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第15章 勇者召喚の儀
第502話 記念SS ターナボッタ・ウィーガン 後編
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俺が嫁候補と言うよりも暫定嫁?を助けてから1週間後、俺はキラーツ男爵家の本宅へとお邪魔している。フォスティーヌを嫁にもらおうと当主のコトーナ男爵に伝えに来たのだが、それが思わぬ展開となってしまったのだ。
「ターナボッタ様、私じゃダメなの? 私はターナボッタ様がいいの! ターナボッタ様じゃなきゃヤダ!」
俺がフォスティーヌを嫁に貰うと言ってからというもの、元々嫁にどうですかと言われていたフォリチーヌが駄々を捏ね始めたのだ。
それ以前にフォスティーヌが出戻りであることからして、コトーナ男爵と奥さんのエブリン夫人は恐縮しまくって、出戻りのフォスティーヌを嫁にするくらいなら、フォリチーヌの方が俺の外聞も傷つかず問題ないのではと、あれやこれやの議論が巻き起こった。
そしてその間に話を聞きつけたフォリチーヌが、この場へ参戦してきたと言うわけだ。
「フォリチーヌ、閣下に迷惑をかけてはいけません」
「姉様は1回結婚したでしょ! 今回は私に譲ってよ!」
「それは私たちが決めることではなくて、閣下が決めることです。それに結婚と言っても婚姻を結んだだけで、私は何もされることなく当主がお亡くなりになったので、結婚していないのも同然です」
「自分が好かれてるからってズルいよ!」
姉妹論争とも言うべきか、どちらが俺の嫁になるのかと水面下での争いが起こり始めていた。いや、大っぴらにしているから水面下ではないな。
「姉たちが申し訳ありません」
「いや、賑やかなのはいいことだ」
そしてこの場に何故かいるコトーナ男爵の跡取り息子のコナソンが、申し訳なさそうに俺へと謝罪してきた。1番下の子だと言うのにしっかりしている。確か10歳だと言っていたような気がするが、俺が10歳の頃はまだ遊んでいたぞ。
コトーナ夫妻からはフォリチーヌを薦められ、姉妹たちは自分を嫁にと論争を始めて、弟は姉たちの行動が恥ずかしいのかひたすら俺に対して謝罪しており、この場をどう収めるべきか俺はとある結論を導き出した。
これならば、後輩の言うみんなハッピーで丸く収まるはずだ。
「俺からの意見を言わせてもらう」
俺が声を挙げたことにより、騒々しかったこの場は一時的に静まり返ることとなり、それから俺は一呼吸置いて自分の考えを全員へと伝える。
「フォスティーヌは嫁にする。それがフォスティーヌと会った時の言葉だしな。いくら口約束とはいえ、それを曲げることは俺の信念が許さない。だが、フォリチーヌが事実はどうあれ俺との婚姻話をコトーナから聞いて、それに期待をふくらませていたのも事実」
俺は全員を見渡し終わると最後の結論を口にした。
「よって、フォリチーヌも嫁に貰う。コトーナ男爵には悪いが娘を2人とも俺の嫁にしたい。これならば全員の意見が纏まる1番の解決方法だと思う」
「ですが、閣下……よろしいのですか? フォスティーヌは出戻りです。閣下が周りの貴族たちから何と言われてしまうか……」
「本人もさっき言っていただろ。何かをする前に旦那が死んだんだ。そうなれば結婚と言っても、してないのと同然だ。元よりそれを知らないで嫁にすると言ったんだから、俺に二言はない」
「ターナボッタ様……」
「むしろラッキーだな。元旦那が手をつける前に、死のうとしていたフォスティーヌを俺の嫁にできるんだ。思わぬところで綺麗な嫁さんに巡り会えたことに感謝だ」
「ターナボッタ様、私は綺麗?」
「フォリチーヌはどっちかって言うと、まだ可愛い方だな。女性のことは俺にはわからないが、もう少し大人になったら綺麗になるんじゃないか?」
「んふふ……カワイイって言われた」
「それと、俺は側妻を娶る予定があるからな、フォリチーヌもそこは了承してくれよ? ちなみにフォスティーヌは構わないと言ってくれたぞ」
「ターナボッタ様と一緒にいられるなら、私も大丈夫です!」
こうして話を纏めあげた俺は、キラーツ男爵家から姉妹揃って嫁に貰うことにしたのだった。
(後輩よ……これでお前の言うみんなハッピーになっただろ……)
そしてその日はキラーツ男爵家で泊まることになり、翌日になってから結婚式について話を纏めると、そのあとは自宅へと帰ることになる。フォスティーヌやフォリチーヌが一緒に来たそうにしていたが、結婚準備とかも色々とあるだろうし、俺は結婚式の準備を進めるように言い聞かせてから別れを告げた。
それからというもの、俺が自宅へと帰ってからはいつもと変わらぬ日常を送っている。帰ってからまずしたことは、後輩へ宛てた手紙を書くことだ。結婚式には是非とも来て欲しいから、後輩へキラーツ男爵家の姉妹を同時に娶ることも書いて、冒険者ギルドへ依頼してから急ぎで届けさせることにした。
こういう時は商業ギルドよりも、冒険者ギルドの方が使い勝手がいい。高ランク冒険者なら報酬さえしっかりとしていれば、確実に急ぎで届けてくれるからだ。魔物に襲われた時の心配もしなくていいしな。
対して商業ギルドだと商人へ持たせたりもするから、商人感覚のスピードで手紙が届くことになる。商人である以上護衛は雇うだろうが、いざとなったら手紙なんか放り投げて自分の命を優先するだろう。
そしてそれからしばらくすると手紙が届いたのか、後輩が唐突に姿を現した。
「お久しぶりです、先輩」
「久しぶりに会うな、後輩」
後輩の登場に使用人たちは慌ただしく動いていて、接客慣れしているスチュワートやエリザベートまでカタカタと震えている。スチュワートなんかは、後輩が玄関にやって来て対応した時には顔面蒼白となってしまい、そのまま俺へ報告に来た時もガタガタと震えながら、言葉を上手く話せずにいた。
その訪問に来た後輩は相変わらず冒険者ケビンとして動いているようで、俺は事前に冒険者ケビンと皇帝ケビンは同一人物だから、もし尋ねてきたら知らせてくれとスチュワートたちに教えこんでいたのだ。
「ご結婚されるようで先輩にプレゼントを持ってきました」
「プレゼント? 後輩からのプレゼントなんてマジックポーチ以来か?」
そう答えた俺に対して後輩が渡してきたのはバングルだった。
「執務用に万年筆も考えていたんですけど、先輩って研究貴族だし領地経営とか関係ないから、いつでも連絡が取れるようにこれにしました。この前のはたまたまソフィの力を借りたからできたことなんで」
それから後輩はこのバングルについての説明をしていく。早い話がこれを腕に付けていれば、この前みたいにいつでも後輩とやり取りができるそうだ。
「相変わらずなんて魔導具を作り出してんだ……こんなの世界初の魔導具だろ? マジカルで売りに出してんのか?」
「いえ、それは家族とごく一部の親しい人にしか渡していません。嫁たちは指輪に同じ効果が付いています。さすがに先輩相手に指輪を渡したら、俺の社会的何かが失われるので、男でもするバングルにしてみました」
「……俺もたとえ後輩からの贈り物でも指輪だけは勘弁だ。ゾッとする……」
「今回の用件はそれだけです。結婚式が決まって手紙を出した時に、間に合わない可能性があるかもしれませんから。まぁ、前日とかだったら間に合いますけど、もう過ぎていましたなんてことになりたくないですからね」
「それはあるかもしれないな。いくら急ぎで届けてくれって言っても、他国のしかも奥に入り込んだ帝都だしな。このプレゼントはありがたく受け取らせてもらう」
その後も俺と後輩の他愛ない会話は続いていき、俺が新たに作り出そうとしている魔法を撃ち出す魔道具についても、後輩と熱く議論を交わした。
後輩曰く、自分の能力を使えば容易に作り出せるそうだが、それでは魔導具作りとしての醍醐味がないとして、まずは魔導剣のように維持しているものを、どうやって撃ち出すのかという課題について話が盛り上がっていく。
「やはり撃ち出すとしたら、ボール系かアロー系になりますよね」
「そうだよな。いきなり大魔法なんて撃ち出す計画なんて、早々に頓挫しそうだしな。誰でも使えるってのが俺の基本的な考え方だし、何より魔法の使えない俺が使ってみたい!」
「そうなると……やはり魔導具本体というよりも魔石を加工して、そこに魔術式を組み込んで……それなら魔法が撃てる……いや、そうなると魔石が大きくなるか……魔法を固定したなら……」
何やら後輩がブツブツと言っているが、俺にはサッパリだ。自慢じゃないが俺は魔法系の素質がないとわかっていたので、そっち系の授業は履修していない。唯一履修することができたのは基礎だけだ。だから後輩が呟いている魔術式なんてもんは、俺には想像もつかない領域になる。
そもそも魔石の加工なんて俺は専門外だぞ。ドワンさん辺りなら難なくやってしまう技術だけど、ドワンさん並の能力を俺に求められても困る。
俺はせいぜい加工とは言えないような魔石砕きができるくらいで、魔導具に魔石の収納スペースを作ってから、そこに嵌め込むしかやったことがない。魔導剣の魔石だって、ドワンさんに頼んで加工してもらったくらいだからな。
その後は、あっという間に時間が過ぎてしまい、魔導具の話を煮つめることもできずに新作についての意見交換は終わりを迎える。今後は後輩も自分なりの方法で模索してくれるそうだ。そう言いながら後輩は、来た時とは違って転移で帰ってしまうのだった。
(後輩よ……その魔法は秘密なんじゃなかったのか? 使用人たちの開いた口が塞がらなくなっているぞ。面白い顔をしているから別にいいけど)
こうして俺は後輩との有意義な魔導具議論を交わすことができて、この日を終えるのであった。
そして月日は流れて後輩が会いに来てから2ヶ月が経つ6月に、俺は24という歳で、フォスティーヌとフォリチーヌの姉妹と盛大な結婚式を挙げる。
俺としては側妻となる使用人たちも一緒に祝おうと思ったのだが、彼女らが「側妻にしていただけるだけでも光栄です」と言って、辞退してしまったのだ。本人が辞退しているのに無理やり祝うのもダメかと思ったので、とりあえず指輪だけは受け取ってもらえるように準備はしている。
やはり侯爵の結婚式とあってか、やたらとパーティーの時に貴族たちが祝いに現れては贈り物をポンポンと置いていくので、スチュワートたち使用人がそれを管理するのに追われていた。
中でも1番困ったのは後輩の贈り物だ……
うちの敷地が広いからと言って、グリーンドラゴンの剥製をいきなり置きやがった! もうその時の現場は大混乱だ。いきなりドラゴンが現れたんだからな。
それなのに後輩は悪びれもせずに『他の人にも贈った実績があります』と、意味のわからない実績報告を上げたあとで問題ないと言ってのけたのだ。ちなみにその贈った相手はアリシテア現国王夫妻と、後輩の兄たちにあたる夫妻の3組の結婚祝いで贈ったそうだ。
『まだ出していない色があるので、もう何組かいけそうです』と語る後輩の姿に、俺と同じ目に遭う人があと何組かいるのかと思うと、同情せざるを得ない。願わくは、後輩の交友関係が広くないという1点のみで頓挫することだ。
何だかんだで大成功に終わった俺の結婚式は、後輩の贈り物というインパクトのおかげで王都中にそのことが広まってしまった。さすがに侯爵家の家を不躾に訪れるような者はおらず、貴族街に入れない一般人たちの噂は次第と下火になっていくが、貴族街に出入りできる者たちは何かにつけて見れはしないものかと、遠巻きにうちを窺っている者も中にはいる。
ちなみに陛下たちが堂々と見物に来ていた時には対応したスチュワートもそうだが、俺も『国のトップが何しに来てんだ?』と驚いてしまった。
そのようなことがあってから年は流れて、俺が25歳になる年の7月にフォスティーヌが俺の子を産んだ。元気な男の子を産んでくれてアッシャーと名付けた。フォスティーヌの出産が終わったばかりだが、来年にはフォリチーヌが子供を産む予定だ。今は妊娠3ヶ月になる。
格好悪いことだが俺はフォスティーヌが妊娠した時に、この道の先輩である後輩を頼ることにして、出産も後輩に任せることになってしまうのだった。
その時に聞いた話では、後輩は自分の子を全て自分の手で取り上げているそうだ。あいつに医師の心得があったなんて初耳だ。だから安心して後輩へ頼んだのだが、それを同じく聞いたフォスティーヌは、皇帝自らが俺たちの赤子を取り上げるなんて、とても恐れ多いことだと言いながら萎縮していた。
実はこの時の相談した際に後輩の城へ2人で見学に行ってたんだが、相談が終わって【ぶんべんしつ】なるものを見せてもらった時には、フォスティーヌと一緒に驚いたものだ。
見たこともない魔導具がズラリと並んでいて俺が興味津々に見つめていると、後輩が折角だからと試しに使っているところを見せてくれると言って、フォスティーヌの健康チェックが始まってしまう。
フォスティーヌは何をされるのかわからなくて怖がっていたが、なんてことはない。ただベッドに横になるだけでいいらしい。
それを聞いたフォスティーヌが訝しりながらベッドに横になると、本当にそれだけで良かったみたいで、フォスティーヌの状態とお腹の中の子の状態が【もにたー】というものに表示されていた。
「母子ともに健康ですね」
後輩がそう言いながら【もにたー】の見方を俺たちに説明してくれる。【ばいたるさいん】とかよくわからない言葉が飛んでくるが、とりあえず健康なのだということだけは俺にもわかった。むしろ、そこしかわからなかった。
ということが過去にあったので、フォリチーヌの出産も後輩へ任せることにしたのだ。と言うよりも、後輩以外に任せると危ないことが後輩の言葉によって判明した。
「先輩……いくらなんでも13歳の子を妊娠させたらまずいですよ」
「えっ……そうなのか?」
「体がまだ成熟しきってないから、母子ともに危険な状態になります。ぶっちゃけて言うと、他の医師や産婆とかに任せたら死ぬ確率が高くなりますよ?」
「う、嘘だろ!? 過去には12歳で世継ぎを産んだ女性とかいるんだぞ!」
「たまたま成功した例でしょ? しかも健康チェックをしてみたら、フォリチーヌさんの中にいるのは双子じゃないですか……これ、そこら辺の医師や産婆だと確実に子供を優先させるか、フォリチーヌさんを優先させるかの2択を迫られることになりかねないですよ」
「ふ、双子っ!?」
後輩から次々と告げられていく内容によって、俺は大混乱中である。そしてベッドで横になっているフォリチーヌは、死の宣告を受けて顔が青ざめている。
「フォリチーヌさん、そこまで気負う必要はないですよ。あくまで俺以外の人に任せたら危ないってだけで、ここで出産するなら問題ないですよ。不安なら女神様にでも祈っててください。きっと元気な双子が生まれますから」
「で、でも……皇帝陛下は危険な状態になるって……」
「ああ、それは考えなしにフォリチーヌさんを妊娠させた先輩にお灸を据えただけです。これを言っておかないと、また若い子を妊娠させてしまうかもしれませんからね」
「ま、待て! うちの嫁で1番若いのはフォリチーヌだ。あとはフォリチーヌよりも年上だぞ!」
「現状がそうなだけであって、将来的にそうならないとは限らないじゃないですか。先輩なら見た目が大人びていれば年は気にしないでしょ? フォリチーヌさんがそうだし」
「フォリチーヌはどちらかと言うと、大人と言うよりも可愛い部類に入らないか?」
「保護欲を掻き立てられたわけですね」
「後輩だって若い嫁さんを娶っているだろ。同類だぞ!」
「俺は産ませても大丈夫な年齢までは避妊していますよ」
「ぐっ……ちなみに後学のためにその年齢を教えてくれ……」
「14歳がギリギリのらいんでしょうね。産む時に場合によっては15歳になっているでしょうから。一般的な成人も15歳からでしょう?」
「あれはあれで役に立つ情報だったのか……王侯貴族には関係のない制度だが……」
「まぁ、12歳で産ませたって人が過去にいたのなら、関係のない情報にはなりますね。その歳には既に結婚してたってことだし。そういえば俺の嫁の中で11歳で嫁いだ嫁がいましたね。リーチェっていう前々皇帝の嫁だったんですけど」
「はっ!? 前々皇帝の嫁って……お前、どうやって知り合ったんだ? ここを落とした時か?」
「いや、ミナーヴァの王都で奴隷として売られていましたよ。面白そうだから買っただけです」
「ミナーヴァの王都で!?」
「元皇后という触れ込みで売っていましたから、料金が高くて売れ残っていたんですよ」
「お前、よく買えたな……いや、お前だからこそ買えたのか……」
何はともあれフォリチーヌは後輩に任せておけば、問題なく出産できることがわかり、俺とフォリチーヌはひと安心する。
そしてその後にフォリチーヌが不安になったとき用のために、俺の家から後輩の城へと転移できる【魔導ポータル】を設置してくれた。相変わらず訳のわからない魔導具を量産しているようだ。
「フォリチーヌさん、体調が悪くなったり、不安なことがあったらいつでも来ていいですから。城には経験者の嫁たちばかりだから、きっと相談に乗ってくれますよ。1人で来づらい時には、フォスティーヌさんとお子さんの3人で来てもいいですよ」
「ありがとうございます、皇帝陛下」
「それと先輩にはコレです。うっかり渡しそびれていました出産祝いです」
そう言って後輩が出したのは【べびーかー】と言うものらしい。これに我が子を乗せて移動をともにすることができるそうだ。確かにこれならフォスティーヌの負担も減るし、一緒に移動できて目を離すこともなくなるな。
「何から何まですまないな、後輩」
「いえいえ、俺と先輩の仲じゃないですか」
それから別れの挨拶が済むと、後輩は転移で城へと戻った。設置した転移ポータルは使わないようだ。まぁ、自分で転移できるから当たり前か。
それから月日は経ち、冬真っ盛りの2月になると予定通りフォリチーヌが双子を出産する。元気な男の双子で兄をトーマス、弟をトーレスと名付けた。
そして俺は後輩に感謝を述べるのだが、それと同時に罪悪感も感じなければならない。何故ならばフォスティーヌは育児で忙しく、フォリチーヌは妊娠していたということもあり、必然的に俺の相手は側妻の使用人たちメイドとなるのだ。
そして相手をしてもらっているうちに、そうなってしまうこともまた必然と言える。
「すまない……後輩……」
「いえいえ、これが男の性ってもんですよ。だから側妻を娶ることを薦めたんです。きっとこうなってしまうから、フォスティーヌさんたちだって他所で遊んでこられるよりも、身内の嫁を相手にしている姿の方が安心できますから」
「何で後輩が嫁を多く持っているのか何となくわかったかもしれない。さすがに多すぎだとは思うが……」
「そんなつもりで増やしたんじゃないですけどね。俺の場合はもう増えることは諦めていますから。今では逆に嫁たちから増やすことを薦められるくらいです。いったい何を目指しているんだか、俺には教えてくれないんですけどね」
「嫁さん公認どころか、嫁さんたちが増やそうとしているのか? 嫁が増えたら何かあるのか? 家族街でも作るつもりか?」
「その線は俺も考えたんですよ。このまま増やし続けて子供もその分増えていったら、今はまだ小さな町単位ですけど、その内大きな街単位になるんじゃないかって」
「でも違うんだろ?」
「聞いてみたら、外れみたいですね」
「謎だな……」
「謎ですね……」
そのような後輩の悩み?になるのかどうかは知らないが、よくわからないネタを聞いた俺は、もう帰っても大丈夫だと言われたフォリチーヌを連れて転移ポータルで自宅へと帰るのだった。
そして俺が26歳となる年は、俺のせいで夏から秋にかけて出産だらけとなってしまう。
そんなある日のこと、さすがに子供を生んだばかりのフォスティーヌやフォリチーヌを、また妊娠させるわけにはいかないと思った俺は、急いで後輩へ連絡を取って相談したら、避妊効果が付与された指輪を嫁の数だけプレゼントされた。
「さすがに指輪のプレゼントは憚るものがあるんですけど、これが1番簡単で手っ取り早いし、邪魔にならず外すこともなさそうですから」
「すまんな」
「適合化も付けてありますのでどの指でも合うようになっていますが、薬指だけは嵌らないようにしてあります」
「念入りだな」
「奥さんに気があるとか先輩に思われたら嫌ですから」
「後輩がそういう奴じゃないのは知っているから、気にし過ぎだと思うけどな」
「それでもです! 俺が嫌なんです」
「わかった。ありがとな、後輩」
「困った時はいつでも力になりますよ、先輩」
こうして窮地を後輩から救ってもらい、早速嫁たちに指輪の効果と後輩から作ってもらったことを説明して、嫁たちが希望する指に嵌めていくのだった。
「すまんな、俺が避妊しなかったばっかりに」
「そんなことないですよ。子供を持つのは女の幸せですから」
「そうですよ、私も双子を産めて嬉しかったです」
「私たちも同意見です。元々は体だけの関係で良かったのですけれど、妻にして頂けただけでも幸せなのに、更には御子まで授からせて頂いて幸せでいっぱいです」
「俺はしばらく研究をやめて、家事を手伝うぞ。ロラナとウルミ、それからチキータとカーリも仕事をするなよ」
「それはいけません、旦那様」
「そうです。家のことは私たちのお仕事です」
「皇帝陛下からも少しくらいの運動なら問題ないと言われているのです」
「旦那様は研究を頑張ってください」
「ダメだ、家事は俺がする。こう見えても1人暮らしで頑張っていた時期があるんだからな。それに元々俺は平民だ、家事くらいなんてことはない」
そう言って当主命令を宣言したのち、俺はこれから主夫となって家事に奔走する。これくらいのこと、考えなしにやってしまった俺への罰としては軽いものだ。それに嫁たちの負担が減るなら容易いものでもある。
そして俺が至らない点は、スチュワートたちにカバーしてもらえば何とか回るだろう。次点としては使用人を増やすという方法もあったが、後輩の姿が頭をよぎり、雇った使用人を嫁にしてしまいそうなのでそれは控えた。
それならば歳を召した人か人妻ならと思ったこともないこともないが、やはり使用人に囲まれるなら若い子がいいという欲望が、ほんのちょっとだけ出てしまったのだ。
(後輩よ……これが男の性ってもんか……)
その後、月日は流れてロラナが7月に第1子となる女の子を産むと、その子にはリオニーと名付けた。
そして秋に入り9月になるとウルミが第1子となる女の子を産んだので、その子にはウランと名付ける。続く10月にはチキータが第1子となる女の子を産んで、その子にはシシリーと名付けた。最後の11月にはカーリが女の子を産んで、カルナと名付けることにした。
こうして俺はここ2年の間だけで、早くも6人の子供を授かったことになる。後輩の子供がポンポンと増えていくのも納得だ。これは避妊しなかったらえらいことになってしまう。
これからは計画的に子作りをしないと部屋数が余り過ぎて愚痴っていたのに、あっという間に埋まってしまうことになる。まぁ、いざとなれば敷地も余っているから増築でもすれば解決するんだろうが、それはいざって時のために取っておこう。
兎にも角にも嫁たちの育児が落ち着くまでは、俺は主夫として頑張らねばいけない。俺も育児を手伝いたいが、家事の上に育児まで手を出そうとしたら、嫁たちに怒られてしまった。俺……年上で当主なはずなのに……
(後輩よ……お前が嫁たちから尻に敷かれてるって言ってたのが、何だかわかった気がするぞ。あの剣幕には逆らえないよな……)
後輩はそこら辺を上手くやりくりすれば、夫婦仲はずっと安泰だと言っていたから、俺もそれに倣って上手いことやりくりしようと思う。育児はロラナたちが仕事に復帰してから、代わりに俺がすればいいんだ。それまでは抱っこしたり触ったりするだけで我慢するとしよう。
そのうち子供たちが大きくなったら、研究の手伝いとかしてくれるだろうか。そういえば娘ができたってことは、いつかは嫁に行くんだよな……
後輩が自分に勝てる奴じゃないと安心して嫁に出せないとか言っていたが、勝てる奴なんて存在するのか? 俺の知る限りだと、後輩に勝てる奴なんて見たことがない。
だいたいドラゴンを傷ひとつ付けずに倒すような奴だぞ。勝てる奴なんてどこを探してもいないだろ。これは娘を嫁に出すつもりがないな。その気持ちは今なら俺にもわかるが……
よし、こうなったらうちの子供たちは後輩の子供たちと結婚させよう。それなら俺も安心だし後輩も安心だろう。あれだけの子供たちがいるんだ。うちの子たちも仲の良くなる子たちと出会えるだろう。ありがたいことに転移ポータルはそのままだし、子供が歩いて遊べるようになったら後輩の所へ連れていくのもひとつの手だな。
そのような将来のことを見据えながら、今日もまた俺は主夫として働くのであった。
「ターナボッタ様、私じゃダメなの? 私はターナボッタ様がいいの! ターナボッタ様じゃなきゃヤダ!」
俺がフォスティーヌを嫁に貰うと言ってからというもの、元々嫁にどうですかと言われていたフォリチーヌが駄々を捏ね始めたのだ。
それ以前にフォスティーヌが出戻りであることからして、コトーナ男爵と奥さんのエブリン夫人は恐縮しまくって、出戻りのフォスティーヌを嫁にするくらいなら、フォリチーヌの方が俺の外聞も傷つかず問題ないのではと、あれやこれやの議論が巻き起こった。
そしてその間に話を聞きつけたフォリチーヌが、この場へ参戦してきたと言うわけだ。
「フォリチーヌ、閣下に迷惑をかけてはいけません」
「姉様は1回結婚したでしょ! 今回は私に譲ってよ!」
「それは私たちが決めることではなくて、閣下が決めることです。それに結婚と言っても婚姻を結んだだけで、私は何もされることなく当主がお亡くなりになったので、結婚していないのも同然です」
「自分が好かれてるからってズルいよ!」
姉妹論争とも言うべきか、どちらが俺の嫁になるのかと水面下での争いが起こり始めていた。いや、大っぴらにしているから水面下ではないな。
「姉たちが申し訳ありません」
「いや、賑やかなのはいいことだ」
そしてこの場に何故かいるコトーナ男爵の跡取り息子のコナソンが、申し訳なさそうに俺へと謝罪してきた。1番下の子だと言うのにしっかりしている。確か10歳だと言っていたような気がするが、俺が10歳の頃はまだ遊んでいたぞ。
コトーナ夫妻からはフォリチーヌを薦められ、姉妹たちは自分を嫁にと論争を始めて、弟は姉たちの行動が恥ずかしいのかひたすら俺に対して謝罪しており、この場をどう収めるべきか俺はとある結論を導き出した。
これならば、後輩の言うみんなハッピーで丸く収まるはずだ。
「俺からの意見を言わせてもらう」
俺が声を挙げたことにより、騒々しかったこの場は一時的に静まり返ることとなり、それから俺は一呼吸置いて自分の考えを全員へと伝える。
「フォスティーヌは嫁にする。それがフォスティーヌと会った時の言葉だしな。いくら口約束とはいえ、それを曲げることは俺の信念が許さない。だが、フォリチーヌが事実はどうあれ俺との婚姻話をコトーナから聞いて、それに期待をふくらませていたのも事実」
俺は全員を見渡し終わると最後の結論を口にした。
「よって、フォリチーヌも嫁に貰う。コトーナ男爵には悪いが娘を2人とも俺の嫁にしたい。これならば全員の意見が纏まる1番の解決方法だと思う」
「ですが、閣下……よろしいのですか? フォスティーヌは出戻りです。閣下が周りの貴族たちから何と言われてしまうか……」
「本人もさっき言っていただろ。何かをする前に旦那が死んだんだ。そうなれば結婚と言っても、してないのと同然だ。元よりそれを知らないで嫁にすると言ったんだから、俺に二言はない」
「ターナボッタ様……」
「むしろラッキーだな。元旦那が手をつける前に、死のうとしていたフォスティーヌを俺の嫁にできるんだ。思わぬところで綺麗な嫁さんに巡り会えたことに感謝だ」
「ターナボッタ様、私は綺麗?」
「フォリチーヌはどっちかって言うと、まだ可愛い方だな。女性のことは俺にはわからないが、もう少し大人になったら綺麗になるんじゃないか?」
「んふふ……カワイイって言われた」
「それと、俺は側妻を娶る予定があるからな、フォリチーヌもそこは了承してくれよ? ちなみにフォスティーヌは構わないと言ってくれたぞ」
「ターナボッタ様と一緒にいられるなら、私も大丈夫です!」
こうして話を纏めあげた俺は、キラーツ男爵家から姉妹揃って嫁に貰うことにしたのだった。
(後輩よ……これでお前の言うみんなハッピーになっただろ……)
そしてその日はキラーツ男爵家で泊まることになり、翌日になってから結婚式について話を纏めると、そのあとは自宅へと帰ることになる。フォスティーヌやフォリチーヌが一緒に来たそうにしていたが、結婚準備とかも色々とあるだろうし、俺は結婚式の準備を進めるように言い聞かせてから別れを告げた。
それからというもの、俺が自宅へと帰ってからはいつもと変わらぬ日常を送っている。帰ってからまずしたことは、後輩へ宛てた手紙を書くことだ。結婚式には是非とも来て欲しいから、後輩へキラーツ男爵家の姉妹を同時に娶ることも書いて、冒険者ギルドへ依頼してから急ぎで届けさせることにした。
こういう時は商業ギルドよりも、冒険者ギルドの方が使い勝手がいい。高ランク冒険者なら報酬さえしっかりとしていれば、確実に急ぎで届けてくれるからだ。魔物に襲われた時の心配もしなくていいしな。
対して商業ギルドだと商人へ持たせたりもするから、商人感覚のスピードで手紙が届くことになる。商人である以上護衛は雇うだろうが、いざとなったら手紙なんか放り投げて自分の命を優先するだろう。
そしてそれからしばらくすると手紙が届いたのか、後輩が唐突に姿を現した。
「お久しぶりです、先輩」
「久しぶりに会うな、後輩」
後輩の登場に使用人たちは慌ただしく動いていて、接客慣れしているスチュワートやエリザベートまでカタカタと震えている。スチュワートなんかは、後輩が玄関にやって来て対応した時には顔面蒼白となってしまい、そのまま俺へ報告に来た時もガタガタと震えながら、言葉を上手く話せずにいた。
その訪問に来た後輩は相変わらず冒険者ケビンとして動いているようで、俺は事前に冒険者ケビンと皇帝ケビンは同一人物だから、もし尋ねてきたら知らせてくれとスチュワートたちに教えこんでいたのだ。
「ご結婚されるようで先輩にプレゼントを持ってきました」
「プレゼント? 後輩からのプレゼントなんてマジックポーチ以来か?」
そう答えた俺に対して後輩が渡してきたのはバングルだった。
「執務用に万年筆も考えていたんですけど、先輩って研究貴族だし領地経営とか関係ないから、いつでも連絡が取れるようにこれにしました。この前のはたまたまソフィの力を借りたからできたことなんで」
それから後輩はこのバングルについての説明をしていく。早い話がこれを腕に付けていれば、この前みたいにいつでも後輩とやり取りができるそうだ。
「相変わらずなんて魔導具を作り出してんだ……こんなの世界初の魔導具だろ? マジカルで売りに出してんのか?」
「いえ、それは家族とごく一部の親しい人にしか渡していません。嫁たちは指輪に同じ効果が付いています。さすがに先輩相手に指輪を渡したら、俺の社会的何かが失われるので、男でもするバングルにしてみました」
「……俺もたとえ後輩からの贈り物でも指輪だけは勘弁だ。ゾッとする……」
「今回の用件はそれだけです。結婚式が決まって手紙を出した時に、間に合わない可能性があるかもしれませんから。まぁ、前日とかだったら間に合いますけど、もう過ぎていましたなんてことになりたくないですからね」
「それはあるかもしれないな。いくら急ぎで届けてくれって言っても、他国のしかも奥に入り込んだ帝都だしな。このプレゼントはありがたく受け取らせてもらう」
その後も俺と後輩の他愛ない会話は続いていき、俺が新たに作り出そうとしている魔法を撃ち出す魔道具についても、後輩と熱く議論を交わした。
後輩曰く、自分の能力を使えば容易に作り出せるそうだが、それでは魔導具作りとしての醍醐味がないとして、まずは魔導剣のように維持しているものを、どうやって撃ち出すのかという課題について話が盛り上がっていく。
「やはり撃ち出すとしたら、ボール系かアロー系になりますよね」
「そうだよな。いきなり大魔法なんて撃ち出す計画なんて、早々に頓挫しそうだしな。誰でも使えるってのが俺の基本的な考え方だし、何より魔法の使えない俺が使ってみたい!」
「そうなると……やはり魔導具本体というよりも魔石を加工して、そこに魔術式を組み込んで……それなら魔法が撃てる……いや、そうなると魔石が大きくなるか……魔法を固定したなら……」
何やら後輩がブツブツと言っているが、俺にはサッパリだ。自慢じゃないが俺は魔法系の素質がないとわかっていたので、そっち系の授業は履修していない。唯一履修することができたのは基礎だけだ。だから後輩が呟いている魔術式なんてもんは、俺には想像もつかない領域になる。
そもそも魔石の加工なんて俺は専門外だぞ。ドワンさん辺りなら難なくやってしまう技術だけど、ドワンさん並の能力を俺に求められても困る。
俺はせいぜい加工とは言えないような魔石砕きができるくらいで、魔導具に魔石の収納スペースを作ってから、そこに嵌め込むしかやったことがない。魔導剣の魔石だって、ドワンさんに頼んで加工してもらったくらいだからな。
その後は、あっという間に時間が過ぎてしまい、魔導具の話を煮つめることもできずに新作についての意見交換は終わりを迎える。今後は後輩も自分なりの方法で模索してくれるそうだ。そう言いながら後輩は、来た時とは違って転移で帰ってしまうのだった。
(後輩よ……その魔法は秘密なんじゃなかったのか? 使用人たちの開いた口が塞がらなくなっているぞ。面白い顔をしているから別にいいけど)
こうして俺は後輩との有意義な魔導具議論を交わすことができて、この日を終えるのであった。
そして月日は流れて後輩が会いに来てから2ヶ月が経つ6月に、俺は24という歳で、フォスティーヌとフォリチーヌの姉妹と盛大な結婚式を挙げる。
俺としては側妻となる使用人たちも一緒に祝おうと思ったのだが、彼女らが「側妻にしていただけるだけでも光栄です」と言って、辞退してしまったのだ。本人が辞退しているのに無理やり祝うのもダメかと思ったので、とりあえず指輪だけは受け取ってもらえるように準備はしている。
やはり侯爵の結婚式とあってか、やたらとパーティーの時に貴族たちが祝いに現れては贈り物をポンポンと置いていくので、スチュワートたち使用人がそれを管理するのに追われていた。
中でも1番困ったのは後輩の贈り物だ……
うちの敷地が広いからと言って、グリーンドラゴンの剥製をいきなり置きやがった! もうその時の現場は大混乱だ。いきなりドラゴンが現れたんだからな。
それなのに後輩は悪びれもせずに『他の人にも贈った実績があります』と、意味のわからない実績報告を上げたあとで問題ないと言ってのけたのだ。ちなみにその贈った相手はアリシテア現国王夫妻と、後輩の兄たちにあたる夫妻の3組の結婚祝いで贈ったそうだ。
『まだ出していない色があるので、もう何組かいけそうです』と語る後輩の姿に、俺と同じ目に遭う人があと何組かいるのかと思うと、同情せざるを得ない。願わくは、後輩の交友関係が広くないという1点のみで頓挫することだ。
何だかんだで大成功に終わった俺の結婚式は、後輩の贈り物というインパクトのおかげで王都中にそのことが広まってしまった。さすがに侯爵家の家を不躾に訪れるような者はおらず、貴族街に入れない一般人たちの噂は次第と下火になっていくが、貴族街に出入りできる者たちは何かにつけて見れはしないものかと、遠巻きにうちを窺っている者も中にはいる。
ちなみに陛下たちが堂々と見物に来ていた時には対応したスチュワートもそうだが、俺も『国のトップが何しに来てんだ?』と驚いてしまった。
そのようなことがあってから年は流れて、俺が25歳になる年の7月にフォスティーヌが俺の子を産んだ。元気な男の子を産んでくれてアッシャーと名付けた。フォスティーヌの出産が終わったばかりだが、来年にはフォリチーヌが子供を産む予定だ。今は妊娠3ヶ月になる。
格好悪いことだが俺はフォスティーヌが妊娠した時に、この道の先輩である後輩を頼ることにして、出産も後輩に任せることになってしまうのだった。
その時に聞いた話では、後輩は自分の子を全て自分の手で取り上げているそうだ。あいつに医師の心得があったなんて初耳だ。だから安心して後輩へ頼んだのだが、それを同じく聞いたフォスティーヌは、皇帝自らが俺たちの赤子を取り上げるなんて、とても恐れ多いことだと言いながら萎縮していた。
実はこの時の相談した際に後輩の城へ2人で見学に行ってたんだが、相談が終わって【ぶんべんしつ】なるものを見せてもらった時には、フォスティーヌと一緒に驚いたものだ。
見たこともない魔導具がズラリと並んでいて俺が興味津々に見つめていると、後輩が折角だからと試しに使っているところを見せてくれると言って、フォスティーヌの健康チェックが始まってしまう。
フォスティーヌは何をされるのかわからなくて怖がっていたが、なんてことはない。ただベッドに横になるだけでいいらしい。
それを聞いたフォスティーヌが訝しりながらベッドに横になると、本当にそれだけで良かったみたいで、フォスティーヌの状態とお腹の中の子の状態が【もにたー】というものに表示されていた。
「母子ともに健康ですね」
後輩がそう言いながら【もにたー】の見方を俺たちに説明してくれる。【ばいたるさいん】とかよくわからない言葉が飛んでくるが、とりあえず健康なのだということだけは俺にもわかった。むしろ、そこしかわからなかった。
ということが過去にあったので、フォリチーヌの出産も後輩へ任せることにしたのだ。と言うよりも、後輩以外に任せると危ないことが後輩の言葉によって判明した。
「先輩……いくらなんでも13歳の子を妊娠させたらまずいですよ」
「えっ……そうなのか?」
「体がまだ成熟しきってないから、母子ともに危険な状態になります。ぶっちゃけて言うと、他の医師や産婆とかに任せたら死ぬ確率が高くなりますよ?」
「う、嘘だろ!? 過去には12歳で世継ぎを産んだ女性とかいるんだぞ!」
「たまたま成功した例でしょ? しかも健康チェックをしてみたら、フォリチーヌさんの中にいるのは双子じゃないですか……これ、そこら辺の医師や産婆だと確実に子供を優先させるか、フォリチーヌさんを優先させるかの2択を迫られることになりかねないですよ」
「ふ、双子っ!?」
後輩から次々と告げられていく内容によって、俺は大混乱中である。そしてベッドで横になっているフォリチーヌは、死の宣告を受けて顔が青ざめている。
「フォリチーヌさん、そこまで気負う必要はないですよ。あくまで俺以外の人に任せたら危ないってだけで、ここで出産するなら問題ないですよ。不安なら女神様にでも祈っててください。きっと元気な双子が生まれますから」
「で、でも……皇帝陛下は危険な状態になるって……」
「ああ、それは考えなしにフォリチーヌさんを妊娠させた先輩にお灸を据えただけです。これを言っておかないと、また若い子を妊娠させてしまうかもしれませんからね」
「ま、待て! うちの嫁で1番若いのはフォリチーヌだ。あとはフォリチーヌよりも年上だぞ!」
「現状がそうなだけであって、将来的にそうならないとは限らないじゃないですか。先輩なら見た目が大人びていれば年は気にしないでしょ? フォリチーヌさんがそうだし」
「フォリチーヌはどちらかと言うと、大人と言うよりも可愛い部類に入らないか?」
「保護欲を掻き立てられたわけですね」
「後輩だって若い嫁さんを娶っているだろ。同類だぞ!」
「俺は産ませても大丈夫な年齢までは避妊していますよ」
「ぐっ……ちなみに後学のためにその年齢を教えてくれ……」
「14歳がギリギリのらいんでしょうね。産む時に場合によっては15歳になっているでしょうから。一般的な成人も15歳からでしょう?」
「あれはあれで役に立つ情報だったのか……王侯貴族には関係のない制度だが……」
「まぁ、12歳で産ませたって人が過去にいたのなら、関係のない情報にはなりますね。その歳には既に結婚してたってことだし。そういえば俺の嫁の中で11歳で嫁いだ嫁がいましたね。リーチェっていう前々皇帝の嫁だったんですけど」
「はっ!? 前々皇帝の嫁って……お前、どうやって知り合ったんだ? ここを落とした時か?」
「いや、ミナーヴァの王都で奴隷として売られていましたよ。面白そうだから買っただけです」
「ミナーヴァの王都で!?」
「元皇后という触れ込みで売っていましたから、料金が高くて売れ残っていたんですよ」
「お前、よく買えたな……いや、お前だからこそ買えたのか……」
何はともあれフォリチーヌは後輩に任せておけば、問題なく出産できることがわかり、俺とフォリチーヌはひと安心する。
そしてその後にフォリチーヌが不安になったとき用のために、俺の家から後輩の城へと転移できる【魔導ポータル】を設置してくれた。相変わらず訳のわからない魔導具を量産しているようだ。
「フォリチーヌさん、体調が悪くなったり、不安なことがあったらいつでも来ていいですから。城には経験者の嫁たちばかりだから、きっと相談に乗ってくれますよ。1人で来づらい時には、フォスティーヌさんとお子さんの3人で来てもいいですよ」
「ありがとうございます、皇帝陛下」
「それと先輩にはコレです。うっかり渡しそびれていました出産祝いです」
そう言って後輩が出したのは【べびーかー】と言うものらしい。これに我が子を乗せて移動をともにすることができるそうだ。確かにこれならフォスティーヌの負担も減るし、一緒に移動できて目を離すこともなくなるな。
「何から何まですまないな、後輩」
「いえいえ、俺と先輩の仲じゃないですか」
それから別れの挨拶が済むと、後輩は転移で城へと戻った。設置した転移ポータルは使わないようだ。まぁ、自分で転移できるから当たり前か。
それから月日は経ち、冬真っ盛りの2月になると予定通りフォリチーヌが双子を出産する。元気な男の双子で兄をトーマス、弟をトーレスと名付けた。
そして俺は後輩に感謝を述べるのだが、それと同時に罪悪感も感じなければならない。何故ならばフォスティーヌは育児で忙しく、フォリチーヌは妊娠していたということもあり、必然的に俺の相手は側妻の使用人たちメイドとなるのだ。
そして相手をしてもらっているうちに、そうなってしまうこともまた必然と言える。
「すまない……後輩……」
「いえいえ、これが男の性ってもんですよ。だから側妻を娶ることを薦めたんです。きっとこうなってしまうから、フォスティーヌさんたちだって他所で遊んでこられるよりも、身内の嫁を相手にしている姿の方が安心できますから」
「何で後輩が嫁を多く持っているのか何となくわかったかもしれない。さすがに多すぎだとは思うが……」
「そんなつもりで増やしたんじゃないですけどね。俺の場合はもう増えることは諦めていますから。今では逆に嫁たちから増やすことを薦められるくらいです。いったい何を目指しているんだか、俺には教えてくれないんですけどね」
「嫁さん公認どころか、嫁さんたちが増やそうとしているのか? 嫁が増えたら何かあるのか? 家族街でも作るつもりか?」
「その線は俺も考えたんですよ。このまま増やし続けて子供もその分増えていったら、今はまだ小さな町単位ですけど、その内大きな街単位になるんじゃないかって」
「でも違うんだろ?」
「聞いてみたら、外れみたいですね」
「謎だな……」
「謎ですね……」
そのような後輩の悩み?になるのかどうかは知らないが、よくわからないネタを聞いた俺は、もう帰っても大丈夫だと言われたフォリチーヌを連れて転移ポータルで自宅へと帰るのだった。
そして俺が26歳となる年は、俺のせいで夏から秋にかけて出産だらけとなってしまう。
そんなある日のこと、さすがに子供を生んだばかりのフォスティーヌやフォリチーヌを、また妊娠させるわけにはいかないと思った俺は、急いで後輩へ連絡を取って相談したら、避妊効果が付与された指輪を嫁の数だけプレゼントされた。
「さすがに指輪のプレゼントは憚るものがあるんですけど、これが1番簡単で手っ取り早いし、邪魔にならず外すこともなさそうですから」
「すまんな」
「適合化も付けてありますのでどの指でも合うようになっていますが、薬指だけは嵌らないようにしてあります」
「念入りだな」
「奥さんに気があるとか先輩に思われたら嫌ですから」
「後輩がそういう奴じゃないのは知っているから、気にし過ぎだと思うけどな」
「それでもです! 俺が嫌なんです」
「わかった。ありがとな、後輩」
「困った時はいつでも力になりますよ、先輩」
こうして窮地を後輩から救ってもらい、早速嫁たちに指輪の効果と後輩から作ってもらったことを説明して、嫁たちが希望する指に嵌めていくのだった。
「すまんな、俺が避妊しなかったばっかりに」
「そんなことないですよ。子供を持つのは女の幸せですから」
「そうですよ、私も双子を産めて嬉しかったです」
「私たちも同意見です。元々は体だけの関係で良かったのですけれど、妻にして頂けただけでも幸せなのに、更には御子まで授からせて頂いて幸せでいっぱいです」
「俺はしばらく研究をやめて、家事を手伝うぞ。ロラナとウルミ、それからチキータとカーリも仕事をするなよ」
「それはいけません、旦那様」
「そうです。家のことは私たちのお仕事です」
「皇帝陛下からも少しくらいの運動なら問題ないと言われているのです」
「旦那様は研究を頑張ってください」
「ダメだ、家事は俺がする。こう見えても1人暮らしで頑張っていた時期があるんだからな。それに元々俺は平民だ、家事くらいなんてことはない」
そう言って当主命令を宣言したのち、俺はこれから主夫となって家事に奔走する。これくらいのこと、考えなしにやってしまった俺への罰としては軽いものだ。それに嫁たちの負担が減るなら容易いものでもある。
そして俺が至らない点は、スチュワートたちにカバーしてもらえば何とか回るだろう。次点としては使用人を増やすという方法もあったが、後輩の姿が頭をよぎり、雇った使用人を嫁にしてしまいそうなのでそれは控えた。
それならば歳を召した人か人妻ならと思ったこともないこともないが、やはり使用人に囲まれるなら若い子がいいという欲望が、ほんのちょっとだけ出てしまったのだ。
(後輩よ……これが男の性ってもんか……)
その後、月日は流れてロラナが7月に第1子となる女の子を産むと、その子にはリオニーと名付けた。
そして秋に入り9月になるとウルミが第1子となる女の子を産んだので、その子にはウランと名付ける。続く10月にはチキータが第1子となる女の子を産んで、その子にはシシリーと名付けた。最後の11月にはカーリが女の子を産んで、カルナと名付けることにした。
こうして俺はここ2年の間だけで、早くも6人の子供を授かったことになる。後輩の子供がポンポンと増えていくのも納得だ。これは避妊しなかったらえらいことになってしまう。
これからは計画的に子作りをしないと部屋数が余り過ぎて愚痴っていたのに、あっという間に埋まってしまうことになる。まぁ、いざとなれば敷地も余っているから増築でもすれば解決するんだろうが、それはいざって時のために取っておこう。
兎にも角にも嫁たちの育児が落ち着くまでは、俺は主夫として頑張らねばいけない。俺も育児を手伝いたいが、家事の上に育児まで手を出そうとしたら、嫁たちに怒られてしまった。俺……年上で当主なはずなのに……
(後輩よ……お前が嫁たちから尻に敷かれてるって言ってたのが、何だかわかった気がするぞ。あの剣幕には逆らえないよな……)
後輩はそこら辺を上手くやりくりすれば、夫婦仲はずっと安泰だと言っていたから、俺もそれに倣って上手いことやりくりしようと思う。育児はロラナたちが仕事に復帰してから、代わりに俺がすればいいんだ。それまでは抱っこしたり触ったりするだけで我慢するとしよう。
そのうち子供たちが大きくなったら、研究の手伝いとかしてくれるだろうか。そういえば娘ができたってことは、いつかは嫁に行くんだよな……
後輩が自分に勝てる奴じゃないと安心して嫁に出せないとか言っていたが、勝てる奴なんて存在するのか? 俺の知る限りだと、後輩に勝てる奴なんて見たことがない。
だいたいドラゴンを傷ひとつ付けずに倒すような奴だぞ。勝てる奴なんてどこを探してもいないだろ。これは娘を嫁に出すつもりがないな。その気持ちは今なら俺にもわかるが……
よし、こうなったらうちの子供たちは後輩の子供たちと結婚させよう。それなら俺も安心だし後輩も安心だろう。あれだけの子供たちがいるんだ。うちの子たちも仲の良くなる子たちと出会えるだろう。ありがたいことに転移ポータルはそのままだし、子供が歩いて遊べるようになったら後輩の所へ連れていくのもひとつの手だな。
そのような将来のことを見据えながら、今日もまた俺は主夫として働くのであった。
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