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第142話 雑談配信 下

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 ゲーム配信で下手くそと言われて激高したボクはみんなの挑発にまんまと乗ってしまい、『できらぁ!』と意気込んで挑戦したのでした。まあ結果はご覧の通りボロ負けですけどね……。

 罰ゲームとしてボクが選んだのは『握手会』です。だってさ、『お尻クチュクチュ』とか『オシッコ』とか、アブノーマルなやつばっかりでボクには耐えられそうになかったのです。女性のオシッコ配信ならちょっと興味ありますよ?

 そんな罰ゲームの『握手会』ですが、思い付きで発言したは良いけれど、会場とかどうしたら良いのか悩んでいました。ヒモでニートに近いボクが会場の借り方なんて知ってる訳が無いのでした。

 うーむ……と悩んでいたところ、チャット欄に救世主が現れたのでした!



『姫子:お困りですねユウタ様』

『姫ちゃん先輩キター!』

『握手会お願いします!!』



「姫ちゃん先輩!!」

 そう、ボクにお仕事をくれるサンガリー社の広報である中野姫子なかのひめこさんです。きっとボクの配信を見るために仕事サボってるんですね。


『姫子:コメント流れるの早いので、通話で参加させて頂きますね』

『今日はゲストいっぱいだなー』

『姫ちゃん頼んだ!!』



 コメントにあったように、姫ちゃん先輩からデスコ通話が来ました。よし、姫ちゃん先輩にお願いしよう。

「ユウタ様、そしてみなさん、こんにちはー! 姫子です~」

「姫ちゃん先輩、いらっしゃ~い!」



『姫ちゃん先輩の声、思ったより若いな』

『顔出しはNGかー』

『ていうかこの時間ってお仕事じゃないの?』

『サボりか!』



「さ、サボリじゃありませ~ん! これはユウタ様の情報をいち早くゲットするためのお仕事なのでーす」

「まあ姫ちゃん先輩がサボリでも良いですけどね! それより姫ちゃん先輩、握手会ってどうやるんですか?」

「ふふふ、ユウタ様は今の視聴人数が何人居るか見えますか?」

「えっと……10万人?」

 画面に見える視聴人数を見たら、何と10万人が視聴していました。あれ、みんなサボリですか?

「そうです! つまりみんな仕事をサボってユウタ様の配信を見ているのです!!」



『今日は休みだしー』

『サボりです。サーセンwwww』

『こんな時間に配信するユウタきゅんが悪いと思います!』

『上司と一緒に見てるよ~!』



 まさかみんなサボリですか。まあ休憩も大事ですよね!

「休憩も程ほどにね? 怒られちゃダメですよー」

「話を戻しますが、ユウタ様はこんな大人数の人と握手会なんて出来ますか?」

「うう……無理な気がします」

 握手会って1人15秒とかだとしても、1分で4人です。1時間フルで回したとして240人ですね。うん、無理だ。

「はい、なのでやっぱり抽選にするしか無いと思うんですよね」

「なるほどー!」



『抽選か……』

『こればっかりはしょうがないよねー』

『あとは倍率だけど、運任せだね』



「そこで私の出番です。我がサンガリー社の広報である私が公平なる抽選のバックアップをお約束しましょう!」

「えええ!? そんな勝手に決めて大丈夫なんですか?」

「ふふふ、私もユウタ様のお陰で出世したのです。これくらいの権限なら独断で可能ですよー」

「凄いですね、さすが姫ちゃん先輩です!!」

 ボクが活躍してサンガリー社が儲かれば、姫ちゃん先輩が出世する。そして姫ちゃん先輩が出世すると、ボクが新しい企画を出来るって事ですね!

「でもでも、どうやって抽選するんですか?」

「人数とかは要調整ですが、うちの商品に応募券を付ければ簡単ですよ~。ぐへへ」




『うわー、姫ちゃん先輩ってば商魂たくましいねー』

『こりゃ対象の商品が売り切れる未来が見える』

『転売ヤーが出て来そう』

『あー、そういうの嫌だよね~』



 姫ちゃん先輩のアイデアは良いと思うけど、コメントを見るとネガティブな内容が多いです。買い占めして転売する人だって居るだろうし、複数応募して確率をあげようとする人だって居るかもしれない。ちょっと自惚れかもしれないけど、ユウタというコンテンツは儲かるのです。

「えっと、抽選は誰でもチャンスがあるように出来ませんか? 平等にいけるような感じで」

「ふふふ、ご安心下さい。買い占めや転売が起こらないようにしっかりと調整させて頂きます。例えば、サンガリー社の商品を購入したレシートを応募券にしたり、IDカードを使って1人1回、複数応募は出来ないようにしたりですね。そこら辺はキッチリと整備させて頂きます」

「おー! さすが姫ちゃん先輩ですね。じゃあ詳しい事は後で打ち合わせをお願いします」

「はーい、お任せ下さい!」



『さすが姫ちゃん先輩』

『てかサンガリー社がユウタ様を独占してるけど、大丈夫なのかな』

『レシートだったら余裕だねー』

『実際のところ、抽選に掛かる費用とか個人情報の取り扱いなんて個人じゃキツイからねー』

『ユウタ様も会社作れば良いのに』



 抽選については姫ちゃん先輩が助けてくれたから何とかなりそうだけど、握手会の会場とかはどうしたら良いのだろうか。広いスペースを個人で借りるなんて無理だろうし、莫大な費用が掛かる。やばい、企画倒れも良いところだぞ……。

 姫ちゃん先輩の言葉では、抽選まではやってくれるって言ってました。でも会場は自分で用意しろって事かな!?

「抽選は姫ちゃん先輩にお願いするとして、後は会場ですね……」

「あー、会場だったらあーしが手伝ってあげるよ」

「ミウちゃん!?」

 ずっと静かだったミウちゃんです。そうか、ミウちゃんの実家はホテルを経営しているんだった。きっと大きなパーティー会場のようなところだってあるのかもしれない。

「いまね、ママとチャットしてたんだけどホテル貸してくれるってさ」

「ほ、本当ですか!」



『ミウちゃんすげー!!』

『さすミウ!!』

『もしかして神楽坂ロイヤルホテルですか!?』

『いいなー。お泊りしたいー』



 コメントを見れば、ミウちゃんを褒める内容や神楽坂ロイヤルホテルに泊まりたいって内容がほとんどです。でも神楽坂ロイヤルホテルって格式高いホテルですから、ボクの握手会なんてダメじゃないかな?

「ユウタ~、ママから伝言。握手会の会場とは別に、神楽坂ロイヤルホテルで20名まで1泊無料招待しちゃうってさ。その代わり、ユウタには1週間ホテルで働いて貰いますって言ってるよ。どうする~?」

「え、良いんですか!? ボクで良ければ一生懸命働きますよ!!」

「えへへ、じゃあ決まりね。詳細は後で詰めようね~」

「分かりましたー!」




『ミウちゃん最高!!!』

『神楽坂ロイヤルホテルって超高いじゃん』

『庶民が泊まれないところだね』

-ジャンに感謝!!』




 ふぅ、姫ちゃん先輩とミウちゃんのお陰で何とかなりそうな気がします。これで一安心ですね。ちょっと疲れたので配信はここで終わりにしましょう。

「じゃあ詳細が決まったら告知しますので、皆さん楽しみに待ってて下さいね~。今日はここまで、またね~!!」




『おつー!』

『配信おつー』

『神配信だった』

『またね~』




 姫ちゃん先輩とミウちゃんに御礼を言って配信を終了しました。あんまり勢いで発言しちゃダメですね。ユウタ猛省。

 自室を出てリビングへ向かったところ、人が居る気配がします。もしや泥棒ですか!?

「お疲れ様です、ユウタさん」

「ユウコちゃんお邪魔してますわ~」

「桜さん、アリスさんおかえりなさい~」

 配信に熱中していて気付きませんでした。どうやらかなり長い時間配信していたようです。

 リビングを見渡しても二人の姿しか無いのでした。夏子さんの姿が見えないけど、トイレかな?

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