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第7章 ダンジョン都市
第179話 ダンジョン攻略③
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翌朝になり朝食を食べている中で、ケビンはティナたちに今日の注意点を話すことにした。
「ちょっと聞いて欲しいんだけど」
「改まってどうしたの?」
最近はダンジョン攻略もあってか、珍しく朝起きるようになっていたティナがケビンに聞き返し、他の者たちはケビンに注目した。
「恐らく、今日中には40階層まで突破できると思う」
「今のペースならそうね」
「とりあえず40階層のボスを倒したら、ボス部屋に細工をしてた奴らと鉢合わせになるかもしれないから、そこから先は注意して進んで行こう」
「あぁ……あの嫌らしい細工ね」
「了解」
「わかりました」
ケビンは話が済むと、準備の終わったティナたちを引き連れて、ダンジョンへと向かう。
30階層への転移陣から、ダンジョンの中へと入ってきたケビンたちは、攻略が終わってた35階層までサクサクと進んでいく。
36階層からマッピングをしながら敵を倒していると、ティナが思い出したかのようにケビンに尋ねた。
「ケビン君、そろそろ素材とか売りに行かなくていいの? 大分溜まってるはずよね?」
「そう言えばそうだね。お金に余裕があったから全然考えてなかったよ」
「億万長者だものねぇ」
「大富豪」
「ケビン様は凄いです!」
「今日あたり売りに行こうか? ギルド側もちょくちょく売りに来て欲しいって言ってたし」
「そうね」
他愛のない話をしながらも攻略を進めていくと、36階層が終わり37階層へと下りて行った。
そのままのペースを維持しつつ、午前中のうちにボス部屋に到着すると、扉前の広いスペースで少し早めの昼休憩をとることにした。
「ルル、食事の準備をお願い」
「わかりました」
「ケビン君、結界張っておく?」
「拓けてるし、見晴らしがいいから大丈夫だよ」
ケビンとニーナでシート代わりの毛布を敷くと、その上でくつろぎながらルルの調理を待った。
やがて、料理が出来上がり並べられていくと、楽しく会話しながら食事を摂り、ルルの腕前に舌鼓を打つ。
「今回のボスって、どんなのかしら?」
「ヘビとクモが多かったから、それ系統じゃない?」
「気色悪い」
「でも、たまにトロールとかもいたわよね?」
「そうなると、Bランク級ってところかな?」
「トロールだらけだったら、私たちには無理ね。火力が足りないわ」
「ヘビとクモだらけでも無理でしょ? 想像しただけで気色悪いよ?」
「場合によっては、30階層みたいにケビン君が倒してね」
「りょーかい」
そんな会話をしつつ休憩も一段落すると、ボス部屋の中へと入って行った。中に入ると待ち構えていたのは、大きく予想を外れた騎士のような出で立ちをした3体の魔物だった。
「あれって何? 見た感じ中身のない鎧だけど」
「リビングアーマーよ」
「邪魔な魔物はいないね。それだけあれが強いってこと?」
「そうね。1体だけならまだしも3体いるから、私たちじゃ手に負えないわ。前衛職が足りないわね」
「そっか……じゃあ、1体倒しておくから、残り2体は頑張ってみて」
「ケビン君ってスパルタよね」
「1体だけならタコ殴りにして終わりだろ? だから、練度を上げるためにも2体残すんだよ。そうでないと訓練にならないし」
「わかったわ。なんとか頑張ってみる」
「それじゃあ、1体は早々に退場してもらおう。《ホーリーランス》」
ケビンが魔法を唱えると無数の光属性の槍が頭上に現れて、リビングアーマーへと殺到した。
リビングアーマーは反応する間もなく、無数の槍に撃ち抜かれて地面へと磔にされると、光の粒子となり消えていく。
「相変わらずね。ルルは近接で翻弄、ニーナは手数の多い魔法で攻撃、私は弓で動きを封じつつ魔法を放つわ!」
ティナはケビンの出鱈目な強さに呆れつつも、それぞれに指示を出して戦闘を開始する。
ルルが速攻を仕掛けて投げナイフを飛ばすと、それを追いかけるように敵に詰め寄って袈裟斬りにするが、リビングアーマーは投げナイフを脅威とみなさず、ルルの袈裟斬りを自身の剣で受け止める。
鍔迫り合いとなったところに、もう1体のリビングアーマーが背後から襲いかかるが、危なげなく躱して一旦距離を取ると、ニーナからの攻撃魔法が纏まっていた2体のリビングアーマーに襲いかかる。
「――《ファイアアロー》」
降り注ぐ火矢をリビングアーマーは防御もせずに、そのまま受け止めて全身を撃たれるが、魔法防御力が高いのかさほども痛痒に感じていなさそうである。
それでも、その場に釘付けにすることには成功しており、リビングアーマーの晒した隙を今度はティナが責め立てる。
「――《ホーリーアロー》」
再び降り注ぐ魔法の矢に先程とは打って変わって、今度は盾による防御の姿勢を見せた。
「……?」
聖矢が降り注いだあとに、ルルがリビングアーマーの隙を狙い、背後から襲いかかる。
「ニーナ! 試したいことがあるから、次は違う属性で撃ってみて!」
「了解」
ルルの斬撃は初動の遅れたリビングアーマーの背中に入り、斬りつけることに成功したが、元より鎧に対して斬りつけているだけなので、大したダメージには至らなかった。
「――《ウォーターアロー》」
ルルが退避した後に、素早く詠唱を済ませたニーナの魔法がリビングアーマーに突き刺さるが、やはり大して気にもとめず苛立ちからか剣を振るい、魔法の矢を撃ち落としていた。
「――《ウインドアロー》」
遅ればせながらティナの詠唱も終わり、アロー系2連続による間断のない攻撃が繰り広げられる。
ニーナの時と同様に、リビングアーマーは剣を振るい僅かでも矢を撃ち消していくと、ティナは何かに気づいたのか再びニーナに指示を出す。
「もしかして……!? ニーナ、ラスト1回!」
「? ……わかった」
ニーナが詠唱に入ると、ルルがその隙にリビングアーマーへと襲いかかる。リビングアーマーをその場に釘付けにするヒット・アンド・アウェイが驚くほどにハマっていた。
リビングアーマーも周りをチョロチョロとされる苛立ちからか、剣も大振りになっていき、相対しているルルは更に避けやすくなって敵を翻弄するのであった。
「――《ロックアロー》」
3度目となるニーナの魔法は、リビングアーマーたちを再び襲うが、速度にも慣れてしまったせいか、被弾する回数は減り剣を振るって撃ち消していく。
「――《ホーリーアロー》」
リビングアーマーが全て撃ち落としきる前に、ティナの魔法が続いて炸裂する。今まで魔法を撃ち消していたリビングアーマーが、咄嗟に盾を構えて防御に回った。
「やっぱり!」
「どういうこと?」
「他の属性は剣とかで打ち払うのに、何故か光属性だけは盾で防御するのよ。きっと弱点なんだわ!」
「私は使えないけど」
「ニーナは盾を集中的に狙って攻撃して。ルルは出来たらでいいけど、盾を吹き飛ばして防御で使えないようにして。私は隙を見て光属性の魔法を撃ち込むから」
ティナの機転でリビングアーマーの弱点が浮き彫りになると、作戦通りにそれぞれ与えられた役割を果たすため行動に移した。
ニーナは指示通りに盾を狙って集中的に攻撃を加え、ルルは魔法の合間合間で盾を飛ばそうと躍起になる。
ティナは戦況を見守りつつ矢を放ちながら、リビングアーマーの機先を制してルルへの不意打ちを防いでいた。
しばらく膠着状態が続き、ティナたちが疲弊の色を隠せなくなり始めた頃、ようやくその時が訪れた。
リビングアーマーの2体の内、1体の盾がニーナの魔法により破壊されたのだ。
「――《ホーリーランス》」
盾で防御することの出来なくなったリビングアーマーは、ティナの魔法を直接その身に受けて倒れることとなった。
「はぁ……はぁ……みんなあと少しよ、頑張って堪えるわよ!」
「はぁ……はぁ……わかってる。ここまできたら、負けるわけにはいかない」
「はぁ……はぁ……頑張って倒しましょう」
ティナたちは額から流れる汗を拭いながら、残り1体となったリビングアーマーに視線を移して攻撃を再開した。
しかし、やっと終わりが見えてきたことで、気が緩んでしまい集中が切れたのか、ルルがいつもなら見せない凡ミスを犯してしまう。
リビングアーマーの攻撃を躱して離脱するはずが、そのままその場に留まり攻撃を繰り出してしまった。
当然その攻撃は盾で防がれてしまい、己の仕出かした過ちに気づいたルルは目を見開くが、そんな隙を晒したルルにリビングアーマーの一撃が差し迫っていた。
ルルは咄嗟に体と差し迫る剣の間に盾を割り込ませることができたが、無理な体勢と疲弊も相まって、踏ん張ることが出来ないどころか体重が軽いことも重なり、そのまま吹き飛ばされてしまう。
「「ルルっ!!」」
吹き飛ばされたルルは、地面を跳ねて転がり続けて壁にぶつかることでようやくその動きを止める。
「……がはっ……」
呻き声を上げたルルに、ティナたちが注視していたことで生まれた隙を、リビングアーマーは見逃さなかった。
リビングアーマーにとって1番厄介であるティナに狙いを定めると、一気に間合いを詰めて、ルルを吹き飛ばしたその剣で今度はティナへと斬りかかった。
「ッ!」
ティナは迫り来る斬撃を、無様に転がりながら躱して窮地を脱するが、敵の攻撃が1回で終わりとは限らない。
追撃をかけるために、リビングアーマーの斬撃が再度ティナに襲いかかる。
「ティナっ!!」
ニーナはティナに敵の攻撃がまだ終わっていないことを告げるため、名前を叫び注意を促すが、ティナは未だ地面に手をついて横たわっており、誰がどう見ても絶体絶命のピンチである。
「――ッ!」
ハッとしたティナは目の前に差し迫った剣を視界に収めると、自分の死を悟ったかのように目を瞑ってしまった。
――キンッ……
静寂に包まれる中、鳴り響いた金属音を耳にしながら、未だ自身の体に痛みが襲ってこないことを怪訝に思ったティナは、瞑っていた目をそっと開けると、目の前には刀でリビングアーマーの斬撃を止めている、ケビンの姿があった。
「……ケビン君?」
ケビンがリビングアーマーの土手っ腹に蹴りを入れると、その蹴りを受けたリビングアーマーは、勢いの衰えることなくそのまま離れた壁へと激突した。
「《ホーリーランス》」
ケビンの発動した魔法が、リビングアーマーへ無数に襲いかかり蜂の巣状態にすると、あっという間に終わらせてしまい、そのままルルの傍まで歩み寄ると抱き起こしてから回復魔法を唱えた。
「《ヒール》」
「……ぅ……ん……」
そのままルルを抱き上げてティナの方へと戻ってくると、ティナはおもむろにケビンへと謝罪をした。
「……ごめんなさい」
「とりあえず今は休もう」
こうして40階層の攻略は、何とも歯切れの悪い終わり方で幕を引くのだった。
「ちょっと聞いて欲しいんだけど」
「改まってどうしたの?」
最近はダンジョン攻略もあってか、珍しく朝起きるようになっていたティナがケビンに聞き返し、他の者たちはケビンに注目した。
「恐らく、今日中には40階層まで突破できると思う」
「今のペースならそうね」
「とりあえず40階層のボスを倒したら、ボス部屋に細工をしてた奴らと鉢合わせになるかもしれないから、そこから先は注意して進んで行こう」
「あぁ……あの嫌らしい細工ね」
「了解」
「わかりました」
ケビンは話が済むと、準備の終わったティナたちを引き連れて、ダンジョンへと向かう。
30階層への転移陣から、ダンジョンの中へと入ってきたケビンたちは、攻略が終わってた35階層までサクサクと進んでいく。
36階層からマッピングをしながら敵を倒していると、ティナが思い出したかのようにケビンに尋ねた。
「ケビン君、そろそろ素材とか売りに行かなくていいの? 大分溜まってるはずよね?」
「そう言えばそうだね。お金に余裕があったから全然考えてなかったよ」
「億万長者だものねぇ」
「大富豪」
「ケビン様は凄いです!」
「今日あたり売りに行こうか? ギルド側もちょくちょく売りに来て欲しいって言ってたし」
「そうね」
他愛のない話をしながらも攻略を進めていくと、36階層が終わり37階層へと下りて行った。
そのままのペースを維持しつつ、午前中のうちにボス部屋に到着すると、扉前の広いスペースで少し早めの昼休憩をとることにした。
「ルル、食事の準備をお願い」
「わかりました」
「ケビン君、結界張っておく?」
「拓けてるし、見晴らしがいいから大丈夫だよ」
ケビンとニーナでシート代わりの毛布を敷くと、その上でくつろぎながらルルの調理を待った。
やがて、料理が出来上がり並べられていくと、楽しく会話しながら食事を摂り、ルルの腕前に舌鼓を打つ。
「今回のボスって、どんなのかしら?」
「ヘビとクモが多かったから、それ系統じゃない?」
「気色悪い」
「でも、たまにトロールとかもいたわよね?」
「そうなると、Bランク級ってところかな?」
「トロールだらけだったら、私たちには無理ね。火力が足りないわ」
「ヘビとクモだらけでも無理でしょ? 想像しただけで気色悪いよ?」
「場合によっては、30階層みたいにケビン君が倒してね」
「りょーかい」
そんな会話をしつつ休憩も一段落すると、ボス部屋の中へと入って行った。中に入ると待ち構えていたのは、大きく予想を外れた騎士のような出で立ちをした3体の魔物だった。
「あれって何? 見た感じ中身のない鎧だけど」
「リビングアーマーよ」
「邪魔な魔物はいないね。それだけあれが強いってこと?」
「そうね。1体だけならまだしも3体いるから、私たちじゃ手に負えないわ。前衛職が足りないわね」
「そっか……じゃあ、1体倒しておくから、残り2体は頑張ってみて」
「ケビン君ってスパルタよね」
「1体だけならタコ殴りにして終わりだろ? だから、練度を上げるためにも2体残すんだよ。そうでないと訓練にならないし」
「わかったわ。なんとか頑張ってみる」
「それじゃあ、1体は早々に退場してもらおう。《ホーリーランス》」
ケビンが魔法を唱えると無数の光属性の槍が頭上に現れて、リビングアーマーへと殺到した。
リビングアーマーは反応する間もなく、無数の槍に撃ち抜かれて地面へと磔にされると、光の粒子となり消えていく。
「相変わらずね。ルルは近接で翻弄、ニーナは手数の多い魔法で攻撃、私は弓で動きを封じつつ魔法を放つわ!」
ティナはケビンの出鱈目な強さに呆れつつも、それぞれに指示を出して戦闘を開始する。
ルルが速攻を仕掛けて投げナイフを飛ばすと、それを追いかけるように敵に詰め寄って袈裟斬りにするが、リビングアーマーは投げナイフを脅威とみなさず、ルルの袈裟斬りを自身の剣で受け止める。
鍔迫り合いとなったところに、もう1体のリビングアーマーが背後から襲いかかるが、危なげなく躱して一旦距離を取ると、ニーナからの攻撃魔法が纏まっていた2体のリビングアーマーに襲いかかる。
「――《ファイアアロー》」
降り注ぐ火矢をリビングアーマーは防御もせずに、そのまま受け止めて全身を撃たれるが、魔法防御力が高いのかさほども痛痒に感じていなさそうである。
それでも、その場に釘付けにすることには成功しており、リビングアーマーの晒した隙を今度はティナが責め立てる。
「――《ホーリーアロー》」
再び降り注ぐ魔法の矢に先程とは打って変わって、今度は盾による防御の姿勢を見せた。
「……?」
聖矢が降り注いだあとに、ルルがリビングアーマーの隙を狙い、背後から襲いかかる。
「ニーナ! 試したいことがあるから、次は違う属性で撃ってみて!」
「了解」
ルルの斬撃は初動の遅れたリビングアーマーの背中に入り、斬りつけることに成功したが、元より鎧に対して斬りつけているだけなので、大したダメージには至らなかった。
「――《ウォーターアロー》」
ルルが退避した後に、素早く詠唱を済ませたニーナの魔法がリビングアーマーに突き刺さるが、やはり大して気にもとめず苛立ちからか剣を振るい、魔法の矢を撃ち落としていた。
「――《ウインドアロー》」
遅ればせながらティナの詠唱も終わり、アロー系2連続による間断のない攻撃が繰り広げられる。
ニーナの時と同様に、リビングアーマーは剣を振るい僅かでも矢を撃ち消していくと、ティナは何かに気づいたのか再びニーナに指示を出す。
「もしかして……!? ニーナ、ラスト1回!」
「? ……わかった」
ニーナが詠唱に入ると、ルルがその隙にリビングアーマーへと襲いかかる。リビングアーマーをその場に釘付けにするヒット・アンド・アウェイが驚くほどにハマっていた。
リビングアーマーも周りをチョロチョロとされる苛立ちからか、剣も大振りになっていき、相対しているルルは更に避けやすくなって敵を翻弄するのであった。
「――《ロックアロー》」
3度目となるニーナの魔法は、リビングアーマーたちを再び襲うが、速度にも慣れてしまったせいか、被弾する回数は減り剣を振るって撃ち消していく。
「――《ホーリーアロー》」
リビングアーマーが全て撃ち落としきる前に、ティナの魔法が続いて炸裂する。今まで魔法を撃ち消していたリビングアーマーが、咄嗟に盾を構えて防御に回った。
「やっぱり!」
「どういうこと?」
「他の属性は剣とかで打ち払うのに、何故か光属性だけは盾で防御するのよ。きっと弱点なんだわ!」
「私は使えないけど」
「ニーナは盾を集中的に狙って攻撃して。ルルは出来たらでいいけど、盾を吹き飛ばして防御で使えないようにして。私は隙を見て光属性の魔法を撃ち込むから」
ティナの機転でリビングアーマーの弱点が浮き彫りになると、作戦通りにそれぞれ与えられた役割を果たすため行動に移した。
ニーナは指示通りに盾を狙って集中的に攻撃を加え、ルルは魔法の合間合間で盾を飛ばそうと躍起になる。
ティナは戦況を見守りつつ矢を放ちながら、リビングアーマーの機先を制してルルへの不意打ちを防いでいた。
しばらく膠着状態が続き、ティナたちが疲弊の色を隠せなくなり始めた頃、ようやくその時が訪れた。
リビングアーマーの2体の内、1体の盾がニーナの魔法により破壊されたのだ。
「――《ホーリーランス》」
盾で防御することの出来なくなったリビングアーマーは、ティナの魔法を直接その身に受けて倒れることとなった。
「はぁ……はぁ……みんなあと少しよ、頑張って堪えるわよ!」
「はぁ……はぁ……わかってる。ここまできたら、負けるわけにはいかない」
「はぁ……はぁ……頑張って倒しましょう」
ティナたちは額から流れる汗を拭いながら、残り1体となったリビングアーマーに視線を移して攻撃を再開した。
しかし、やっと終わりが見えてきたことで、気が緩んでしまい集中が切れたのか、ルルがいつもなら見せない凡ミスを犯してしまう。
リビングアーマーの攻撃を躱して離脱するはずが、そのままその場に留まり攻撃を繰り出してしまった。
当然その攻撃は盾で防がれてしまい、己の仕出かした過ちに気づいたルルは目を見開くが、そんな隙を晒したルルにリビングアーマーの一撃が差し迫っていた。
ルルは咄嗟に体と差し迫る剣の間に盾を割り込ませることができたが、無理な体勢と疲弊も相まって、踏ん張ることが出来ないどころか体重が軽いことも重なり、そのまま吹き飛ばされてしまう。
「「ルルっ!!」」
吹き飛ばされたルルは、地面を跳ねて転がり続けて壁にぶつかることでようやくその動きを止める。
「……がはっ……」
呻き声を上げたルルに、ティナたちが注視していたことで生まれた隙を、リビングアーマーは見逃さなかった。
リビングアーマーにとって1番厄介であるティナに狙いを定めると、一気に間合いを詰めて、ルルを吹き飛ばしたその剣で今度はティナへと斬りかかった。
「ッ!」
ティナは迫り来る斬撃を、無様に転がりながら躱して窮地を脱するが、敵の攻撃が1回で終わりとは限らない。
追撃をかけるために、リビングアーマーの斬撃が再度ティナに襲いかかる。
「ティナっ!!」
ニーナはティナに敵の攻撃がまだ終わっていないことを告げるため、名前を叫び注意を促すが、ティナは未だ地面に手をついて横たわっており、誰がどう見ても絶体絶命のピンチである。
「――ッ!」
ハッとしたティナは目の前に差し迫った剣を視界に収めると、自分の死を悟ったかのように目を瞑ってしまった。
――キンッ……
静寂に包まれる中、鳴り響いた金属音を耳にしながら、未だ自身の体に痛みが襲ってこないことを怪訝に思ったティナは、瞑っていた目をそっと開けると、目の前には刀でリビングアーマーの斬撃を止めている、ケビンの姿があった。
「……ケビン君?」
ケビンがリビングアーマーの土手っ腹に蹴りを入れると、その蹴りを受けたリビングアーマーは、勢いの衰えることなくそのまま離れた壁へと激突した。
「《ホーリーランス》」
ケビンの発動した魔法が、リビングアーマーへ無数に襲いかかり蜂の巣状態にすると、あっという間に終わらせてしまい、そのままルルの傍まで歩み寄ると抱き起こしてから回復魔法を唱えた。
「《ヒール》」
「……ぅ……ん……」
そのままルルを抱き上げてティナの方へと戻ってくると、ティナはおもむろにケビンへと謝罪をした。
「……ごめんなさい」
「とりあえず今は休もう」
こうして40階層の攻略は、何とも歯切れの悪い終わり方で幕を引くのだった。
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