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第30話 恵美さんは寂しがり屋さん

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 昨日は二人にトロトロにされてしまった。ゲームと違ってボス2体を相手にするには、ボクの愛棒じゃレベルが足りなかったのである。でも何故だろうか、すごく幸せだったのだ。

 そして今日は夏子さんの妹さんに会いに行くのです。ボクの戸籍を用意してくれたのが彼女だそうです。あれ、夏子さんのお母さんが手伝ってくれるって話じゃなかったでしたっけ? まあいいか!

 お出掛けする前に桜さんと一緒にお昼ご飯を作ります。今日の昼食は親子丼を作りますよ! 親子丼って聞くとちょっとドキドキするのは内緒です。

「じゃあユウタさん、一緒に親子丼を作っていきましょう」

「は、はい! よろしくおねがいします!」

 そう、料理を勉強したいと言ったボクに桜さんが料理の手ほどきをしてくれることになったのです!






「それじゃダメです。左手は丸くしないと指を切っちゃいますよ。猫ちゃんの手です」

「にゃ、ニャーン!」

 玉ねぎを薄切りにしていたら、教官からおしかりを貰ってしまった。思わず猫になっちゃいました。先日お好み焼きを作った時にキャベツを千切りにしたけど、あれは千切りじゃなくて刻んだだけだね! 桜さんがお手本を見せてくれたけど、すごく早くて正確で見事な包丁捌きでした。

 教官の言う通りに切っていくが、ちょっと難しいぞ……。そう思っていたら背後から桜さんの手が伸びてきて、ボクの手に重ねてきた。

「そうじゃないです。こうやってやるんです」

 桜さんがボクの手を操るようにスムーズに動かし、玉ねぎがどんどんと薄くスライスされていく。すごい、まるでボクの手じゃないようだ! でも……。

「あの、桜さん? そんなに密着しないでも良いと思うんですけど……」

「……うるさいですね。口答えしてはいけません」

「あ、はい……」

 背中に桜さんの柔らかいお胸がムニュっと当たり、腰も密着している。そしてボクの耳元で甘く囁くのだ。桜さんの甘い匂いが漂い、料理に集中できないのである。

「じゃあ次は鶏肉を一口サイズに切っていきます」

 もうボクは単なる操り人形で、背中に感じるムニュムニュを堪能しているだけで料理が出来てしまうのでした。……この世界は凄すぎる!

「ユウタさん、しっかりして下さい。そんなんじゃ料理が上手くなりませんよ?」

「うぇっ!? ご、ごめんなさい……」

 桜さんはボクに料理を教えると言うよりも、密着して楽しんでいるだけなような気がするぞ。

 そうしてボクは、ほとんどの作業を桜さんに操られ、いつの間にか親子丼が完成したのでした。……うん、すごく美味しかったです!



   ◇



 自宅から車で15分くらいした場所にあるタワーマンションに到着しました。やっぱり夏子さんのお家はお金持ちなんですね。妹さんはここで一人暮らしをしているそうです。しゅごい……。

 今日のお出掛けは男のままの服装で行くのかと思ったけど、トラブル予防も兼ねて女装して行くそうです。……もう女装するのに抵抗が無くなりましたね。

「あの、恵美めぐみさんって夏子さんの妹さんなんですよね? どんな方なんですか?」

 これから会うという事で、気になって聞いてしまった。

「うーん、何て言ったら良いのかしら。……お金持ちのロリ巨乳……かしら?」

「えっ!?」

「あとはホスト好きな感じかしら……」

「……ほほう?」

 つまり、成金ロリ巨乳ビッチさんか……うん、良いよね♪ きっと株とかで稼いでいるのだろう。そしてこの世界で貴重な男性を求めてホストに通っているのかな。ミウちゃんの動画でホストのテル君に貢いでるって言ってたし、恵美さんも同じなのかもしれない。

 そして気が付いたら玄関ドアが目の前にありました。そして夏子さんが自分の家のようにチャイムも鳴らさず勝手に入っていきました。ボクは夏子さんに続いて入って見ると、夏子さんのマンションと同じくらいの豪華なお部屋ですね。

「おー! いらっしゃい夏っちゃん。桜ちゃんも良く来たね~」

「ただいまです、おか……、ん゛っ、失礼、メグちゃんお邪魔しますね」

「お邪魔しますメグちゃん」

 この人が成金ロリ巨乳ビッチさんの恵美さんか……。身長がボクより小さいのに夏子さんと同じくらいお胸が大きく、腰まで届くロングポニーテールが素敵なお嬢様ですね。パツパツなTシャツにミニスカート、そしてニーソックスという素敵なお洋服がお似合いです。この元気いっぱいの可愛い女の子が夜な夜なホストに通っているとか、すごく興奮する! まさに成金ロリ巨乳ビッチさんの名に恥じぬ美人さんですね!

 でも何故だろうか、夏子さんの挨拶がおかしかったぞ。最初は何て言おうとしていたのだろうか……。まあそれよりもボクはお礼を言わないとダメですね。だって、この人がボクの戸籍をゲットしてくれたのだ。……一体どうやって戸籍をゲットしたんでしょうね?

「え、えっとぉ、園田裕太です。あの、恵美さんには戸籍を用意して頂いたそうで、その、ありがとうございました!」

「……グハッ」

 ボクがモジモジと恥ずかしさを感じながらお礼を言うと、何故か恵美さんが胸を抑えてうずくまってしまった。あれ、何か変な事ありましたっけ? ボクはそっと恵美さんに近づき、声を掛けた。

「だ、大丈夫ですか!?」

「も、もうダメかも……尊死する」

「え? なんですか尊死って」

 どうしちゃったのだろうか。恵美さんは顔をウットリとさせて悶えていた。うーん謎だ。

「ユウタ君気にしないで大丈夫よ。さあ、お茶でも飲みましょうか。桜ちゃんお願い出来るかしら」

「はい、先生」

 そしてウットリするお姉さん恵美さんを放置して、奥の部屋へと向かうのだった。恵美さんってボクより小さいから、お姉さんって言うようも妹さんって感じがする……。そう言えば何歳なんだろうか?




 広い客間と思われるお部屋に勝手に進みソファーで一休みです。大きなテレビとスピーカーがあって、映画とか見たら大迫力に違いない。

 桜さんが用意してくれたアイスティーを飲んで雑談していると、いつの間にか恵美さんが戻ってきた。そしてボクの隣に座る夏子さんとの間に強引に割り込んできたのだ。

「ちょっとおか、……メグちゃん!! そこ私の席なんですけど!?」

「は~? ここは私の家よ! 夏っちゃんはそっちそっち。……ユウ君いらっしゃい! ずっとここに居て良いからね?」

「えっ!? あ、その……」

 さっきから夏子さんは『おか……』って言ってるけど、何でしょうか? お金持ちとか言おうとしたのかな。まあ自分の妹とは言え、お金持ちって言うのも失礼だもんね。きっとボクが居ないところでは仲良くしていると思いたい。

「あ~ん、ユウ君が可愛すぎる! ねーねー、本気でここに住まない? 欲しい物何でも買ってあげちゃう。居てくれるだけで良いの!」

 恵美さんがボクの腕に抱き着いて迫ってくる。ロリロリな体にロリロリな甘い声、そして甘い香りがボクを誘惑してくる。ちょっとクラクラしてしまうのだ。ああ、きっと二人に会わなかったらイチコロだっただろう。

「えっと、ボクは夏子さんと桜さんのお婿さんなので、その……ごめんなさい」

 言った瞬間、後悔してしまった。ボクの言葉を聞いた恵美さんが泣きそうな顔で俯いてしまったからだ。ああ、ボクは何て酷い事を言ってしまったのだろうか。

「そっか……。やっぱりユウ君も他の男の子と一緒で私なんか好きになってくれないのね。夏っちゃんみたいな女性が良いんでしょ? ごめんね、変な事言っちゃって……」

「――っ!?」

 その言葉を聞いた瞬間、後悔を通り越して頭が真っ白になってしまった。彼女は身長が140cmくらいしかなく、男性に相手にされなかったのだろう。この世界にはロリコンさんは居ないのかもしれない。そして少しでも男の子と接したくてホストクラブになんて通っていたんだ。ああ、罪悪感で圧し潰されそうだ。ボクの居場所戸籍を用意してくれた恩人に、なんて酷い事を言ってしまったのだろうか。

 薄っすらと涙を浮かべる彼女を見てしまい、ボクは自分に問いかけた。



――ボクはこの小さな女の子をどう思っているのか?

 会ったばかりだけど、嫌いじゃない。こんなに小さくて可愛いのに優しいお姉さんというギャップ盛り沢山な女性を嫌いになる訳がない。そして何より、夏子さんの妹さんだ。出来る事なら仲良くしたいと思っている。


――ボクに出来る事は何だろうか?

 ボクは既に夏子さんと桜さんというお嫁さんがいる。だから不貞は働けない。でも、もしボクが一緒に居る事で少しでも彼女が満たされるのなら、何だってしよう。


――彼女の寂しさを埋めるのはどうしたら良いだろうか?

 この広い家で一人ぼっちの彼女に、ちょっとでも寂しい時間を減らしてあげたい。一緒に住むのは無理だけど、遊びに行くくらいだったら良いんじゃないか? そうだ、それが良い!



 俯いてしまった彼女の正面に移動し、彼女の両肩に優しく手を置く。ハッとした彼女が前を向き、綺麗な目から一筋の涙が零れた。

「あの、ボクは夏子さんと桜さんと結婚しているので一緒に暮らすことは出来ません。でも、恵美さんには恩義を感じています。だから……」

 恵美さんの綺麗な目を見つめる。吸い込まれそうなくらい綺麗な輝きを放つ彼女の目は、宝石のようだった。きっとこの目に相応しい心のキレイな人なのだろう……。

「お友達になりましょう! 毎日は無理ですけど、遊びに来ます。それでちょっとでも恵美さんの心の隙間が埋められるのなら、何だってします。だって、恵美さんはボクの戸籍をくれた人大切な人ですから!」

「……ユウ君!!」

 大粒の涙を浮かべた恵美さんがボクに抱き着いて来た。大きなお胸の感触にドキドキしてしまったが、今は変な事を考えてる場合じゃありません。彼女を安心させるように背中を優しくポンポンしてあげます。

「あーあ、やっちゃったわね……」

「ユウタさん、調教おしおきが必要ですね」

 あれ、ここは感動して二人も涙ぐむ場面じゃないですかね? 何やら不穏な発言をしていました。……解せぬ。
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