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第158話 月が綺麗ですね
しおりを挟むお手伝いさんに案内してもらった6畳くらいの客間に飛び込み、畳の上に敷かれたお布団に潜り込んだのは良いけれど、いつもと違う枕とかが気になって寝れそうにありません。
目を瞑って眠ろうと頑張ってみましたが、眠ろうと考えると余計に眠れなくなるダメなパターンに陥ってしまいました。もう2時間くらいこんな感じなような気がします……。
この客間は畳の良い匂いがしますし、まるで老舗旅館に泊まったみたいですね。あれ、よく考えたらアリスさんの実家にお泊りするのも初めてです。アリスさんのお部屋にも行った事ないですねぇ。
そうだ、これからアリスさんのお部屋に夜這いに行くのはどうだろうか!? そう考えた瞬間、パッと目が開いた。ふふ、待ってて下さいねアリスさん。ユウタいきま~す!!
「……っ!?」
モゾモゾと布団から出ようとしたところ、部屋の入口が開いたような気がした。ハッ、もしや誰かが夜這いに来た感じですか!? 愛棒はまだまだ元気ハツラツですよ!
ボクは狸寝入りをして誰が来るのかワクワクして待つ事にしました。
スッスッっと畳を擦るようにして歩く音が聞こえて来ます。はは~ん、これはアリスさんですね!! 桜さんはボクのお部屋を知らないだろうし、実家の事を熟知したアリスさんに違いない。
ボクはこれから起こる展開にドキドキして覚醒してしまいました。そう、愛棒もね!!
「……ユウタさん~、起きて下さい~……」
「むにゃむにゃ……もう食べられない……」
体を揺すられ声を掛けられました。こ、この声は誰ですか? 声が小さくて判断出来ませんでした。
「あらあら、そんなベタな寝言まで言っちゃって~。うふふ、起きてるのは知ってるのよ~?」
「…………ど、どうしてここに琴音さんが!?」
まさかボクの完璧な狸寝入りを見破るなんて、さすが琴音さんですね。目を開けたら正面にドアップで映る琴音さんの綺麗なお顔がありました。身近にショートヘアな女性が居ないので、ちょっと新鮮ですね。
吸い込まれるような大きな瞳にプルンプルンとした唇、頬に当たる甘い吐息にドキドキとしてしまいます。
「こんな夜中に男の子の部屋に来るなんて、一つしかないじゃない~?」
「そ、それって……んっ!」
こ、こんな素敵な和服美女に夜這いですか!? そんな事を考えたらチュっとキスをされてしまいました。優しくチュッチュするキスに、ボクの事が欲しいという愛情が感じられます。
「んっ、チュっ……ユウタさんは素敵ね~、チュっ、もう少し早く出会って居たら……んんっ……私が結婚したのに……んっ」
「あっ……そんな事ないですよ……んっ……んっ……琴音さんも大好きです……あっ」
チュッチュとキスをしながら雰囲気を高めていく。正直に言おう、琴音さんエロくて大好きです!! 艶やかな黒髪に白い肌、そして和服からチラっと見えるうなじが最高なのです。キングスライムを彷彿とさせる巨大なおっぱいに、バックからグチュグチュにしたくなる大きなお尻、もう色気MAXでメロメロなのでした。
「うふふ、嬉しいわ。……あのね、ちょっとお願いがあるのよ、その、私の夢だったの……今日くらいしか出来ないだろうし……あのね、お願い出来ないかしら?」
「……っ!?」
さっきまでのエッチなお姉様な感じから一転、目をウルウルさせて申し訳なさそうに言う姿に、ズキューンと心臓を撃ち抜かれてしまったのでした。エッチが下手っぴで弱弱な愛棒を揶揄って来る妖しい雰囲気の琴音さんと違い、今の琴音さんはまるで勇気を振り絞って告白したJKのようだ。
ボクは正直に答えました。
「ぼ、ボクに出来る事だったら何でもします!!」
「本当!? 嬉しいわ~!! ……んっ、んん……」
ボクの会心の答えを聞いた琴音さんが喜びのあまりディープなキスをしてくれました。ふふ、こんな素敵な女性に頼られて断れる人間なんて居ないと思います。ちょっと浮気かなって思ったけど、アリスさんのお母さんだし、良いよね♪
もうボクはこの夜這いシチュエーションに酔ってしまい、正常な判断が出来なくなってしまいました。そう、もしこれからボクのお尻が大変な事になったとしても後悔しません!!
「んっ……じゃあちょっと移動しましょう」
「わ、分かりました……」
良い感じにキスで盛り上がって来たのですが、どうやらお部屋移動があるらしいです。あれ、夜這いシチュエーションじゃないんですか?
はは~ん、さてはエッチな声が響いちゃうから防音が効いたお部屋に移動しようって事ですね? ギシギシアンアンと激しい感じで責めろってことですか……愛棒はやる気満々ですよ!!
そして琴音さんに手を引かれてお部屋から飛び出しました。
シーンと静まり返ったお屋敷を琴音さんと手を繋いで歩きます。板張りの廊下を歩くと聞こえるギシっという音が響き、何か悪い事をしているんじゃないかとドキドキしてしまうのでした。
もしかして地下室のスタジオに行くのかなってワクワクしながら進んで行くと、家の裏口に辿り着きました。
「ここで履き替えて頂戴ね」
「は、はい……」
スリッパからお外へ行くサンダルに履き替えました。外はちょっと蒸し暑いですけど、雲一つない綺麗な空に満月が妖しく光り輝いていました。
あまりにも綺麗な月なのでボクは足を止めてしまい、左手に感じる柔らかい手を強く握りながらポツリと呟いていた。
「……月が綺麗ですね」
「…………うふふ、ユウタさんと一緒に見るからでしょう」
月夜に照らされた和服美女は、まるで物語の舞台から飛び出して来たような美しさだった。
ずっと琴音さんを見つめていたい衝動に駆られるが、どうやら目的地はすぐそこなようです。
「さあ、行きましょう」
まるで駆け落ちしたような気持ちになったボクですが、裏口から出て立派なお庭を歩いて少しのところにある離れの小屋に到着しました。小屋と言っても立派なお家にしか見えませんけどね!
重厚な扉を開けて進み、サンダルに履き替えた。そして手を引かれるままに部屋に入りました。
「じゃあユウタさん、これに着替えてくれるかしら? あ、下着とか全部脱いでね」
「は、はい……」
ボクが頭にクエスチョンマークを浮かべながら受け取った衣装に着替えます。薄い白い生地がベースですが、所々に金の装飾が施された肌襦袢です。そう、前に琴音さんが着ていた薄い着物のようなものです。
隣を見たらシュルシュルと音を立てながら着物を脱いでいる琴音さんがいらっしゃいます。もう生着替えを見れて大興奮です。ふわふわとろとろな巨大なスライムも見つけちゃいました。そして肌襦袢を装備した琴音さんが妖しく笑いながら手を握って来たのです。
「うふふ、ちょっと驚くかもしれないけど安心してね」
「わ、分かりました……」
またクエスチョンマークを浮かべて廊下に出ました。そしてうす暗い廊下を進んで行くと、襖の隙間から光が零れているのが見えます。そして襖の前には小柄な女性が二人、正座して待っていました。お手伝いさんでしょうか?
琴音さんとお手伝いさんの視線が交差し、コクンと頷いていました。
「新郎新婦、ご入場でございます」
「えっ……?」
入口にいるお手伝いさんが突然そんな事を言ったと思ったら、襖がシュバっと開きました。急に眩しい光を見て一瞬目を細めてしまいましたが、どうやらここは大広間なようです。それよりも今、新郎新婦って言いました!?
シャリンシャリンという鈴の音や太鼓の音が聞こえる中、ボクは琴音さんに手を引かれて畳の上を進みます。すると、大きな布団が敷かれた傍にある座布団へ座るように指示されました。ここは正座が正しい気がします。
正面を見渡すと、一段低くなった広間には20人くらいの女性達が正座したまま頭を畳に擦り付けるような感じで頭を下げているのでした。そしてボク達と女性達の間には、簾のようなものがあり薄っすらとしか見えません。時代劇とかで良くある偉い人との謁見みたいですねぇ。
「面を上げなさい」
琴音さんの澄んだ声が広間に響いたと思ったら、女性達がスッと頭を上げました。まるで練習したかのようなピッタリなタイミングでした。そして琴音さんが何やら合図を出すと、簾のようなものが無くなりました。ふむ、良く見えます。
女性達はJCからJDも多いですが、そこそこな年齢のお方も居ますね。えっと、これから何が起こるのだろうか?
おっと、良く見れば遠くに桜さんとアリスさんが居るじゃないですか!? えっ、二人とも笑顔でボク達を見つめていますよ! あっ、笑顔で手を振られました。ど、どうなっているんだ……?
「これより、『結婚の儀』のリハーサルを始めます」
「り、リハーサル?」
ボクは更に混乱してしまうのでした……。
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