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第16章 魔王対勇者
第530話 男の友情
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姪っ子、生徒会長と思わぬ出会いをしてしまった翌月の12月、ケビンは執務室で新たなる情報を報告される。それは、次々と勇者たち一行が帝国に入国してきたというものであった。
それを受けたケビンがその都度【マップ】で入国してきた勇者を検索すると、あちこちに散らばっている勇者たちのマーカーを見ることになる。
「はぁぁ……何でこの時期? もう今から寒くなって雪が積もるのに……」
ケビンは知らない。結愛は確かに生徒会長たる九十九を呼ぶことはしなかったが、しれっと連絡をしていたことを。それゆえにあっさり見つかってしまったことも。そして、その連絡時には面倒くさくなって全グループに発信したことすらも。
そのような裏事情など知らないし予想もしていないケビンは、心の中で『冬に攻めてくるな、冬に攻めてくるな』とソフィーリア頼みをしながら、集中力を欠いた状態で執務を消化していくのだった。
それから季節は巡り年が明けて1月になると、暗部班のセリナが第1子で長女のセラフィムを出産し、翌2月には義娘ズのパメラが第1子で長女のパスカル、アズが第1子で長女のアベラ、ベルが第1子で長女のベレニス、カーラが第1子で長女のカロル、ダニエラが第1子で長女のドロテ、エフィが第1子で長女のエズメ、ナターシャが第1子で長女のナタリア、プリモが第1子で長女のポピー、ロナが第1子で長女のロゼッタを出産した。
そのような慶事がありつつも寒い日が続く中で、熱い男たちの戦いが人知れず始まろうとしていた。
その舞台となるのは帝都外ダンジョンである挑戦者用ダンジョン。このダンジョンは難易度が高いため、Sランク以上の実力者を推奨とした成長型ダンジョンである。ケビンが創ったときには100階層だったこのダンジョンも、今となっては1ヶ月に1階層というペースで成長している。
そしてそのダンジョンを日々攻略している冒険者たちとは別で、その挑戦者用ダンジョンを攻略しているのは、私有地・帝都外の上級者用ダンジョンを制覇した九鬼だ。その九鬼に対してケビンは規格外用ダンジョンには潜らせず、帝都外の挑戦者用ダンジョンをまずは制覇するように指示を出していた。
当然九鬼のことは嫁たちも知っていてケビンからの指示であるために、挑戦者用ダンジョンに来た際には、普通にバングルを手渡して素通りさせている。この件に関しては九鬼もありがたく、難易度によって支払う入場料やお守りバングルの値段が変わるので、今はまだSランク冒険者ではない九鬼が手痛い出費をせずに済んでいるのである。
そして今日も九鬼は、たった1人でダンジョン攻略を進めていた。
「はぁぁ……ケビンさんの訓練はキツイなぁ……」
残る敵にトドメを刺しながらそうボヤく九鬼は、ここのところ魔物が連携を始めたことによって攻略スピードが落ちていたのだ。パーティーメンバーがいたのならこちらも連携するということができたのだが、九鬼は1人である。連携なんてしようがないのだ。
そのようにボヤく九鬼でも、たった1人で50階層代まで到達できていることは褒められてもいいはずであるが、ケビン曰く、『守る人がいないのなら、その分魔物に集中できるだろ?』という、なんとも理不尽な物言いであった。
そのケビンの鬼のようなブートキャンプに晒されている九鬼も、次第と思考がケビンに似てきてしまったのか、『後衛を守る必要がないから戦闘は好きにできて楽だ』という、完全なボッチ思考に傾きつつある。
そのような九鬼(ボッチ加速中)が広間でのんびりと昼休憩を取っていると、別の道からやって来た冒険者たちとバッティングしてしまう。
「――ッ!」
その冒険者たちは冒険者服装ではあるものの、クラスメートの無敵たちであった。九鬼は全く気づかずにご飯をパクパクと食べていたが、声をかけられたことでそちらを向くと、懐かしきクラスメートの顔に驚いてご飯を食道に詰まらせてしまい胸を叩き始めた。
「ん"っ! ……の……のみ……も……」
その様子にバタバタと駆けつけてきた無敵が、自分の飲み物を九鬼に差し出して声を上げる。
「飲め!」
ごくごくと喉を鳴らして詰まったものを飲み込んでいく九鬼がひと息つくと、生き返ったかのように息を吐き出した。
「ぷはぁー……死ぬかと思った」
「相変わらず抜けてるな」
そして、危うく天国に招かれるところだった九鬼に無敵が声をかけると、九鬼は久しぶりに会う旧友に対して、何事もなかったかのようにして挨拶を返す。
「久しぶりだね」
「お前はここで何をしている?」
「え……ご飯を食べてる?」
「……はぁぁ……」
聞かれた内容に対して深く考えずに、ありのままを伝える九鬼に対して無敵が溜息をついていると、その様子を窺っていた他の者たちがトコトコと近づいてきて十前が九鬼に声をかけた。
「元気そうだな」
「十前君も元気そうだね」
「他人行儀な」
「あはは……」
過去がバレていないと思っている九鬼としては、一般的な男子高校生を振る舞っているため、十前の指摘に対して苦笑いで返すことしかできない。そのような九鬼に対して改めて無敵がここにいる理由を尋ねると、九鬼は攻略中とだけ伝えるのだった。
「他のパーティーメンバーは交代で警戒中か?」
「ん? 僕1人だけだから他はいないけど」
何てことのないように九鬼が無敵からされた質問に答えると、無敵たちはパーティーを組んでここまで攻略してきたと思っていたので、九鬼からの回答に沈黙してしまうが、月出里がありえないことだとしてそれを否定する。
「桃太郎の癖に吹いてんじゃねぇぞ」
「え……本当だよ」
「テメェ……」
「やめろ、竜也」
「力也だってそう思うだろ!」
「それは確かめればわかることだ。九鬼、俺と勝負しろ」
「……え?」
「今の俺の強さを知りたい」
「いやいや、僕が無敵君に勝てるわけないじゃないか。ボコボコにされておしまいだよ」
「へっ、よくわかってんじゃねぇか桃太郎! やっぱりお前は雑魚だな。大魔王の力也に勝てるわけがねぇ」
「ほら、月出里君もこう言ってることだし、無敵君たちは僕のことなんか放っておいて、先に進むといいよ」
「九鬼、俺はケビンからお前のことを聞いているぞ」
「え……会ったの?」
それから無敵は、セレスティア皇国のダンジョンでケビンと会話した時のことを九鬼に教えると、九鬼はケビンの奔放さに呆れてしまうのだった。
「……はぁぁ……」
「それにお前の過去は月出里以外知っている。今更取り繕っても無駄だぞ」
「……何で? 喋ったの?」
「百鬼がな」
無敵の言葉により九鬼の視線が百鬼に向くと、百鬼は勢いよく額を地面につけて土下座を披露したら九鬼に謝り始めた。
「ご、ごめんなさい! うっかり口を滑らせてしまいました! こ、これは道中で買ったお菓子です! どうかお納めください!」
マジックポーチから九鬼のご機嫌を取ろう大作戦のお菓子を取り出したら、それに両手を添えて頭上に掲げるのだが、そのお菓子に目をくれることもなく九鬼は落ちたトーンで百鬼に話しかける。
「他は誰に言った?」
「そ……それは……」
「女子全員だ」
九鬼からの言葉に言い淀む百鬼に変わって無敵が答えると、九鬼はその言葉に溜息をついてしまうが、それを耳にした百鬼はビクッと反応してガクガクと震えてしまう。
「ち……千代……あんたも手伝ってよ! 一緒に謝る約束っしょ!」
「ふぇっ!?」
「千喜良さんも何かしたの?」
急に話を振られた千喜良は変な声を出してしまうが、九鬼に視線を向けられたことで顔を青ざめさせてしまうと、百鬼の隣に土下座をしてすぐさま謝罪を始めてしまう。
「い、今まで馬鹿にしてごめんなさい! 許してください!」
「……は?」
「千喜良はお前を馬鹿にしてたから報復を恐れてるんだよ」
「いや、千喜良さんなんかどうでもいいし」
「うっ……」
奇しくも十前から言われた通りのことを本人から目の前で言われてしまい、千喜良はグサッと突き刺されて精神ダメージを負ってしまうが、それを予想していた十前は当たり前の結果に対して思いを呟く。
「やっぱりな」
「で、百鬼はどうする? 千喜良のようにはいかないだろ? 落とし前をつけるか?」
無敵の言葉を聞いた九鬼は立ち上がりお尻をパンパンと叩いて百鬼を見下ろすと、百鬼は『落とし前』という単語に更にビクついてはブルブルと震えてしまうが、九鬼から出てきた言葉は予想通りのものだった。
「いや、落とし前をつけたところで、今更知られてしまったことは取り消せないよ。千喜良さんと同じで百鬼さんなんてどうでもいい人だし」
「うっ……」
「夜行ちゃん……グサ仲間……」
千喜良と同様にグサッと精神ダメージを負わされてしまった百鬼は、千喜良からの仲間認定に全く救われる気がしない。
「九鬼、やるぞ」
「本当に?」
「俺たちは魔王に挑むんだ。確実に強くなってなきゃいけない」
「あぁぁ……魔王ねぇ……それはオススメしない。諦めた方がいいよ」
「……お前、魔王に挑んだのか?」
「いや、弱い僕が魔王に挑むわけないよ。死ぬだけだし」
「ハハハハハ! やっぱり桃太郎は桃太郎だな! 夜行も千代も何をビビってんのか知らねぇけど、所詮はモブキャラの雑魚なんだよ。名前だけは主人公の桃太郎だけどな」
相変わらずの三下感を出している月出里を他所に、無敵はなにがなんでも九鬼と勝負をするために言葉を交わしていく。そして、九鬼はこのまま無駄な時間を過ごしては、ケビンからの指示であるダンジョン攻略が先に進まないために、嫌々ながらも無敵の相手をすることにした。
「ルールは?」
「武器・魔法なし、身体強化のみの喧嘩だ」
「身体強化のみの殴り合いか……」
そして、広間の中央に移動する2人はある程度の距離を取ると、開始の合図は十前がすることになったので、それを待つことになる。
「桃太郎なんかコテンパンにぶちのめせー!」
「これ、どっちが勝つ感じ?」
「殴り合いの喧嘩だしわからないよ……」
「九鬼君の実力が未知数だものね」
「2人とも、準備はいいか?」
「いいよ」
「ああ」
「千手、魔物よけのお香は焚いたな?」
「ここに繋がる各通路に焚いてるわ」
「よし……それじゃあ……始め!」
十前から開始の合図が放たれると、最初に動いたのは無敵だった。地面を踏み抜き九鬼に迫ると利き腕から放たれるパンチを九鬼にお見舞いするが、九鬼はそれを腕でガードする。
そこから無敵は手を休めずに連打を放っていくが、そのどれもが九鬼に当たるわけでもなく、避けられたり腕でガードされたりと有効打を浴びせることができない。たまに蹴りを放ってもみるが、それすらも身体強化された腕で防がれてしまい、肉体のぶつかる音だけが辺りを包み込んでいく。
「力也ぁ、手加減しすぎだろ。防ぐので手一杯の桃太郎が哀れに見えてくるぜ? いたぶるなら痛みも教えてやれよー」
喧嘩の内容が九鬼の防戦一方と判断した月出里のヤジが飛んでくるも、無敵としては本気を出してないにしろ手加減をしているわけでもないので、今の状態で九鬼に対して有効打を入れることができないことにより、かなりの実力をつけていることがわかってしまう。
そして、無敵がギアを上げて九鬼を攻め立てていくと、有効打ではない大した攻撃でもない時に九鬼に当たり、それを受けた九鬼が吹き飛ばされてしまう。
「ヒャッホー! クリーンヒットだぜー力也パネェ!」
月出里がはしゃいでいるのを他所に、無敵は九鬼に対して追い討ちをかけるでもなく、先程のことからわかったことを話しかけていた。
「九鬼、お前……手抜きしているだろ?」
「何のことかな? 僕は精一杯真面目にやってるよ。無敵君が強すぎるだけだよ」
「詫びを入れるなら今のうちだぞ、桃太郎! 力也にボコボコにされる前に土下座でもするんだな。まぁ、力也が終われば次の相手は俺だけどー」
ヤジを飛ばす観客としては申し分ない月出里が声を上げている中で、九鬼と無敵の会話は続いていく。
「九鬼……いや、泰次。真面目にやらないのならお前のダンジョン攻略を邪魔するためにも、とことん喧嘩をふっかけるぞ」
「……本気?」
「本気だ」
無敵の言葉を聞いた九鬼は、ある程度のところでさっさと負けてダンジョン攻略を再開させようと思っていたのに、それを邪魔されると言われてしまい当初の計画が頓挫してしまいそうになる。そして、今の九鬼が優先しているのは無敵との喧嘩ではなく、ケビンからの指示であるダンジョン攻略だ。
「邪魔をするのか? 本当に?」
「くどい。ここはもう元の世界じゃないんだ。真面目ぶる仮面なんか脱ぎ捨てろ。この世界で真面目ぶってもサラリーマンにはなれない。むしろ元の世界に戻れたとしても、俺たちは留年してるか退学させられている。まともな会社には勤められないぞ」
「はぁぁ……そんなに俺とやりたいのか?」
「当たり前だろ。俺の中で1番の強者は幻夢桜や消えた東西南北ではなく、鬼神と言われた九鬼泰次のままだ」
「やれやれ……」
無敵の決意を改めて聞いた九鬼は十前たちの所まで歩いていき、ケビンからもらったバングルを取り外すと、それを十前に預けた。
「虎雄、俺が止まらなかったらそれを使ってケビンさんに知らせてくれ。頭でケビンさんを思い浮かべて話しかければ、それだけで通信できる魔導具だから」
「わかった。すまんな、力也はお前のことが心配なんだ」
「ヤローに心配されても嬉しくねーよ」
「女に心配されても同じことだろ」
「まぁな」
九鬼が十前とつるんでいた頃のように会話をしていると、十前に対して『虎雄』と呼び捨てにした九鬼が許せなかったのか、月出里が九鬼に噛みついた。
「桃太郎が調子こいてんじゃねぇぞ! なに虎雄を呼び捨てにしてんだ! ぶっ飛ばすとゴラァ!」
「うるせーよ、雑魚が」
その瞬間九鬼の姿がブレたかのように見えたかと思えば、月出里の眼前に現れていてそのまま腹パンを打ち放つと、それだけで月出里は吹き飛ばされてしまい、飛んでいった壁に激突したらそのまま意識を手放した。
「これで静かになったな」
「うそっしょ……」
「猿が1発……」
「強すぎる……」
「鬼神降臨だ」
それから九鬼は無敵の所まで戻っていくと、無敵に対して声をかける。
「力也、死ぬなよ?」
「ぬかせ、俺だって強くなってんだ。前みたいにボコボコにはなってやらねーぞ」
「そうか。最初から本気を出せよ?」
「ああ。楽しませてもらう」
それから本気をお互いに出した2人の戦いは、肉弾戦だと言うのに激しい音と衝撃が辺りを包み込んでいく。それを離れた所で見ている百鬼たちは、初めて見る【鬼神】九鬼泰次の戦いに戦慄した。
「あ、ありえないっしょ!?」
「本気の無敵が押されてるなんて……」
「あれがあの九鬼君なの……まるで別人じゃない!?」
「やっぱり強い。理性が残ってて助かるな。俺だとアレは止められない」
「ハハハハハ! やっぱり泰次はこうじゃないとな!」
「殴られてんのに笑うのかよ! しばらく見ない間に変態になったんじゃないのか、力也?」
「ふざけんな! 変態はテメーだ。学生って職業の癖にどんだけ強くなってんだよ!」
「学生の本分は勉強だろーが。勉強してたら強くなったんだよ!」
「ふざけすぎだろ! 何で大魔王より学生がつえーんだよ!」
「そんなの俺が知るか! 【ガチャ】を用意した女神様に言えよ!」
殴り合いの喧嘩をしていると言うのに、久しぶりに会った旧友と会話を楽しむようにしてお互いに喋りながら、九鬼と無敵は己の拳をぶつけ合っていた。
やがてそれは無敵の体力が九鬼よりも先に尽きてしまうと、ダンジョンの地面に寝そべり天井を仰ぐことで終わりを迎える。
「はぁはぁ……やっぱり泰次には敵わねーな」
「ったく、どんだけしぶといんだ。さっさと倒れとけよ。執拗く殴られるこっちの身にもなれってんだ」
「この世界はステータスがあるからな。俺の地力も日本にいる時とは比べようもないくらいに上がってる」
そのような2人の所に十前がやってくると、九鬼にバングルを手渡す。
「これを使うことがなくて助かった。俺だと泰次を止められないからな」
「そんなこと言ったって、昔はいっぺん止めただろ」
「あの時は死ぬ思いだったんだぞ」
「あぁぁ、あの時は俺も殺されるかと思ったな」
3人が仲良く昔の頃のように会話を楽しんでいる所へ、今度は1人伸びている月出里以外の女子メンバーたちがやって来たら、九鬼の強さを目の当たりにした2人が再度謝罪を始めてしまう。
「九鬼君、過去をバラしてごめんなさい」
「私も馬鹿にしてごめんなさい」
「それは別にいいって言っただろ。お前らのことなんてどうでもいい」
「「うっ……」」
「グサる……」
「グサだよ……」
「九鬼君、それが地なの?」
「別に……どっちも俺だ」
「そう……変な詮索してごめんね」
「お前のこともどうでもいい」
「うっ……」
「これで奏音もグサ仲間っしょ」
「奏音ちゃん、グサ仲間だよ」
「本当にグサッとくるわね……」
奇しくも詮索してしまった謝罪をした千手は、百鬼や千喜良同様に冷めた目で九鬼から射抜かれて、『どうでもいい』の洗礼を受けてしまうと図らずも精神ダメージを負わされてしまった。
「泰次は何でパーティーを組まずにここを攻略してんだ?」
「ケビンさんからの指示だからだ」
「あのSランク冒険者か?」
「そう」
「泰次でも勝てないのか?」
「遊ばれて終わり」
「マジか……いつか会ったら再戦しようと思ったんだけどな」
「どうせ力也のことだから、喧嘩バトルで挑もうとしてるんだろ?」
「当たり前だろ」
「ケビンさんを相手にそれは悪手、というかただのバカだ。俺は何でもありのルールでやっても勝てた試しがない」
「それほどか? それほどにSランク冒険者って強いのか? 俺たちも既にSランクになっているんだぞ」
「ランクを目安にしてたら、本当の強者にはいつまで経っても勝てないぞ。現に俺はAランク冒険者だからな」
「何で俺より強くてAランクなんだよ……」
「ダンジョン攻略を始めてから、通常のクエストの方はさっぱり受けられなくなったからな。Aランクになったのもついこの間だ。それまではCランクだったし」
「はあ? その強さでCランクって名乗ってたのか!?」
「詐欺っしょ」
「詐欺だね」
「詐欺よ」
「無茶苦茶だな」
「仕方がないだろ。クエストを受ける暇がなかったんだ。上級者用ダンジョンを制覇したら、一気にAランクに上がって俺だって迷惑してんだよ。まだ手をつけてないクエストとかあったのに、もうCランク以下のクエストが受けられないんだぞ」
「クエスト基準かよ……」
九鬼のランクを上げない理由がクエスト基準だと知った一同は呆れ果ててしまうが、過去に九鬼とつるんで性格を知っていた無敵と十前はある意味で納得してしまう。
「ねぇ、1つ疑問なんだけど、何で3人はそんなに仲良しなのに学校では一言も喋らなかったの?」
千手が仲良く会話をしている九鬼と無敵たちを見て、ふと疑問に思ったのかそのようなことを尋ねると、九鬼は「話しかけられてないから」とあっさりとした回答をしたのに対して、無敵はバツが悪そうに視線を逸らしてしまうと、十前が代わりにその質問に対して答えた。
「泰次がグループを抜けたあとに、力也が『真っ当な道に進んだあいつの邪魔をしたくない』って言ったんだ。俺たちは食み出しもんだからな。俺たちから親しげに話しかけられたりしたら、泰次も仲間だと思われるだろ?」
「確かにそうね……」
「高校に入ったら別の地域からの奴らも来るし、中学時代の奴らだって多少なりとも進路が別れて泰次の過去を知る者が減る。そうなると俺たちが関わらなければ、泰次は一般的な男子高校生として生活を送れるということだ。それに中学時代の奴らは鬼神伝説を知っている以上、好き好んで泰次の過去を風潮することはない」
「そういうことだったのね」
「まぁ、結論としては、親父さんを目標にしている泰次へ力也と俺からの餞別ってやつだな」
「無敵ぃぃぃぃ!」
「ばっ、千喜良抱きつくな! 泰次からのダメージが抜けてねぇんだ。痛てぇだろうが!」
「照れてるっしょ」
「男の友情ね」
「力也、そんなことを気にしてたのか? 話しかけてきても良かったのに、相変わらず素直じゃねぇな」
「相変わらず女に『どうでもいい』発言するお前にだけは言われたくねぇぞ!」
「どっちもどっちっしょ」
「似たもの同士ね」
「フッ、そうだな」
「無敵ぃぃぃぃ!」
「千喜良はいいから離れろ! マジで痛てぇんだぞ!」
「じゃあ、九鬼ぃぃぃぃ!」
「寄るなウザイ」
「ぐはっ!」
奇しくも元気いっぱいマスコットポジションなチビッ子千喜良の九鬼に対する初アタックは、無敵や十前の時と同様とはいかず、思い切り冷めた目で九鬼からのグサ攻撃を受けてしまい志半ばで失敗してしまう。
「うぅぅ……十前ぅぅ……」
フラフラと癒しを求めて十前に抱きついた千喜良に、十前は頭を撫でながら今回の教訓を教えるのだった。
「千喜良、難攻不落の泰次に抱きつくためには、まず仲良くなることが大前提だ。今のままだと石ころが投げつけられた状態で、泰次は当然それを避ける」
「うっ……石ころ……グサ再び……」
「千喜良だって竜也が抱きつこうと近寄ってきたら逃げるだろ?」
「猿は無理ぃぃぃぃ!」
「つまりそういうことだ。今の千喜良は泰次にとって、生理的に受けつけない対象だ。触れることすら難しい。まずは普通に会話が成立するところを目指せ。最初の目標は『どうでもいい』と言われないことだ。それがなくなれば会話をすることができる」
「……頑張る」
十前と千喜良がそのような会話をしている中で、百鬼は懲りもせずにご機嫌取りのお菓子を差し出そうとしていた。
「何で俺がお前から物を貰わなきゃいけないんだ」
「うっ……」
「頑張るのよ、夜行」
「あの……九鬼君にあげようと思って買ったので……」
千手の応援や現状況によって、図らずもバレンタインデーにチョコを渡そうとしているような光景であり、奇しくも百鬼自身、『今の私ってチョコ渡す感じじゃね?』と思いつつ、相手が九鬼であることに別の意味でドキドキしながら受け取ってもらえないかと期待するも、相手は『どうでもいい』発言をする九鬼である。
「いらん」
「うぅぅ……」
そのような見込みのない状況がありありと見て取れる中で、崖下にグサが準備されている崖っぷちに立たされている百鬼に、救世主が助けを出した。
「泰次、そう言わずに貰ってやれ。何を持っていけば許してくれるかって、頭が悪い百鬼が結構な時間をかけて頭を悩ませながら買ったんだ」
「うっ……身内からのグサ……」
その救世主かと思われた無敵の言葉を聞いた百鬼は、図らずも悪意のない『頭が悪い』発言によって、予想だにしないところからのグサ攻撃をその身に受けてしまう。
「はぁぁ……力也の頼みだし貰ってやる」
難攻不落な九鬼にお菓子を受け取ってもらえた百鬼がホッとひと安心するのも束の間、続く無敵の言葉を聞いた九鬼の返しによって百鬼は崖下に落ちてしまうのだった。
「それ、結構高かったらしいから、美味いと思うぞ」
「そうなのか? それじゃあベネットさんにあげるかな」
「ほえっ?!」
まさかまさかの九鬼が受け取ったお菓子を、そのまま別の誰かに譲渡するとは思ってもみなかった百鬼は、変な驚き方をするとすぐさま九鬼に問いかけるのである。
「べ、ベネットって誰だし!? ってゆーか、女の名前じゃね?」
「冒険者仲間だ」
「えっ、泰次! お前、女の仲間がいるのか!?」
「信じられん……」
九鬼の返答を聞いた無敵や十前は、ありえないようなものを目にしたと言わんばかりに九鬼を注視してしまう。それに対して九鬼はベネットとの経緯を話すために、盗賊退治をした時からの連れだということを説明した。
「マジか……あの泰次が女連れになるとは……」
「環境が変われば人も変わるもんだな」
「ちょーっ!! ありえないっしょ! うちのあげたお菓子をその女にあげちゃうの!?」
「俺が貰った時点で俺の物だろ。その後にどう処理するかは俺の自由だ」
「ぐはっ!」
「夜行ちゃん、これで痛恨のグサ仲間だよ」
「で、そのベネットというのは泰次の彼女か?」
「は? 殴られ過ぎて頭がおかしくなったのか? そんなわけないだろ。ベネットさんはただの同行者で、ケビンさんの特訓を受けてる同じ境遇の人だ」
「かなりエグいっしょ……」
「盗賊から襲われていたところを助けたのなら、絶対に惚れてるよ……」
「まだ見ぬベネットさんもグサ仲間よ、きっと……」
百鬼たち3人はまだ見ぬベネットに対して、痛恨のグサを言い放った九鬼の否定を聞いてしまい、グサ仲間として同情を禁じ得ない。
「まぁ、なんだ。お前が相変わらずなのか1歩進んだのか判断に苦しむが、この後はどうするんだ?」
「そんなの下層に向けて下りるに決まってるだろ。力也のせいでとんだ時間を食っちまったからな。それに魔物を殺しまくれば気持ちも落ち着くだろ」
「それじゃあ、どっちが先に1番最下層まで辿りつけるか勝負だ」
「はあ? そんなのパーティー組んでる力也の方が早いだろ」
「見ての通り竜也は伸びてる。それを無理やり叩き起したりはしない。その間にひと足早く先へと進めばいいだろ?」
「勝手すぎんだろ」
「負けた方は1週間飯奢りだからな?」
「はぁぁ……そっちは1ヶ月奢りで1日の回数無制限、同行者あり。こっちは1週間で3食全員分。どちらも店の指定はナシだ」
「乗った」
「ちょー、その1ヶ月間回数無制限ってうちらも払わなきゃいけないの?」
「当たり前だろ。俺は力也と虎雄以外の払いたくもないどうでもいい奴らの分まで勘定に入れて、余分に金を失うリスクがあるんだぞ。そこにあの馬鹿が入ってるかと思うと最悪な気分だ」
「グサだし……」
「グサだね……」
「グサグサ……」
「泰次、そんなにのんびりしてていいのか? 竜也が目覚めてしまうぞ?」
「俺の1発をもらっておいて、そんな簡単に目覚めるかよ」
「そりゃそうか」
「じゃあな、せいぜいお金をたんまりと貯め込んでおけよ」
こうして九鬼はケビンからの指示であったダンジョン攻略に加えて、無敵からの勝負の持ちかけで始まった賭けのゲームが上乗せされたので、今までの攻略スピードを上回る早さでダンジョン攻略に勤しんでいくのであった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「ねぇ、無敵……月出里っていつ起きる感じ?」
「泰次の1発を無防備に受けたんだ。今日の攻略はもう無理だな」
「そんな威力なの? ヤバくね?」
「閉店時間を過ぎても起きないようなら、叩き起こせばいい」
「猿ぅぅぅぅ!」
「千喜良、騒ぐのはルール違反だ」
「十前の言う通りよ。月出里みたいになりたくないでしょう?」
「うっ……グサよりヤダ……」
その日、結局のところ月出里は目を覚まさずに叩き起されてしまい、それから目を覚ますとあまりの衝撃に記憶が飛んだのか、もしくは九鬼にやられたのを認めたくなくて記憶が飛んだのかわからないが、何故気絶していたのかわからずにダンジョンから帰ることになるのであった。
それを受けたケビンがその都度【マップ】で入国してきた勇者を検索すると、あちこちに散らばっている勇者たちのマーカーを見ることになる。
「はぁぁ……何でこの時期? もう今から寒くなって雪が積もるのに……」
ケビンは知らない。結愛は確かに生徒会長たる九十九を呼ぶことはしなかったが、しれっと連絡をしていたことを。それゆえにあっさり見つかってしまったことも。そして、その連絡時には面倒くさくなって全グループに発信したことすらも。
そのような裏事情など知らないし予想もしていないケビンは、心の中で『冬に攻めてくるな、冬に攻めてくるな』とソフィーリア頼みをしながら、集中力を欠いた状態で執務を消化していくのだった。
それから季節は巡り年が明けて1月になると、暗部班のセリナが第1子で長女のセラフィムを出産し、翌2月には義娘ズのパメラが第1子で長女のパスカル、アズが第1子で長女のアベラ、ベルが第1子で長女のベレニス、カーラが第1子で長女のカロル、ダニエラが第1子で長女のドロテ、エフィが第1子で長女のエズメ、ナターシャが第1子で長女のナタリア、プリモが第1子で長女のポピー、ロナが第1子で長女のロゼッタを出産した。
そのような慶事がありつつも寒い日が続く中で、熱い男たちの戦いが人知れず始まろうとしていた。
その舞台となるのは帝都外ダンジョンである挑戦者用ダンジョン。このダンジョンは難易度が高いため、Sランク以上の実力者を推奨とした成長型ダンジョンである。ケビンが創ったときには100階層だったこのダンジョンも、今となっては1ヶ月に1階層というペースで成長している。
そしてそのダンジョンを日々攻略している冒険者たちとは別で、その挑戦者用ダンジョンを攻略しているのは、私有地・帝都外の上級者用ダンジョンを制覇した九鬼だ。その九鬼に対してケビンは規格外用ダンジョンには潜らせず、帝都外の挑戦者用ダンジョンをまずは制覇するように指示を出していた。
当然九鬼のことは嫁たちも知っていてケビンからの指示であるために、挑戦者用ダンジョンに来た際には、普通にバングルを手渡して素通りさせている。この件に関しては九鬼もありがたく、難易度によって支払う入場料やお守りバングルの値段が変わるので、今はまだSランク冒険者ではない九鬼が手痛い出費をせずに済んでいるのである。
そして今日も九鬼は、たった1人でダンジョン攻略を進めていた。
「はぁぁ……ケビンさんの訓練はキツイなぁ……」
残る敵にトドメを刺しながらそうボヤく九鬼は、ここのところ魔物が連携を始めたことによって攻略スピードが落ちていたのだ。パーティーメンバーがいたのならこちらも連携するということができたのだが、九鬼は1人である。連携なんてしようがないのだ。
そのようにボヤく九鬼でも、たった1人で50階層代まで到達できていることは褒められてもいいはずであるが、ケビン曰く、『守る人がいないのなら、その分魔物に集中できるだろ?』という、なんとも理不尽な物言いであった。
そのケビンの鬼のようなブートキャンプに晒されている九鬼も、次第と思考がケビンに似てきてしまったのか、『後衛を守る必要がないから戦闘は好きにできて楽だ』という、完全なボッチ思考に傾きつつある。
そのような九鬼(ボッチ加速中)が広間でのんびりと昼休憩を取っていると、別の道からやって来た冒険者たちとバッティングしてしまう。
「――ッ!」
その冒険者たちは冒険者服装ではあるものの、クラスメートの無敵たちであった。九鬼は全く気づかずにご飯をパクパクと食べていたが、声をかけられたことでそちらを向くと、懐かしきクラスメートの顔に驚いてご飯を食道に詰まらせてしまい胸を叩き始めた。
「ん"っ! ……の……のみ……も……」
その様子にバタバタと駆けつけてきた無敵が、自分の飲み物を九鬼に差し出して声を上げる。
「飲め!」
ごくごくと喉を鳴らして詰まったものを飲み込んでいく九鬼がひと息つくと、生き返ったかのように息を吐き出した。
「ぷはぁー……死ぬかと思った」
「相変わらず抜けてるな」
そして、危うく天国に招かれるところだった九鬼に無敵が声をかけると、九鬼は久しぶりに会う旧友に対して、何事もなかったかのようにして挨拶を返す。
「久しぶりだね」
「お前はここで何をしている?」
「え……ご飯を食べてる?」
「……はぁぁ……」
聞かれた内容に対して深く考えずに、ありのままを伝える九鬼に対して無敵が溜息をついていると、その様子を窺っていた他の者たちがトコトコと近づいてきて十前が九鬼に声をかけた。
「元気そうだな」
「十前君も元気そうだね」
「他人行儀な」
「あはは……」
過去がバレていないと思っている九鬼としては、一般的な男子高校生を振る舞っているため、十前の指摘に対して苦笑いで返すことしかできない。そのような九鬼に対して改めて無敵がここにいる理由を尋ねると、九鬼は攻略中とだけ伝えるのだった。
「他のパーティーメンバーは交代で警戒中か?」
「ん? 僕1人だけだから他はいないけど」
何てことのないように九鬼が無敵からされた質問に答えると、無敵たちはパーティーを組んでここまで攻略してきたと思っていたので、九鬼からの回答に沈黙してしまうが、月出里がありえないことだとしてそれを否定する。
「桃太郎の癖に吹いてんじゃねぇぞ」
「え……本当だよ」
「テメェ……」
「やめろ、竜也」
「力也だってそう思うだろ!」
「それは確かめればわかることだ。九鬼、俺と勝負しろ」
「……え?」
「今の俺の強さを知りたい」
「いやいや、僕が無敵君に勝てるわけないじゃないか。ボコボコにされておしまいだよ」
「へっ、よくわかってんじゃねぇか桃太郎! やっぱりお前は雑魚だな。大魔王の力也に勝てるわけがねぇ」
「ほら、月出里君もこう言ってることだし、無敵君たちは僕のことなんか放っておいて、先に進むといいよ」
「九鬼、俺はケビンからお前のことを聞いているぞ」
「え……会ったの?」
それから無敵は、セレスティア皇国のダンジョンでケビンと会話した時のことを九鬼に教えると、九鬼はケビンの奔放さに呆れてしまうのだった。
「……はぁぁ……」
「それにお前の過去は月出里以外知っている。今更取り繕っても無駄だぞ」
「……何で? 喋ったの?」
「百鬼がな」
無敵の言葉により九鬼の視線が百鬼に向くと、百鬼は勢いよく額を地面につけて土下座を披露したら九鬼に謝り始めた。
「ご、ごめんなさい! うっかり口を滑らせてしまいました! こ、これは道中で買ったお菓子です! どうかお納めください!」
マジックポーチから九鬼のご機嫌を取ろう大作戦のお菓子を取り出したら、それに両手を添えて頭上に掲げるのだが、そのお菓子に目をくれることもなく九鬼は落ちたトーンで百鬼に話しかける。
「他は誰に言った?」
「そ……それは……」
「女子全員だ」
九鬼からの言葉に言い淀む百鬼に変わって無敵が答えると、九鬼はその言葉に溜息をついてしまうが、それを耳にした百鬼はビクッと反応してガクガクと震えてしまう。
「ち……千代……あんたも手伝ってよ! 一緒に謝る約束っしょ!」
「ふぇっ!?」
「千喜良さんも何かしたの?」
急に話を振られた千喜良は変な声を出してしまうが、九鬼に視線を向けられたことで顔を青ざめさせてしまうと、百鬼の隣に土下座をしてすぐさま謝罪を始めてしまう。
「い、今まで馬鹿にしてごめんなさい! 許してください!」
「……は?」
「千喜良はお前を馬鹿にしてたから報復を恐れてるんだよ」
「いや、千喜良さんなんかどうでもいいし」
「うっ……」
奇しくも十前から言われた通りのことを本人から目の前で言われてしまい、千喜良はグサッと突き刺されて精神ダメージを負ってしまうが、それを予想していた十前は当たり前の結果に対して思いを呟く。
「やっぱりな」
「で、百鬼はどうする? 千喜良のようにはいかないだろ? 落とし前をつけるか?」
無敵の言葉を聞いた九鬼は立ち上がりお尻をパンパンと叩いて百鬼を見下ろすと、百鬼は『落とし前』という単語に更にビクついてはブルブルと震えてしまうが、九鬼から出てきた言葉は予想通りのものだった。
「いや、落とし前をつけたところで、今更知られてしまったことは取り消せないよ。千喜良さんと同じで百鬼さんなんてどうでもいい人だし」
「うっ……」
「夜行ちゃん……グサ仲間……」
千喜良と同様にグサッと精神ダメージを負わされてしまった百鬼は、千喜良からの仲間認定に全く救われる気がしない。
「九鬼、やるぞ」
「本当に?」
「俺たちは魔王に挑むんだ。確実に強くなってなきゃいけない」
「あぁぁ……魔王ねぇ……それはオススメしない。諦めた方がいいよ」
「……お前、魔王に挑んだのか?」
「いや、弱い僕が魔王に挑むわけないよ。死ぬだけだし」
「ハハハハハ! やっぱり桃太郎は桃太郎だな! 夜行も千代も何をビビってんのか知らねぇけど、所詮はモブキャラの雑魚なんだよ。名前だけは主人公の桃太郎だけどな」
相変わらずの三下感を出している月出里を他所に、無敵はなにがなんでも九鬼と勝負をするために言葉を交わしていく。そして、九鬼はこのまま無駄な時間を過ごしては、ケビンからの指示であるダンジョン攻略が先に進まないために、嫌々ながらも無敵の相手をすることにした。
「ルールは?」
「武器・魔法なし、身体強化のみの喧嘩だ」
「身体強化のみの殴り合いか……」
そして、広間の中央に移動する2人はある程度の距離を取ると、開始の合図は十前がすることになったので、それを待つことになる。
「桃太郎なんかコテンパンにぶちのめせー!」
「これ、どっちが勝つ感じ?」
「殴り合いの喧嘩だしわからないよ……」
「九鬼君の実力が未知数だものね」
「2人とも、準備はいいか?」
「いいよ」
「ああ」
「千手、魔物よけのお香は焚いたな?」
「ここに繋がる各通路に焚いてるわ」
「よし……それじゃあ……始め!」
十前から開始の合図が放たれると、最初に動いたのは無敵だった。地面を踏み抜き九鬼に迫ると利き腕から放たれるパンチを九鬼にお見舞いするが、九鬼はそれを腕でガードする。
そこから無敵は手を休めずに連打を放っていくが、そのどれもが九鬼に当たるわけでもなく、避けられたり腕でガードされたりと有効打を浴びせることができない。たまに蹴りを放ってもみるが、それすらも身体強化された腕で防がれてしまい、肉体のぶつかる音だけが辺りを包み込んでいく。
「力也ぁ、手加減しすぎだろ。防ぐので手一杯の桃太郎が哀れに見えてくるぜ? いたぶるなら痛みも教えてやれよー」
喧嘩の内容が九鬼の防戦一方と判断した月出里のヤジが飛んでくるも、無敵としては本気を出してないにしろ手加減をしているわけでもないので、今の状態で九鬼に対して有効打を入れることができないことにより、かなりの実力をつけていることがわかってしまう。
そして、無敵がギアを上げて九鬼を攻め立てていくと、有効打ではない大した攻撃でもない時に九鬼に当たり、それを受けた九鬼が吹き飛ばされてしまう。
「ヒャッホー! クリーンヒットだぜー力也パネェ!」
月出里がはしゃいでいるのを他所に、無敵は九鬼に対して追い討ちをかけるでもなく、先程のことからわかったことを話しかけていた。
「九鬼、お前……手抜きしているだろ?」
「何のことかな? 僕は精一杯真面目にやってるよ。無敵君が強すぎるだけだよ」
「詫びを入れるなら今のうちだぞ、桃太郎! 力也にボコボコにされる前に土下座でもするんだな。まぁ、力也が終われば次の相手は俺だけどー」
ヤジを飛ばす観客としては申し分ない月出里が声を上げている中で、九鬼と無敵の会話は続いていく。
「九鬼……いや、泰次。真面目にやらないのならお前のダンジョン攻略を邪魔するためにも、とことん喧嘩をふっかけるぞ」
「……本気?」
「本気だ」
無敵の言葉を聞いた九鬼は、ある程度のところでさっさと負けてダンジョン攻略を再開させようと思っていたのに、それを邪魔されると言われてしまい当初の計画が頓挫してしまいそうになる。そして、今の九鬼が優先しているのは無敵との喧嘩ではなく、ケビンからの指示であるダンジョン攻略だ。
「邪魔をするのか? 本当に?」
「くどい。ここはもう元の世界じゃないんだ。真面目ぶる仮面なんか脱ぎ捨てろ。この世界で真面目ぶってもサラリーマンにはなれない。むしろ元の世界に戻れたとしても、俺たちは留年してるか退学させられている。まともな会社には勤められないぞ」
「はぁぁ……そんなに俺とやりたいのか?」
「当たり前だろ。俺の中で1番の強者は幻夢桜や消えた東西南北ではなく、鬼神と言われた九鬼泰次のままだ」
「やれやれ……」
無敵の決意を改めて聞いた九鬼は十前たちの所まで歩いていき、ケビンからもらったバングルを取り外すと、それを十前に預けた。
「虎雄、俺が止まらなかったらそれを使ってケビンさんに知らせてくれ。頭でケビンさんを思い浮かべて話しかければ、それだけで通信できる魔導具だから」
「わかった。すまんな、力也はお前のことが心配なんだ」
「ヤローに心配されても嬉しくねーよ」
「女に心配されても同じことだろ」
「まぁな」
九鬼が十前とつるんでいた頃のように会話をしていると、十前に対して『虎雄』と呼び捨てにした九鬼が許せなかったのか、月出里が九鬼に噛みついた。
「桃太郎が調子こいてんじゃねぇぞ! なに虎雄を呼び捨てにしてんだ! ぶっ飛ばすとゴラァ!」
「うるせーよ、雑魚が」
その瞬間九鬼の姿がブレたかのように見えたかと思えば、月出里の眼前に現れていてそのまま腹パンを打ち放つと、それだけで月出里は吹き飛ばされてしまい、飛んでいった壁に激突したらそのまま意識を手放した。
「これで静かになったな」
「うそっしょ……」
「猿が1発……」
「強すぎる……」
「鬼神降臨だ」
それから九鬼は無敵の所まで戻っていくと、無敵に対して声をかける。
「力也、死ぬなよ?」
「ぬかせ、俺だって強くなってんだ。前みたいにボコボコにはなってやらねーぞ」
「そうか。最初から本気を出せよ?」
「ああ。楽しませてもらう」
それから本気をお互いに出した2人の戦いは、肉弾戦だと言うのに激しい音と衝撃が辺りを包み込んでいく。それを離れた所で見ている百鬼たちは、初めて見る【鬼神】九鬼泰次の戦いに戦慄した。
「あ、ありえないっしょ!?」
「本気の無敵が押されてるなんて……」
「あれがあの九鬼君なの……まるで別人じゃない!?」
「やっぱり強い。理性が残ってて助かるな。俺だとアレは止められない」
「ハハハハハ! やっぱり泰次はこうじゃないとな!」
「殴られてんのに笑うのかよ! しばらく見ない間に変態になったんじゃないのか、力也?」
「ふざけんな! 変態はテメーだ。学生って職業の癖にどんだけ強くなってんだよ!」
「学生の本分は勉強だろーが。勉強してたら強くなったんだよ!」
「ふざけすぎだろ! 何で大魔王より学生がつえーんだよ!」
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殴り合いの喧嘩をしていると言うのに、久しぶりに会った旧友と会話を楽しむようにしてお互いに喋りながら、九鬼と無敵は己の拳をぶつけ合っていた。
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「はぁはぁ……やっぱり泰次には敵わねーな」
「ったく、どんだけしぶといんだ。さっさと倒れとけよ。執拗く殴られるこっちの身にもなれってんだ」
「この世界はステータスがあるからな。俺の地力も日本にいる時とは比べようもないくらいに上がってる」
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「これを使うことがなくて助かった。俺だと泰次を止められないからな」
「そんなこと言ったって、昔はいっぺん止めただろ」
「あの時は死ぬ思いだったんだぞ」
「あぁぁ、あの時は俺も殺されるかと思ったな」
3人が仲良く昔の頃のように会話を楽しんでいる所へ、今度は1人伸びている月出里以外の女子メンバーたちがやって来たら、九鬼の強さを目の当たりにした2人が再度謝罪を始めてしまう。
「九鬼君、過去をバラしてごめんなさい」
「私も馬鹿にしてごめんなさい」
「それは別にいいって言っただろ。お前らのことなんてどうでもいい」
「「うっ……」」
「グサる……」
「グサだよ……」
「九鬼君、それが地なの?」
「別に……どっちも俺だ」
「そう……変な詮索してごめんね」
「お前のこともどうでもいい」
「うっ……」
「これで奏音もグサ仲間っしょ」
「奏音ちゃん、グサ仲間だよ」
「本当にグサッとくるわね……」
奇しくも詮索してしまった謝罪をした千手は、百鬼や千喜良同様に冷めた目で九鬼から射抜かれて、『どうでもいい』の洗礼を受けてしまうと図らずも精神ダメージを負わされてしまった。
「泰次は何でパーティーを組まずにここを攻略してんだ?」
「ケビンさんからの指示だからだ」
「あのSランク冒険者か?」
「そう」
「泰次でも勝てないのか?」
「遊ばれて終わり」
「マジか……いつか会ったら再戦しようと思ったんだけどな」
「どうせ力也のことだから、喧嘩バトルで挑もうとしてるんだろ?」
「当たり前だろ」
「ケビンさんを相手にそれは悪手、というかただのバカだ。俺は何でもありのルールでやっても勝てた試しがない」
「それほどか? それほどにSランク冒険者って強いのか? 俺たちも既にSランクになっているんだぞ」
「ランクを目安にしてたら、本当の強者にはいつまで経っても勝てないぞ。現に俺はAランク冒険者だからな」
「何で俺より強くてAランクなんだよ……」
「ダンジョン攻略を始めてから、通常のクエストの方はさっぱり受けられなくなったからな。Aランクになったのもついこの間だ。それまではCランクだったし」
「はあ? その強さでCランクって名乗ってたのか!?」
「詐欺っしょ」
「詐欺だね」
「詐欺よ」
「無茶苦茶だな」
「仕方がないだろ。クエストを受ける暇がなかったんだ。上級者用ダンジョンを制覇したら、一気にAランクに上がって俺だって迷惑してんだよ。まだ手をつけてないクエストとかあったのに、もうCランク以下のクエストが受けられないんだぞ」
「クエスト基準かよ……」
九鬼のランクを上げない理由がクエスト基準だと知った一同は呆れ果ててしまうが、過去に九鬼とつるんで性格を知っていた無敵と十前はある意味で納得してしまう。
「ねぇ、1つ疑問なんだけど、何で3人はそんなに仲良しなのに学校では一言も喋らなかったの?」
千手が仲良く会話をしている九鬼と無敵たちを見て、ふと疑問に思ったのかそのようなことを尋ねると、九鬼は「話しかけられてないから」とあっさりとした回答をしたのに対して、無敵はバツが悪そうに視線を逸らしてしまうと、十前が代わりにその質問に対して答えた。
「泰次がグループを抜けたあとに、力也が『真っ当な道に進んだあいつの邪魔をしたくない』って言ったんだ。俺たちは食み出しもんだからな。俺たちから親しげに話しかけられたりしたら、泰次も仲間だと思われるだろ?」
「確かにそうね……」
「高校に入ったら別の地域からの奴らも来るし、中学時代の奴らだって多少なりとも進路が別れて泰次の過去を知る者が減る。そうなると俺たちが関わらなければ、泰次は一般的な男子高校生として生活を送れるということだ。それに中学時代の奴らは鬼神伝説を知っている以上、好き好んで泰次の過去を風潮することはない」
「そういうことだったのね」
「まぁ、結論としては、親父さんを目標にしている泰次へ力也と俺からの餞別ってやつだな」
「無敵ぃぃぃぃ!」
「ばっ、千喜良抱きつくな! 泰次からのダメージが抜けてねぇんだ。痛てぇだろうが!」
「照れてるっしょ」
「男の友情ね」
「力也、そんなことを気にしてたのか? 話しかけてきても良かったのに、相変わらず素直じゃねぇな」
「相変わらず女に『どうでもいい』発言するお前にだけは言われたくねぇぞ!」
「どっちもどっちっしょ」
「似たもの同士ね」
「フッ、そうだな」
「無敵ぃぃぃぃ!」
「千喜良はいいから離れろ! マジで痛てぇんだぞ!」
「じゃあ、九鬼ぃぃぃぃ!」
「寄るなウザイ」
「ぐはっ!」
奇しくも元気いっぱいマスコットポジションなチビッ子千喜良の九鬼に対する初アタックは、無敵や十前の時と同様とはいかず、思い切り冷めた目で九鬼からのグサ攻撃を受けてしまい志半ばで失敗してしまう。
「うぅぅ……十前ぅぅ……」
フラフラと癒しを求めて十前に抱きついた千喜良に、十前は頭を撫でながら今回の教訓を教えるのだった。
「千喜良、難攻不落の泰次に抱きつくためには、まず仲良くなることが大前提だ。今のままだと石ころが投げつけられた状態で、泰次は当然それを避ける」
「うっ……石ころ……グサ再び……」
「千喜良だって竜也が抱きつこうと近寄ってきたら逃げるだろ?」
「猿は無理ぃぃぃぃ!」
「つまりそういうことだ。今の千喜良は泰次にとって、生理的に受けつけない対象だ。触れることすら難しい。まずは普通に会話が成立するところを目指せ。最初の目標は『どうでもいい』と言われないことだ。それがなくなれば会話をすることができる」
「……頑張る」
十前と千喜良がそのような会話をしている中で、百鬼は懲りもせずにご機嫌取りのお菓子を差し出そうとしていた。
「何で俺がお前から物を貰わなきゃいけないんだ」
「うっ……」
「頑張るのよ、夜行」
「あの……九鬼君にあげようと思って買ったので……」
千手の応援や現状況によって、図らずもバレンタインデーにチョコを渡そうとしているような光景であり、奇しくも百鬼自身、『今の私ってチョコ渡す感じじゃね?』と思いつつ、相手が九鬼であることに別の意味でドキドキしながら受け取ってもらえないかと期待するも、相手は『どうでもいい』発言をする九鬼である。
「いらん」
「うぅぅ……」
そのような見込みのない状況がありありと見て取れる中で、崖下にグサが準備されている崖っぷちに立たされている百鬼に、救世主が助けを出した。
「泰次、そう言わずに貰ってやれ。何を持っていけば許してくれるかって、頭が悪い百鬼が結構な時間をかけて頭を悩ませながら買ったんだ」
「うっ……身内からのグサ……」
その救世主かと思われた無敵の言葉を聞いた百鬼は、図らずも悪意のない『頭が悪い』発言によって、予想だにしないところからのグサ攻撃をその身に受けてしまう。
「はぁぁ……力也の頼みだし貰ってやる」
難攻不落な九鬼にお菓子を受け取ってもらえた百鬼がホッとひと安心するのも束の間、続く無敵の言葉を聞いた九鬼の返しによって百鬼は崖下に落ちてしまうのだった。
「それ、結構高かったらしいから、美味いと思うぞ」
「そうなのか? それじゃあベネットさんにあげるかな」
「ほえっ?!」
まさかまさかの九鬼が受け取ったお菓子を、そのまま別の誰かに譲渡するとは思ってもみなかった百鬼は、変な驚き方をするとすぐさま九鬼に問いかけるのである。
「べ、ベネットって誰だし!? ってゆーか、女の名前じゃね?」
「冒険者仲間だ」
「えっ、泰次! お前、女の仲間がいるのか!?」
「信じられん……」
九鬼の返答を聞いた無敵や十前は、ありえないようなものを目にしたと言わんばかりに九鬼を注視してしまう。それに対して九鬼はベネットとの経緯を話すために、盗賊退治をした時からの連れだということを説明した。
「マジか……あの泰次が女連れになるとは……」
「環境が変われば人も変わるもんだな」
「ちょーっ!! ありえないっしょ! うちのあげたお菓子をその女にあげちゃうの!?」
「俺が貰った時点で俺の物だろ。その後にどう処理するかは俺の自由だ」
「ぐはっ!」
「夜行ちゃん、これで痛恨のグサ仲間だよ」
「で、そのベネットというのは泰次の彼女か?」
「は? 殴られ過ぎて頭がおかしくなったのか? そんなわけないだろ。ベネットさんはただの同行者で、ケビンさんの特訓を受けてる同じ境遇の人だ」
「かなりエグいっしょ……」
「盗賊から襲われていたところを助けたのなら、絶対に惚れてるよ……」
「まだ見ぬベネットさんもグサ仲間よ、きっと……」
百鬼たち3人はまだ見ぬベネットに対して、痛恨のグサを言い放った九鬼の否定を聞いてしまい、グサ仲間として同情を禁じ得ない。
「まぁ、なんだ。お前が相変わらずなのか1歩進んだのか判断に苦しむが、この後はどうするんだ?」
「そんなの下層に向けて下りるに決まってるだろ。力也のせいでとんだ時間を食っちまったからな。それに魔物を殺しまくれば気持ちも落ち着くだろ」
「それじゃあ、どっちが先に1番最下層まで辿りつけるか勝負だ」
「はあ? そんなのパーティー組んでる力也の方が早いだろ」
「見ての通り竜也は伸びてる。それを無理やり叩き起したりはしない。その間にひと足早く先へと進めばいいだろ?」
「勝手すぎんだろ」
「負けた方は1週間飯奢りだからな?」
「はぁぁ……そっちは1ヶ月奢りで1日の回数無制限、同行者あり。こっちは1週間で3食全員分。どちらも店の指定はナシだ」
「乗った」
「ちょー、その1ヶ月間回数無制限ってうちらも払わなきゃいけないの?」
「当たり前だろ。俺は力也と虎雄以外の払いたくもないどうでもいい奴らの分まで勘定に入れて、余分に金を失うリスクがあるんだぞ。そこにあの馬鹿が入ってるかと思うと最悪な気分だ」
「グサだし……」
「グサだね……」
「グサグサ……」
「泰次、そんなにのんびりしてていいのか? 竜也が目覚めてしまうぞ?」
「俺の1発をもらっておいて、そんな簡単に目覚めるかよ」
「そりゃそうか」
「じゃあな、せいぜいお金をたんまりと貯め込んでおけよ」
こうして九鬼はケビンからの指示であったダンジョン攻略に加えて、無敵からの勝負の持ちかけで始まった賭けのゲームが上乗せされたので、今までの攻略スピードを上回る早さでダンジョン攻略に勤しんでいくのであった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「ねぇ、無敵……月出里っていつ起きる感じ?」
「泰次の1発を無防備に受けたんだ。今日の攻略はもう無理だな」
「そんな威力なの? ヤバくね?」
「閉店時間を過ぎても起きないようなら、叩き起こせばいい」
「猿ぅぅぅぅ!」
「千喜良、騒ぐのはルール違反だ」
「十前の言う通りよ。月出里みたいになりたくないでしょう?」
「うっ……グサよりヤダ……」
その日、結局のところ月出里は目を覚まさずに叩き起されてしまい、それから目を覚ますとあまりの衝撃に記憶が飛んだのか、もしくは九鬼にやられたのを認めたくなくて記憶が飛んだのかわからないが、何故気絶していたのかわからずにダンジョンから帰ることになるのであった。
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