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第12章 イグドラ亜人集合国

第368話 再びドタバタ劇場

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 イグドラ郊外から憩いの広場へ転移したケビンたちを出迎えたのは、いつものメンバーたちである。

「あ、ケビン君。また新しい女の子?」
「女性キラー」
「ケビン様、リンちゃんとシャンちゃんの歯が生え揃ってきました!」
「おかえり~」
「ケビン様、ミナーヴァでのお仕事は順調ですか?」
「ケビン、お仕事で疲れてない? お姉ちゃんが膝枕しようか?」
「主殿よ、暇だぞ」
「ケビンはん、疲れてまへんか?」

 次々と嫁たちが声をかけてくる中で、いきなりの転移でわけのわからない場所へと来てしまったリーチェたちは、目の前に広がる女性たちに言葉を失ってしまう。

 だが、昔の面影が残る憩いの広場を見たリーチェが、真っ先に再起動を果たした。

「ご主人様……ここはもしかして……いや、でもそんなはずは……」

「おっ、さすが元皇后だな。だいぶ内装を変えたが気づいたのか? ここはリーチェの想像している通りで元謁見の間だ」

「――ッ!」

「ケビン君、元皇后って……まさか……」

 ケビンの発言に食いついたクリスが『もしや!?』と答えに至ろうとしていたが、その考えを否定する気持ちとで内心がせめぎ合っていた。

「前皇帝のことを思い浮かべてるなら違うからな? リーチェは前前皇帝の后で元皇后だ。前皇帝から逃げ延びた際に奴隷狩りにあって、ミナーヴァで売られていたから獣人族を買うついでに興味本位で買ったんだ」

 ケビンとクリスが話をしていると、現実に戻ってきていたヴァレリアが目ざとくオリビアを視界に捉えた。

「おい、ケビン! サキュバスがいるぞ」

 ヴァレリアの言葉に反応したのは声をかけられたケビンではなく、奴隷のまとめ役であるケイトだった。

「ちょっと貴女。ご主人様をケビンって呼び捨てにしたらダメでしょ」

「ん? 何だお前? ケビン、こいつ誰だ?」

「貴女ねぇ!」

「まぁ、落ち着けケイト。ヴァリー、彼女はケイトで俺の嫁だ。あと奴隷たちのまとめ役と執務代行をしている頑張り屋さんだぞ。で、ケイト。この子はヴァレリアで鬼人族っていう魔族だ。角が生えてるだろ? あと痛い子でもあるから言葉遣いは特例で許してやれ」

「あぁぁ……痛い子なのね……」

 痛い子というケビンの言葉だけで察してしまったケイトは、哀れみの瞳でヴァレリアを見つめるのだった。

「おい、痛い子って何だ! ケビンに入れられた時の痛みはもうないぞ!」

「はぁぁ……貴方、もう手を出したのね……それにしても痛いわね」

「ケビン君も変な子を買ったわね」
「痛すぎる」
「確かに痛い子だねぇ」

「痛いって言うな! 俺は大人なんだぞ!」

「そう騒ぐでない。大人しくせんと子供に見えるぞ」

「なんだとぉっ!」

「あぁぁ……ヴァリーはこう見えて子供だぞ。中身は10歳だからな」

「「「「「えっ!?」」」」」

「おい、俺を子供扱いするな。俺を大人の女性にしたのはケビンだろ!」

 見た目が完全な大人であるヴァレリアの年齢を聞いて一同は驚愕した。そしてケビンは突き刺さる視線をその身に受けるのである。

「貴方、もしかして後ろの人たちも?」

「ん? そういえば鑑定をした訳でもないし名前以外は知らないな」

 ケビンの言葉を聞いたフィオナたちは、わけのわからない現状を後回しにして自己紹介をすることにしたのだった。

「名前はフィオナで年齢は13歳です。ご主人様に火傷の痕を治していただく前に抱かれて、その時に大事なものが再生されていて初めてを捧げました。その後に火傷の痕を治していただいています」

「私はジゼルで年齢は12歳です。ご主人様に失った腕を治していただき、同じようにしてもらい初めてを捧げました」

「私はヘレンで同じく12歳です。ご主人様に失った脚を治していただき、2人と同様にしてもらい初めてを捧げました」

「私はリーチェです。年齢は15歳で11歳の時に政略結婚で前前皇帝に嫁がされました。他の3人と同様にしてもらいご主人様に初めてを捧げました」

 一緒にいた4人が自己紹介をしたことによって、ヴァレリアも何となくした方がいいのかなと思い至り、同じようにとはいかず痛い自己紹介をする。

「俺はヴァレリアだ。10歳だけどケビンが大人にしてくれたから子供じゃないからな。それがなくても鬼人族の成人の儀は終わってるからどっちにしろ大人だ! ケビンを倒すまで絶対に離れねぇからな、そこんとこよろしく」

 新たに仲間入りした奴隷たちの自己紹介が終わると、再びケビンへ視線が集まる。

「ケビン君、今度は年下を集めていくの?」
「恐るべし女性キラー」
「やはり主殿はおなごホイホイだの」

 そこへ更なる追い討ちをかけるのはアンリたち子持ちの奴隷である。

「ご主人様、アズたちにも夜のお相手の仕方を教えておきましょうか?」

「いや、待て! アズたちにも選ぶ権利があるはずだ。将来はカッコイイ彼氏とかとデート――」

 ケビンは自分で言っておきながら、その時の光景を想像してしまい地べたに手をつくと落ち込むのであった。

「アズたちに彼氏……『パパ、私の彼氏だよ』とか将来は言われるのか……そしてゆくゆくは『パパ、私たち結婚するね』とか……」

 そこへ子供たちを呼び寄せたアンリが子供たちに何かを聞くと、その聞き出した答えをケビンへ伝えるように指示を出した。

「パパ、私パパのこと好きだよ」
「私も好きー」
「大きくなったらパパのお嫁さんになるの」
「私もなるー」
「お母さんと一緒のお嫁さん」
「私もなります」
「パパ、私は彼氏とか作りませんよ。だってパパ以上のカッコよくて優しくて、それでいて守ってくれる強い人はいませんから」

 子供たちが無邪気に素直な気持ちを伝えていく中で、最後の天使が舞い降りてケビンへ気持ちを伝えるのだった。

「……パパ……パメラもすきだよ……げんきだして……」

 アズたちとパメラの言葉によって、ケビンは打ちひしがれていた心が癒されると、元気百倍で子供たちを抱きしめていきお礼を言うのであった。

「みんなありがとう……パパ、これからもみんなを守れるように仕事を頑張るよ」

 そこへ耳ざとく聞きつけた者がニヤリとしながら、ケビンへ声をかける。

「貴方、聞いたわよ? 書類が溜まっているからお仕事頑張りましょうね?」

「……え?」

「みんなを守れるように仕事を頑張るのでしょう? 偉いわね、パパは。みんなもそう思うわよね?」

「パパ、えらーい」
「お仕事頑張って」
「あとで遊んでー」
「パパごっこしよ、パパごっこ」
「私、パパキック上手くなったよ」
「頑張ってください」
「何か手伝えることがありましたらお申しつけください」

 一部応援してくれる子供たちと遊び相手を待つ子供たちの手前、ケイトへ仕事を押しつけるわけにもいかず、ケビンは泣く泣く了承するのだった。

「ところでご主人様」

 騒ぎがひと段落ついたところで、アンリが近寄ってきてケビンへ声をかける。

「どうした? 何かあったのか?」

「えぇ、とても重要なことがあります」

「な、何だ?」

「先程お聞きしたのですが、ご主人様は女性の大事なものを再生できるのですよね?」

 アンリがケビンへぐいぐい迫ってくると、聞きつけた他の女性たちもケビンへ詰め寄ってきた。

「あ、ああ、一応……できる……かな?」

「ご主人様、私たちはご主人様へ初めてを捧げたいです。嫌な記憶を塗りつぶしてくれませんか? してくれますよね? ね?」

「……わかった……みんなにするよ」

「ふふっ、愛してます。私たちの旦那様」

「いや、元々アンリたちにしようとしていたことだから。順番がズレちゃったけど」

「順番なんて気にしませんよ。ご主人様が私たちのことを考えていらっしゃったことがわかって逆に嬉しいです。あとは、その……赤ちゃんが欲しいかなって……」

「ああ、それも考えてるよ。アビーが妊娠すればだけど」

「あら? お聞きになっていないのですか? アビゲイル様はご懐妊なされていますよ?」

「……え?」

「それは私から説明するよ」

 ケビンとアンリの会話に混ざってきたのはクリスだった。

「アビーはね、ケビン君が獣人族救出で頑張っている最中だから余計な心配はかけたくないって、時期を見てちゃんと伝えるから秘密にしててって言ってたんだけど、それを知っているのは正妻組だけだったからバレちゃったね」

「アビー……」

 ケビンはアビゲイルが妊娠するように魔法をかけていたので当然知っていたのだが、言い知れぬ感謝の気持ちを感じてアビゲイルの心遣いが心に染みていく。

「アビーが仕事から帰ってきても怒らないであげてね」

「当然だろ。懐妊した嬉しさはあっても怒るような要素は何一つない」

 それからケビンはドタバタがひと段落したところで、リーチェたちへ本題を話すべくみんなを座らせて腰を落ち着かせた。

「えぇっと、色々あってバタバタしたけど、ようこそ我が家へ」

「……はい?」

「ここは俺の家だ」

「あの、ご主人様が何を言っているのかさっぱり理解できません」

「そうかぁ? 簡単じゃねぇか。ここはケビンの家なんだろ?」

「そうだ」

「これのどこが理解できねぇんだ?」

「はぁぁ……ヴァリーは魔族だからわからないんですよ。ここはですね、帝国にある皇帝が住む帝城なんです」

 リーチェの言葉でようやくここがどこであるのか理解したフィオナたちは、驚きで目を見開いてケビンを凝視するのだった。

「ん? ここがどこだか知ってるなら理解してるじゃねぇか」

「私が理解できないのは場所ではなく、何故ここにご主人様が住んでおられて、しかも『我が家』と言っているのかです」

「ケビンが自分の家だから我が家って言ったんだろ? 当たり前で普通のことじゃねぇか」

「はぁぁ……痛い子に説明するのは疲れますね」

「おい、俺を痛い子って言うな!」

「もうこの際ヴァリーはいいです。放っておきますのでご主人様はちゃんと納得のいく説明をしてください」

「戦争に参加していたのは教えただろ?」

「はい、確かに聞きました」

「その戦争を終わらせたのが俺だ。当時捕虜になっていた兄さんを砦から救い出して、アリシテアとミナーヴァの2国に攻め入ってきていた帝国兵を全て殺して、兄さんと同じく捕虜で皇帝に献上されていた姉さんを救い出すためにここにいた皇帝を殺した」

「……えぇっと……はい?」

 ケビンの説明に対して理解が全く追いつかないリーチェに構わず、ケビンは説明を続ける。

「その後になんやかんやあって、俺がこの国の国名をエレフセリア帝国に改めて初代皇帝を名乗っている現皇帝だ。だからここは我が家なわけ。わかりやすかっただろ?」

「おう、俺はわかったぞ。ケビンはこの国の皇帝だからこの城が家なんだな」

「そうだ。ヴァリーは賢いな」

「ははっ、照れるじゃねぇか。ふわっとするやつでもするか?」

「それはまた今度な」

「俺はいつでもいいからな」

 ケビンとヴァレリアが和気あいあいとしている中で、リーチェはやはり理解が追いつかなくて、それを見兼ねたシーラがリーチェへ真実であることを教えるのだった。

「ケビンが言っていることは全て本当のことよ。私が当時捕まっていたケビンの姉でシーラっていうの。よろしくね、リーチェ」

「よろしくお願いします。で、にわかには信じ難いのですが」

「普通はそうよね。でもね、ケビンの印象ってちゃらんぽらんな感じだけど、誰かを守るためだったり誰かのために動く時はとても強くてカッコよくて惚れ惚れするのよ。リーチェもお嫁さんになるんだから夫のことは信じてあげないとダメよ?」

「……はい? お嫁さん?」

 リーチェはケビンの話の真偽を聞いていたはずなのに、最後にはお嫁さんになると言われてしまい混乱に拍車がかかっていく。 

「そうよ。リーチェだけじゃなくてフィオナたちもよ」

「「「……え?」」」

「リーチェたちはケビンの嫁になるのか? そうなると家族だな」

「なに他人事みたいに言ってるの。ヴァリーもお嫁さんになるのよ」

「俺もか? んー……ケビンだったらいいか。家族になればずっと戦えるしな。勝つまで一緒にいる予定だったがまだ勝てそうにねぇし……よし、ケビン! 俺も嫁になるぞ。だから戦い方を教えろ」

 ケビンを他所に嫁になる話が進んでいきヴァレリアは嫁になる気満々でケビンに対して稽古をせがむのであるが、そのような様子を眺めていたケビンは指輪を作るとそれぞれの指へはめていくのだった。

「おおっ、何だこれ!?」

「「「「……」」」」

 結婚指輪をする習慣のない魔族であるヴァレリアは、自分の指にはめられた指輪を見ては物珍しさで触ったりしながらはしゃぎ出すが、その他の4人はヴァレリアとは対照的に唖然としたまま呆けてしまった。

「これはうちのルールっていうか、ケビンのルールかしら? この城に住む女性はケビンのお嫁さんになるの。別に強制じゃないんだけど、どっちみちケビンに惚れてしまって抱かれてしまうのよね。ケビンも抱いた女性は大切にするし立場の差をなくすために奴隷であろうと娶るのよ。でも私たち女性の間で決めた序列はあるわよ?」

 それからシーラはソフィーリアが嫁たちの統括であることや第1夫人であることを教えていき、それ以外の嫁は正妻と側妻で別れているだけで特段上下関係はないことを伝えていく。

「もう何が何だか……」

「そのうち慣れるわ」

「前前皇帝よりも妻の数が多いということは理解できました」

 シーラの説明が終わると今度はクリスがやってくる。

「ここからはシーラだと恥ずかしがるから私が説明するね」

 クリスの告げた内容を耳にしたシーラは、そそくさと頬を染めながらその場を退散するのである。

「これだけ女性がいると1番心配してしまうのが、夜のお相手になるんだけど……みんな抱かれたならわかるよね? とてもじゃないけどケビン君のお相手は1人だと無理だってことが」

「はい……1日中抱かれましたが、ご主人様はピンピンしてたのに対して私たちは全員ダウンしてしまいました」

「そう、それ。だから回数が少なくなるとか心配しなくても大丈夫だからね。ケビン君って盛り出したら何処だろうと何時だろうと関係なくしちゃうから、心構えだけはしっかり持っておいて」

「何処でもですか?」

「うん。私は青空の下で抱かれたことがあるよ。ワイバーンを討伐した後に」

「「「「え……?」」」」

 まさか何処でもの範囲の中に、魔物を討伐した後の場所が入るとは夢にも思わず4人は驚いてしまう。

「基本は屋内なんだけどね。でもたまにはベッドじゃない所でするのも楽しいよ」

「ご主人様……業が深いです……」

 クリスの説明が終わると次にやって来たのはアリスであった。その後ろをトコトコと双子のパンブーがついて行く。

「初めまして、私はアリスです。この子たちはリンちゃんとシャンちゃんです。カワイイですよ」

 アリスは特に城のことを教えるのではなく、双子のパンブーを紹介したいだけだったようである。

「動物を飼ってらっしゃるのですか?」

「この子たちは魔物ですよ?」

「「「「……え?」」」」

「ケビン様の子供たちです。双子なんですよ」

 アリスはなんてことのないように伝えるが、伝えられた方はそうもいかない。魔物であることを聞いた上にケビンの子供とまで言われてしまっては、思考が追いつかなくなってしまう。

「ご主人様……まさか……」

 リーチェは僅かな可能性を指摘しようとしたが、騒がないようにヴァレリアを膝上に乗せて相手をしていたケビンが即座に否定する。

「リーチェの考えていることは間違ってるからな」

 変な誤解を与えないためにケビンは双子のパンブーを育てるようになった経緯を説明すると、誤解していたリーチェたちはとりあえずの納得をした。

「それにしても魔物の子を育てるとは、ご主人様の考えは理解の範疇を超えています」

「可愛いから別にいいだろ。リン、シャン、おいで」

 ケビンが双子のパンブーに呼びかけると、アリスの元を離れて素直にケビンの所へと向かう。

「あーってしてみろ。あーって」

 ケビンが口を開けてお手本を見せると、それを見たリンとシャンも座り込んではケビンへ向けて口を開いた。

「あぁ、確かに生え揃ってるな」

 ケビンはヴァレリアを下ろすとリンとシャンの所でかがみこんで、今度は自分の腕を両方差し出して噛むように声をかける。

「パクッてしてみろ。パクッて」

 またお手本を見せたケビンの真似をするようにリンとシャンがケビンの腕をそれぞれ噛むと、噛まれたケビンは結論を出した。

「甘噛みはできるけど魔物だけあって歯が凶暴だな。よし、いい機会だしスキルをやるか」

「ケビン様、そのようなことができるのですか?」

 ケビンはアリスの問いに答えると、リンとシャンへ【言語理解】のスキルを付与した。

「アリス、リンとシャンに何か指示を出してみてくれ。簡単なやつじゃダメだからな」

「では、リンちゃんとシャンちゃん。玉座に座って手を振ってください」

 ケビンからのリクエストに答えたアリスは玉座を指さして指示を出すと、アリスからの指示を受けたリンとシャンは仲良く玉座へ歩いて行っては一生懸命になってよじ登るのだった。

「ああっ、カワイイですぅ!」

 まだリンとシャンが座ってもいないというのに、一生懸命よじ登る姿を見たアリスが歓喜して、そこへ駆け寄ってはリンとシャンを1匹ずつ抱えて玉座へ座らせる。

 無事に玉座に座れたリンとシャンは締めとでも言わんばかりに、アリスへ向かって手を振り出した。

「メロメロですぅ……」

 アリスがメロメロになっている中で、ケビンはリンとシャンを呼び寄せる。

 アリスよりも優先順位の高いケビンに呼ばれたことで、リンとシャンは玉座から降り出したが、如何せん脚が短くて床へ一生懸命つけようとフリフリしていて、それを見たアリスが更に萌えているのだった。

 やがて脚を床へつけるよりも先に体が滑り落ちてしまい、そのままコロコロと転がってしまった。

「何でそんなにカワイイのですか!?」

 アリスの感想など知ったことではないリンとシャンは、起き上がるとそのままケビンの所へ帰るのだった。

 そしてケビンはサナ協力の元、サクッと魔導ミキサーを作り出してしまうと、その中へ果物を入れて細かく削った果実の残るジュースを作り出したら皿容器に入れてリンとシャンへそれぞれ差し出した。

「ミルクはそろそろ卒業だ。それを飲んでみろ」 

 リンとシャンがケビンから言われたように舌でぺろぺろして飲んでいたら、思いのほか味が気に入ったようでどんどん飲み干していく。

「美味しく飲んでるし大丈夫そうだな」

「ケビン様、もうミルクはあげないのですか?」

「ああ、歯が生え揃ってきたし、柔らかめの果実ジュースが今後の食事だな。あとは野菜ジュースを飲むかどうかだが、果実に混ぜて食べさせた方がいいかもな」

「それと言葉をいきなり理解したのは何故ですか? 今まで身振り手振りで意志を伝えていましたのに」

「双子に【言語理解】のスキルを付与したからだ。甘噛みで子供たちが怪我でもしたら大変だろ? 双子もまだ子供とはいえ魔物だしな、事前の予防策だよ」

 ケビンがアリスにそう伝えたら、ジュースを既に飲み干してしまったリンとシャンへ人に対して噛むのを禁止して、舐めるだけなら構わないと教え込むとリンとシャンは理解したとばかりに手を挙げて返事を返す。

「「クゥ!」」

「はうあっ! 可愛すぎます!」

 こうしてリンとシャンはケビンによって、新たな成長を遂げるのであった。
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