの匂いがします!」

「お友達の話では、このコーラシロップに砂糖を混ぜて炭酸水で割っているのがユウタ君が持っていたコーラになるそうよ」

「……ほほう?」

 つまりこれがコーラの素ってやつですか。そう言われて見ればファミレスのドリンクバーとか、マシンの中でコーラの原液と炭酸がそれぞれチューブから出て来てコップで混ざり合うって聞いたような気がします。

 この原液に砂糖とかのシロップを混ぜて、炭酸水で割ればコーラが出来るのかな?

「ユウタさん、ちょっと作ってみましょうか」

「おお、良いですね桜さん。ボクもお手伝いしますよー」

 グラスにコーラの素を入れて炭酸水で割ってみます。砂糖を入れていないのでカロリーゼロのコーラになるのかな?

 シュワシュワと泡立つキンキンに冷えたコーラをグビっと飲んでみましょう。

「…………コーラ風味?」

「ちょっと薬っぽいですね」

「うーん、イマイチねぇ」

 何というか薄いコーラ水を飲んでいる感じです。駄菓子の水に溶かす粉の薄いやつ。これじゃあ美味しくないね。やっぱり砂糖とかドバドバ入れないとあのコーラにはならないのでしょうか。



 それからボクのコーラ作りの日々が始まりました。夏子さんのお友達の方にも協力して貰ってコーラシロップの配合を変えて貰ったり、500mlのペットボトルに対するコーラシロップと砂糖の量とかを研究したり。

 そんな研究を続けてやっと良い塩梅のユウタ・コーラが完成したのでした!!

「これを販売するには姫ちゃん先輩に相談するのが良いんですかね?」

「そうね~。特許とか取れるのかも調べないとダメかもね」

「特許ですか……。ボクとしては世界中の人に楽しんで貰いたいです」

「それなら尚更の事、特許は取らないとダメよ。企業の人と相談しないとダメね~」

 ふむ、作ったのは良いけど売れるか分からないし、特許ってどうやって取るんですかね。しばらくは自分だけで楽しみましょう!



   ◇



 そして自分だけで楽しんでいたユウタ・コーラですが、ついつい自慢したくなってペットボトルに詰めたものを初公開です!

「えへへ、どうですか皆さん。ボクが考案したオリジナルの炭酸ジュースですよー!」

 ドヤ顔でカメラに向かってペットボトルを映します。ふふ、今日はステマじゃなくてマジの売り込みですよ。世界中の人にコーラの味を広めたいのです。



『オリジナルジュース!?』

『ユウタ汁!?』

『いや、きっとどっかのメーカーのステマだな』

『姫子:ユウタ様ー、私それ聞いて無いんですけど! どこのメーカーですかー!?』

『姫ちゃん先輩が必死だwww』

『どんな味がするんだろう?』


 ふふ、良い感じにコメントが盛り上がっていますね。まだちょっと焦らしましょう。

 みんなが持つ小さなグラスにユウタ・コーラを注いで乾杯しました。

「うん、美味しいですー!!」

「うふふ、スッキリした味わいになったわね~」

「私はお酒で割ったやつの方が好きです」

「癖になりますわね。美味しいですわー」

 コーラシロップの開発は、最終的にレモンを多くして貰い調整しました。どこの誰だか知りませんが、夏子さんのお友達には感謝ですね。お仕事の報酬とは別に、かなりの謝礼をしたそうです。

 最初からコーラシロップに砂糖を入れておくバージョンのレシピも完成したので、炭酸で割れば美味しいコーラが簡単に作れちゃいます!



『あんな色のジュース初めて見た!』

『どんな味がするんだろ~。私、気になります!!』

『姫子:ユウタ様ー!! 聞いてますかー!?』

『魅惑のジュース、気になるよ~』

『姫ちゃん必死なのおもろいww』




 チラチラとモニターを見ていると、姫ちゃん先輩が必死にコメントしていますね。でもさっき演技がボロクソだとか酷い事を言われたからね。ちょっと放置です。

 休憩中なので4人で仲良くジュースをグビグビと飲んでいたところ、ボクのスマホがブルブルと震えているのでした。マナーモードにはしたけど持って来ていました。

「…………姫ちゃん先輩だ」

「え、姫ちゃんから?」

 スマホの画面を見てみると、姫ちゃん先輩からお電話でした。配信中に電話するのは悪いかなーと思い、夏子さんに見せてみました。

「そうです。ほら見て下さい」

「あらあら、急ぎの要件かしらね~?」

 夏子さんもモニターで姫ちゃん先輩が騒いでいるのを知ってるはずなのに演技してくれています。ふふふ、良い感じに釣れそうですね。



『姫ちゃん先輩ウケルww』

『姫子:ユウタ様ー!! お話しましょうー!!!』

『めっちゃ必死で可愛い』

『姫ちゃんがんがれー!』




 もう、姫ちゃん先輩ったらしょうがないですねぇ。可哀想だから電話に出てあげましょう。せっかくなのでスピーカーモードで会話します。

「もしもしユウタでーす!」

『ああっ、ユウタ様やっと出てくれましたねー!!』

「えとえと、今は配信中なので……」

『配信中なので……、じゃないですよー!! 何ですかあのジュースは!?』

「ふふふ、これこそボクが開発したオリジナルジュース、ユウタ・コーラです!!」

 宣伝するチャンスとばかりにグラスをカメラに映すのでした。あー、このシュワシュワなコーラが最高です。癖になるのも分かりますね。

『どこのメーカーと共同開発したんですか!? これはステマですね!! 酷いですユウタ様、私というものがありながら他のメーカーに浮気するなんてー!! うわぁぁぁんあんあんあんあん!!』

 ヤバいです、姫ちゃん先輩が泣いちゃいました。ううぅ……女性を泣かせたら炎上しちゃいますよ。

「ち、違いますよー。まだ誰にも相談してないジュースです。この配信で世界初公開ですよー」

『ほ、本当ですか!? では是非うちとお話しましょうー!!!』

 ふふ、姫ちゃん先輩がガッツリと食い付きました。勝ったな。



『必死な姫ちゃん先輩ウケルww』

『あのジュース飲んでみたいから頼んだぞー』

『でもまたサンガリーか』

『サンガリーばっかりでつまんないね』

『どっかと競合してみる?』

『もしかしてこの流れも台本あるんじゃね? 最初からサンガリーと共同開発してたとか?』



 むむむ、何やら不穏な空気が流れていますよ。確かにボクはサンガリー社とベッタリな関係ですが、この前のキリリンビールの件もありますからね。このままでは第二のスミレさんを生み出してしまうかもしれません。レイプ魔はダメです!!

 何か良い案は無いでしょうか。コーラの普及は儲けよりも世界中の人に味わって貰いたいというコンセプトなので、競合させて一番高いところに提供するのもちょっと違うような。ふーむ……。

 悩んでいるボクにアリスさんが良い案を教えてくれました。

「ユウタちゃん、試しに飲食店とかでコラボして貰うのが良いと思いますわ」

「……ほほう?」

 つまりどこかのお店で試飲して貰うのですね。良いかもしれません。



『バニーちゃん良いアイデアだねー』

『サンガリー社は握手会があるもんねー』

『姫ちゃん先輩、ざんねーん』

『姫子:ぐぬぬ……!!』

『コラボ相手がどこになるのか気になるね』



 コラボした場合、どのお店が良いかなーって考えていたら桜さんが素晴らしい提案をしてくれました。

「ユウタさん言ってましたよね。このジュースと一緒に食べるマッキュは最高だって」

「そ、そうです!! えっと、マッキュの関係者さんでやっても良いよ~って方が居ましたらメッセージとか下さい~」

 桜さんの提案は見事ですね。ボクがマッキュとコラボしたら、マッキュの非売品グッズとかが手に入るかもしれません! そうしたら千代ちゃんの好感度がグッと上がってラブラブチュッチュなイベントに突入ですね?



『マッキュ良いかもね~』

『近くにマッキュあるし、コラボしたら絶対行く!』

『マッキュポテトに炭酸ジュースは最高な組み合わせだよね。うん、美味しいです!!』

『姫子:マッキュ……ぐぬぬ!!』

『姫ちゃんwww』

『マッキュの関係者はいませんかー?』

『まあこの場では出て来ないでしょ。実際に飲んでみないと判断出来ないだろうしね』




「姫ちゃん先輩、ごめんなさい。後でしっかりと説明しますので許して下さい~!」

 ヘタレなボクは姫ちゃん先輩に謝罪するのでした。これからCM撮影とかあるし、サンガリーさんとは仲良くしたいのです……。こんな素人が作ったジュースだし、マッキュが相手にしてくれるかなんて分からないよね。姫ちゃん先輩にお世話になるのは確定な気がしてきました。




 結局マッキュの関係者さんは出て来ませんでしたけど、メールとかで連絡がある事を祈りましょう。

「良い時間になったので、最後にメッセージ選んで終わろうと思いますー! 先生、選んで下さい~」

「うふふ、どれにしようかしら~」

 かなり盛り上がった配信もこれで最後です。どんな質問が来るのかなー。

「あら、あらあらあら!? これが良いわね~」

 ちょっとわざとらしい感じで声を上げた夏子さんはどんなものを選んだのでしょうか?



【旦那が言う事を聞いてくれません。昨日もお風呂掃除するっていう約束を反故されました。旦那を躾ける良いおしおきがあったら教えて下さい】




「……えっ!?」

 お、おしおきですか? うっ……頭が。

「うふふ、今のユウタ君の状況とそっくりね~」

「ユウタさんは噓を吐きましたからね。おしおきが必要かと思います」

「良い家庭を築くには旦那の躾が大事だってお母様が言っていましたわ。ユウタちゃん、おしおきですの?」

 ちょ、アリスさんのはデマですよ。だって琴音さんに旦那なんて居ないじゃないですかー!! 言いたくても言えないので心の中で叫びました。



『ワクワク!!』

『おしおきってどんな事ですか!?』

『先生のお家の秘伝のおしおきが見れるって聞いて来ました!』

『姫子:ユウタ様に厳しいおしおき希望です!!!! 先生様、ビシッとお願いしますよ?』

『鞭でピシピシですか!?』

『ロウソクでアチアチですか!?』

『寸止めしてからピュッピュですか!?』

『姫ちゃん先輩www』



 ふ、ふふ、まだ慌てるような時間じゃない。そう、今日はプレミアム会員向けの配信じゃないのです!! きっと軽いおしおきで終わるはずですよ。

 でも何故だろうか、女性陣の目が獰猛な獣のように鋭くなっているのでした。ガクガクブルブル……。
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作者の別作品も良かったら見てくださいー!『本当にそれ、鑑定ですか?』https://www.alphapolis.co.jp/novel/841552199/951647142※真面目に書いた作品です。作者はラブコメだと思っています!『本当にそれ、ダンジョンですか?』https://www.alphapolis.co.jp/novel/841552199/883739784※本作の主人公であるユウタ君のIFストーリーです。『姫様がメイドさんに開発されちゃう話(仮)』https://www.alphapolis.co.jp/novel/841552199/209716727※『ドロドロ~』の中で起こった場面を切り取った短編小説です。R18なのでご注意ください!
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