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第13章 出会いと別れ
第408話 社会科見学
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社会科見学で魔導具工場へ向かうことになった従業員たちへケビンが転移ポータルの使い方を説明して真っ先に使って消えてみせると、残された従業員たちも恐る恐る乗ってみながら次々と転移していく。
そして一足先に待っていたケビンが転移してきた従業員を転移ポータルから引っ張り出すと、次の従業員が転移してくる。
次々と従業員が現れては引っ張り出されてしまうが、転移初体験である以上仕方がないとも言える。
やがて全員が揃ったところでケビンが口を開く。
「この目の前の建物が魔導具工房マジカルの魔導具を製作している工場だ」
工場横に設置してある転移ポータルの前でケビンが伝えているのだが、転移初体験である従業員たちはまだ現実へと戻ってきていなかった。
そうとは知らずケビンはお構いなしに従業員たちを誘導しては、魔導具工場の中へと入っていく。
ぞろぞろと現れたケビンと見知らぬ人たちを見た嫁たちは、一旦作業の手を休めるとケビンへ近づくのだった。
「ケビン様、その方たちはどうされたのですか?」
「やあレティ、彼女たちは王都支店の従業員だ。魔導具がどうやって作られているのかを知ってもらうため見学に来たんだ」
「そうなのですか」
「ところでフェリたちは大人しくしてる?」
「はい。今はおもちゃで遊んでいます。自分で座って転がる姿なんてまるで天使のようです!」
「そうだ、従業員にレティのことを紹介しないとね。そのうち在庫状況次第でここへ来ると思うから」
ケビンに誘導されてスカーレットが前へ進み出すと、王族然とした優雅な立ち振る舞いで挨拶をする。
「皆様お初にお目にかかります。私はこの工場の魔導具製作部統括をケビン様より拝命しておりますスカーレット・ヴァン・エレフセリアと申します」
スカーレットが名乗りを上げたのだが従業員たちは心ここに在らずで、それぞれが茫然自失としていた。
「ケビン様? みなさんが止まっていらっしゃいますよ?」
「ん? おかしいな……ここに来るまでは普通だったのに……」
「困りましたね……」
ケビンとスカーレットが頭を悩ませていると元庶民であった奴隷たちは、目の前で茫然自失としている従業員たちの心境がわかってしまうため、従業員たちを慮りケビンへ声をかける。
「ご主人様、彼女たちは現状についていけてないのです。これは私の予想でしかないのですが、転移ポータルを使ったあとから混乱されているのでは? 転移自体が過去に勇者の仲間であった賢者しか使えず、失われた魔法と言われているくらいですから」
「ああ、そういえば転移してきてから一言も喋っていない気がする」
「私も帝城の転移ポータルで事前に目的地へ移動すると聞かされて心構えをしていたにも関わらず、使用後はしばらく放心してしまいましたから」
「そういうことか……」
ケビンは嫁からの体験談を聞いて従業員たちへリラックス効果がでる魔法をかけると、落ち着きを取り戻した従業員たちへ改めてスカーレットを紹介した。
「ここにいるのが魔導具製作部統括のスカーレットだ。お店の在庫関係のことは彼女に相談すれば追加製造してくれるから」
「はい、わかりました」
支店長であるアマリアが答えるとケビンは製造の様子を見せるために、嫁たちへ作業を再開するように指示をだす。
そして作業工程を見学している従業員たちへケビンが質問があればしていいと伝えると、次々に従業員たちから質問が飛んでくる。
そのような中で嫁たちも身内ではない者から見学されるというのは初めての経験であり、いつもは感じることのない緊張感に包まれながら失敗しないように作業を進めていく。
その後工場見学が終わったらついでということで、ケビンは隣にあるナディアのアトリエにも見学に入る。
「ナディア、お邪魔するよ」
「あら、旦那様。今日はどうされましたか? お客様がおられるようですが」
未だ売るまでには在庫を作り終えていないナディアへアトリエに訪れた経緯を説明すると、ナディアは恥ずかしそうに自己紹介をしたら商品説明をしていく。
さすがに香水関係はケビンの専門外であるため質問があればナディアへ直接尋ねるようにして、ケビンは蚊帳の外でそれを眺めていた。
「あ、そういえばお義母さんとお義姉さんがサンプルを喜んでいたよ。お礼をよろしく伝えておいてだってさ」
「お義母さんとお義姉さんですか?」
ナディアはサンプルをケビンへ渡したものの、それを誰にあげるのかまでは聞いておらずケビンの言葉に首を傾げるのであった。
「アリシテア王国のマリアンヌ大公妃とローラ王妃だよ」
「……」
ケビンからの回答にナディアは言葉を失い、耳から拾ってしまった恐れ多い人物の名を反芻していた。
ナディアが黙り込んでしまいしばらくした後、再起動を果たしたナディアはケビンへ食ってかかる。
「あ、あれを王族の方に渡されたのですか!?」
「ああ、欲しがってたからね」
「な、何も包装していない剥き出し品の安物ですよ!?」
「そこら辺は気にしてないからナディアも気にしなくていいよ」
「気にしますよ! 他国の王族ですよ、王族!」
「マリーさんもローラさんも香水が欲しかっただけで、中身があればそれで充分だよ。豪華な包装なんてしなくても気にしてないよ。俺から奪おうとしてたくらいだし……目の色が変わってたからね。あの時ほど女の人って怖いなと思ったことはないよ」
「あぁぁ……王族の方にあんなみすぼらしい物を献上してしまうなんて……」
ケビンが気を使わず渡してしまったことに対して、常識人であるナディアはちゃんと誰に渡すのか聞いておけば良かったと、今更ながらに後悔するのである。
そしてナディアが何やらブツブツと呟きながら作業に没頭し始めてしまったため、ケビンはアトリエの見学を終わらせて外に出るのだった。
「あ、あの……ケビン様……」
「なに?」
アトリエから出てきた従業員たちの中からアマリアが質問しにくそうにケビンへ声をかけるが、ケビンは質問があるなら何でも受け付けると伝えて先を促すと、従業員仲間からつつかれたアマリアが恐る恐るといった感じでケビンへ質問する。
「ここへ来た時からずっと気になっているのですが……あの大きなお城のようなものは何なのでしょうか?」
「えっ……お城だけど」
従業員たちが見ている帝城に対して「あのお城のようなものは何なのか」と代表して質問してくるアマリアへ、ケビンは『城は城としか答えようがないよな』と思い、当たり前のように返してしまう。
そのようなケビンの何の捻りもない返しに、従業員たちは益々混乱していく。
「ここはケビン様の敷地とお聞きしていますが……」
「そうだけど」
「では、あのお城は……」
「俺の家」
ケビンからの返しで茫然自失としてしまう従業員たちの中で、何とか言葉を紡ぎ出したアマリアは震える体に鞭を打ってケビンへ恐る恐る答え合わせをしていく。
「こ……ここは帝都で……あ、あれは……お城で……そうなると……ケ、ケビン様は……こ……こ、こ……ここ……」
その先を言うにはとても恐れ多くて中々言えないでいるアマリアへ、ケビンは人の気も知らず笑いながら答えるのだった。
「何だか鶏みたいだな。俺はこの国を治めている皇帝だよ。だからあれはお城であって俺の家」
ケビンから伝えられた事実に対してもう従業員たちのキャパシティはオーバーしてしまったらしく、口をあんぐり開けては魂が抜けていくような表情になっていく。
その様子にケビンは『面白い顔』と評価していたが、当人たちからしてみればそれどころではなかった。
「ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい」
「ふ、不敬罪? 不敬罪だよね!?」
「死にたくない死にたくない死にたくない」
「ああ、最期に見た風景がお城なんて……」
「結婚したかった……」
「彼氏が欲しかった……」
「お父さんお母さん、先立つ不幸をお許しください」
ケビンが従業員の顔を楽しく見ていたら何やら不穏な空気になっていたので、それを払拭すべく安心させることにした。
「不敬罪にはしないから安心していい。せっかく手に入れた働き手を失うわけにはいかないしね」
「ほ、本当ですか!?」
「殺してしまったら雇った意味がないだろ?」
「生きてていいんですか!?」
「生きててもらわないと俺が困る」
その後も執拗く迫られるケビンはそこまでのものなのかと不思議に思うが、とにかく先に進めるために説明をしていく。
「この敷地内にいる以上は誰からも咎められることはない。ここに悪意のある人は入って来れないから」
「もし中へ入った後に悪意を持ったら……」
「トラップが作動して転移する。転移先はうちの衛兵の前だ。そうなったら問答無用で捕まるだろうな。まだ誰もトラップに引っかかってなくて宝の持ち腐れになっているけど」
それから何とか落ち着きを取り戻した従業員たちが安堵したのも束の間、ケビンが従業員の発した『自宅を見てみたい』という言葉を覚えており、従業員たちを引き連れて帝城へ連れていくのだった。
「貴女があんなこと言うからよ!」
「こんなことになるなんて思ってなかったからよ!」
ケビンが先導する後ろでは従業員たちが言い争っていたが、アマリアが支店長として落ち着きを取り戻させると不敬罪にならないように注意する。
そのようなアマリアの気苦労を他所に、ケビンはアルフレッドたちに挨拶すると帝城の中へと入り1階から案内を始める。
やはりここでも外見と中身の広さが全然違うことに驚く従業員たちだが、ケビンが作った休憩室を事前に見ていたのでそこまでの混乱はなかった。
続く2階では執務室で仕事をしていた嫁たちがケビンの来訪に驚いていたが、案の定仕事(執務)ではなくて別のことで来ていたので納得してしまう。
それに対してケビンはどこか腑に落ちない気持ちを抱えてしまうが、日頃の行いがそうだとケイトに突っ込まれてしまい何も言い返せなくなる。
そして最後は3階の案内でこれより上は個室しかないと説明をして、それが終わると憩いの広場へとやってきた。
「あっ、ケビン君がまた新しいお嫁さんを連れてきた!」
「安定の嫁製造機」
「今度は一気に10人だねー」
「ケビンが外を歩けば必ず嫁を拾うわね」
「主殿は節操なしよのぉ」
「ケビンはんはほんま性欲が強いなぁ」
ティナのいつも通りのお迎えの言葉から始まり、ニーナの何気ない毒吐きが入るとクリスは特に気にした風でもなく、シーラは半ば呆れ気味に言ったらクララとクズミがトドメの毒を吐く。
そして嫁たちの出迎えの言葉で従業員たちは混乱する者や真に受けて頬を染める者と様々な反応を見せており、嫁たちの言葉を特に気にもしないケビンが今回の主旨を嫁たちへ伝えていく。
「社会科見学?」
「自宅訪問?」
王都へ新たに作った支店の従業員に対する見学会だと説明したケビンだったが、嫁たちはそれよりも従業員たちの方へ興味が湧いてお店の方は自国のことでもないのでスルーしてしまう。
そして嫁たちに捕まった従業員たちは、グイグイとテーブル席へ引っ張っていかれてイスへ座らされるのだった。
「ねぇねぇ、ケビン君のどこが好きなの?」
「えっ……いや……あの……」
子供の育児をしていて冒険者稼業を休業しているティナが、ここぞとばかりに面白ネタを切り出して恋バナに花を咲かせる。
「だから、従業員だってば!」
ケビンがいくら従業員だと説明しても、育児以外では暇を持て余しているティナは聞く耳を持ち合わせていなかった。
「で、どこなの?」
「あの……子供の頃に2回も助けていただいて……カッコイイなって……」
「「「「キャー!」」」」
「ターニャと同じ長年の片想いよ!」
「ちょ、シーラ! 私を引き合いに出さないでよ。貴女だってケビン君が生まれた時から超絶ブラコンの片想いでしょ!」
ティナからの質問にアマリアも雰囲気に飲まれたのか素直に答えてしまって、呆れるケビンを他所に女子トークは盛り上がりを見せていた。
そして女性たちから蚊帳の外にされてしまったケビンは自主的にロナを抱き上げたら玉座へと向かい腰を落ち着かせると、女子トークが終わるまでロナと語り合うのだった。
「ケビン様、お飲み物は如何なさいますか?」
「頼むよ。あと、お客さんにも出してあげて」
「お客様は昼食に招かれるのですか?」
「そういえばそろそろ時間か……お客さんの分も頼むよ」
「かしこまりました」
プリシラがケビンへ色々と尋ねている中で、ワゴンに飲み物を用意していたニコルがやってきた。
「ケビン様、お飲み物です」
「おっ、早いね、ニコル」
「プリシラがどんくさいだけです。大方お腹が重くて動けないのでしょう。メイドたるものたとえ妊娠していようが、何時いかなる時でもご主人様の要望を叶えるべく事前の準備は怠らないのです。プリシラ以外」
「くっ……」
「ふふん」
悔しがるプリシラに対してニコルがドヤ顔を見せると、それを見たプリシラのこめかみはピクピクとするのだった。
その様子にプリシラとニコルが本気でいがみ合っていないことをケビンも知っているので、特に注意するでもなくお茶を飲みながらひと時の休息を得る。
その後、お昼となって食事の時間になるとケビンが従業員たちへ食べていくように伝えたら、ケビンが先導するまでもなく仲良くなった嫁たちが食堂へと連れていくのだった。
それから昼食が終わってしまうと再び女子トークをするようで、従業員たちは嫁たちに引きずられて憩いの広場へと戻ってしまう。
「あっ……そうだ、ケビン君」
「なに? やっと解放してくれる気になった?」
「いや、彼女たちを泊まらせてあげてもいいよね?」
「……は?」
いきなり従業員たちを泊まらせると言い出したティナに対して、ケビンは理解が追いつかなかった。
「いやいやいや、彼女たちは明日から新規オープンの仕事があるんだからね?」
「王都だよね? 転移ポータルがあるんだし、ここからでも出勤できるよね?」
「そりゃできるけど……」
「ケビン君はオーナーなんだから、ちゃんと従業員との親睦は深めないと溝ができちゃうわよ」
「えっ……どうしたの、ティナ? 熱でもあるの?」
まさかティナの口から当たり前のように出てきた言葉に対して、ケビンは病気なのではないかと心配してしまう。
「今の発言は確かにティナらしくないよねー」
「明日は雨?」
「槍じゃなければいいわ」
「まさかあのティナがのぉ……」
「ティナはん、頭でも打ったんかえ?」
ティナの言動は他の嫁たちにも同様の印象を与えてしまい、揶揄われたり心配されたりするのだった。
「わ、私だってちゃんと頭はいいんだから!」
「ちゃんとって……」
ティナの語彙力のなさにケビンは憐憫を感じてしまうが、あまり揶揄うとティナが泣き出してしまうのはいつものことなので、ケビンは従業員たちへ意思確認をとった。
「アマリアたちは泊まりたいの?」
「それは恐れ多いことですので……お食事にお招きいただいただけでも夢のようで……」
「いや、泊まりたいか泊まりたくないかで答えて」
「ケビン、それだと泊まりたいとしか言えないわよ。皇帝を前にして泊まりたくないって普通は言えないわよ」
「それもそうか。それじゃあ、泊まるか帰るかで選んで」
「今更帰りますとも言いづらいんじゃない?」
「あぁー、もう面倒くさい! アマリアたちは泊まりにする、異論は認めない! 世話係は言い出しっぺのティナがすること。風呂はティナが世話をするんだぞ」
「えっ……ということは、ケビン君と入れない……?」
「当たり前だろ!」
「そんなぁ……」
「ふっ、自業自得」
「ちょ、ニーナ! あなただって泊まれたらいいねって言ってたじゃない!」
「ちょっとティナ、騒がないでよ。私のシーヴァがびっくりするでしょう」
「シーヴァはおもちゃで遊んでて話なんか聞いてないわよ!」
「むしろ私のオルネラとティナのシルヴィオが泣きそうなんだけど」
「えっ、嘘っ!? シ、シルヴィオ!? よしよし、ママだよー怖くないからねー」
クリスから息子のシルヴィオが泣きそうだと言われて、ティナは慌ててケビン印のA型ベビーカーから抱き上げるとトントンしながらあやしていくが、クリスは気づいた時点でしれっと抱き上げてあやしていた。
「ティナは母親になっても落ち着きがないのぉ」
「うちらも早う子供に会いたいなぁ」
ティナとクリスが子供をあやしている姿を見て、クララとクズミは自分のお腹を触りながら今後生まれてくる子供へ思いを馳せるのだった。
こうして従業員たちはケビンの「面倒くさい」という一言で帝城へ泊まることになり、ティナから一般人用の個室に案内されたあとは夕食をご馳走になる。
その後はケビンとのお風呂がおあずけになって嘆くティナとともにお風呂へ行くと、その広さに驚いたり何故か遊具のウォータースライダーに興味津々になる女性もいるが、子供用で使うことができずに凹んでしまうのであった。
お風呂上がりの従業員たちは自由時間となるが場違い感と庶民感が相まって帝城で落ち着けるわけもなく、憩いの広場へ行くと時間ギリギリまで一緒にいてお喋りをしていた。
今日一日で一生味わうことのない夢のような体験に話が弾み、いつしか緊張も取れて眠くなってきたところで解散となり、与えられた個室へと帰ると思いのほかぐっすりと眠りにつくのであった。
そして一足先に待っていたケビンが転移してきた従業員を転移ポータルから引っ張り出すと、次の従業員が転移してくる。
次々と従業員が現れては引っ張り出されてしまうが、転移初体験である以上仕方がないとも言える。
やがて全員が揃ったところでケビンが口を開く。
「この目の前の建物が魔導具工房マジカルの魔導具を製作している工場だ」
工場横に設置してある転移ポータルの前でケビンが伝えているのだが、転移初体験である従業員たちはまだ現実へと戻ってきていなかった。
そうとは知らずケビンはお構いなしに従業員たちを誘導しては、魔導具工場の中へと入っていく。
ぞろぞろと現れたケビンと見知らぬ人たちを見た嫁たちは、一旦作業の手を休めるとケビンへ近づくのだった。
「ケビン様、その方たちはどうされたのですか?」
「やあレティ、彼女たちは王都支店の従業員だ。魔導具がどうやって作られているのかを知ってもらうため見学に来たんだ」
「そうなのですか」
「ところでフェリたちは大人しくしてる?」
「はい。今はおもちゃで遊んでいます。自分で座って転がる姿なんてまるで天使のようです!」
「そうだ、従業員にレティのことを紹介しないとね。そのうち在庫状況次第でここへ来ると思うから」
ケビンに誘導されてスカーレットが前へ進み出すと、王族然とした優雅な立ち振る舞いで挨拶をする。
「皆様お初にお目にかかります。私はこの工場の魔導具製作部統括をケビン様より拝命しておりますスカーレット・ヴァン・エレフセリアと申します」
スカーレットが名乗りを上げたのだが従業員たちは心ここに在らずで、それぞれが茫然自失としていた。
「ケビン様? みなさんが止まっていらっしゃいますよ?」
「ん? おかしいな……ここに来るまでは普通だったのに……」
「困りましたね……」
ケビンとスカーレットが頭を悩ませていると元庶民であった奴隷たちは、目の前で茫然自失としている従業員たちの心境がわかってしまうため、従業員たちを慮りケビンへ声をかける。
「ご主人様、彼女たちは現状についていけてないのです。これは私の予想でしかないのですが、転移ポータルを使ったあとから混乱されているのでは? 転移自体が過去に勇者の仲間であった賢者しか使えず、失われた魔法と言われているくらいですから」
「ああ、そういえば転移してきてから一言も喋っていない気がする」
「私も帝城の転移ポータルで事前に目的地へ移動すると聞かされて心構えをしていたにも関わらず、使用後はしばらく放心してしまいましたから」
「そういうことか……」
ケビンは嫁からの体験談を聞いて従業員たちへリラックス効果がでる魔法をかけると、落ち着きを取り戻した従業員たちへ改めてスカーレットを紹介した。
「ここにいるのが魔導具製作部統括のスカーレットだ。お店の在庫関係のことは彼女に相談すれば追加製造してくれるから」
「はい、わかりました」
支店長であるアマリアが答えるとケビンは製造の様子を見せるために、嫁たちへ作業を再開するように指示をだす。
そして作業工程を見学している従業員たちへケビンが質問があればしていいと伝えると、次々に従業員たちから質問が飛んでくる。
そのような中で嫁たちも身内ではない者から見学されるというのは初めての経験であり、いつもは感じることのない緊張感に包まれながら失敗しないように作業を進めていく。
その後工場見学が終わったらついでということで、ケビンは隣にあるナディアのアトリエにも見学に入る。
「ナディア、お邪魔するよ」
「あら、旦那様。今日はどうされましたか? お客様がおられるようですが」
未だ売るまでには在庫を作り終えていないナディアへアトリエに訪れた経緯を説明すると、ナディアは恥ずかしそうに自己紹介をしたら商品説明をしていく。
さすがに香水関係はケビンの専門外であるため質問があればナディアへ直接尋ねるようにして、ケビンは蚊帳の外でそれを眺めていた。
「あ、そういえばお義母さんとお義姉さんがサンプルを喜んでいたよ。お礼をよろしく伝えておいてだってさ」
「お義母さんとお義姉さんですか?」
ナディアはサンプルをケビンへ渡したものの、それを誰にあげるのかまでは聞いておらずケビンの言葉に首を傾げるのであった。
「アリシテア王国のマリアンヌ大公妃とローラ王妃だよ」
「……」
ケビンからの回答にナディアは言葉を失い、耳から拾ってしまった恐れ多い人物の名を反芻していた。
ナディアが黙り込んでしまいしばらくした後、再起動を果たしたナディアはケビンへ食ってかかる。
「あ、あれを王族の方に渡されたのですか!?」
「ああ、欲しがってたからね」
「な、何も包装していない剥き出し品の安物ですよ!?」
「そこら辺は気にしてないからナディアも気にしなくていいよ」
「気にしますよ! 他国の王族ですよ、王族!」
「マリーさんもローラさんも香水が欲しかっただけで、中身があればそれで充分だよ。豪華な包装なんてしなくても気にしてないよ。俺から奪おうとしてたくらいだし……目の色が変わってたからね。あの時ほど女の人って怖いなと思ったことはないよ」
「あぁぁ……王族の方にあんなみすぼらしい物を献上してしまうなんて……」
ケビンが気を使わず渡してしまったことに対して、常識人であるナディアはちゃんと誰に渡すのか聞いておけば良かったと、今更ながらに後悔するのである。
そしてナディアが何やらブツブツと呟きながら作業に没頭し始めてしまったため、ケビンはアトリエの見学を終わらせて外に出るのだった。
「あ、あの……ケビン様……」
「なに?」
アトリエから出てきた従業員たちの中からアマリアが質問しにくそうにケビンへ声をかけるが、ケビンは質問があるなら何でも受け付けると伝えて先を促すと、従業員仲間からつつかれたアマリアが恐る恐るといった感じでケビンへ質問する。
「ここへ来た時からずっと気になっているのですが……あの大きなお城のようなものは何なのでしょうか?」
「えっ……お城だけど」
従業員たちが見ている帝城に対して「あのお城のようなものは何なのか」と代表して質問してくるアマリアへ、ケビンは『城は城としか答えようがないよな』と思い、当たり前のように返してしまう。
そのようなケビンの何の捻りもない返しに、従業員たちは益々混乱していく。
「ここはケビン様の敷地とお聞きしていますが……」
「そうだけど」
「では、あのお城は……」
「俺の家」
ケビンからの返しで茫然自失としてしまう従業員たちの中で、何とか言葉を紡ぎ出したアマリアは震える体に鞭を打ってケビンへ恐る恐る答え合わせをしていく。
「こ……ここは帝都で……あ、あれは……お城で……そうなると……ケ、ケビン様は……こ……こ、こ……ここ……」
その先を言うにはとても恐れ多くて中々言えないでいるアマリアへ、ケビンは人の気も知らず笑いながら答えるのだった。
「何だか鶏みたいだな。俺はこの国を治めている皇帝だよ。だからあれはお城であって俺の家」
ケビンから伝えられた事実に対してもう従業員たちのキャパシティはオーバーしてしまったらしく、口をあんぐり開けては魂が抜けていくような表情になっていく。
その様子にケビンは『面白い顔』と評価していたが、当人たちからしてみればそれどころではなかった。
「ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい」
「ふ、不敬罪? 不敬罪だよね!?」
「死にたくない死にたくない死にたくない」
「ああ、最期に見た風景がお城なんて……」
「結婚したかった……」
「彼氏が欲しかった……」
「お父さんお母さん、先立つ不幸をお許しください」
ケビンが従業員の顔を楽しく見ていたら何やら不穏な空気になっていたので、それを払拭すべく安心させることにした。
「不敬罪にはしないから安心していい。せっかく手に入れた働き手を失うわけにはいかないしね」
「ほ、本当ですか!?」
「殺してしまったら雇った意味がないだろ?」
「生きてていいんですか!?」
「生きててもらわないと俺が困る」
その後も執拗く迫られるケビンはそこまでのものなのかと不思議に思うが、とにかく先に進めるために説明をしていく。
「この敷地内にいる以上は誰からも咎められることはない。ここに悪意のある人は入って来れないから」
「もし中へ入った後に悪意を持ったら……」
「トラップが作動して転移する。転移先はうちの衛兵の前だ。そうなったら問答無用で捕まるだろうな。まだ誰もトラップに引っかかってなくて宝の持ち腐れになっているけど」
それから何とか落ち着きを取り戻した従業員たちが安堵したのも束の間、ケビンが従業員の発した『自宅を見てみたい』という言葉を覚えており、従業員たちを引き連れて帝城へ連れていくのだった。
「貴女があんなこと言うからよ!」
「こんなことになるなんて思ってなかったからよ!」
ケビンが先導する後ろでは従業員たちが言い争っていたが、アマリアが支店長として落ち着きを取り戻させると不敬罪にならないように注意する。
そのようなアマリアの気苦労を他所に、ケビンはアルフレッドたちに挨拶すると帝城の中へと入り1階から案内を始める。
やはりここでも外見と中身の広さが全然違うことに驚く従業員たちだが、ケビンが作った休憩室を事前に見ていたのでそこまでの混乱はなかった。
続く2階では執務室で仕事をしていた嫁たちがケビンの来訪に驚いていたが、案の定仕事(執務)ではなくて別のことで来ていたので納得してしまう。
それに対してケビンはどこか腑に落ちない気持ちを抱えてしまうが、日頃の行いがそうだとケイトに突っ込まれてしまい何も言い返せなくなる。
そして最後は3階の案内でこれより上は個室しかないと説明をして、それが終わると憩いの広場へとやってきた。
「あっ、ケビン君がまた新しいお嫁さんを連れてきた!」
「安定の嫁製造機」
「今度は一気に10人だねー」
「ケビンが外を歩けば必ず嫁を拾うわね」
「主殿は節操なしよのぉ」
「ケビンはんはほんま性欲が強いなぁ」
ティナのいつも通りのお迎えの言葉から始まり、ニーナの何気ない毒吐きが入るとクリスは特に気にした風でもなく、シーラは半ば呆れ気味に言ったらクララとクズミがトドメの毒を吐く。
そして嫁たちの出迎えの言葉で従業員たちは混乱する者や真に受けて頬を染める者と様々な反応を見せており、嫁たちの言葉を特に気にもしないケビンが今回の主旨を嫁たちへ伝えていく。
「社会科見学?」
「自宅訪問?」
王都へ新たに作った支店の従業員に対する見学会だと説明したケビンだったが、嫁たちはそれよりも従業員たちの方へ興味が湧いてお店の方は自国のことでもないのでスルーしてしまう。
そして嫁たちに捕まった従業員たちは、グイグイとテーブル席へ引っ張っていかれてイスへ座らされるのだった。
「ねぇねぇ、ケビン君のどこが好きなの?」
「えっ……いや……あの……」
子供の育児をしていて冒険者稼業を休業しているティナが、ここぞとばかりに面白ネタを切り出して恋バナに花を咲かせる。
「だから、従業員だってば!」
ケビンがいくら従業員だと説明しても、育児以外では暇を持て余しているティナは聞く耳を持ち合わせていなかった。
「で、どこなの?」
「あの……子供の頃に2回も助けていただいて……カッコイイなって……」
「「「「キャー!」」」」
「ターニャと同じ長年の片想いよ!」
「ちょ、シーラ! 私を引き合いに出さないでよ。貴女だってケビン君が生まれた時から超絶ブラコンの片想いでしょ!」
ティナからの質問にアマリアも雰囲気に飲まれたのか素直に答えてしまって、呆れるケビンを他所に女子トークは盛り上がりを見せていた。
そして女性たちから蚊帳の外にされてしまったケビンは自主的にロナを抱き上げたら玉座へと向かい腰を落ち着かせると、女子トークが終わるまでロナと語り合うのだった。
「ケビン様、お飲み物は如何なさいますか?」
「頼むよ。あと、お客さんにも出してあげて」
「お客様は昼食に招かれるのですか?」
「そういえばそろそろ時間か……お客さんの分も頼むよ」
「かしこまりました」
プリシラがケビンへ色々と尋ねている中で、ワゴンに飲み物を用意していたニコルがやってきた。
「ケビン様、お飲み物です」
「おっ、早いね、ニコル」
「プリシラがどんくさいだけです。大方お腹が重くて動けないのでしょう。メイドたるものたとえ妊娠していようが、何時いかなる時でもご主人様の要望を叶えるべく事前の準備は怠らないのです。プリシラ以外」
「くっ……」
「ふふん」
悔しがるプリシラに対してニコルがドヤ顔を見せると、それを見たプリシラのこめかみはピクピクとするのだった。
その様子にプリシラとニコルが本気でいがみ合っていないことをケビンも知っているので、特に注意するでもなくお茶を飲みながらひと時の休息を得る。
その後、お昼となって食事の時間になるとケビンが従業員たちへ食べていくように伝えたら、ケビンが先導するまでもなく仲良くなった嫁たちが食堂へと連れていくのだった。
それから昼食が終わってしまうと再び女子トークをするようで、従業員たちは嫁たちに引きずられて憩いの広場へと戻ってしまう。
「あっ……そうだ、ケビン君」
「なに? やっと解放してくれる気になった?」
「いや、彼女たちを泊まらせてあげてもいいよね?」
「……は?」
いきなり従業員たちを泊まらせると言い出したティナに対して、ケビンは理解が追いつかなかった。
「いやいやいや、彼女たちは明日から新規オープンの仕事があるんだからね?」
「王都だよね? 転移ポータルがあるんだし、ここからでも出勤できるよね?」
「そりゃできるけど……」
「ケビン君はオーナーなんだから、ちゃんと従業員との親睦は深めないと溝ができちゃうわよ」
「えっ……どうしたの、ティナ? 熱でもあるの?」
まさかティナの口から当たり前のように出てきた言葉に対して、ケビンは病気なのではないかと心配してしまう。
「今の発言は確かにティナらしくないよねー」
「明日は雨?」
「槍じゃなければいいわ」
「まさかあのティナがのぉ……」
「ティナはん、頭でも打ったんかえ?」
ティナの言動は他の嫁たちにも同様の印象を与えてしまい、揶揄われたり心配されたりするのだった。
「わ、私だってちゃんと頭はいいんだから!」
「ちゃんとって……」
ティナの語彙力のなさにケビンは憐憫を感じてしまうが、あまり揶揄うとティナが泣き出してしまうのはいつものことなので、ケビンは従業員たちへ意思確認をとった。
「アマリアたちは泊まりたいの?」
「それは恐れ多いことですので……お食事にお招きいただいただけでも夢のようで……」
「いや、泊まりたいか泊まりたくないかで答えて」
「ケビン、それだと泊まりたいとしか言えないわよ。皇帝を前にして泊まりたくないって普通は言えないわよ」
「それもそうか。それじゃあ、泊まるか帰るかで選んで」
「今更帰りますとも言いづらいんじゃない?」
「あぁー、もう面倒くさい! アマリアたちは泊まりにする、異論は認めない! 世話係は言い出しっぺのティナがすること。風呂はティナが世話をするんだぞ」
「えっ……ということは、ケビン君と入れない……?」
「当たり前だろ!」
「そんなぁ……」
「ふっ、自業自得」
「ちょ、ニーナ! あなただって泊まれたらいいねって言ってたじゃない!」
「ちょっとティナ、騒がないでよ。私のシーヴァがびっくりするでしょう」
「シーヴァはおもちゃで遊んでて話なんか聞いてないわよ!」
「むしろ私のオルネラとティナのシルヴィオが泣きそうなんだけど」
「えっ、嘘っ!? シ、シルヴィオ!? よしよし、ママだよー怖くないからねー」
クリスから息子のシルヴィオが泣きそうだと言われて、ティナは慌ててケビン印のA型ベビーカーから抱き上げるとトントンしながらあやしていくが、クリスは気づいた時点でしれっと抱き上げてあやしていた。
「ティナは母親になっても落ち着きがないのぉ」
「うちらも早う子供に会いたいなぁ」
ティナとクリスが子供をあやしている姿を見て、クララとクズミは自分のお腹を触りながら今後生まれてくる子供へ思いを馳せるのだった。
こうして従業員たちはケビンの「面倒くさい」という一言で帝城へ泊まることになり、ティナから一般人用の個室に案内されたあとは夕食をご馳走になる。
その後はケビンとのお風呂がおあずけになって嘆くティナとともにお風呂へ行くと、その広さに驚いたり何故か遊具のウォータースライダーに興味津々になる女性もいるが、子供用で使うことができずに凹んでしまうのであった。
お風呂上がりの従業員たちは自由時間となるが場違い感と庶民感が相まって帝城で落ち着けるわけもなく、憩いの広場へ行くと時間ギリギリまで一緒にいてお喋りをしていた。
今日一日で一生味わうことのない夢のような体験に話が弾み、いつしか緊張も取れて眠くなってきたところで解散となり、与えられた個室へと帰ると思いのほかぐっすりと眠りにつくのであった。
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