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第16章 魔王対勇者
第532話 よくある選択肢……抗えないゲーマー魂
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※ 今回は勇者たちと魔王が顔合わせとなり一部を除き集合したので、16名という多さで氏名更新の生徒が出てきます。全員が名前の更新です。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
季節は巡りケビンが29歳になる年度の4月、エレフセリア学園に通うエミリー【サーシャ】、フェリシア、フェリシティ【スカーレット】、二ーアム【ニーナ】が6年生となり、アレックス【アリス】、シーヴァ【シーラ】、シルヴィオ【ティナ】、オルネラ【クリス】、スヴァルトレード【アビゲイル】、アルマ【アイリス】、キャサリン【ケイト】、パトリシア【プリシラ】、ニコラ【ニコル】、レイチェル【ライラ】、ラーク【ララ】、ルーク【ルル】、クラウス【クララ】、クズノ【クズミ】が5年生となる。
そして、その1つ下の学年にはケネス【ケイラ】、マカリア【マヒナ】、フランク【フォティア】、ノーラ【ネロ】、ショーン【シーロ】、アドリーヌ【アウルム】、ラシャド【ラウスト】、ナット【ナナリー】、アーロン【アンリ】、バーナード【ビアンカ】、カール【シンディ】、ダン【ドナ】、エドウィン【エレノア】、ヴァレンティア、ヴァレンティナ【ヴァリス】、セレーナ【セシリー】、ミア【ミレーヌ】、アリアナ【アイナ】、ジェンナ【ジェシカ】、マレイラ【ミケイラ】、ウルヴァ【ウルリカ】、ヌリア【ナディア】、コール【キキ】、オスカー【オリアナ】、ギャリー【グレース】、アシュトン【アリエル】、リチャード【リリアナ】、オフェリア【オリビア】、イギー【イルゼ】、ハロルド【ヒラリー】、リンカー【リーチェ】、ヘザー【ヒルダ】、ジェマ【ギアナ】が進級した。
それから去年入学したヴァンス【ヴァレリア】、テレサ【ターニャ】、ミリー【ミンディ】、ニキータ【ニッキー】、ルーシー【ルイーズ】、ジュエル【ジュリア】が2年生となると、新たにアドラ【アブリル】、バジル【バジリナ】、カリナ【カルメラ】、ドゥルセ【ドロシー】、ファリカ【ファティ】、ノアナ【ノエル】、リージー【リゼット】、ポレット【ポーラ】、フィンレー【フィオナ】、ジーン【ジゼル】、ヘクター【ヘレン】がエレフセリア学園に入学する。
そのような中で、帝国領に入っている勇者たちが続々と集結して帝都への道のりを進んでいくと、それに対してケビンが行ったのは帝都まで行かせないために、皇帝領直轄地の拓けた場所に魔王城を建ててしまうという遊び心満載の対応である。
「やべぇ……めっちゃ魔王城感出てる……」
「ケビンさん……こんな物を作ったら魔王と言われても仕方がないですよ……」
ケビンはその城の雰囲気を出すためにどこで回収したのかわからないが、状態維持を付与した結界内に暗雲を閉じ込めて上空に設置しており、結界内だから別にいいだろという判断の元、ひと手間かけるとその暗雲からは稲妻がひっきりなしに走っていた。その上空に佇む暗雲のおかげ?で魔王城付近は暗がりとなり、傍から見れば誰しもが『不吉な城』と言わざるを得ない状況と化している。
そのような魔王城を見上げているのは2人で、創り出したケビンは当たり前のことだが、他者の意見を聞くために九鬼もまたケビンに連れられてこの場で魔王城を見上げていた。
「よし、あとはしばらくこの付近に近寄らないように、お触れを出すだけだな」
「誰も近寄りたくありませんよ、こんな不気味な城の近くなんて……」
こうして突如出現した魔王城は、他の街に比べると比較的近くに住む都民たちの間で噂となり、せっかくケビンがお触れを出したというのに九鬼の予想を裏切っては、ひと目その城を見ようとして観光客という名の野次馬が後を絶たない。
「へぇーこれが陛下の新しく始めた遊びか?」
「魔王城って言うらしいぞ」
「不気味だなぁ……帝城とはえらい違いだ」
「陛下の遊びにも困ったもんだねぇ」
「あとで片付けてくれるのかしら?」
「これがある以上は流通に迂回路を使わないといけなくなるわ」
そのような野次馬たちを見ているケビンは、上空で1人呟く。
「解せぬ……」
そして、その野次馬の中にはいち早く帝都についていた無敵たちの姿もあった。
「これが魔王城か……」
「これを奪って力也の城にしようぜ!」
「不気味だな」
「いや、どう見てもヤバいっしょコレ!」
「いつの間にできたのかな?」
「魔王の力は計り知れないわ」
野次馬のせいで観光地と化してしまっている魔王城は、おどろおどろしい様相をしているのに、何故だか平和のひとコマみたいな緊張感のないものへと変わり果てていた。
そして迎えた勇者たちとの決戦当日。勇者たちは遠くからでも見ることのできた魔王城を視界内に収めては、改めて今から魔王と戦うのだと心に刻みつけていく。
「みなさん……今までみなさんが修業を積み重ねてきていたことを、私は知っています。この世界に勇者として召喚されたみなさんは、もはや私の強さを超えました。そのみなさんが協力すれば魔王を倒すことも可能でしょう」
総団長であるガブリエルが勇者たちに激励の言葉をかけていると、勇者たちの表情も自信に満ちたものへと変化して、ガブリエルの言葉に耳を傾けるのだった。
今この場には行方不明の東西南北、しれっとケビンサイドに属している九鬼以外の生徒たちが集結していて、セレスティア皇国に居残りしていた六月一日、一二月一日、小鳥遊、百足も、暫定奥さんと子供を皇都に残して駆けつけてきていた。
「フッ……とうとう王たる俺の力を見せつける絶好のステージが用意されたわけだ」
幻夢桜がそのようなことを呟いていると、別の場所では別の者が意気込みを口にしている。
「とうとうここまでやってきましたわ。香華、わたくしから離れてはいけませんわよ」
「うん、麗羅ちゃんの傍にいるよー」
それは召喚されてからずっと一緒に行動を共にしてきた勅使河原と弥勒院であった。
「士太郎、勝てると思うか?」
「やってみないことにはな。サポートは任せたぞ、大輝」
勅使河原と弥勒院の近くでは、皇都を離れる際から行動を共にしている卍山下と蘇我がお互いに気持ちを切り替えていた。
そして幻夢桜グループとは別の場所では、また別のグループが会話をしている。
「みんな、力を合わせて必ず勝とう! そして僕たちは元の世界に帰るんだ!」
「うん! 能登君の言う通りだよ! 魔王を倒して今度は元の世界に帰る方法を見つける旅に出ましょう!」
クラス委員長である能登の言葉に副委員長である剣持が相槌を打つと、今まで共に力を合わせてきたグループメンバーも思いを口にしていく。
「雪菜、貴女の背中は私が守るわ!」
「姫鶴ちゃん!」
銘釼が守る意思を口にすれば、それに対して剣持も喜びを顕にすると、辺志切も同じようなことを能登に対して口にする。
「高光、背中は任せろ。お前は前を向いて突き進め」
「任せたぞ、孝高」
「青春だね~泉黄ちゃんもそう思うよね~」
「南足さんは気楽過ぎ」
「逢夢、こんな時くらい真剣になって」
しかしながら、ガチグループの中の4人が意気込みを見せている中で、同じグループメンバーである南足がお気楽な感想をこぼしていると、その話を振られた不死原が苦言を呈し、それに銘釼も便乗していたのだった。
「俺、これが終わって皇都に帰ったらプロポーズしようと思うんだ」
「鷲斗、お前もか? 実は俺もなんだ」
「なんだ、強生もか。俺もそうだぞ」
「霖空もか。実は俺も……」
「颯太もか……結局俺たち4人は恋人と子供を見捨てられないってわけだな」
「「「だな」」」
小鳥遊がとても危険なセリフを呟くと、その近くでそれを聞いていた者たちが騒ぎ始めてしまう。
「しょ、小生! リアルで死亡フラグを立てた人を初めて見たのですが!」
「小鳥遊氏に引き続き、百足氏まで口にしたでごわす!」
「それどころか六月一日殿に、一二月一日殿まで後を追っていますぞ!」
「ヤバいでござるな。実にヤバいでござる!」
オタクグループ【オクタ】の男子メンバーが口々にフラグに対して議論を交わしている中、自由奔放な生徒会長は我が道を貫いていく。
「ミートソーススパゲティが食べたい……」
「こんな時くらい我慢しましょうよ。そう思うよね、春陽ちゃん」
「ツッコんだら疲れるだけだよ、穂ノ香ちゃん……」
「なんだかんだでミートソーススパゲティを探す旅だった気がしないか、三平……」
「生徒会長にかかれば魔王討伐の旅なんて、ミートソーススパゲティの旅に早変わりだろ、有秋……」
生徒会長が魔王との決戦よりミートソーススパゲティを優先している安定の思考に、八月一日が注意して四月一日が疲れ切っていると、春夏冬が旅を振り返り、越後屋が諦めの言葉を口にしていた。
「ハッ! 近くでミートソーススパゲティの反応がビンビンする!」
「いや、だから……」
「近くには売ってないと思う……」
「戦いの最中に探しに行ったりしないよな?」
「自信をもって否定できない俺がいる……」
それでも止まらない生徒会長のミートソーススパゲティに対する飽くなき欲求を他所に、無敵たちはここにいない者に対して議論を交わしていた。
「泰次の姿がないな」
「あいつがいれば心強いんだけどな」
「グサ神降臨はナシっしょ」
「グサしぃぃぃぃん!」
「夜行、千代、九鬼君に言うわよ?」
「なっ!? 奏音、裏切りっしょ!」
「奏音ちゃんの裏切り者ぉぉぉぉ!」
「ってゆーか、桃太郎なんかどうでもいいだろ。これから力也の大魔王っぷりが見られるんだぜ! 俺たちはそれの補佐だ!」
そのように生徒たちが思い思いのことを口にしていく中で、魔王城を眺めていた【オクタ】の男子メンバーがふと思ったことを口にしていく。
「小生、あの魔王城をどこかで見た気がするのですが」
「某もどこかで見たような気がするでごわす」
「奇遇ですぞ、拙僧も見たことがあるですぞ」
「拙者が思うに、乙女ゲーだった気がするでござる」
「私、知ってる……」
「ごめん、私も思い当たるのが1つある……」
「アレってアレだよね?」
「乙女な勇者のゲームだったかな?」
奇しくもオタクである者たちは、ケビンがモデルとして思い描いて創造した魔王城に心当たりがあるようで、口々にそのことを言葉にしていた。
「おねぇ、あのお城って……」
「ねぇがハマってたゲーム」
「陽炎、朔月、それ以上は口にしてはダメ。私にも社会的地位というものがあるの」
そして隠れオタクを未だに続けている三姉妹の発言は、既に隠れてなく一緒にいるメンバーに聞かれていることを知らない。
「何かのゲームにゃ?」
「隠せてないよね?」
「こういう時は知らないフリをしてあげるものですよ」
生徒たちの決意が固まりつつある中、一部の者は全く固まってはいないがガブリエルの激励はいつの間にか終わっていた。
そして神殿騎士団の各団長が魔王城へ向かって歩みを進めていくと、勇者たち一行もその後を追いながら進んでいくが、前方に大きな魔法陣が唐突に浮かび上がる。
「全員、止まってください!」
ガブリエルの声が響き渡る中で、魔法陣から1人の男?が現れた。
「クックック……フハハハハ……ハァーハッハッハッハ! よくぞ来た勇者たちよ! 我はこの帝国を支配する偉大なる魔王である!」
そう、そこに現れたのは魔王を演じるケビンだ。普通に相対しては面白くないと感じたケビンが、趣向を凝らして声を変えて変身グッズを身につけると満を持して登場したのだ。
「キタコレ!」
「棘付き肩パッドでごわす!」
「黒きマントが翻っているですぞ!」
「白き仮面に頭部からは角が生えているでござる!」
「「「「魔王キター!」」」」
四たちが派手派手しい魔王の降臨に歓喜していると、別のところではガブリエルたちが唖然としたり、呆然としたりしている。
「ま、魔王!? 久しく見ない間にあんなに禍々しく変化を遂げているとはっ!」
「あれがあの時の魔王ですか……? なんと禍々しい……」
「……あんちゃん……張り切りすぎだろ……」
ケビンと面識のあったガブリエルが見た目そのままに受け入れて、ヒューゴもまさか変装しているとは知らずにその見た目に戦々恐々としていたら、1人事情を知っているタイラーは呆れ果てていた。
「ああ? あれが魔王か? 変な格好だな」
「魔王……それは今より約千年以上前まで時代を遡り――」
「ガハハハハ! あんな細っちょろい筋肉では俺の筋肉に勝つことはできん! 見ろっ、この上腕二頭筋! ふんぬっ!」
「あれが魔王か……ヘイスティングスがヘマをして粛清されたと聞いたが、果たしてどれほどの強さなのか……」
ガブリエルたちに続いたのはそれぞれの各色団長である、赤の騎士団のアロンツォ、緑の騎士団のベルトラン、茶の騎士団のエドモンド、そして白の騎士団団長と黒の騎士団団員を兼任するベッファである。
「おねぇ、アレって……」
「ねぇ……ノートの……」
「健兄の黒の黙示録に書かれてたやつだね……」
奇しくも処分する前に不慮の事故で亡くなった健時代の遺品は、その意志を受け継ぐ三姉妹が保持していたようで、今のケビンが見てしまえば悶絶必死待ったナシの黒歴史となる中二ノートであり、その中身を当然熟読している三姉妹は、目の前に現れた魔王の姿に対して共通の絵を思い浮かべていた。
「んっ!? ミートソーススパゲティセンサーが反応しているぞ!」
「え……何それ……?」
「生徒会長……人間辞めたの……?」
「どんどん人間離れしていくな……」
「大好物限定で、だけどな……」
そして、自身の大好物に関して言えば、無類の力を発揮する生徒会長がよくわからない言葉を口にするが、それを聞いたメンバーたちは一様に呆れ返ってしまう。
そのような中でもケビンはノリノリで魔王を演じていく。
「勇者たちよ、神聖セレスティア皇国に属するのではなく、我の仲間とならぬか? さすれば世界の半分とは言わずとも、大国の1国を与えようぞ!」
『 ▶はい
いいえ 』
《私は『いいえ』よ》
ケビンの言い放った言葉に対し、サナがいつもの遊び心を発動させると選択肢がケビンの脳内に出現する。それに対してシステムが即断即決で『いいえ』を選択したが、ケビンはそれを気にもせず丁度いい遊び心としてお手本にしたら、魔法文字を使って勇者たちにも見えるように、サナと同じ選択肢を上空に浮かび上がらせた。
「テンプレキター! もちろん小生は『はい』を1度は選びますが、何か?」
「無謀にも世界の半分を提示しないところが、リアリティ感溢れるでごわす! 『はい』一択でごわす!」
「これはもう、『はい』を選んでみるしかないですぞ!」
「セーブポイントがないのが惜しいでござる! いやしかし、男は度胸! 『はい』を選ぶでござるよ!」
「くっ……私のゲーマー魂が『はい』を選べと囁いている……」
「イベコンさせるには、『はい』を1度は選ばないといけないわね」
「うーん……しーくんが『はい』を選ぶなら、私も『はい』にしようかな」
「私はいつでも宗くんと一緒だよ」
ケビンの遊び心に【オクタ】のメンバーが次々と『はい』を指定すると、また別の場所でもゲーマー魂が揺さぶられるのか、反応しているグループがあった。
「これは……『はい』しか……いや……生徒たちの模範としては『いいえ』を選ばないと……ああっ、『はい』を選んでしまいそうな自分がいる……」
「おねぇ、ここは迷わず『はい』じゃない? この後のイベントが気になるし……」
「にぃなら迷わず『はい』にする」
「先生たちは『はい』を選ぶにゃ?」
「それなら私たちも『はい』になるの?」
「一蓮托生ですね」
そしてまた別の場所では。
「私のミートソーススパゲティが『はい』だと言っている!」
「いやいや、ミートソーススパゲティは喋らないでしょ」
「生徒会長がどんどんおかしくなってる」
「生徒会長が『はい』ってことは……」
「また変な旅が始まりそうだな……」
そのような感じでケビンの遊びに巻き込まれた面々が、『はい』という抗えない欲求に支配されてしまうと、それを聞いていたケビンが再び口を開いた。
「クックック……フハハハハ……ハァーハッハッハッハ! 聞いた、聞いたぞ、勇者たちよ! いま『はい』を選んだな? 抗えない欲求に支配されたその身を後悔するがいい!」
ケビンがそう告げると、『はい』と選んでしまった勇者たちの足元に魔法陣が浮かび上がり、それを目の当たりにした面々は興奮が後を絶たない。
「イベントキタコレ!」
「某はここでおしまいなのでごわすか?!」
「拙僧もお供しますぞ!」
「旅は道連れ世は情けでござるな」
「くっ……やはり罠イベントだったか!?」
「まぁ、セオリー通りってことじゃない?」
「しーくん、手を繋いでて」
「宗くん、どこまでも一緒だよ」
「ああ、私のバカぁ……」
「これはおにぃのしくじりパターンだね」
「ねぇはにぃの真似ばかりするから」
「にゃにゃ!? 動いてもついてくるにゃん!」
「これは諦めるしかないかなぁ」
「いったい何が起こるのでしょうね」
「なんだ、これは! この魔法陣がミートソーススパゲティに繋がっているのか!?」
「ないない、それはない」
「はぁぁ……」
「これってどこかに飛ばされるのか?」
「振り出しに戻る、とかか?」
あちこちで足元に浮かぶ魔法陣に対して一喜一憂としていると、ひときわ輝きが放たれたらその場から勇者たちが消えてしまうのだった。
「みんな、どこに行ったんだ!」
「能登君っ、あれを見て!」
「なっ!?」
クラスメートたちの消失に能登が焦りを見せていたら、剣持が何かに気づいたらしく前方に指をさして能登へと喋りかけ、それにつられて能登や他の生徒たちも前方に視線を移すと、そこには魔王の近くに転移された生徒たちの姿があった。
「フハハハハ! この勇者たちは我のしもべとなった。さぁ勇者たちよ、存分に戦うがよい! 敵は本能寺にあり!」
「まさかまさかの魔王サイドに勢力チェンジですと!?」
「某、このルートは初めての攻略でごわす!」
「素直に仲間入りイベントとは思いませんでしたぞ!」
「本能寺を攻め入るとは腕が鳴るでござるな!」
「正義からの悪堕ち! 濡れるっ!」
「いや、本能寺って言っているところをつっこもうよ……3日で終わるよ、この魔王……」
「しーくん、私たち悪者になっちゃったね」
「宗くんが戦うなら私も本能寺を攻めるよ」
「まさか魔王の仲間入り!?」
「ゲームオーバーじゃないイベントって初だね」
「新たな展開」
「本能寺はどこにゃ?」
「いや、異世界に本能寺はない……と思う」
「3日以上続くといいですねー」
「なんと!? これは待ちに待ったダークモモのデビュー戦か!?」
「え……何それ……」
「生徒会長が壊れてる……」
「もとより普通じゃなかった気が……」
「まともであった試しがない……」
魔王サイドに転移させられた面々は混乱するでもなく、今置かれている状況に一部の者以外がノリノリで対応してみせると、元々いた場所を見てはクラスメートたちと相対するのである。
「フッ……まだだ。まだ終わらんよ、勇者たち……いや、【闇黒勇者】たちよ! そなたたちだけでは多勢に無勢……でもないか、だいたい半々だな……いやしかし、そなたたちの助けとなる我が配下を喚びよせようぞ! いでよ、死に直結する我が配下、【死四天皇后】!」
再びケビンの近くで魔法陣が浮かび上がると、そこに現れたのは顔の下半分だけが露出している仮面をした、さながら今から仮面舞踏会に行きますと言わんばかりである4人のお嫁さんたちだった。
「デスファースト、闇の抱擁に包まれて死になさい。【闇黒聖母】のサラ!」
「デスセカンド、気づかぬうちにその場は混沌と化す。【混沌龍】のクララ!」
「デスサード、深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいている。【深淵龍】のアブリル!」
「デスフォース、形なきスタイルこそが私の本懐。【千変万化の使用人】のプリシラ!」
「「「「ここに見参!」」」」
ちゅどーんと背後からカラフルな煙幕が立ち上がりそうな勢いで、決めポーズをバッチリとこなしたノリノリの4人に対して、それを見ていた【オクタ】の男子メンバーはヒートアップしていく。
「キタコレー!」
「メイドさんでごわす!」
「萌え萌えキュンですぞ!」
「オムライスを頼むでござる!」
だが、彼らの目に映っているのは4人の助っ人と言うよりも、常にメイド服装であるプリシラであった。
「男はいないの!? 男はっ!?」
「カルテットナ〇トではなかったわね」
「鷹也様が出てきて欲しかったぁ……」
「むぅーオムライスなら私が作るのにー」
そして、女子メンバーは女子メンバーで、現れた助っ人が男でなかったことに残念がり、服部だけは出現した助っ人よりも猿飛の発言を拾って嫉妬していた。
「中二病感満載……」
「おにぃがいたら喜びそうだね」
「死四天皇后?」
「カッコイイにゃん」
「それを思ったら負けだよ?」
「私も混ざってみたいです」
それから【オクタ】たちが興奮している中で教育実習生グループが冷静に感想を述べていた時、ケビンですら予想できなかった思いもよらぬ事態が発生してしまう。
「ミートソーススパゲティ、闇堕ちこそ魔法少女の真髄。【闇黒魔法少女】のモモ!」
「え……??」
「真似しちゃった……」
「いや、ミートソーススパゲティってなに……?」
「願望丸出しだな……」
「うぉっほー! ダークモモが進化したのですが!」
「【闇黒魔法少女】バージョンのモモでごわす!」
「これは見ものですぞ!」
「今こそ真価が問われるでござる!」
「さぁ魔王よ、私も仲間に入れて【死五天皇后】とするのだ! そうすれば私はデスフィフスと名乗れる!」
「え……ちょっと意味がわかんない……」
「魔法少女の闇堕ちを理解できぬと言うのか!?」
「何これ……台本にないんだけど……」
「えぇーい、まどろっこしい! 魔王が認めずとも勝手に入る!」
そして生徒会長はつかつかと歩いていくと、サラたちの所に混ざってしまうのだった。
「ふふっ、いらっしゃい。デスフィフス、【闇黒魔法少女】のモモ」
そのような突拍子もない生徒会長の行動に対しても、サラはいつも通りニコニコと微笑みを浮かべ生徒会長を受け入れた。
そしてサラが受け入れるということは、必然的に他の嫁たちも受け入れるということであり、今や生徒会長はケビンの嫁たちに囲まれて和気あいあいとお喋りをしている。
「そう、ミートソーススパゲティが食べたいのね」
「おお、さすがはサラ殿。私の気持ちをわかってくれるか」
「それじゃあ、この戦いが終わったら魔王様にオネダリするといいわよ。きっと作ってくれるから」
「なにっ!? 魔王様はミートソーススパゲティが作れるのか!? いやしかし、私にはケビン殿という将来を誓い合った許嫁がいるのだ……だが、ミートソーススパゲティは捨てがたい……」
「それは大丈夫よ。魔王様の作るミートソーススパゲティを食べたくらいじゃ浮気にならないわ。ケビンもきっとそう言うわよ」
「そうか……そうだよな! やはり私のミートソーススパゲティセンサーがビンビン鳴っているのは気のせいではなかったのだ。魔王様がミートソーススパゲティを作れるとセンサーが知らせてくれていたのだ!」
奇しくもケビンの預かり知らぬところで、生徒会長のためにミートソーススパゲティを作るという話が決まってしまい、生徒会長のテンションはうなぎ登りとなっていく。
「もう馴染んでる……」
「生徒会長相手に会話をしている……」
「生徒会長無敵説……」
「侮りがたし生徒会長……」
そのような生徒会長の行動を見ていたグループメンバーは、もはや生徒会長自身がある意味で魔王なのではないかと、その行動力やコミュ力に恐れおののき、自分たちはずっとモブのままでいいやと1歩引いたところで見物していた。
「デスフィフス、【闇黒魔法少女】のモモが確定した件」
「生徒会長は最高のオタ仲間でごわす」
「次は【闇黒魔法少女】の衣装を考える会議を開くですぞ」
「夢が広がるでござるな」
「生徒会長の同人本も作る?」
「魔法少女マジカルモモの闇堕ちね」
「ライバルとかどうする?」
「生徒会長にキャラ負けしない人が必要だよね」
そのような感じでケビンサイドが和気あいあいとしている中で、教団サイドは開いた口が塞がらずに状況についていけてない。
「な、何ですか……アレは……勇者ではなかったのですか……」
「もはやあの勇者たちは魔王の洗脳を受けてしまったのでしょう。でなければ、魔王を討つ勇者が魔王サイドで落ち着けるはずがありません」
「ってゆーかよぉ、さっさと殺しちまえば済む話だろ」
「勇者の裏切り……過去の歴史にはこのようなことはなかった……」
「ガハハハハ! たとえ洗脳されようとも奥の手があるではないか」
「そうですね。では、奪われた者を奪い返すとしましょう」
「あんちゃんもアレは想定外なのか……棒立ちになってやがる……」
そして、ケビンの気苦労を理解しているのは今この戦場においてタイラーだけであり、そのような中でも団長たちはバングルの力を使って、奪われた勇者たちを取り戻そうと画策しているのであった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
珍名高校 生徒名簿
春夏冬 有秋 (あきない ありあき)更新
六月一日 霖空 (うりはり りく)更新
越後屋 三平 (えちごや さんぺい)更新
南足 逢夢 (きたまくら あみん)更新
剣持 雪菜 (けんもち ゆきな)(クラス副委員長)更新
一二月一日 颯太 (しわすだ そうた)更新
蘇我 士太郎 (そが したろう)更新
小鳥遊 鷲斗 (たかなし しゅうと)更新
能登 高光 (のと たかみつ)(クラス委員長)更新
不死原 D 泉黄 (ふしはら ダル みよ)更新
辺志切 孝高 (へしきり よしたか)更新
八月一日 穂ノ香 (ほづみ ほのか)更新
卍山下 大輝 (まんざんか だいき)更新
銘釼 姫鶴 (めいけん ひめか)更新
百足 強生 (ももたり きょうき)更新
四月一日 春陽 (わたぬき はるひ)更新
今回は苗字しか出ていなかった人たちの名前が判明した感じとなります。ネタとしてのネーミングが多数あるので、裏設定としてご紹介していきます。
まず春夏冬ですが、苗字に『秋がない』ということで名前に『秋』を入れるのが、春夏冬家で代々続く習わしとなっています。つまり、ご先祖さまは『秋がないなら名前に秋を入れてしまえ』という考えに至ったということです。
六月一日の名前ですが、『霖』というのは3日以上続く雨のことで、梅雨時期になぞらえて『霖の空』ということで名付けました。
南足の名前ですが、単純に『安眠』から考えていき、キラキラネームを参考にして『逢夢』となり、本人も寝ることが好きなキャラとして位置づけています。
一二月一日の名前はシンプルに師走から考えて、『颯爽』から取って『颯太』と名付けてます。
蘇我の名前は『蘇我氏』からどうにか繋げられないかと考えた結果、『士太郎』となっています。
小鳥遊の名前は某サッカー漫画が大好きな父親が大空を羽ばたく翼として、『鷲』の字を使って『鷲斗』と名付けてます。ちなみにその父親は『鷲』が『鷹』の一種であることを知りません。本人は苗字が『たかなし』なのに、名前のせいで『たかあり』とからかわれる過去を持っています。
不死原のDは別に伸びる漫画とは関係なく、ただ単にハーフのミドルネームです。母親がロシア人で『ダル』は英語の『ギフト』と同じ意味を持っています。つまり神様からの贈り物という意味合いで付けられています。問題は名前の『泉黄』ですね。逆から読むと『黄泉』になります。『不死』と『黄泉』……完全に相反するネタからきています。
辺志切はへし切長谷部から取っており諸説ありますが、父親が自分の苗字から刀にハマり、戦国武将にハマるまでの時間はそう長くかからず、息子が生まれたら絶対に付けようと思っていた黒田孝高の名前を名付けたという設定です。
八月一日の名前はそのまま穂摘みから取って、稲穂の香りという意味の名前ってだけです。
銘釼の名前は父親が刀オタクで女の子の名前に使えそうな名刀を調べていった結果、『姫鶴一文字』から取って『姫鶴』と名付けられました。
百足の名前ですが、苗字が忌み嫌われるものであることを父親も人生で体験しているので、強く生きて欲しいと願って『強生』と名付けをしたという設定です。
四月一日の名前はそのままでポカポカとした陽気から『春陽』と名付けてます。
今回で41名の氏名が全て出揃いました。まだ出てきていないのは行方不明の東西南北君だけです。彼はいったいどこで何をして俺TUEEEEをやっているのでしょうか……
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
季節は巡りケビンが29歳になる年度の4月、エレフセリア学園に通うエミリー【サーシャ】、フェリシア、フェリシティ【スカーレット】、二ーアム【ニーナ】が6年生となり、アレックス【アリス】、シーヴァ【シーラ】、シルヴィオ【ティナ】、オルネラ【クリス】、スヴァルトレード【アビゲイル】、アルマ【アイリス】、キャサリン【ケイト】、パトリシア【プリシラ】、ニコラ【ニコル】、レイチェル【ライラ】、ラーク【ララ】、ルーク【ルル】、クラウス【クララ】、クズノ【クズミ】が5年生となる。
そして、その1つ下の学年にはケネス【ケイラ】、マカリア【マヒナ】、フランク【フォティア】、ノーラ【ネロ】、ショーン【シーロ】、アドリーヌ【アウルム】、ラシャド【ラウスト】、ナット【ナナリー】、アーロン【アンリ】、バーナード【ビアンカ】、カール【シンディ】、ダン【ドナ】、エドウィン【エレノア】、ヴァレンティア、ヴァレンティナ【ヴァリス】、セレーナ【セシリー】、ミア【ミレーヌ】、アリアナ【アイナ】、ジェンナ【ジェシカ】、マレイラ【ミケイラ】、ウルヴァ【ウルリカ】、ヌリア【ナディア】、コール【キキ】、オスカー【オリアナ】、ギャリー【グレース】、アシュトン【アリエル】、リチャード【リリアナ】、オフェリア【オリビア】、イギー【イルゼ】、ハロルド【ヒラリー】、リンカー【リーチェ】、ヘザー【ヒルダ】、ジェマ【ギアナ】が進級した。
それから去年入学したヴァンス【ヴァレリア】、テレサ【ターニャ】、ミリー【ミンディ】、ニキータ【ニッキー】、ルーシー【ルイーズ】、ジュエル【ジュリア】が2年生となると、新たにアドラ【アブリル】、バジル【バジリナ】、カリナ【カルメラ】、ドゥルセ【ドロシー】、ファリカ【ファティ】、ノアナ【ノエル】、リージー【リゼット】、ポレット【ポーラ】、フィンレー【フィオナ】、ジーン【ジゼル】、ヘクター【ヘレン】がエレフセリア学園に入学する。
そのような中で、帝国領に入っている勇者たちが続々と集結して帝都への道のりを進んでいくと、それに対してケビンが行ったのは帝都まで行かせないために、皇帝領直轄地の拓けた場所に魔王城を建ててしまうという遊び心満載の対応である。
「やべぇ……めっちゃ魔王城感出てる……」
「ケビンさん……こんな物を作ったら魔王と言われても仕方がないですよ……」
ケビンはその城の雰囲気を出すためにどこで回収したのかわからないが、状態維持を付与した結界内に暗雲を閉じ込めて上空に設置しており、結界内だから別にいいだろという判断の元、ひと手間かけるとその暗雲からは稲妻がひっきりなしに走っていた。その上空に佇む暗雲のおかげ?で魔王城付近は暗がりとなり、傍から見れば誰しもが『不吉な城』と言わざるを得ない状況と化している。
そのような魔王城を見上げているのは2人で、創り出したケビンは当たり前のことだが、他者の意見を聞くために九鬼もまたケビンに連れられてこの場で魔王城を見上げていた。
「よし、あとはしばらくこの付近に近寄らないように、お触れを出すだけだな」
「誰も近寄りたくありませんよ、こんな不気味な城の近くなんて……」
こうして突如出現した魔王城は、他の街に比べると比較的近くに住む都民たちの間で噂となり、せっかくケビンがお触れを出したというのに九鬼の予想を裏切っては、ひと目その城を見ようとして観光客という名の野次馬が後を絶たない。
「へぇーこれが陛下の新しく始めた遊びか?」
「魔王城って言うらしいぞ」
「不気味だなぁ……帝城とはえらい違いだ」
「陛下の遊びにも困ったもんだねぇ」
「あとで片付けてくれるのかしら?」
「これがある以上は流通に迂回路を使わないといけなくなるわ」
そのような野次馬たちを見ているケビンは、上空で1人呟く。
「解せぬ……」
そして、その野次馬の中にはいち早く帝都についていた無敵たちの姿もあった。
「これが魔王城か……」
「これを奪って力也の城にしようぜ!」
「不気味だな」
「いや、どう見てもヤバいっしょコレ!」
「いつの間にできたのかな?」
「魔王の力は計り知れないわ」
野次馬のせいで観光地と化してしまっている魔王城は、おどろおどろしい様相をしているのに、何故だか平和のひとコマみたいな緊張感のないものへと変わり果てていた。
そして迎えた勇者たちとの決戦当日。勇者たちは遠くからでも見ることのできた魔王城を視界内に収めては、改めて今から魔王と戦うのだと心に刻みつけていく。
「みなさん……今までみなさんが修業を積み重ねてきていたことを、私は知っています。この世界に勇者として召喚されたみなさんは、もはや私の強さを超えました。そのみなさんが協力すれば魔王を倒すことも可能でしょう」
総団長であるガブリエルが勇者たちに激励の言葉をかけていると、勇者たちの表情も自信に満ちたものへと変化して、ガブリエルの言葉に耳を傾けるのだった。
今この場には行方不明の東西南北、しれっとケビンサイドに属している九鬼以外の生徒たちが集結していて、セレスティア皇国に居残りしていた六月一日、一二月一日、小鳥遊、百足も、暫定奥さんと子供を皇都に残して駆けつけてきていた。
「フッ……とうとう王たる俺の力を見せつける絶好のステージが用意されたわけだ」
幻夢桜がそのようなことを呟いていると、別の場所では別の者が意気込みを口にしている。
「とうとうここまでやってきましたわ。香華、わたくしから離れてはいけませんわよ」
「うん、麗羅ちゃんの傍にいるよー」
それは召喚されてからずっと一緒に行動を共にしてきた勅使河原と弥勒院であった。
「士太郎、勝てると思うか?」
「やってみないことにはな。サポートは任せたぞ、大輝」
勅使河原と弥勒院の近くでは、皇都を離れる際から行動を共にしている卍山下と蘇我がお互いに気持ちを切り替えていた。
そして幻夢桜グループとは別の場所では、また別のグループが会話をしている。
「みんな、力を合わせて必ず勝とう! そして僕たちは元の世界に帰るんだ!」
「うん! 能登君の言う通りだよ! 魔王を倒して今度は元の世界に帰る方法を見つける旅に出ましょう!」
クラス委員長である能登の言葉に副委員長である剣持が相槌を打つと、今まで共に力を合わせてきたグループメンバーも思いを口にしていく。
「雪菜、貴女の背中は私が守るわ!」
「姫鶴ちゃん!」
銘釼が守る意思を口にすれば、それに対して剣持も喜びを顕にすると、辺志切も同じようなことを能登に対して口にする。
「高光、背中は任せろ。お前は前を向いて突き進め」
「任せたぞ、孝高」
「青春だね~泉黄ちゃんもそう思うよね~」
「南足さんは気楽過ぎ」
「逢夢、こんな時くらい真剣になって」
しかしながら、ガチグループの中の4人が意気込みを見せている中で、同じグループメンバーである南足がお気楽な感想をこぼしていると、その話を振られた不死原が苦言を呈し、それに銘釼も便乗していたのだった。
「俺、これが終わって皇都に帰ったらプロポーズしようと思うんだ」
「鷲斗、お前もか? 実は俺もなんだ」
「なんだ、強生もか。俺もそうだぞ」
「霖空もか。実は俺も……」
「颯太もか……結局俺たち4人は恋人と子供を見捨てられないってわけだな」
「「「だな」」」
小鳥遊がとても危険なセリフを呟くと、その近くでそれを聞いていた者たちが騒ぎ始めてしまう。
「しょ、小生! リアルで死亡フラグを立てた人を初めて見たのですが!」
「小鳥遊氏に引き続き、百足氏まで口にしたでごわす!」
「それどころか六月一日殿に、一二月一日殿まで後を追っていますぞ!」
「ヤバいでござるな。実にヤバいでござる!」
オタクグループ【オクタ】の男子メンバーが口々にフラグに対して議論を交わしている中、自由奔放な生徒会長は我が道を貫いていく。
「ミートソーススパゲティが食べたい……」
「こんな時くらい我慢しましょうよ。そう思うよね、春陽ちゃん」
「ツッコんだら疲れるだけだよ、穂ノ香ちゃん……」
「なんだかんだでミートソーススパゲティを探す旅だった気がしないか、三平……」
「生徒会長にかかれば魔王討伐の旅なんて、ミートソーススパゲティの旅に早変わりだろ、有秋……」
生徒会長が魔王との決戦よりミートソーススパゲティを優先している安定の思考に、八月一日が注意して四月一日が疲れ切っていると、春夏冬が旅を振り返り、越後屋が諦めの言葉を口にしていた。
「ハッ! 近くでミートソーススパゲティの反応がビンビンする!」
「いや、だから……」
「近くには売ってないと思う……」
「戦いの最中に探しに行ったりしないよな?」
「自信をもって否定できない俺がいる……」
それでも止まらない生徒会長のミートソーススパゲティに対する飽くなき欲求を他所に、無敵たちはここにいない者に対して議論を交わしていた。
「泰次の姿がないな」
「あいつがいれば心強いんだけどな」
「グサ神降臨はナシっしょ」
「グサしぃぃぃぃん!」
「夜行、千代、九鬼君に言うわよ?」
「なっ!? 奏音、裏切りっしょ!」
「奏音ちゃんの裏切り者ぉぉぉぉ!」
「ってゆーか、桃太郎なんかどうでもいいだろ。これから力也の大魔王っぷりが見られるんだぜ! 俺たちはそれの補佐だ!」
そのように生徒たちが思い思いのことを口にしていく中で、魔王城を眺めていた【オクタ】の男子メンバーがふと思ったことを口にしていく。
「小生、あの魔王城をどこかで見た気がするのですが」
「某もどこかで見たような気がするでごわす」
「奇遇ですぞ、拙僧も見たことがあるですぞ」
「拙者が思うに、乙女ゲーだった気がするでござる」
「私、知ってる……」
「ごめん、私も思い当たるのが1つある……」
「アレってアレだよね?」
「乙女な勇者のゲームだったかな?」
奇しくもオタクである者たちは、ケビンがモデルとして思い描いて創造した魔王城に心当たりがあるようで、口々にそのことを言葉にしていた。
「おねぇ、あのお城って……」
「ねぇがハマってたゲーム」
「陽炎、朔月、それ以上は口にしてはダメ。私にも社会的地位というものがあるの」
そして隠れオタクを未だに続けている三姉妹の発言は、既に隠れてなく一緒にいるメンバーに聞かれていることを知らない。
「何かのゲームにゃ?」
「隠せてないよね?」
「こういう時は知らないフリをしてあげるものですよ」
生徒たちの決意が固まりつつある中、一部の者は全く固まってはいないがガブリエルの激励はいつの間にか終わっていた。
そして神殿騎士団の各団長が魔王城へ向かって歩みを進めていくと、勇者たち一行もその後を追いながら進んでいくが、前方に大きな魔法陣が唐突に浮かび上がる。
「全員、止まってください!」
ガブリエルの声が響き渡る中で、魔法陣から1人の男?が現れた。
「クックック……フハハハハ……ハァーハッハッハッハ! よくぞ来た勇者たちよ! 我はこの帝国を支配する偉大なる魔王である!」
そう、そこに現れたのは魔王を演じるケビンだ。普通に相対しては面白くないと感じたケビンが、趣向を凝らして声を変えて変身グッズを身につけると満を持して登場したのだ。
「キタコレ!」
「棘付き肩パッドでごわす!」
「黒きマントが翻っているですぞ!」
「白き仮面に頭部からは角が生えているでござる!」
「「「「魔王キター!」」」」
四たちが派手派手しい魔王の降臨に歓喜していると、別のところではガブリエルたちが唖然としたり、呆然としたりしている。
「ま、魔王!? 久しく見ない間にあんなに禍々しく変化を遂げているとはっ!」
「あれがあの時の魔王ですか……? なんと禍々しい……」
「……あんちゃん……張り切りすぎだろ……」
ケビンと面識のあったガブリエルが見た目そのままに受け入れて、ヒューゴもまさか変装しているとは知らずにその見た目に戦々恐々としていたら、1人事情を知っているタイラーは呆れ果てていた。
「ああ? あれが魔王か? 変な格好だな」
「魔王……それは今より約千年以上前まで時代を遡り――」
「ガハハハハ! あんな細っちょろい筋肉では俺の筋肉に勝つことはできん! 見ろっ、この上腕二頭筋! ふんぬっ!」
「あれが魔王か……ヘイスティングスがヘマをして粛清されたと聞いたが、果たしてどれほどの強さなのか……」
ガブリエルたちに続いたのはそれぞれの各色団長である、赤の騎士団のアロンツォ、緑の騎士団のベルトラン、茶の騎士団のエドモンド、そして白の騎士団団長と黒の騎士団団員を兼任するベッファである。
「おねぇ、アレって……」
「ねぇ……ノートの……」
「健兄の黒の黙示録に書かれてたやつだね……」
奇しくも処分する前に不慮の事故で亡くなった健時代の遺品は、その意志を受け継ぐ三姉妹が保持していたようで、今のケビンが見てしまえば悶絶必死待ったナシの黒歴史となる中二ノートであり、その中身を当然熟読している三姉妹は、目の前に現れた魔王の姿に対して共通の絵を思い浮かべていた。
「んっ!? ミートソーススパゲティセンサーが反応しているぞ!」
「え……何それ……?」
「生徒会長……人間辞めたの……?」
「どんどん人間離れしていくな……」
「大好物限定で、だけどな……」
そして、自身の大好物に関して言えば、無類の力を発揮する生徒会長がよくわからない言葉を口にするが、それを聞いたメンバーたちは一様に呆れ返ってしまう。
そのような中でもケビンはノリノリで魔王を演じていく。
「勇者たちよ、神聖セレスティア皇国に属するのではなく、我の仲間とならぬか? さすれば世界の半分とは言わずとも、大国の1国を与えようぞ!」
『 ▶はい
いいえ 』
《私は『いいえ』よ》
ケビンの言い放った言葉に対し、サナがいつもの遊び心を発動させると選択肢がケビンの脳内に出現する。それに対してシステムが即断即決で『いいえ』を選択したが、ケビンはそれを気にもせず丁度いい遊び心としてお手本にしたら、魔法文字を使って勇者たちにも見えるように、サナと同じ選択肢を上空に浮かび上がらせた。
「テンプレキター! もちろん小生は『はい』を1度は選びますが、何か?」
「無謀にも世界の半分を提示しないところが、リアリティ感溢れるでごわす! 『はい』一択でごわす!」
「これはもう、『はい』を選んでみるしかないですぞ!」
「セーブポイントがないのが惜しいでござる! いやしかし、男は度胸! 『はい』を選ぶでござるよ!」
「くっ……私のゲーマー魂が『はい』を選べと囁いている……」
「イベコンさせるには、『はい』を1度は選ばないといけないわね」
「うーん……しーくんが『はい』を選ぶなら、私も『はい』にしようかな」
「私はいつでも宗くんと一緒だよ」
ケビンの遊び心に【オクタ】のメンバーが次々と『はい』を指定すると、また別の場所でもゲーマー魂が揺さぶられるのか、反応しているグループがあった。
「これは……『はい』しか……いや……生徒たちの模範としては『いいえ』を選ばないと……ああっ、『はい』を選んでしまいそうな自分がいる……」
「おねぇ、ここは迷わず『はい』じゃない? この後のイベントが気になるし……」
「にぃなら迷わず『はい』にする」
「先生たちは『はい』を選ぶにゃ?」
「それなら私たちも『はい』になるの?」
「一蓮托生ですね」
そしてまた別の場所では。
「私のミートソーススパゲティが『はい』だと言っている!」
「いやいや、ミートソーススパゲティは喋らないでしょ」
「生徒会長がどんどんおかしくなってる」
「生徒会長が『はい』ってことは……」
「また変な旅が始まりそうだな……」
そのような感じでケビンの遊びに巻き込まれた面々が、『はい』という抗えない欲求に支配されてしまうと、それを聞いていたケビンが再び口を開いた。
「クックック……フハハハハ……ハァーハッハッハッハ! 聞いた、聞いたぞ、勇者たちよ! いま『はい』を選んだな? 抗えない欲求に支配されたその身を後悔するがいい!」
ケビンがそう告げると、『はい』と選んでしまった勇者たちの足元に魔法陣が浮かび上がり、それを目の当たりにした面々は興奮が後を絶たない。
「イベントキタコレ!」
「某はここでおしまいなのでごわすか?!」
「拙僧もお供しますぞ!」
「旅は道連れ世は情けでござるな」
「くっ……やはり罠イベントだったか!?」
「まぁ、セオリー通りってことじゃない?」
「しーくん、手を繋いでて」
「宗くん、どこまでも一緒だよ」
「ああ、私のバカぁ……」
「これはおにぃのしくじりパターンだね」
「ねぇはにぃの真似ばかりするから」
「にゃにゃ!? 動いてもついてくるにゃん!」
「これは諦めるしかないかなぁ」
「いったい何が起こるのでしょうね」
「なんだ、これは! この魔法陣がミートソーススパゲティに繋がっているのか!?」
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「能登君っ、あれを見て!」
「なっ!?」
クラスメートたちの消失に能登が焦りを見せていたら、剣持が何かに気づいたらしく前方に指をさして能登へと喋りかけ、それにつられて能登や他の生徒たちも前方に視線を移すと、そこには魔王の近くに転移された生徒たちの姿があった。
「フハハハハ! この勇者たちは我のしもべとなった。さぁ勇者たちよ、存分に戦うがよい! 敵は本能寺にあり!」
「まさかまさかの魔王サイドに勢力チェンジですと!?」
「某、このルートは初めての攻略でごわす!」
「素直に仲間入りイベントとは思いませんでしたぞ!」
「本能寺を攻め入るとは腕が鳴るでござるな!」
「正義からの悪堕ち! 濡れるっ!」
「いや、本能寺って言っているところをつっこもうよ……3日で終わるよ、この魔王……」
「しーくん、私たち悪者になっちゃったね」
「宗くんが戦うなら私も本能寺を攻めるよ」
「まさか魔王の仲間入り!?」
「ゲームオーバーじゃないイベントって初だね」
「新たな展開」
「本能寺はどこにゃ?」
「いや、異世界に本能寺はない……と思う」
「3日以上続くといいですねー」
「なんと!? これは待ちに待ったダークモモのデビュー戦か!?」
「え……何それ……」
「生徒会長が壊れてる……」
「もとより普通じゃなかった気が……」
「まともであった試しがない……」
魔王サイドに転移させられた面々は混乱するでもなく、今置かれている状況に一部の者以外がノリノリで対応してみせると、元々いた場所を見てはクラスメートたちと相対するのである。
「フッ……まだだ。まだ終わらんよ、勇者たち……いや、【闇黒勇者】たちよ! そなたたちだけでは多勢に無勢……でもないか、だいたい半々だな……いやしかし、そなたたちの助けとなる我が配下を喚びよせようぞ! いでよ、死に直結する我が配下、【死四天皇后】!」
再びケビンの近くで魔法陣が浮かび上がると、そこに現れたのは顔の下半分だけが露出している仮面をした、さながら今から仮面舞踏会に行きますと言わんばかりである4人のお嫁さんたちだった。
「デスファースト、闇の抱擁に包まれて死になさい。【闇黒聖母】のサラ!」
「デスセカンド、気づかぬうちにその場は混沌と化す。【混沌龍】のクララ!」
「デスサード、深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいている。【深淵龍】のアブリル!」
「デスフォース、形なきスタイルこそが私の本懐。【千変万化の使用人】のプリシラ!」
「「「「ここに見参!」」」」
ちゅどーんと背後からカラフルな煙幕が立ち上がりそうな勢いで、決めポーズをバッチリとこなしたノリノリの4人に対して、それを見ていた【オクタ】の男子メンバーはヒートアップしていく。
「キタコレー!」
「メイドさんでごわす!」
「萌え萌えキュンですぞ!」
「オムライスを頼むでござる!」
だが、彼らの目に映っているのは4人の助っ人と言うよりも、常にメイド服装であるプリシラであった。
「男はいないの!? 男はっ!?」
「カルテットナ〇トではなかったわね」
「鷹也様が出てきて欲しかったぁ……」
「むぅーオムライスなら私が作るのにー」
そして、女子メンバーは女子メンバーで、現れた助っ人が男でなかったことに残念がり、服部だけは出現した助っ人よりも猿飛の発言を拾って嫉妬していた。
「中二病感満載……」
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「それを思ったら負けだよ?」
「私も混ざってみたいです」
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「ミートソーススパゲティ、闇堕ちこそ魔法少女の真髄。【闇黒魔法少女】のモモ!」
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「うぉっほー! ダークモモが進化したのですが!」
「【闇黒魔法少女】バージョンのモモでごわす!」
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「今こそ真価が問われるでござる!」
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「ふふっ、いらっしゃい。デスフィフス、【闇黒魔法少女】のモモ」
そのような突拍子もない生徒会長の行動に対しても、サラはいつも通りニコニコと微笑みを浮かべ生徒会長を受け入れた。
そしてサラが受け入れるということは、必然的に他の嫁たちも受け入れるということであり、今や生徒会長はケビンの嫁たちに囲まれて和気あいあいとお喋りをしている。
「そう、ミートソーススパゲティが食べたいのね」
「おお、さすがはサラ殿。私の気持ちをわかってくれるか」
「それじゃあ、この戦いが終わったら魔王様にオネダリするといいわよ。きっと作ってくれるから」
「なにっ!? 魔王様はミートソーススパゲティが作れるのか!? いやしかし、私にはケビン殿という将来を誓い合った許嫁がいるのだ……だが、ミートソーススパゲティは捨てがたい……」
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「そうか……そうだよな! やはり私のミートソーススパゲティセンサーがビンビン鳴っているのは気のせいではなかったのだ。魔王様がミートソーススパゲティを作れるとセンサーが知らせてくれていたのだ!」
奇しくもケビンの預かり知らぬところで、生徒会長のためにミートソーススパゲティを作るという話が決まってしまい、生徒会長のテンションはうなぎ登りとなっていく。
「もう馴染んでる……」
「生徒会長相手に会話をしている……」
「生徒会長無敵説……」
「侮りがたし生徒会長……」
そのような生徒会長の行動を見ていたグループメンバーは、もはや生徒会長自身がある意味で魔王なのではないかと、その行動力やコミュ力に恐れおののき、自分たちはずっとモブのままでいいやと1歩引いたところで見物していた。
「デスフィフス、【闇黒魔法少女】のモモが確定した件」
「生徒会長は最高のオタ仲間でごわす」
「次は【闇黒魔法少女】の衣装を考える会議を開くですぞ」
「夢が広がるでござるな」
「生徒会長の同人本も作る?」
「魔法少女マジカルモモの闇堕ちね」
「ライバルとかどうする?」
「生徒会長にキャラ負けしない人が必要だよね」
そのような感じでケビンサイドが和気あいあいとしている中で、教団サイドは開いた口が塞がらずに状況についていけてない。
「な、何ですか……アレは……勇者ではなかったのですか……」
「もはやあの勇者たちは魔王の洗脳を受けてしまったのでしょう。でなければ、魔王を討つ勇者が魔王サイドで落ち着けるはずがありません」
「ってゆーかよぉ、さっさと殺しちまえば済む話だろ」
「勇者の裏切り……過去の歴史にはこのようなことはなかった……」
「ガハハハハ! たとえ洗脳されようとも奥の手があるではないか」
「そうですね。では、奪われた者を奪い返すとしましょう」
「あんちゃんもアレは想定外なのか……棒立ちになってやがる……」
そして、ケビンの気苦労を理解しているのは今この戦場においてタイラーだけであり、そのような中でも団長たちはバングルの力を使って、奪われた勇者たちを取り戻そうと画策しているのであった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
珍名高校 生徒名簿
春夏冬 有秋 (あきない ありあき)更新
六月一日 霖空 (うりはり りく)更新
越後屋 三平 (えちごや さんぺい)更新
南足 逢夢 (きたまくら あみん)更新
剣持 雪菜 (けんもち ゆきな)(クラス副委員長)更新
一二月一日 颯太 (しわすだ そうた)更新
蘇我 士太郎 (そが したろう)更新
小鳥遊 鷲斗 (たかなし しゅうと)更新
能登 高光 (のと たかみつ)(クラス委員長)更新
不死原 D 泉黄 (ふしはら ダル みよ)更新
辺志切 孝高 (へしきり よしたか)更新
八月一日 穂ノ香 (ほづみ ほのか)更新
卍山下 大輝 (まんざんか だいき)更新
銘釼 姫鶴 (めいけん ひめか)更新
百足 強生 (ももたり きょうき)更新
四月一日 春陽 (わたぬき はるひ)更新
今回は苗字しか出ていなかった人たちの名前が判明した感じとなります。ネタとしてのネーミングが多数あるので、裏設定としてご紹介していきます。
まず春夏冬ですが、苗字に『秋がない』ということで名前に『秋』を入れるのが、春夏冬家で代々続く習わしとなっています。つまり、ご先祖さまは『秋がないなら名前に秋を入れてしまえ』という考えに至ったということです。
六月一日の名前ですが、『霖』というのは3日以上続く雨のことで、梅雨時期になぞらえて『霖の空』ということで名付けました。
南足の名前ですが、単純に『安眠』から考えていき、キラキラネームを参考にして『逢夢』となり、本人も寝ることが好きなキャラとして位置づけています。
一二月一日の名前はシンプルに師走から考えて、『颯爽』から取って『颯太』と名付けてます。
蘇我の名前は『蘇我氏』からどうにか繋げられないかと考えた結果、『士太郎』となっています。
小鳥遊の名前は某サッカー漫画が大好きな父親が大空を羽ばたく翼として、『鷲』の字を使って『鷲斗』と名付けてます。ちなみにその父親は『鷲』が『鷹』の一種であることを知りません。本人は苗字が『たかなし』なのに、名前のせいで『たかあり』とからかわれる過去を持っています。
不死原のDは別に伸びる漫画とは関係なく、ただ単にハーフのミドルネームです。母親がロシア人で『ダル』は英語の『ギフト』と同じ意味を持っています。つまり神様からの贈り物という意味合いで付けられています。問題は名前の『泉黄』ですね。逆から読むと『黄泉』になります。『不死』と『黄泉』……完全に相反するネタからきています。
辺志切はへし切長谷部から取っており諸説ありますが、父親が自分の苗字から刀にハマり、戦国武将にハマるまでの時間はそう長くかからず、息子が生まれたら絶対に付けようと思っていた黒田孝高の名前を名付けたという設定です。
八月一日の名前はそのまま穂摘みから取って、稲穂の香りという意味の名前ってだけです。
銘釼の名前は父親が刀オタクで女の子の名前に使えそうな名刀を調べていった結果、『姫鶴一文字』から取って『姫鶴』と名付けられました。
百足の名前ですが、苗字が忌み嫌われるものであることを父親も人生で体験しているので、強く生きて欲しいと願って『強生』と名付けをしたという設定です。
四月一日の名前はそのままでポカポカとした陽気から『春陽』と名付けてます。
今回で41名の氏名が全て出揃いました。まだ出てきていないのは行方不明の東西南北君だけです。彼はいったいどこで何をして俺TUEEEEをやっているのでしょうか……
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ハイスペな車と廃番勇者の少年との気長な旅をするメガネのおっさん
夕刻の灯
ファンタジー
ある日…神は、こう神託を人々に伝えました。
『勇者によって、平和になったこの世界には、勇者はもう必要ありません。なので、勇者が産まれる事はないでしょう…』
その神託から時が流れた。
勇者が産まれるはずが無い世界の片隅に
1人の少年が勇者の称号を持って産まれた。
そこからこの世界の歯車があちらこちらで狂い回り始める。
買ったばかりの新車の車を事故らせた。
アラサーのメガネのおっさん
崖下に落ちた〜‼︎
っと思ったら、異世界の森の中でした。
買ったばかりの新車の車は、いろんな意味で
ハイスペな車に変わってました。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
のほほん異世界暮らし
みなと劉
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異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
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自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
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