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第16章 魔王対勇者

第511話 引っ越し屋ケビン

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 朝までコースが終わり朝風呂をみんなで済ませたあと、そのまま食事を摂ってから携帯ハウスを収納して本宅に戻ると、玄関で執事がお冠になっていた。

「使用人たる者が朝食の準備もせずに朝帰りなどと――」

「あ、男がいたの忘れてた」

 ケビンはすぐさま催眠魔法をかけたら、セオグナンと同様に女性たちの指揮下に入るように暗示をかけると、そのあとは魔法を解除して何事もなかったかのように振る舞う。

「で、何だって?」

「いえ、朝のご指示をいただこうかと」

「私たちは朝食を既に済ませたから、欲しいなら自分たちで作って食べなさい。セオグナンにもそう言うように」

「はっ、かしこまりました」

 レメインから受けた指示により執事が立ち去ると、ケビンはエラに引っ越し準備をするようにマジックポーチを手渡した。

 そしてケビンはエラの準備が終わるまでリビングにて待っている間に、レメインに女性たちを再度集めるようにお願いすると、レメインたちを含めて集合した女性たちに指輪を嵌めていく。

「もうセオグナンの指輪をしておく必要もないだろ。形式上はセオグナンの嫁を続けてもらうけど、その指輪は俺の嫁である証だ。使用人たちは当然結婚してないからそのまま俺の嫁な?」

「ケビンくん……」
「ケビンさん……」
「ケビン様……」

「「「「「ご主人様……」」」」」

「その指輪は通信魔導具でもあるから、何か困ったこととかあったら連絡してくれ。使い方は頭で俺を思い浮かべたら、頭の中で俺と会話するような感じだ」

 ケビンから指輪を嵌めてもらい感極まっている女性たちは、瞳に涙を浮かべながら指輪を触り、そのあとはケビンとの連絡のやり取りの練習を1人1人始めていく。

「これ凄いわ。寂しくなったらこれを使って、ケビンくんと会話ができるのね」
「何なんですの!? ありえませんわ! 世紀の発明品でしてよ!」
「ケビン様凄いです。私も寂しくなったら連絡します」

 ケビンたちがそのようなことをしていると、準備を終わらせたエラが戻ってきたので、ケビンは女性たちに別れを告げてセリナたちの待つ宿屋へと転移するのだった。

「消えた……」
「ありえませんわ! ありえませんわ!」
「ケビン様凄い……」

「ご主人様は神ですか……」
「教団のお触れでは魔王だと……」
「魔王でも構わない。ご主人様はご主人様よ」
「そうよ、ご主人様を愛する気持ちは変わらないわ」
「もっとご主人様の良さを、この国の女性たちに広めていきましょう」

 ケビンがいつもの感覚で転移魔法を使ったことにより、残された者たちは唖然としてしまうが、若干1名、女性の呟いた内容がルルと同じ香りのする文言に似ていることなど、転移したあとのケビンは知る由もない。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「ただいま」

「おかえりなさい、ケビンさん」

「おかえり」

 リンドリー伯爵家から宿屋の1室に転移したケビンは、エラにセリナとヴィーアを紹介してお互いに挨拶をさせると、宿を引き払って建物の物陰に移動したら憩いの広場へ向けて転移した。

「ただいま」

「おかえりなさい、あなた」

「ん? 今日は休みの日みたいだな」

 転移して戻ってきたケビンに挨拶を返したのは、天界での仕事を休んでいるソフィーリアであった。

「カトレア、お母さん連れてきたぞ」

 ケビンの呼びかけに反応したカトレアが振り向くと、視界の中に自分の母親がいることに涙する。

「お……お母さん……」

 身重なカトレアは、今すぐにでも駆け寄りたいが歩いて行くことしかできずにいると、エラの方からカトレアに駆け寄って思い切り抱きしめた。

「カトレア! カトレア!」

「お母さん!」

 感動の親子対面となったことで、憩いの広場にいる嫁たちが涙ながらにその光景を眺めていると、落ち着いてきたカトレアがケビンに向けてお礼の言葉を口にする。

「ケビン君、お母さんを助けてくれて、連れてきてくれてありがとう」

「ケビンさん、カトレアと再び会わせて頂き、ありがとうございます」

「やっぱり親子は一緒にいるべきだな」

 そのような感動的名場面シーンに選ばれても過言ではないこの状況下でも、ただ1人、存在感が薄まらないようにいつもアピールしている嫁が口を開いた。

「ケビン君、カトレアのお母さんをお嫁さんにしたの?」

 そう、その嫁とは、いつもケビンが女性を連れてくると、真っ先に声を上げてケビンをからかうティナだ。

 そのティナの発言により嫁たちの視線は、そこさえ見てしまえばわかるという1点に視線が集中する。それは、新たに来た女性の左右の薬指である。

「ある」
「あるわね」
「あるねー」

 ニーナが口にして、シーラやクリスがそれに続くと、口々に発見しましたと言わんばかりの発言が嫁たちの間で飛び交っていく。そして、傍にいるカトレアも母親の薬指を見て、その指輪を確認するのだった。

「ある……お母さん、ケビン君のお嫁さんになったんだ……」

「ふふっ、街中でナンパされたの」

「ナンパ!?」

「お母さんナンパされたのなんて生まれて初めてよ。最初は変な人だなって怖くて敬遠していたけど、段々と言葉を交わすうちにベンチに座り込んで話し込む間柄にまでなったのよ」

「そ、それで?」

「ある日ね、ケビンさんに好きだって告白されて、お母さんの気持ちを教えてって言われたから『好きです』って答えちゃったの! きゃっ♡」

「お、お母さん?!」

 リンドリー伯爵家にいた頃とはあまりにも違う母親の様子に、カトレアは本当に自分の母親なのか不安になってしまうが、ヒートアップしてきたエラは止まらない。

「それでね、それでね。ケビンさんが『抱きたい』って耳元で囁くから、お母さん恥ずかしくて、頷くことしかできなかったの! そのあとはケビンさんの秘密基地の寝室に連れ込まれて……きゃー♡ お母さん恥ずかしくてこれ以上は言えないわ!」

「お……お母さん……? だよね……?」

 完全に乙女モード全開で語る母親を見たカトレアは、既に自信を持って自分の母親だと言えないくらいに困惑している。

「ケビン君! 私にもナンパして!」

「いや、ティナは既に嫁だろ? 嫁をナンパしてどうすんだ。俺が声をかけたらホイホイついてくるだろ?」

「当たり前よ! ケビン君のことが大好きなんだから、どこへでもついて行くもん!」

「そうなったらナンパじゃなくて、ただの嫁に対するデートのお誘いだろ? 女性を口説き落とすナンパの醍醐味がない」

「あっ……」

「ティナのあんぽんたん」
「ティナは相変わらずだわ」
「そこがティナの可愛いところだよー」

 そのような定番とも言えるティナ劇場がティナの羞恥と引き換えに公開されると、周囲にいる嫁たちは既に慣れ親しんだ光景であるので、生温かい視線でティナを見つめている。

 そのような中でサラとマリアンヌが動き出してエラに近づいたら、母親同盟に引き込んでケビンとの馴れ初めを更にこと細かく聞き始めるのだった。

「ケビン君……やっぱりお母さんに手を出したんだね……」

 ケビンにゆっくり近づいてそう口にするカトレアは、呆れた視線をケビンに向けた。

「だって、あんなに美人なんだぞ? ナンパしないともったいないだろ」

「もったいないの意味がわからないよ」

「カトレアも将来あんな美人さんになるかと思うと、我慢ができなかったんだ。カトレアの未来像を見ているみたいだ」

「もうっ、そう言ったら私がなびくとでも思ってるの?」

「思ってるさ。俺はカトレアが好きだし、カトレアは俺にメロメロだろ?」

「……バカ」

「惜しむらくはカトレアとエラをすぐには同時に抱けないことだな。ソフィに頼めば何とかなるだろうけど、激しくなりそうだし子供が生まれるまでは我慢か……」

「……エッチ」

「俺は正直に生きることにしたからな。ここまで嫁さんたちが増えてしまったら、もう外聞なんかどうでもよくなるのさ」

「これって惚れた弱みだよね。ケビン君が見境のないエッチでも嫌いになれない」

「見境はあるぞ。見境がなくなったらただの強姦魔になるだけだろ」

「お嫁さん、もしくはお嫁さんにする人限定で」

「それなら見境ないな。我慢する必要がないし」

 そのような会話をカトレアと続けていたケビンに、エラから情報を聞き出したマリアンヌが鋭い指摘を飛ばしてくる。

「ケビン、リンドリー伯爵家の女性たちを全員手篭めにしたのでしょう? 充分見境ないわよ」

「えっ!? お母さんだけじゃなかったの!?」

「い、いや……あれはちゃんと嫁にしたし……合意の上でやったことだし……」

「あら、お仕置きで伯爵夫人を3人襲ったのは合意の上なの?」

「えっ!? 奥方様たちを!?」

「そ……それは……貴族女性が嫌がるお仕置きを思いついただけで……」

「1回だけじゃなくて、毎日毎日やり続けてたんでしょう?」

「毎日!?」

「それは……求められたからで……」

「催眠魔法を使って?」

「催眠魔法?!」

「……あとで正気に戻してガツンと絶望感を与えようかと」

「当主の目の前で寝取ったのでしょ? 全員を」

「当主様の目の前で!?」

「…………乱交しました」

「乱交!?」

「見境は?」

「ありません」

「ふふっ、でも当主の魔の手から救ったのだから、ケビンはいいことをしたのよ。聞けば最低な当主みたいだし、そこは胸を張っていいと思うわ」

「ケビン君……はっちゃけ過ぎだよ……」

 マリアンヌの手によってケビンもまたティナのように公開処刑を受けると、嫁たちは生温かい視線ではなく溜息とともに『平常運転ね』と心の内で思うのだった。

 だが、ケビン全面肯定派はそのようなことを聞かされても、ニコニコとしているだけでケビンのやんちゃぶりを温かく見守るのである。

「ケビンは中からセレスティア皇国を崩すのでしょう? 自慢の息子の頭が良くて、お母さん鼻が高いわ」

「えっ!? そうだったの? さすが私のケビンね! お姉ちゃんも鼻が高いわ!」

 ケビンには全くそのつもりはなかったのだがサラの言葉によって、嫁たちも『なるほど』とさっきとは打って変わって納得してしまうのだった。

「そうなると、現地妻がどんどん増えていくわね。セレスティア皇国の貴族界は、そのうち女性が裏で牛耳りそうだわ。リンドリー伯爵家がその第1歩目ね」

 マリアンヌの未来予想図によって話がどんどんと膨れ上がっていき、ケビンは今更「そんなことは考えていなかった」と否定することもできずに、奇しくもスタシアの提案していた【不遇な女性たちを救おう作戦】が、図らずも実のある話になっていくのである。

「はぁぁ……どうしよう……」

 そのようなケビンの呟きはソフィーリア以外の誰に聞かれることもなく、思い悩んでいるケビンにソフィーリアはニコニコと微笑みを向けるのであった。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 ケビンがエラを救い出してからというもの、ケビンの元には家族を連れてきて欲しい人のリストが挙がってきており、ケビンはそれを基にしてセレスティア皇国の各地を転々としていた。

 ケビンはこの作戦の時に本人を連れて行こうとしたのだが、既に全員が家族に宛てた手紙を準備していて、日常業務に励むことを優先させている。

 ケビンとしては家族に会いに行くのだから、仕事よりも家族優先で構わないと主張をしたのだが、口を揃えて言われたのは『手紙を見せれば問題なし』という謎の理論だった。

 それと今回は家族を連れてくるということで、セリナやヴィーアというお供も付けずにサクサクと移動をして、手早く済ませようとしているケビンだったが、その行動は既に亡命組の故郷を巡るツアーと化している。

 道行く先々で何か面白い発見はないものかと、必ずと言っていいほど観光をしていて、手早く済ませていくつもりだったのが蓋を開けてみれば、手早くどころかのんびりと散策している。

 だが、家族を連れて行く際には転移魔法を使ったため、手早くよりも瞬時に終わらせていたこともあって、普通に馬車移動よりも手早いだろうとして気にしないことにした。

 そのようなケビンでも手早く済ませられない、お手上げ家族に出くわすこともあった。

「ケビンさん、どうぞ抱いてください」
「私もお願いします」

 そう、ケビンがお手上げになったのは、母子家庭で生活をしていた家族だった。

「な、何でそうなるの!?」

 ケビンは全くと言っていいほど意味がわからなくて、何故そうなるのか問いかけると、問題となった原因はどうやら手紙の内容であったのだ。

 ケビンがその手紙を読むことに関して許可を貰うと、目の前にいる母娘に宛てた手紙を読み始める。

 すると、そこに書かれていたのはケビンが如何に凄い人であるのか、自分がどれだけ幸せになっているのか、この幸せを家族にもわかちあって欲しいから、是非ともケビンに抱かれてこの幸せをその体で感じ取って欲しい云々が、つらつらと書き綴られていたのだ。

「マジか……」

「ケビン様、寝所はこちらです」
「今日はここにお泊まり下さい」

「本気?」

「既に夫に先立たれた未亡人でみすぼらしい体ですけど、ケビン様のお情けをください」
「お姉ちゃんほどおっぱいがあるわけじゃないけど、ケビン様に後悔はさせません」

「わかった。手紙にも書いてあった通り、朝まで寝られないから覚悟しろよ?」

「それほど愛し求めてくださるのなら、私としては幸せ以外の何ものでもありません」
「まだ若いですから体力には自信があります。初めてですけど精一杯ご奉仕させていただきます」

 そして、ケビンにとって全く予想外の展開となり、訪れた家で母娘丼を食べるのである。当然有言実行となるケビンのお食事は、いつも通り朝までのコース料理を食べることになり、コース料理初体験の2人は気絶しても魔法によって回復させられ、娘や姉の書き綴っていた幸せとは何なのかを身を持って体験することになったのだった。

「凄い……これが求められる幸せ……」
「愛って凄いね、お母さん……私幸せだよ……」

「朝ご飯は俺が準備するよ」

「ありがとうございます。今度は是非母娘3人をお召し上がりください」
「うん。お姉ちゃんも混ぜて、いっぱい愛してもらおう」

「……タフだ……」

 初めて母娘丼を体験したはずの母親は、既に次のステップとなる母娘丼3人前の予約をケビンに入れると、娘もそれに対して賛同して姉を混じえたプレイに目をキラキラとさせていた。

 そのようなことがあっても、ケビンのご家族引っ越し本舗は通常営業通りに稼働して、次なるご家族の元へと旅立つのである。

 そして、1度前例ができてしまうと2度目3度目と続いたところで、ケビンはもう意思確認などせずに、言われたらそのまま朝までのコース料理を堪能する。

 だが、何事にも厄介な案件というものがあり、ご家族引っ越し本舗が両親に娘1人という3人暮しをしていた家族に出くわすと、何を血迷ったのか父親が手紙の内容に賛同して、ケビンに娘を差し出すのだった。

「どういうこと?!」

「娘ももう14歳です。これといって浮いた話の1つもなく、このままでは結婚適齢期を余裕で越してしまうのではないかと不安でもありまして、それならばケビン様に愛とは何かをご教授していただき、娘をハーレムの末席に加えて頂ければと」

「君はそれでいいの?」

「はい。元々男性は苦手なのです。いつも私のおっぱいばかりを見ていて、私自身を見てくれようとはしてくれないのです。その点ケビン様はおっぱいは見るけど不快な視線ではなく、それでいてちゃんと私のことも見てくれているので、ご迷惑でなければ抱いて欲しいです」

「わかった。強制とかじゃなくて自分の意思と言うのなら、俺は君のことを抱くよ」

「こちらに私の部屋がありますので、一緒に向かいましょう」

 それからケビンはその娘とともに部屋の中に入ると、結界を張って環境を整える。

「何カップあるの?」

「Gです」

「そりゃ大きいね。朝までコースでたっぷり味わわせてもらうよ」

「はい。初めてで上手くご奉仕できるかわかりませんが、精一杯やらせていただきます」

 こうしてケビンは朝までコースの中で、充分に大きな胸であれやこれやとご奉仕してもらい、大変満足のいく形で女の子の体を堪能しまくり朝を迎えるのである。

「ケビン様、愛してます」

「俺もだよ。愛してる」

「また抱いてくれますか?」

「これからは俺の嫁なんだ。何度だって抱くさ」

「嬉しい……それでは朝食の前にもう1度だけ……」

「時間の許す限り抱くからな? 1度では終わらせないぞ」

「きゃっ♡」

 朝を迎えたというのにケビンの絶技の虜になってしまった女の子は、朝食の時間になるまでオネダリを続けて、何度も幸せの絶頂を果たすのであった。
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