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第11章 新規・新装・戴冠・結婚

第275話 第1回嫁会議

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 ケビンが国王たちの元へ足を運んでいる最中、憩いの広場にて急遽ティナによる前触れなしの嫁会議が開かれるのである。

「いきなりだけど、第1回嫁会議を開きたいと思います。議題はケビン君に初めてを捧げることについてよ。そこで、ソフィさん?」

「何かしら?」

「ソフィさんはもう抱いてもらってるよね? 何回も……」

「そうね、ひと足早く妻になったから」

 ティナからの質問に対してソフィーリアは臆面もなく答えるのであるが、アリスやスカーレットといった王女組や恥ずかしがり屋のニーナには刺激が強かったようで顔を赤らめて俯いているが、サーシャやクリスは興味津々で聞いている。

 周りで談笑していた奴隷たちまでお喋りをやめて静かになると、聞き耳を立てているのであった。

 この空間で唯一我関せずを通しているのは遊具で遊んでいる子供たちと、玉座の隣で座っているパメラだけである。

「そこで、結婚式はまだだけど私たちも抱いてもらおうと思うの」

「いいんじゃない? 私だって結婚式なんて挙げずに、指輪を受け取ったその日に抱いてもらったから」

「さすがにソフィさん相手となるとケビン君も手が早いわね」

「ずっとお互いに待っていたからね」

「傍から見ればお似合いのカップルだけど、私たちも当事者だから負けてられないわ」

「勝ち負けは考えなくていいわ。あの人は貴女たちのこともちゃんと愛してくれるから。ただ、あの人の1番であることだけは譲れないわね」

「そこはソフィさんに譲るわよ。私たちなんて到底及ばない絆があるもの」

「ありがと」

 ソフィーリアの牽制にティナは当然であると答えを返して、ソフィーリアはその答えに満足するのである。

「貴女たちも心配しなくて大丈夫よ。あの人にはちゃんと抱いてあげるように言ってあるから」

 ソフィーリアは聞き耳を立てている奴隷たちに視線を流して伝えると、ケイトが代表して質問をするのだった。

「あの……ソフィーリア様は本当によろしいのですか? 私たちがご主人様へ恋慕を抱いても」

「構わないわよ。私がこだわっているのはあの人の1番であることだけよ。それに、私にもちゃんと考えはあるのよ? 私ばかり抱いてこの体に飽きられたくないから、貴女たちを抱かせて夜の営みのスパイスにするの」

「考え方のスケールが大きいですね」

 ケイトは自分では到底真似できないような考え方に、ソフィーリアの偉大さを感じ取り、さすがケビンが真っ先に結婚した相手であると思い至るのである。

「ねぇ、それよりも順番決めようよ」

「そうよね、さすがに全員一緒ってのはないだろうし……」

 クリスが待ちきれないという感じで言葉を発すると、サーシャも早く抱いて欲しいからかそれに賛同する。

「あら、あの人なら全員一緒でも大丈夫よ。私だけで何回もするのだから」

 ソフィーリアの何気ない言葉に女性たちはゴクリと唾を飲み込む。果たして1人で相手をして体が持つのだろうかと。

「ふふっ、心配しなくても私たちの体が壊れるくらいまではしないわよ。逆を言えば大丈夫だと感じたら何回でもするのだけど」

「ち……ちなみにソフィさん……」

「何?」

「最大で何回まで耐えました?」

「回数なんて数えてないけど、夜から朝までしたことはよくあるわよ。その後は仕事とかもあるし止めざるを得なかったのだけど」

「……」

 ティナのした質問に軽々と答えてしまうソフィーリアに対して、女性たちは1番を譲るどころの話ではなく逆に『お譲りさせて下さい』と、絶対に勝てない相手であることを思い知るのである。

 実際問題、ソフィーリアの体は神の体であるためにケビンがいくら回数をこなそうとも苦にもならず、翌朝には朝食を作り仕事に出かけられるほどなのだ。

 だから故か、ケビンもソフィーリアも気兼ねなく体を貪り、求め合うことができるのだ。

「ソ、ソフィーリアさん!」

「今度は何?」

「ここに来てから朝まで……その……やったことってあるの?」

 クリスの質問にティナたちも耳を傾ける。その理由は、ケビンが致す時は必ず遮音の結界を張って音漏れを防いでいるからである。

 それ故に、夜は静まり返っていて何が行われているのかは想像でしかできないのだが、確実に致しているであろうことぐらいは理解しているのだ。

 4階でそうなのだから2階で寝泊まりしている奴隷たちなんかは、全く物音が聞こえず妄想を膨らませるばかりである。『今日はしているのだろうか?』、『昨日はしたのだろうか?』と、妄想の中で思いと想いを膨らませて自ら慰めるハメになる。

 当然その妄想の中にソフィーリアはおらず、ケビンが自分たちの体を攻め立てているシチュエーションとなっている。

 そして、その行為は静まり返った2階で完全に消すことはできずに、暗黙の了解としてお互いに『昨日は1人でお盛んでしたね』と指摘するような野暮はしない。

 子供たちは子供たちでと部屋を一緒にしているのが功を奏して、母親も子供の前だからと我慢することはなく、思いきり快楽に溺れることができるのだった。

「ここに来てからもしてるわよ。この前の彼女たちがしたご奉仕のあとは特に激しかったわね。だから、婚約者たちを早く抱きなさいって伝えたのよ。そうすれば奴隷の彼女たちを憚ることなく、その場で抱くこともできるでしょ?」

 一体この正妻はどこまで凄いのだろうかと、この場にいる大人の奴隷たちは同じ考えへと辿りつくのである。懐が深いなんて言葉では到底形容しきれないものを一様に感じ取ってしまう。

 奴隷に限らずティナたちに至ってもそうだ。実際お風呂に入っている時に目の前で行為が始まったなら嫉妬せずにはいられないというのに、目の前のソフィーリアはその場で抱くことを平然と許容しているのだ。

「不思議そうに見てるわね。考えてもみて? あの人の幸せが私たちの幸せじゃないの? あの人に無理させて苦しませてそれで幸せになれる? 私は嫌よ。あの人が私に気を使って目の前の奴隷たちを抱けずに欲求不満になるくらいなら、いっそ抱いてスッキリしてくれた方がいいわ」

「でも、代わりに欲求不満を解消してあげれば……」

「ティナ、それはあの人が奴隷で欲情して貴女を抱くということなのよ? 貴女に耐えられる? 自分に欲情したわけではなく別の女性に抱いた感情を貴女にぶつけてくるのよ?」

「……」

「でも、ソフィさんは抱かれたのよね?」

 ティナがソフィからの指摘に黙り込んでしまうと、サーシャが不思議そうに尋ねるのだった。

「だって私はあの人の全てを愛しているもの。私の全ては言葉の通りの意味で全てよ。だから、別の女性で欲情したとしても問題ないわ。している最中は私に夢中になるのだから。でも、貴女たちがそう感じるとは限らないでしょう? 私も嫉妬くらいはするのだから貴女たちも当然するわよね?」

「……できれば私の体で欲情して欲しい」

 ティナがボソリと呟いた言葉に他の女性たちも思うところがあるのか、静かに頷き返している。

「それなら私が言ったことも理解できるわよね? 奴隷に抱いた欲情をぶつけられるより、それをスッキリさせて貴女自身の体に欲情して欲しいでしょう? そして、あの人が幸せを感じていることが私にとって1番なの。それを見ていると私も幸せになれるのよ。これって異常に思える?」

「いいえ、何だかんだでケビン君よりもまだ自分のことを優先していたんだと思う。本当は奴隷の彼女たちを抱く話になった時は嫌だった。ソフィさんは何故ケビン君が自分の意思で抱くなら構わないって言ったのか理解できなかった。けど、今なら理解できる。自分が嫉妬してケビン君に窮屈な思いをさせるより、ケビン君が自由に幸せを感じられる環境を作り上げるためなんだって」

「そうよ、でも無理して私の真似をする必要はないわ。ティナの嫉妬くらいあの人なら余裕で受け止めてくれるわよ? そのくらいあの人の本質は優しいのよ。ずっと一緒にいたのだからわかってるでしょう? 初対面だった奴隷の彼女たちを見捨てることができなかったのよ?」

「ありがとう、ソフィさん。何だか今まで感じていた胸のつっかえが取れたわ」

 ソフィーリアのお悩み相談になりつつあった嫁会議は、次のお悩み相談ではなく別の話題が上がるのである。

 それは、これだけ寛容なソフィーリアのする嫉妬というものに興味が沸いたスカーレットが、そのことを聞くためにソフィーリアへと質問したことだ。

「ソフィ様、ソフィ様のする嫉妬ってどんなものですか?」

「それはね、あの人の中で1番好きな人は私じゃないのよ」

 ソフィーリアの答えた内容に女性たちが絶句してしまう。これ程までにケビンのことを考えている人よりも更に上を行く好きな人がいるのかと。

「その……ソフィ様は誰が1番か知っておられるのですか?」

「あの人の母親であるお義母さんのことよ。だから2番でも仕方ないかなとは思いつつも嫉妬してしまうのよ」

 ケビンの1番好きな人がサラだと知り、ティナたちはすんなりと腑に落ちて納得してしまうのであるが、奴隷の女性たちはまだサラに出会ったことがないため、普通に母親想いのいい息子だなと自己完結してしまう。

「でもね、1番愛している人では1番が取れたのよ。お義母さんは逆に2番ね」

「1番と2番はサラ様とソフィ様で独占なんですね」

「私は何番なんだろう……」

 ケビンの作った格付けにクリスは興味がそそられるのか自分の順位が気になり始めてしまい、周りの女性たちも影響を受けて密かに気になり出したようだ。

「聞いてみようかな?」

「気になる……」

「私はあまり一緒にいられなかったから低いわね」

「私はケビン様が好きでいてくれるなら何位でもいいです」

「私もアリスと一緒です」

 ティナたちが順位を気にし始めているという中で、できた王女2人組は順位よりもケビンの気持ちが優先であるらしく、そんな彼女たちにソフィーリアが予想でしかないことを伝えるのだった。

「多分、好きな人も愛している人も貴女たちは同率で3位よ。3位は嫁枠で4位は奴隷の彼女たちかしら」

 ティナたちはケビンのことを考えると、それはそれで納得してしまうのであるが、奴隷たちは思いのほか高順位だったために困惑しているのだった。

「とりあえず、今は順位よりも順番を決めるのでしょう?」

 脱線ばかりする嫁会議の軌道修正をソフィーリアがすると、ティナたちは『そうだった!』と言わんばかりの表情で今回の議題について思い出すのであった。

「この際、婚約した順番でいいのじゃないかしら? それなら特に揉めもしないでしょう?」

「そうなると私とニーナが一緒になるわね」

「あら、2人同時?」

「そうなの。出会ったのも一緒だし、婚約したのも一緒なの」

「それなら、2人でアタックしなさい」

「……恥ずかしい……」

「ニーナ、緊張も2人で分かち合えるのだから、恥ずかしがり屋のニーナには1人よりもティナと一緒の方がいいわ」

「うぅ……」

「ねぇ、ソフィさん。初めての時って痛かった?」

「痛かったわ。だけどあの人が優しくしてくれたからそこまで痛くもなかったわよ。それに、人によっては痛みを感じないからそのまま快楽に堕ちちゃうわね。まぁ、痛くてもあの人から快楽に堕とされちゃうのだけど」

「そんなに……」

「恐らく1回で終わりにはならないわよ?」

「うそ……」

「え……」

「初めて抱かれるのでしょう? 今まで抱けなかった分をぶつけられるわよ? でも、2人だから回数も2等分ね」

「体持つかな……」

「ティナ、頑張ろ……」

 ソフィーリアからの経験談を聞いたティナとニーナは、これから起こるケビンとの逢瀬に期待半分不安半分であった。

 他の4人はティナたちとは違い1人でそれを受けるとなると、他の人とペアを組むかどうか悩み始めるが、そうなってしまうと場合によっては順番がズレてしまうこともあるので中々言い出せずにいた。

「大丈夫よ。心配しなくても優しくしてくれるわ」

 こうして、ケビンのあずかり知らぬところで嫁たちによる会議が開かれて、新婚初夜の順番が取り決められて決行へと移行するのであった。
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