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第21話 二人の旦那さんという意味

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 しばらくすると桜さんの心に巣食う黒い部分が無くなったのか、ボクの拘束が解除された。そして別室にあるベッドへ連れてこられたのだ。ボクはベッドに押し倒されて濃厚なキスをされ、長い時間愛し合っていたのである。

 精液採取の時にずっと焦らされていたため、ベッドの上でも管理されちゃうのかとビクビクしていたけど、そんな事は全くなかった。逆に怖いくらいに甘やかしてくれたのだ。

「ふふ……もう限界ですか? もう我慢する必要ありませんよ」

 ボクは桜さんに抱きしめられ、体全体が柔らかい何かに包まれている感じがする。桜さんは小刻みに腰を揺らし、ボクの耳元でずっと愛を囁くのだ。

「……さくらしゃん……もう、らめぇ……しゅきです……」

「はい、私もユウタさんが大好きですよ。もっと気持ち良くなって、トロトロになりましょうね」

 桜さんの声が耳元で囁かれる度、どんどんボクの脳が犯される。下半身の気持ち良さと相まって、ボクは桜さんの事しか考えられなくなってしまったのだ。

「あ、またいっぱい出ましたね。偉いですよ~。うふふ……空っぽになるまで気持ち良くなりましょうね~」

「さくらしゃん……しゅきー」

 ボクの劣情が吐き出される度に、思考能力が無くなっていくのを感じていたのだった……。





   ◇ 夏子さんSide ◇





 精液採取が終わってからかなりの時間が過ぎた。もう検査結果も出ているので、いつでも帰ることは可能だ。健康診断の結果はオールA判定、そして精液のランクはAである。精液の量は言うまでもなく合格、そして精子も元気過ぎたのだ。これなら祝福日の女性だったら高確率で妊娠する事が出来るだろう。現在の日本においてSランクの人は該当せず、海外に数名存在が確認されているのである。

 ユウタ君の出自が不明であることが大きく価値を下げてしまったのだ。まともな出自があれば、余裕でSランクになっていたはずだ。やはりどの女性にとっても男性を出産する事が夢であり、その中でも自分の子供には良い血統を残してあげたいというのが親心である。まあユウタ君の場合、容姿を売りに出せば引く手あまたであるので心配する必要はないだろう。

 もうお昼の時間を大きく過ぎてしまい、お腹がクークーと悲鳴を上げた頃、私の部屋に二人がやってきた。

「あ、やっと終わったのね。ちゃんとシャワー浴びてきた?」

「お待たせしました、先生。キチンと掃除もして来ましたので問題ありません」

「分かったわ。それより……ユウコちゃんどうしちゃったの?」

「ふふ……どうやら私にメロメロのようです」

 入ってきた二人の様子は病院に来る前とは打って変わり、ユウタ君が桜ちゃんの腕に抱き着いているのである。ユウタ君は頬を赤くして、目がハートマークになっているのが分かる。……一体あの後、何があったの?

 桜ちゃんは昨日まで、好きな男の子にちょっかいを出す女の子になっていた。初めて好きになった男の子に、スキンシップしたくて堪らなかったのである。私ももう少しベタベタしたかったけど、自制が働いてしまった。……年齢の差じゃないと信じたい。きっと性格の違いだろう。

 そんな桜ちゃんに警戒心を抱いていたと思われるユウタ君だけど、今の状態を見たら警戒心なんて微塵も感じていない。そんな二人を見ていたら、胸がチクりとした。これはもしかして、嫉妬だろうか?

「じゃあご飯食べに行きましょうか。ユウコちゃんは朝食も食べてないし何か食べたいものありますか?」

「えっと、うーん、……そうだ。ラーメンが食べたいです!」

「ラーメンね……」

 まさかのラーメンでした。ラーメンを食べる事なんて年に数回程度で、あまり好んで食べる事はなかったのである。でもユウタ君が食べたいと言うなら美味しいところへ連れてってあげよう。

「じゃあ美味しい味噌ラーメンのお店があるから、そこでどうかしら?」

 ユウタ君は満面の笑みを浮かべて大きく頷いた。そして私たちは遅い昼食を食べに行ったのだった。






 ラーメン屋に着いたが、もしかしたら私の顔には不機嫌さが滲み出ているかもしれない。ユウタ君はあれだけ嫌っていた助手席に自分から座り、信号で停車したちょっとの隙にコッソリと桜ちゃんとキスをしていたのである。それを後部座席で見つめていたら、桜ちゃんにユウタ君が取られてしまったような気がして、胸が痛かった。

 私たちは普通の味噌ラーメンを頼み、ユウタ君は追加で半チャーハンを頼んでいた。健康診断のため朝ご飯を抜いていた事もあり、お腹が空いているのだろう。

「このラーメンすごく味噌が濃厚で美味しいです!!」

「気に入って貰えて良かったわ」

 昼食のピークタイムを過ぎている事もあって、店内は私達しか居なかった。4人が座れるテーブル席で、私だけ一人……。隣には誰も居ないのである。昨日まで気にした事が無かった感情が湧き出てきたのだ。さて、私はどうしたら良いのだろうか……。

 仲良さそうに食べる二人の姿を見て作戦を考える。別に桜ちゃんをどうにかしようとか、無理やり私の事を好きになるようにしようとか、そう言った考えは最初から無かった。だから、やっぱり私なりにユウタ君を振り向かせる必要があるだろう。そう、桜ちゃんには無い私の魅力で……。

 桜ちゃんをさり気なく見つめる。普段は無表情で寡黙な女の子だけど、今は違う。白い肌は薄っすらとピンク色に染まり、目にハートマークが見える気がする。まさに恋する乙女だ。

 私と桜ちゃんを比較すると、桜ちゃんには若さがある。逆に私にあって桜ちゃんに無い物は、この大きな胸と包容力だろう。よし、明日からはこれを武器にユウタ君をトロトロにしてしまおう。そうすれば、桜ちゃんだけじゃなくて私にも甘えてくれるかもしれない。

「どうしたんですか夏子さん。元気が無いように見えますけど……」

「うふふ……心配してくれてありがとう。でも大丈夫よ」

「そうですか……」

 どうやら私の寂しい気持ちを察知してくれたらしいわね。やっぱりユウタ君は優しくて素敵な男の子だ。

 昼食も終わりラーメン屋から自宅までの車内では、ユウタ君は後部座席に座ってくれた。そしてさり気なく私の手を握ってくれた時、下腹部がキュンとしてしまった。ああ、やっぱり私はこの子が好きだ。

 よし、明日からはちょっとワガママを言っちゃおうかしら。




   ◇ ユウタSide ◇




 今日のイベントが終わり、自室に帰って来た。色々な事があったけど、今は幸せという気持ちで溢れている。

 こっちの世界で初めて食べた味噌ラーメンはとても美味しかった。あのお店が当たりだったのかもしれないけど、ドロドロの濃厚なスープが太麺に絡まり、至福の一杯だったのである。

 そして何より、桜さんと一つになった事で気持ちも繋がったような気がするのだ。桜さんは元の世界だったらアイドルとして天下を取れるんじゃないかという美しさだ。ボクなんかじゃ一生縁が無いような美少女と、医療行為イチャイチャしてしまったのだ。

 まあ実際には先日もしたはずだけど、ボクの中ではさっきのが初体験なのである。いつものドSな雰囲気の桜さんとは違って優しかった。そう、まるで童貞のボクを気遣うような……。もうボクは桜さんにメロメロです。

 でも、夏子さんの寂しそうな雰囲気が気になった。もしかしたら急に桜さんと仲良くなったボクを見て、不安になってしまったのかもしれない。ボクは初めての医療行為イチャイチャにより、舞い上がってしまったのである。夏子さんだってボクのお嫁さんだ。不安にさせるような事はしたくない。よし、これからは積極的にコミュニケーションを取ろう。そうと決めたら早速行動だ!

 自室からリビングへ向かうと、仲良く雑談しながらテレビを見ている夏子さんと桜さんが居た。

「あの……ボク、ちょっと相談があるんですけど」

「あら、何かしら?」

 ボクの発言を聞いた二人は、お互いに顔を傾げていた。さて、どうやって伝えようか。ボクの中で、桜さんを好きな気持ちと同じくらい夏子さんの事が好きだ。正直な気持ちを言うと、ボクには一人の女性でさえいっぱいいっぱいで、とても二人同時に愛する事なんて出来ないと思ってしまう。でも、それじゃダメなんだ。ボクはこの二人を平等に愛さなければいけない。だって、二人はボクの命の恩人であり、お嫁さんなのだから。そうだ、ありのままを伝えよう!

「その、今日は桜さんといっぱい仲良く出来たので、今度は夏子さんがお休みの時にでも二人きりでデートしませんか? 一緒にお買い物行ったり、ボクがお昼ご飯を作ったり、お外で遊んだり。その、夏子さんもボクのお嫁さんですし、大事にしたいんです。さっきも夏子さんが悲しそうな顔をさせてしまって、ボクはお婿さんとして失格だって反省しています。ちょっと興奮しちゃってました。ごめんなさい! こんなボクじゃ不安かもしれませんけど、えっと、二人を愛しています!」

「……」

「……」

 あ、あれ、ボクの言葉を聞いた二人が固まってしまった。ヤバい、緊張して変な事を言ってしまったかもしれない。

「桜ちゃん、私明日は会社休むから宜しくね。明日はユウタ君とデートするわ」

「はい、分かりました。私がフォローしておきますので、ごゆっくりどうぞ」

「え、あ、あれ?」

 どういう事だろうか……。二人が薄っすらと目に涙を浮かべ、嬉しそうに微笑んでいた。そして夏子さんは会社をサボるって言っています。二人が同時に立ち上がり、ボクに抱き着いてきた。

「ユウタ君ありがとう、私あなたみたいな素敵な男の子に出会えて幸せよ。もう今すぐエッチしたいけど、明日まで我慢するわ」

「ユウタさんは素敵です。こんな優しい男の子は世界中探したっていません。私も襲いたくなっちゃいましたけど、今日は我慢します」

 二人に左右からサンドイッチされ、両耳に甘い事を流し込まれてしまった。脳が震え、甘い匂いに溶けそうになってしまう。

「え、えっとぉ、その、こんなボクですが、これからもよろしくお願いします……」

 情けない事に、こんな返答しか出来ないのであった。よし、二人に捨てられないようにしっかりと主夫をしよう。

「うふふ……絶対に逃がさないわよ、私の旦那様」

「ふふ……もう私無しじゃ生きられない体にしてあげますね、ご主人様」

 そうしてボクは左右から甘いキスをされ、トロトロに溶かされてしまったのだった。

 ボクが出来る事は少ないかもしれないけど……、この大好きな二人を目一杯愛そうと誓うのだった。
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