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第14章 聖戦
第475話 捕虜たちの処遇
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翌日、ケビンは軍議用天幕で昨日のやり取りを御三家とウカドホツィ辺境伯に報告して、残るは捕虜の問題だけとなったことを伝える。
「では、捕虜たちは陛下に任せて、我らは兵たちとともに帰ろうか」
「そうだな。それがいいだろう」
「早く帰って溜まった執務を消費せねば」
「儂は自身の領地ゆえ早く帰りつくが、そのあとに我が国の陛下への報告で登城せねばなるまいな」
「ま、待て! 彼女たちを連れて帰らないのか!?」
「彼女らは陛下の捕虜でしょう? 兵士たちが望むは陛下からの褒賞」
「ぐっ……」
「諦めなされ。陛下の周りに女性が集うのは、今に始まったことではないでしょうに。我らが欲しいのはその妻とした名前入りのリストなのですからな」
「ばったり出会って、不敬を働いたらたまったものではないですから」
「月1の貴族会議は貴族たちにとって試練になっているのです。城の中で出会う女性ならまだ予想はつきますが、街中で出会ってしまったらわからないのですよ」
「はは、英雄色を好んでみれば、女難に好まれるとは。いやはや、皇帝陛下は凄いですな」
4人から好き勝手言われるケビンは、捕虜の処置をどうしようと頭を悩ませる。果たして、ケビンのしれっと引き取ってもらう作戦は失敗に終わり、4人との話し合いが終わると頭を悩ませたまま捕虜たちの所へ向かうのだった。
そして捕虜たちへ貸し与えたテントまでやって来たケビンはそのまま中に入ると、これからのことを話し合うため女性たちの意見を聞こうとするが、そうは問屋が卸さなかった。
「「「「「きゃーっ!」」」」」
ケビンが中へ入った時、女性たちは着替えの真っ最中だったのだ。見渡す限りの肌色面積が多い群れに、ケビンはとりあえずツッコミを入れる羽目になる。
「何でっ!?」
「「「「「魔王様のエッチー!」」」」」
本来このテントはケビンの持ち物であり、ケビンの付与魔法によって男子禁制となっていたので、女性たちも安心して捕虜生活を送っていたのだが、当然そこには出入りする持ち主のケビンは含まれておらず、女性たちは男が入ってこれない状況に気が緩んでいたのか、警戒もせずに着替えを行っていたという状況である。
そしてその状況に出くわしたケビンはテントを出ていこうとするが、オフェリーによって阻止されてしまう。
「ケビン様~女性の裸を見ておいて~黙って立ち去るのは良くないですよ~」
ガシッと後ろからケビンへ抱きついたオフェリーは下着姿のままで、豊満な胸をこれでもかとケビンへ当てている。
「いや、だからってこのままいるわけにはいかないだろ!?」
「ほら~あそこを見てくださ~い」
オフェリーがケビンの頭を掴んでグイッと動かした視線の先には、団長たちとカトレアのお着替えシーンの現場であった。
そこにはフィアンマの少し小さめな胸であるスレンダーな体と、普通サイズの胸を持つ程よい肉つきのメリッサの体に、着痩せするタイプだったのか普通よりも明らかに大きめの胸を持つカトレアの体が目に映る。
「ちょ、オフェリー!? こっちに皇帝陛下の顔を向けてんじゃねぇ!」
「ケ、ケビンしゃまっ?!」
「ケ、ケビン君見ちゃダメっ!」
そのような慌てる3人の発言を他所に、ケビンは割かし普通に感想をこぼしていた。
「カトレア……デカかったんだな」
「ちょ、ケビン君! どこを見て、なにを言ってんの!」
「そうなんです~私も見てビックリしたんです~私よりサイズは1つ小さめですけど~着痩せするタイプだったんですよ~」
「で、今更なんだが……オフェリーは気配を消して近づいたのか?」
「はい~ケビン様が逃げようとしていたので~ちょいちょいっと気配を消して近づいてみました~成功して良かったです~」
「そりゃ、常日頃から気配探知なんて使ってたら疲れるからな。不意打ちでされるとわからん。悪意を持って近づいてるわけでもないし」
「ケビン様に悪意なんて向けませんよ~私のナイトですから~ということで~ケビン様は楽しんで見ていってくださいね~貴女たちも皇帝陛下にお礼のサービスをしないと~」
「やむなしか……」
「「「「「魔王様、全然やむなしじゃないですー!」」」」」
実はこの捕虜の女性たちは、サラとマリアンヌが初戦において率先して倒していた綺麗どころの兵士たちであり、ケビンのために選別されたよりすぐりの兵士たちなのだ。
そして花形となる騎士は言わずもがな。見た目がいいこともあり漏れなく2人によってご招待されてしまい、捕虜となってこの場にいる。よって、この場にいる女性たちは、2人によってケビンの好みばかりが集められた集団となっていた。
そのような集団を前にして、ケビンが腰を落ち着かせてしまうのは致し方がないとも言える。
そしてケビンが腰を落ち着かせてお着替えシーンを堪能し始めたら、女性たちは捕虜の身分であることも合わさって諦めると、オフェリーはその傍らに座ってケビンの腕を搦め取り自慢の胸に挟んではサービスする。
「なんか傍から見たら俺ってとんでもないな」
「だったら皇帝陛下は目を瞑っててくれよ!」
「見られてりゅ……見られてりゅ……」
「ケビン君……スケベ過ぎだよ……」
こうしてケビンは開き直って生着替えショーを堪能すると、その後はケビンの周りに集まって座った女性たちとこれからのことを話し合うのだった。
「とりあえずタイラーに相談してみたら、君たちをセレスティア皇国に返すと最悪奴隷になるらしいことがわかった」
ケビンの告げた内容により、そこまでのことはないだろうと思っていた女性たちは顔面を蒼白にすると震えてしまい、セレスティア皇国の黒い部分に戦慄する。
「で、そんなことになったら君たちは可愛かったり綺麗だったりするから、あとの人生を想像するのは容易い。運が良ければいいご主人様に買われて、奴隷としてはマシな人生を送れるだろう。だが、ほとんどは性奴隷になると思う」
ケビンから容姿のことを褒められるが性奴隷という単語も聞いてしまい、褒められたことを喜ぶべきなのか、性奴隷になる可能性があったことを悲しむべきなのか、女性たちは複雑な感情となる。
「そんなことは俺もタイラーも望んでいない。タイラーからは受け取りを拒否されて君たちのことを託されてしまったし、俺もそうなることがわかっていて捕虜を返そうとは思わない」
ケビンから明確に捕虜の返還はないと言われた女性たちは、本国に思い残すことが多少なりとも人それぞれにあるが、それを得るために性奴隷という危ない橋を渡るわけにもいかず、ケビンの言葉を聞いたあとは複雑な気持ちではあるが安堵した。
「じゃあよ、やっぱりあたしたちは皇帝陛下の側妻になるのか? ここんとこの付き合いで皇帝陛下が魔王って言われるほどの悪人じゃないことはわかったが、抱かせろって言われて『はい』って返せるほど、まだ皇帝陛下のことを知らねぇんだけど」
「フィアンマの言うことはご尤もだ。というか、俺は嫌がる女性を抱きたくない。俺自身が楽しめないからな。ちなみにカトレアは別だぞ? カトレアはもう俺の嫁だから抱く」
「あわわっ、こんなところで言わないでよ。それにまだ心の準備が……」
「別に今すぐ抱くわけじゃない。見られるのが好きならそうするけど」
「ち、違うよっ! 最初は2人きりがいい!」
「あら~その言い方だと~2回目以降は他の人も一緒にってこと~?」
「はうっ! だ、だって……サラお義母さんが色々と教えてくれて……うぅぅ……」
オフェリーからの鋭いツッコミによって、カトレアは耳まで真っ赤にすると恥ずかしさで俯いてしまう。
「でだ、捕虜の女性は俺の嫁みたいな図式になっているけど、俺は望まない子を無理やり嫁にするのは好きじゃない。だから、君たちが今後どう生きていきたいかを聞きたい。嫁になるのは強制じゃないから自由に生きてくれ」
「じゃあよ、あたしはとりあえず嫁になるのは別に構わねぇんだが、捕虜だけど軍属を希望してもいいのか? 今まで武力一辺倒で生きてきたから、別の生き方をしろって言われても無理だからよ?」
「軍か? 軍なら俺の嫁にはなれんぞ?」
「ん? 何でだ?」
「俺は軍を持ってない」
「……は? いやいやいや、帝国軍兵士がいっぱいいるじゃねぇか!?」
「あれは貴族たちの兵士だ。俺持ちの戦争用兵士は1人もいないから、軍に入りたければ貴族たちの誰かに仕えるしかないな。そうなったら俺の元を離れるわけだから、帝国内のどっかで働くことになる」
「えっ……皇帝陛下って陛下だよな?」
「皇帝陛下以外で何があるんだ? ああっ、冒険者があるな、あとは商人だ。それに今回の件で魔王にもなったな。4足のわらじになっちまった」
「いや、そういうことじゃねぇよ。何で皇帝陛下なのに帝国軍を作ってないんだよ? おかしいだろ」
他の女性たちも思い当たる節があるのか、フィアンマの発言に対してウンウンと頷いていた。
「帝都は俺が守ってるから軍が編成できるような兵なんか必要ないし、帝都にいるのは門番と治安維持の衛兵だ。そういうわけで俺が兵を持たないから他の領主たちに兵を持たさせてる。だから軍属がいいなら他の領主に口利きくらいするぞ?」
「じゃあよ、ゆくゆくは騎士になりたかったのに無理ってことか?」
「ん? 騎士か? 騎士ならいるぞ。城の裏に兵舎がある」
「なっ!? ちゃんと軍があるじゃねぇか!?」
「いや、彼女たちは騎士だけど軍属じゃない。ただの女性騎士団だ」
「意味わかんねぇよ!」
「嫁の願いを叶えるために作り上げた趣味的な私設騎士団だな。基本的に仕事は嫁たちや子供の警護と冒険者活動くらいだ。あとは俺の気まぐれで開催するクイズの挑戦者くらいか」
「ク、クイズって……皇帝陛下は騎士に何を求めてんだ!」
前半部分は騎士の仕事としても賛同できる内容であったが、後半部分は明らかに騎士の仕事としてはおかしい内容があったために、フィアンマはケビンへ向かって声を荒らげていた。
「何って……楽しく生きることだな。それ以外に何がある?」
「そ……それは……」
「フィアンマは軍属になって何がしたい? セレスティア皇国のように人を殺すために戦争をしたいのか?」
「そんなことはねぇよ! 騎士は民を守る剣と盾だ!」
「なら、それを目指せばいいだろ? 帝都周りの魔物を狩ればいい。それだけで都民たちは安心して毎日を過ごせる」
「……わかった。あたしは皇帝陛下の嫁になる。で、民を守る騎士になる」
「別に俺の嫁になることが条件じゃないからな? そこは拒否していいんだぞ?」
「皇帝陛下はあたしじゃ嫌なのか? オフェリーみたいな胸じゃねぇからか?」
「俺はどんなおっぱいでも愛せる! 当然フィアンマみたいな可愛い大きさのおっぱいでもだ!」
「ケビン君、なに言ってんの!」
ケビン節が炸裂するとそれを聞いたカトレアが条件反射でツッコミを入れてしまい、場はシリアスなムードから一転、和やかな雰囲気になり笑いが起こる。
「なら、あたしが嫁になってもいいよな? ぶっちゃけガサツなあたしじゃ嫁の貰い手は変わり者の皇帝陛下くらいしかいねぇし」
「そんなことないだろ? フィアンマはどこをどう見ても綺麗じゃないか。男が放っとかないと思うんだけどな」
ケビンからのストレートな気持ちにフィアンマが赤くなり俯いてしまうと、それを見たカトレアはケビンに何故女性たちが集まってくるのか、その片鱗を見てしまい戦慄するのだった。
「ケビン様ヤバいね~」
「あのフィアンマを照れさせてしまうとは……」
「サラお義母さんに聞いてた話通りだよ……」
3人がそのような感想をこぼしていると、周りにいた女性たちもヒソヒソと思い思いの感想をこぼして話し合っていた。そしてケビンはフィアンマの件が終わると今度はメリッサへと話を振って、今後は何をしたいのか尋ねる。
「私は拾ったこの命でケビン様のお役に立ちたいです。以前は補給関係の仕事を担当していましたので、その線でお役に立てればと」
「それなら内政官で城勤めだな」
「えっ……いきなりそのような役職に就いても大丈夫なのですか? 下っ端から始めて信用を積み上げていくのではなく?」
「使える人材は積極雇用! そうすれば俺の仕事も減る、労働者は能力を認められて気分が上々。ウィン・ウィンの関係だ。これでメリッサも決まったな」
「あ……あの……」
「ん? 内政官じゃダメか? それ以外で補給関係だと……店の物品管理しかないけど……」
「いえ……そうではなくて……」
「じゃあ何だ?」
「……か……か……」
「か?」
「彼女にしてください!」
「……えっ!?」
「け、結婚はまだ早いし、お付き合いもしてませんし、お互いをもっとよく知ってから……お、お友だちからでも構いませんので……」
メリッサからの告白にケビンが唖然としていたら、断られると思ってしまったのかメリッサの瞳がうるうるとしだしてしまう。
「ダ……ダメでしょうか……?」
「いや……彼女にしてくれって言われたのは初めてで驚いた……」
「それで……その……」
「ごめん、ちょっと無理」
「えっ……」
メリッサは断られたと思って涙を流してしまうのだが、ケビンが立ち上がりメリッサに近づいて目の前に座り直すとその唇を奪った。
「ん?!」
あまりの出来事にメリッサは驚きで目を見開いてしまい、パチパチと瞬きをしては頭の中が混乱でぐちゃぐちゃになってしまうが、やがてケビンが唇を離すと声を漏らす。
「ぁ……」
メリッサは今までのことが嘘ではないのかと確認をするかのように指で唇に触れていると、ケビンがそのようなメリッサへ向けて口を開いた。
「ごめん、メリッサが可愛すぎて我慢ができなかった」
「……では……先程のは……断られたのではなく……」
「いきなりキスするから先に謝ったのと、我慢ができなくてのちょっと無理っていう発言」
「私……私……断られたと思って……」
再び涙を流してしまうメリッサを見たケビンは、また唇を重ねてキスをする。
「ん……」
今度はメリッサも混乱することなく瞳を閉じて、その身をケビンへと委ねる。そして再び唇が離れるとメリッサは物足りなさそうにケビンを蕩けた顔で見つめるが、ケビンはとりあえずメリッサへ返事を伝えるのだった。
「メリッサ、告白に対しての答えは『はい』だ。ただ、俺からも言わせてくれ。俺と結婚を前提に付き合って欲しい。もうメリッサにメロメロになってしまったから、他の男に渡すなんて嫌だ」
「……ぃ……はい……」
ケビンはメリッサの返事を聞くと指輪を1つ創り出して、メリッサの左手を掴む。
「これは将来結婚するっていう婚約の証だ。カトレアの手を見ればわかると思うけど、結婚したらこの指輪は右手に移動して左手には新しく結婚指輪を嵌める」
「はい」
そう伝えたケビンはメリッサの薬指に婚約指輪を嵌めて、最後にトドメのキスをするのだった。
「ケビン様って凄いね~メリッサちゃんを蕩けさせちゃうなんて~」
「なぁ、あたし……嫁になるって言ったのに指輪をもらってねぇんだけど?」
「ケビン君……短時間でもう2人も増やした……」
やがてケビンが唇を離すとメリッサははにかんだ笑顔を見せて、幸せそうに指輪を触るとニマニマとしていた。そしてケビンはしれっと3人の会話を聞いていたので、フィアンマに対しても指輪を創り出すと薬指に嵌める。
「フィアンマ、もう離さないからな」
「あたしがガサツ過ぎて仮に皇帝陛下が離したくなっても、あたしは離れてやらねぇからな」
「望むところだ」
ケビンはそう告げたらフィアンマに対してもキスをするのだった。フィアンマは唇が触れた途端にビクッと反応してしまうが、胸をドキドキとさせながらもケビンの唇を感じていた。
それからお互いの唇が離れると、フィアンマはボーッとした表情でケビンとのキスの名残りを噛み締めながらはにかむ。
「……これがキス……ふふっ……」
そして団長の中で残る1人は、ケビン好き好きオーラを出しているオフェリーである。
「で、オフェリー……聞くのが怖くてあえてスルーしていたし、何故周りが何も言わないのかそこも疑問の1つではあるんだが……あえて死地に飛び込むことにした。……何故1人だけ未だに下着姿のままなんだ?」
「それは~ケビン様の苦労を労うためです~疲れた時には癒しが1番ですよ~えいっ!」
オフェリーがケビンからの問いかけに答えると、ケビンの腕を掴んでは豊満な胸へ挟み込むが、ケビンは動揺を見せるでもなく冷静に他の者たちへ話を振る。
「何故みんなは何も言わないんだ?」
「団長ですし……」
「騎士団は上下関係が厳しいので……」
「突っ込んだら負けだと思いまして……」
「一般兵にはハードルが高すぎます……」
それを聞いたケビンは同じ団長であったフィアンマやメリッサにも話を振るが、2人とも答えは同じで『これ以上、秘密を暴露されたくない』だった。
暗部として活動していたオフェリーがどのような個人情報を入手しているのか、その全貌を知らない2人は秘密が暴露されることに対して、オフェリーに何を言われてしまうのか気が気ではなかったのだ。
「ケビン様~私に指輪はないんですか~癒し担当のお嫁さんですよ~?」
「ああ、そうだったな。ずっと守るって言ったしな」
「はい~最高のプロポーズでした~」
ケビンはオフェリーにも指輪を作って嵌めると、フィアンマたちと同様にキスをして嫁にするのであった。
それから他の女性たちに今後のことを尋ねるためケビンは会話を進めていき、将来設計について戸惑う女性たちから挙がった意見の中で1番多かったのは、帝都を1度見てみたいというものである。
「帝都か……」
「はい、都会に住むか田舎に住むかで意見が割れていたのですけど、結局のところ帝国を見たことがないので、どこが1番住みやすいか判断に迷いまして……」
「帝都は俺が管理しているから帝国では1番栄えてる所だ。田舎に住むなら帝都や領主たちの住む街から離れた村を探せばいいだけだが、マジで田舎だぞ? スローライフには持ってこいだけど……」
「1度見てから決めてもよろしいですか?」
「それじゃあまずは帝都で体験移住をしてみるか。そのあとに他の町や村でもやってみて、気に入った所に住めばいい」
「捕虜の身分なのにすみません」
「気にするな。どっちみち捕虜からは解放するつもりだ」
「魔王様、私はお嫁さんでお願いします!」
「私は団長と同じで彼女からがいいです!」
「私はお友だちからで……」
「わかった、わかった。みんなの面倒は俺が見ることになったから、焦らずゆっくりと今後のことについて考えてくれ。将来に関わることなんだ。今すぐ決める必要もない」
話し合いによってある程度の方向性が決まったところで、ケビンは捕虜たちに出発準備をするように促すのだった。
テントから外に出たケビンはその後タイラーの所へ向かうと、棺を全部収容できたか確認を取り、大丈夫だったようなので連合軍側は戦地から帰還することを告げてその場をあとにした。
最後までガブリエルがケビンに向かって何か言っていたが、完全に無視をしたケビンは何を言われていたのかはついぞわからなかった。
こうして神聖セレスティア皇国が挑んだ【聖戦】は、セレスティア皇国軍の大敗戦により幕を下ろすのであった。
「では、捕虜たちは陛下に任せて、我らは兵たちとともに帰ろうか」
「そうだな。それがいいだろう」
「早く帰って溜まった執務を消費せねば」
「儂は自身の領地ゆえ早く帰りつくが、そのあとに我が国の陛下への報告で登城せねばなるまいな」
「ま、待て! 彼女たちを連れて帰らないのか!?」
「彼女らは陛下の捕虜でしょう? 兵士たちが望むは陛下からの褒賞」
「ぐっ……」
「諦めなされ。陛下の周りに女性が集うのは、今に始まったことではないでしょうに。我らが欲しいのはその妻とした名前入りのリストなのですからな」
「ばったり出会って、不敬を働いたらたまったものではないですから」
「月1の貴族会議は貴族たちにとって試練になっているのです。城の中で出会う女性ならまだ予想はつきますが、街中で出会ってしまったらわからないのですよ」
「はは、英雄色を好んでみれば、女難に好まれるとは。いやはや、皇帝陛下は凄いですな」
4人から好き勝手言われるケビンは、捕虜の処置をどうしようと頭を悩ませる。果たして、ケビンのしれっと引き取ってもらう作戦は失敗に終わり、4人との話し合いが終わると頭を悩ませたまま捕虜たちの所へ向かうのだった。
そして捕虜たちへ貸し与えたテントまでやって来たケビンはそのまま中に入ると、これからのことを話し合うため女性たちの意見を聞こうとするが、そうは問屋が卸さなかった。
「「「「「きゃーっ!」」」」」
ケビンが中へ入った時、女性たちは着替えの真っ最中だったのだ。見渡す限りの肌色面積が多い群れに、ケビンはとりあえずツッコミを入れる羽目になる。
「何でっ!?」
「「「「「魔王様のエッチー!」」」」」
本来このテントはケビンの持ち物であり、ケビンの付与魔法によって男子禁制となっていたので、女性たちも安心して捕虜生活を送っていたのだが、当然そこには出入りする持ち主のケビンは含まれておらず、女性たちは男が入ってこれない状況に気が緩んでいたのか、警戒もせずに着替えを行っていたという状況である。
そしてその状況に出くわしたケビンはテントを出ていこうとするが、オフェリーによって阻止されてしまう。
「ケビン様~女性の裸を見ておいて~黙って立ち去るのは良くないですよ~」
ガシッと後ろからケビンへ抱きついたオフェリーは下着姿のままで、豊満な胸をこれでもかとケビンへ当てている。
「いや、だからってこのままいるわけにはいかないだろ!?」
「ほら~あそこを見てくださ~い」
オフェリーがケビンの頭を掴んでグイッと動かした視線の先には、団長たちとカトレアのお着替えシーンの現場であった。
そこにはフィアンマの少し小さめな胸であるスレンダーな体と、普通サイズの胸を持つ程よい肉つきのメリッサの体に、着痩せするタイプだったのか普通よりも明らかに大きめの胸を持つカトレアの体が目に映る。
「ちょ、オフェリー!? こっちに皇帝陛下の顔を向けてんじゃねぇ!」
「ケ、ケビンしゃまっ?!」
「ケ、ケビン君見ちゃダメっ!」
そのような慌てる3人の発言を他所に、ケビンは割かし普通に感想をこぼしていた。
「カトレア……デカかったんだな」
「ちょ、ケビン君! どこを見て、なにを言ってんの!」
「そうなんです~私も見てビックリしたんです~私よりサイズは1つ小さめですけど~着痩せするタイプだったんですよ~」
「で、今更なんだが……オフェリーは気配を消して近づいたのか?」
「はい~ケビン様が逃げようとしていたので~ちょいちょいっと気配を消して近づいてみました~成功して良かったです~」
「そりゃ、常日頃から気配探知なんて使ってたら疲れるからな。不意打ちでされるとわからん。悪意を持って近づいてるわけでもないし」
「ケビン様に悪意なんて向けませんよ~私のナイトですから~ということで~ケビン様は楽しんで見ていってくださいね~貴女たちも皇帝陛下にお礼のサービスをしないと~」
「やむなしか……」
「「「「「魔王様、全然やむなしじゃないですー!」」」」」
実はこの捕虜の女性たちは、サラとマリアンヌが初戦において率先して倒していた綺麗どころの兵士たちであり、ケビンのために選別されたよりすぐりの兵士たちなのだ。
そして花形となる騎士は言わずもがな。見た目がいいこともあり漏れなく2人によってご招待されてしまい、捕虜となってこの場にいる。よって、この場にいる女性たちは、2人によってケビンの好みばかりが集められた集団となっていた。
そのような集団を前にして、ケビンが腰を落ち着かせてしまうのは致し方がないとも言える。
そしてケビンが腰を落ち着かせてお着替えシーンを堪能し始めたら、女性たちは捕虜の身分であることも合わさって諦めると、オフェリーはその傍らに座ってケビンの腕を搦め取り自慢の胸に挟んではサービスする。
「なんか傍から見たら俺ってとんでもないな」
「だったら皇帝陛下は目を瞑っててくれよ!」
「見られてりゅ……見られてりゅ……」
「ケビン君……スケベ過ぎだよ……」
こうしてケビンは開き直って生着替えショーを堪能すると、その後はケビンの周りに集まって座った女性たちとこれからのことを話し合うのだった。
「とりあえずタイラーに相談してみたら、君たちをセレスティア皇国に返すと最悪奴隷になるらしいことがわかった」
ケビンの告げた内容により、そこまでのことはないだろうと思っていた女性たちは顔面を蒼白にすると震えてしまい、セレスティア皇国の黒い部分に戦慄する。
「で、そんなことになったら君たちは可愛かったり綺麗だったりするから、あとの人生を想像するのは容易い。運が良ければいいご主人様に買われて、奴隷としてはマシな人生を送れるだろう。だが、ほとんどは性奴隷になると思う」
ケビンから容姿のことを褒められるが性奴隷という単語も聞いてしまい、褒められたことを喜ぶべきなのか、性奴隷になる可能性があったことを悲しむべきなのか、女性たちは複雑な感情となる。
「そんなことは俺もタイラーも望んでいない。タイラーからは受け取りを拒否されて君たちのことを託されてしまったし、俺もそうなることがわかっていて捕虜を返そうとは思わない」
ケビンから明確に捕虜の返還はないと言われた女性たちは、本国に思い残すことが多少なりとも人それぞれにあるが、それを得るために性奴隷という危ない橋を渡るわけにもいかず、ケビンの言葉を聞いたあとは複雑な気持ちではあるが安堵した。
「じゃあよ、やっぱりあたしたちは皇帝陛下の側妻になるのか? ここんとこの付き合いで皇帝陛下が魔王って言われるほどの悪人じゃないことはわかったが、抱かせろって言われて『はい』って返せるほど、まだ皇帝陛下のことを知らねぇんだけど」
「フィアンマの言うことはご尤もだ。というか、俺は嫌がる女性を抱きたくない。俺自身が楽しめないからな。ちなみにカトレアは別だぞ? カトレアはもう俺の嫁だから抱く」
「あわわっ、こんなところで言わないでよ。それにまだ心の準備が……」
「別に今すぐ抱くわけじゃない。見られるのが好きならそうするけど」
「ち、違うよっ! 最初は2人きりがいい!」
「あら~その言い方だと~2回目以降は他の人も一緒にってこと~?」
「はうっ! だ、だって……サラお義母さんが色々と教えてくれて……うぅぅ……」
オフェリーからの鋭いツッコミによって、カトレアは耳まで真っ赤にすると恥ずかしさで俯いてしまう。
「でだ、捕虜の女性は俺の嫁みたいな図式になっているけど、俺は望まない子を無理やり嫁にするのは好きじゃない。だから、君たちが今後どう生きていきたいかを聞きたい。嫁になるのは強制じゃないから自由に生きてくれ」
「じゃあよ、あたしはとりあえず嫁になるのは別に構わねぇんだが、捕虜だけど軍属を希望してもいいのか? 今まで武力一辺倒で生きてきたから、別の生き方をしろって言われても無理だからよ?」
「軍か? 軍なら俺の嫁にはなれんぞ?」
「ん? 何でだ?」
「俺は軍を持ってない」
「……は? いやいやいや、帝国軍兵士がいっぱいいるじゃねぇか!?」
「あれは貴族たちの兵士だ。俺持ちの戦争用兵士は1人もいないから、軍に入りたければ貴族たちの誰かに仕えるしかないな。そうなったら俺の元を離れるわけだから、帝国内のどっかで働くことになる」
「えっ……皇帝陛下って陛下だよな?」
「皇帝陛下以外で何があるんだ? ああっ、冒険者があるな、あとは商人だ。それに今回の件で魔王にもなったな。4足のわらじになっちまった」
「いや、そういうことじゃねぇよ。何で皇帝陛下なのに帝国軍を作ってないんだよ? おかしいだろ」
他の女性たちも思い当たる節があるのか、フィアンマの発言に対してウンウンと頷いていた。
「帝都は俺が守ってるから軍が編成できるような兵なんか必要ないし、帝都にいるのは門番と治安維持の衛兵だ。そういうわけで俺が兵を持たないから他の領主たちに兵を持たさせてる。だから軍属がいいなら他の領主に口利きくらいするぞ?」
「じゃあよ、ゆくゆくは騎士になりたかったのに無理ってことか?」
「ん? 騎士か? 騎士ならいるぞ。城の裏に兵舎がある」
「なっ!? ちゃんと軍があるじゃねぇか!?」
「いや、彼女たちは騎士だけど軍属じゃない。ただの女性騎士団だ」
「意味わかんねぇよ!」
「嫁の願いを叶えるために作り上げた趣味的な私設騎士団だな。基本的に仕事は嫁たちや子供の警護と冒険者活動くらいだ。あとは俺の気まぐれで開催するクイズの挑戦者くらいか」
「ク、クイズって……皇帝陛下は騎士に何を求めてんだ!」
前半部分は騎士の仕事としても賛同できる内容であったが、後半部分は明らかに騎士の仕事としてはおかしい内容があったために、フィアンマはケビンへ向かって声を荒らげていた。
「何って……楽しく生きることだな。それ以外に何がある?」
「そ……それは……」
「フィアンマは軍属になって何がしたい? セレスティア皇国のように人を殺すために戦争をしたいのか?」
「そんなことはねぇよ! 騎士は民を守る剣と盾だ!」
「なら、それを目指せばいいだろ? 帝都周りの魔物を狩ればいい。それだけで都民たちは安心して毎日を過ごせる」
「……わかった。あたしは皇帝陛下の嫁になる。で、民を守る騎士になる」
「別に俺の嫁になることが条件じゃないからな? そこは拒否していいんだぞ?」
「皇帝陛下はあたしじゃ嫌なのか? オフェリーみたいな胸じゃねぇからか?」
「俺はどんなおっぱいでも愛せる! 当然フィアンマみたいな可愛い大きさのおっぱいでもだ!」
「ケビン君、なに言ってんの!」
ケビン節が炸裂するとそれを聞いたカトレアが条件反射でツッコミを入れてしまい、場はシリアスなムードから一転、和やかな雰囲気になり笑いが起こる。
「なら、あたしが嫁になってもいいよな? ぶっちゃけガサツなあたしじゃ嫁の貰い手は変わり者の皇帝陛下くらいしかいねぇし」
「そんなことないだろ? フィアンマはどこをどう見ても綺麗じゃないか。男が放っとかないと思うんだけどな」
ケビンからのストレートな気持ちにフィアンマが赤くなり俯いてしまうと、それを見たカトレアはケビンに何故女性たちが集まってくるのか、その片鱗を見てしまい戦慄するのだった。
「ケビン様ヤバいね~」
「あのフィアンマを照れさせてしまうとは……」
「サラお義母さんに聞いてた話通りだよ……」
3人がそのような感想をこぼしていると、周りにいた女性たちもヒソヒソと思い思いの感想をこぼして話し合っていた。そしてケビンはフィアンマの件が終わると今度はメリッサへと話を振って、今後は何をしたいのか尋ねる。
「私は拾ったこの命でケビン様のお役に立ちたいです。以前は補給関係の仕事を担当していましたので、その線でお役に立てればと」
「それなら内政官で城勤めだな」
「えっ……いきなりそのような役職に就いても大丈夫なのですか? 下っ端から始めて信用を積み上げていくのではなく?」
「使える人材は積極雇用! そうすれば俺の仕事も減る、労働者は能力を認められて気分が上々。ウィン・ウィンの関係だ。これでメリッサも決まったな」
「あ……あの……」
「ん? 内政官じゃダメか? それ以外で補給関係だと……店の物品管理しかないけど……」
「いえ……そうではなくて……」
「じゃあ何だ?」
「……か……か……」
「か?」
「彼女にしてください!」
「……えっ!?」
「け、結婚はまだ早いし、お付き合いもしてませんし、お互いをもっとよく知ってから……お、お友だちからでも構いませんので……」
メリッサからの告白にケビンが唖然としていたら、断られると思ってしまったのかメリッサの瞳がうるうるとしだしてしまう。
「ダ……ダメでしょうか……?」
「いや……彼女にしてくれって言われたのは初めてで驚いた……」
「それで……その……」
「ごめん、ちょっと無理」
「えっ……」
メリッサは断られたと思って涙を流してしまうのだが、ケビンが立ち上がりメリッサに近づいて目の前に座り直すとその唇を奪った。
「ん?!」
あまりの出来事にメリッサは驚きで目を見開いてしまい、パチパチと瞬きをしては頭の中が混乱でぐちゃぐちゃになってしまうが、やがてケビンが唇を離すと声を漏らす。
「ぁ……」
メリッサは今までのことが嘘ではないのかと確認をするかのように指で唇に触れていると、ケビンがそのようなメリッサへ向けて口を開いた。
「ごめん、メリッサが可愛すぎて我慢ができなかった」
「……では……先程のは……断られたのではなく……」
「いきなりキスするから先に謝ったのと、我慢ができなくてのちょっと無理っていう発言」
「私……私……断られたと思って……」
再び涙を流してしまうメリッサを見たケビンは、また唇を重ねてキスをする。
「ん……」
今度はメリッサも混乱することなく瞳を閉じて、その身をケビンへと委ねる。そして再び唇が離れるとメリッサは物足りなさそうにケビンを蕩けた顔で見つめるが、ケビンはとりあえずメリッサへ返事を伝えるのだった。
「メリッサ、告白に対しての答えは『はい』だ。ただ、俺からも言わせてくれ。俺と結婚を前提に付き合って欲しい。もうメリッサにメロメロになってしまったから、他の男に渡すなんて嫌だ」
「……ぃ……はい……」
ケビンはメリッサの返事を聞くと指輪を1つ創り出して、メリッサの左手を掴む。
「これは将来結婚するっていう婚約の証だ。カトレアの手を見ればわかると思うけど、結婚したらこの指輪は右手に移動して左手には新しく結婚指輪を嵌める」
「はい」
そう伝えたケビンはメリッサの薬指に婚約指輪を嵌めて、最後にトドメのキスをするのだった。
「ケビン様って凄いね~メリッサちゃんを蕩けさせちゃうなんて~」
「なぁ、あたし……嫁になるって言ったのに指輪をもらってねぇんだけど?」
「ケビン君……短時間でもう2人も増やした……」
やがてケビンが唇を離すとメリッサははにかんだ笑顔を見せて、幸せそうに指輪を触るとニマニマとしていた。そしてケビンはしれっと3人の会話を聞いていたので、フィアンマに対しても指輪を創り出すと薬指に嵌める。
「フィアンマ、もう離さないからな」
「あたしがガサツ過ぎて仮に皇帝陛下が離したくなっても、あたしは離れてやらねぇからな」
「望むところだ」
ケビンはそう告げたらフィアンマに対してもキスをするのだった。フィアンマは唇が触れた途端にビクッと反応してしまうが、胸をドキドキとさせながらもケビンの唇を感じていた。
それからお互いの唇が離れると、フィアンマはボーッとした表情でケビンとのキスの名残りを噛み締めながらはにかむ。
「……これがキス……ふふっ……」
そして団長の中で残る1人は、ケビン好き好きオーラを出しているオフェリーである。
「で、オフェリー……聞くのが怖くてあえてスルーしていたし、何故周りが何も言わないのかそこも疑問の1つではあるんだが……あえて死地に飛び込むことにした。……何故1人だけ未だに下着姿のままなんだ?」
「それは~ケビン様の苦労を労うためです~疲れた時には癒しが1番ですよ~えいっ!」
オフェリーがケビンからの問いかけに答えると、ケビンの腕を掴んでは豊満な胸へ挟み込むが、ケビンは動揺を見せるでもなく冷静に他の者たちへ話を振る。
「何故みんなは何も言わないんだ?」
「団長ですし……」
「騎士団は上下関係が厳しいので……」
「突っ込んだら負けだと思いまして……」
「一般兵にはハードルが高すぎます……」
それを聞いたケビンは同じ団長であったフィアンマやメリッサにも話を振るが、2人とも答えは同じで『これ以上、秘密を暴露されたくない』だった。
暗部として活動していたオフェリーがどのような個人情報を入手しているのか、その全貌を知らない2人は秘密が暴露されることに対して、オフェリーに何を言われてしまうのか気が気ではなかったのだ。
「ケビン様~私に指輪はないんですか~癒し担当のお嫁さんですよ~?」
「ああ、そうだったな。ずっと守るって言ったしな」
「はい~最高のプロポーズでした~」
ケビンはオフェリーにも指輪を作って嵌めると、フィアンマたちと同様にキスをして嫁にするのであった。
それから他の女性たちに今後のことを尋ねるためケビンは会話を進めていき、将来設計について戸惑う女性たちから挙がった意見の中で1番多かったのは、帝都を1度見てみたいというものである。
「帝都か……」
「はい、都会に住むか田舎に住むかで意見が割れていたのですけど、結局のところ帝国を見たことがないので、どこが1番住みやすいか判断に迷いまして……」
「帝都は俺が管理しているから帝国では1番栄えてる所だ。田舎に住むなら帝都や領主たちの住む街から離れた村を探せばいいだけだが、マジで田舎だぞ? スローライフには持ってこいだけど……」
「1度見てから決めてもよろしいですか?」
「それじゃあまずは帝都で体験移住をしてみるか。そのあとに他の町や村でもやってみて、気に入った所に住めばいい」
「捕虜の身分なのにすみません」
「気にするな。どっちみち捕虜からは解放するつもりだ」
「魔王様、私はお嫁さんでお願いします!」
「私は団長と同じで彼女からがいいです!」
「私はお友だちからで……」
「わかった、わかった。みんなの面倒は俺が見ることになったから、焦らずゆっくりと今後のことについて考えてくれ。将来に関わることなんだ。今すぐ決める必要もない」
話し合いによってある程度の方向性が決まったところで、ケビンは捕虜たちに出発準備をするように促すのだった。
テントから外に出たケビンはその後タイラーの所へ向かうと、棺を全部収容できたか確認を取り、大丈夫だったようなので連合軍側は戦地から帰還することを告げてその場をあとにした。
最後までガブリエルがケビンに向かって何か言っていたが、完全に無視をしたケビンは何を言われていたのかはついぞわからなかった。
こうして神聖セレスティア皇国が挑んだ【聖戦】は、セレスティア皇国軍の大敗戦により幕を下ろすのであった。
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