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第91話 反省会
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初の企業案件であるライブ配信を行った翌日、ボクはサンガリー株式会社の広報担当の中野姫子さんこと姫ちゃん先輩と反省会をする事になった。
ボクとしては余裕な案件だと思っていたのに、あんなに難しいなんて思ってもみなかった。
パソコンを立ち上げてWEB会議です。ああ、気が重い……。
「あ、こんにちは~。昨晩はすみませんでした……」
『こんにちはユウタ様! いや~さすがユウタ様ですね。もう凄い盛り上がりですよ~』
「えっ? そうなんですか?」
『はいっ! 今朝から電話が鳴り止まないくらいに問い合わせが来てまして、小売店からも注文が凄いんですよ。もう爆売れ間違い無しです!!』
「ほほう?」
つまりボクのレビューが凄くてみんな飲みたくなったって事ですね! 美味しかったし、みんな飲みたいと思うのも頷ける。
『つぶやいたーのトレンドも1位ですよ~。新商品のPRとしては文句無しです。いや~上司から褒められちゃいました!』
「おお、おめでとうございます! ふふふ、やっぱりボクのレビューが好感度抜群だったんですね~」
昨晩つぶやいたーのトレンドでユウタの名前がランクインしたのは知ってたけど、ジュースもランクインしていたのだ。
『いえ、違いますよ~。ユウタ様のクソ演技で企業案件ってバレちゃったじゃないですか。先生様のコラボ企画のお陰です。今朝はつぶやいたーのトレンド見てないんですか?』
何だと!? クソ演技とか酷いです。つぶやいたーをちょっと見てみようかな。
スマホを取り出してつぶやいたーのトレンドを調べたら、1位は『ユウタきゅんのお仕置きチャレンジ』で、2位が『プルンプルンピーチ』、3位が『サンガリー株式会社』だった。そして7位に『クソ演技』があったのだ。あれぇ?
「クソ演技がランクインしてました。……それより1位の『ユウタきゅんのお仕置きチャレンジ』ってもしかしてアレですか?」
『そうです! 今朝うちのHPに掲載しましたが、明日の発売から1か月で3000万本が売れたらユウタ様のお仕置きチャレンジが実行される事になりました。これは先生様と調整済みです』
「いつの間に……」
今朝夏子さんと話した時には何も言っていなかった。つまりそんなに売れるはずが無いだろうという事ですね! 1か月で3000万本って途方もない数字に見える。ボクのフォロワーさんが300万人で、その人たちが10本も買わないといけないのだ。
『うちの会社の株価も高騰してて、もうユウタ様様ですよー。社内で私の評価が高まって、昇進も間違い無いと思います!! ふふふ、今度ご馳走しますね』
「あ、はい……」
今の話を聞いた限り、依頼主である会社に迷惑は掛かっていないようですね。そして何故かボクのお仕置き動画とのコラボレーションが進んでしまったのだ。あれ、もしかしてボクというよりも咄嗟にコラボレーションを発表した夏子さんのお手柄じゃないですかね?
夏子さんがコラボレーションを言い出したのはボクがアタフタしていたのが原因だ。そしてそのアタフタする原因を作り出したのは、姫ちゃん先輩が下手なキラーパスをしたからなのだ。そうだ、姫ちゃん先輩が悪いのです。
「あのあの、結果論で見れば大成功な感じですけど、コラボレーションしなくても爆売れしてたと思いますよ?」
『何を言っているんですか? ユウタ様のクソ演技のせいでグダグダになっちゃったんじゃないですか~』
「ちょ、クソ演技じゃないです~! そもそも姫ちゃん先輩が変なキラーパスをしなければ良い感じにレビューしてましたよー!」
『うん、美味しいです!!! って言うユウタ様の感想が切り抜き動画になって出回っていましたよ? あはは、凄いレビューですねぇ』
「ぐぬぬ……」
ボロクソに言われたい放題である。まあ依頼主からしたらもっと良いレビューを期待したのだろう。責められても仕方が無いのである。でも悔しいです。
『まあ次も依頼する事があると思いますから、練習しておいてくださいね!』
「分かりましたー」
悔しいけどボクの演技力不足が原因であることが分かった。まあ演技力というよりも語彙力が低いという事なのだろう。つまりもっと魅力を伝えられるように勉強しないといけないのだ。
◇
その晩、夕飯を食べながら姫ちゃん先輩とのやり取りを話してみた。
「……という事があったんですよ。まぁ3000万本なんて売れないと思いますけどね~」
「さっき広報の人から電話があったけど、既に500万本出荷したそうよ? しかも問い合わせが止まらなくて大変な事になってるって聞きました。もう時間の問題だと思いますけど……」
なんだって~!? 500万本出荷って強気過ぎるよね……。
「つぶやいたーのトレンドで上位をキープしてますし、3000万本なんて時間の問題かと。ユウタさんのお仕置き動画の準備を進めた方が良い気がします」
「や、やばい……」
どういう事だ? そんなにみんなボクのお仕置き動画が見たいのか!? 男のお尻をクチュクチュする動画だよ!? 変態ばっかりじゃないか!
「それよりもユウタ君、あのレビューはイマイチだったわよ?」
「……うん、美味しいです!!!」
「ちょ、桜さんモノマネしないで良いですから! ううぅ……こんなはずじゃ無かったんですよぉ」
誰かが切り抜き動画をつぶやいたーに投稿していました。そしてバズってたのである。ボクも見たけど、自信満々で言ってるのが恥ずかしかった。
「そうだわ。ちょっと練習してみたらどうかしら?」
「練習ですか……。姫ちゃん先輩がまたお仕事くれるって言ってたので練習するものありですね」
「じゃあユウタさん、このビーフシチューを食べて一言お願いします」
「分かりました!!」
このビーフシチューは今日のお夕食です。夕方から桜さんと一緒に作りました。ふふ、これなら良い感じにレビュー出来るはずだ! いきま~す。
スプーンで大きなお肉を掬ってモグモグします。う~む……。カッコ良く目を閉じてモグモグして感想を考える。そしてナプキン……は無かったのでティッシュでお口を拭いてお上品な感じを演出をします。そう、形から入るのが大事なのです。
「お肉が柔らかくて口の中で蕩けちゃいました! 凄く美味しいです!!」
「……ふふ」
「……ぷっ」
自信満々に言ったのに笑われてしまった。別にウケを狙った訳じゃないんですけど……。もしかして、そんなにダメだったのだろうか……。
「えっと、ダメでした? 個人的には良い感じだったんですけど……」
「うん、凄く良かったわ」
「そうですね。ユウタさんはそのままで良いと思います」
二人とも生暖かい目で見つめて来るのだ。うーむ、解せぬ。まあ次の商品が何か知らないけど、上手いことレビュー出来るでしょう!
その日の夕食は、レビューの練習で盛り上がった。二人を笑顔に出来たからヨシとしようじゃないか。そう納得するのだった。
ボクとしては余裕な案件だと思っていたのに、あんなに難しいなんて思ってもみなかった。
パソコンを立ち上げてWEB会議です。ああ、気が重い……。
「あ、こんにちは~。昨晩はすみませんでした……」
『こんにちはユウタ様! いや~さすがユウタ様ですね。もう凄い盛り上がりですよ~』
「えっ? そうなんですか?」
『はいっ! 今朝から電話が鳴り止まないくらいに問い合わせが来てまして、小売店からも注文が凄いんですよ。もう爆売れ間違い無しです!!』
「ほほう?」
つまりボクのレビューが凄くてみんな飲みたくなったって事ですね! 美味しかったし、みんな飲みたいと思うのも頷ける。
『つぶやいたーのトレンドも1位ですよ~。新商品のPRとしては文句無しです。いや~上司から褒められちゃいました!』
「おお、おめでとうございます! ふふふ、やっぱりボクのレビューが好感度抜群だったんですね~」
昨晩つぶやいたーのトレンドでユウタの名前がランクインしたのは知ってたけど、ジュースもランクインしていたのだ。
『いえ、違いますよ~。ユウタ様のクソ演技で企業案件ってバレちゃったじゃないですか。先生様のコラボ企画のお陰です。今朝はつぶやいたーのトレンド見てないんですか?』
何だと!? クソ演技とか酷いです。つぶやいたーをちょっと見てみようかな。
スマホを取り出してつぶやいたーのトレンドを調べたら、1位は『ユウタきゅんのお仕置きチャレンジ』で、2位が『プルンプルンピーチ』、3位が『サンガリー株式会社』だった。そして7位に『クソ演技』があったのだ。あれぇ?
「クソ演技がランクインしてました。……それより1位の『ユウタきゅんのお仕置きチャレンジ』ってもしかしてアレですか?」
『そうです! 今朝うちのHPに掲載しましたが、明日の発売から1か月で3000万本が売れたらユウタ様のお仕置きチャレンジが実行される事になりました。これは先生様と調整済みです』
「いつの間に……」
今朝夏子さんと話した時には何も言っていなかった。つまりそんなに売れるはずが無いだろうという事ですね! 1か月で3000万本って途方もない数字に見える。ボクのフォロワーさんが300万人で、その人たちが10本も買わないといけないのだ。
『うちの会社の株価も高騰してて、もうユウタ様様ですよー。社内で私の評価が高まって、昇進も間違い無いと思います!! ふふふ、今度ご馳走しますね』
「あ、はい……」
今の話を聞いた限り、依頼主である会社に迷惑は掛かっていないようですね。そして何故かボクのお仕置き動画とのコラボレーションが進んでしまったのだ。あれ、もしかしてボクというよりも咄嗟にコラボレーションを発表した夏子さんのお手柄じゃないですかね?
夏子さんがコラボレーションを言い出したのはボクがアタフタしていたのが原因だ。そしてそのアタフタする原因を作り出したのは、姫ちゃん先輩が下手なキラーパスをしたからなのだ。そうだ、姫ちゃん先輩が悪いのです。
「あのあの、結果論で見れば大成功な感じですけど、コラボレーションしなくても爆売れしてたと思いますよ?」
『何を言っているんですか? ユウタ様のクソ演技のせいでグダグダになっちゃったんじゃないですか~』
「ちょ、クソ演技じゃないです~! そもそも姫ちゃん先輩が変なキラーパスをしなければ良い感じにレビューしてましたよー!」
『うん、美味しいです!!! って言うユウタ様の感想が切り抜き動画になって出回っていましたよ? あはは、凄いレビューですねぇ』
「ぐぬぬ……」
ボロクソに言われたい放題である。まあ依頼主からしたらもっと良いレビューを期待したのだろう。責められても仕方が無いのである。でも悔しいです。
『まあ次も依頼する事があると思いますから、練習しておいてくださいね!』
「分かりましたー」
悔しいけどボクの演技力不足が原因であることが分かった。まあ演技力というよりも語彙力が低いという事なのだろう。つまりもっと魅力を伝えられるように勉強しないといけないのだ。
◇
その晩、夕飯を食べながら姫ちゃん先輩とのやり取りを話してみた。
「……という事があったんですよ。まぁ3000万本なんて売れないと思いますけどね~」
「さっき広報の人から電話があったけど、既に500万本出荷したそうよ? しかも問い合わせが止まらなくて大変な事になってるって聞きました。もう時間の問題だと思いますけど……」
なんだって~!? 500万本出荷って強気過ぎるよね……。
「つぶやいたーのトレンドで上位をキープしてますし、3000万本なんて時間の問題かと。ユウタさんのお仕置き動画の準備を進めた方が良い気がします」
「や、やばい……」
どういう事だ? そんなにみんなボクのお仕置き動画が見たいのか!? 男のお尻をクチュクチュする動画だよ!? 変態ばっかりじゃないか!
「それよりもユウタ君、あのレビューはイマイチだったわよ?」
「……うん、美味しいです!!!」
「ちょ、桜さんモノマネしないで良いですから! ううぅ……こんなはずじゃ無かったんですよぉ」
誰かが切り抜き動画をつぶやいたーに投稿していました。そしてバズってたのである。ボクも見たけど、自信満々で言ってるのが恥ずかしかった。
「そうだわ。ちょっと練習してみたらどうかしら?」
「練習ですか……。姫ちゃん先輩がまたお仕事くれるって言ってたので練習するものありですね」
「じゃあユウタさん、このビーフシチューを食べて一言お願いします」
「分かりました!!」
このビーフシチューは今日のお夕食です。夕方から桜さんと一緒に作りました。ふふ、これなら良い感じにレビュー出来るはずだ! いきま~す。
スプーンで大きなお肉を掬ってモグモグします。う~む……。カッコ良く目を閉じてモグモグして感想を考える。そしてナプキン……は無かったのでティッシュでお口を拭いてお上品な感じを演出をします。そう、形から入るのが大事なのです。
「お肉が柔らかくて口の中で蕩けちゃいました! 凄く美味しいです!!」
「……ふふ」
「……ぷっ」
自信満々に言ったのに笑われてしまった。別にウケを狙った訳じゃないんですけど……。もしかして、そんなにダメだったのだろうか……。
「えっと、ダメでした? 個人的には良い感じだったんですけど……」
「うん、凄く良かったわ」
「そうですね。ユウタさんはそのままで良いと思います」
二人とも生暖かい目で見つめて来るのだ。うーむ、解せぬ。まあ次の商品が何か知らないけど、上手いことレビュー出来るでしょう!
その日の夕食は、レビューの練習で盛り上がった。二人を笑顔に出来たからヨシとしようじゃないか。そう納得するのだった。
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