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第7章 ダンジョン都市
第177話 ○人揃って、コンシェルジャー ~第壱話 酒は飲んでも飲まれるな!~
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ケビンがリビングでくつろいでいると、ティナたちは着替えを終えてケビン同様にソファに腰掛けた。
「あぁぁ……今から祝勝会のパーティー開くけど、参加する元気がなかったら、部屋で休んでていいからね」
「そうなの? マヒナさんはもう帰ったの?」
「いや、部屋着に着替えてまた来るよ。パーティーに誘ったから。あと、成り行きで、他のコンシェルジュたちも同じように来るから」
「へぇー相変わらず手が早いのね」
「謂れのない非難だね」
「無自覚」
「ニーナさんまで……不満なの?」
「最近、あまり構ってくれない」
「ダンジョン攻略が忙しかったからね。こっちにおいで」
ニーナを手招きすると、自分の隣に座らせて横になるように促した。ニーナの頭は、ケビンの太ももの上に来てケビンは上から覗き込む。
「男版膝枕だよ。堪能してね」
「うん」
「ちょっと! ニーナばかりずるいわよ!」
「ティナさんは、次の機会に」
「ぶぅー」
「ケビン君、手……握ってていい?」
「お安い御用だよ」
ケビンはニーナに手を差し出すと、ニーナはその手を大事そうに握るのであった。
「何だか恋人同士みたいね、妬けてくるわ」
「ティナさんだって、カジノでいい思いしたでしょ?」
ティナはカジノでのことを思い出したのか、頬を赤らめて俯いた。そんな時に、部屋をノックする音がした。
「開いてるから入っていいよ」
中へ入ってきたのは、部屋着に着替えたマヒナである。仕事着のタイトスーツとは打って変わって、大きめのゆったりとした服を着こなしており、そのギャップがまたそそられる要因となっていた。
「その姿も素敵だね。堅い感じから真逆の、柔らかなお姉さんって感じになってる」
「あ、ありがとうございます」
マヒナは頬を赤らめつつルルの隣へと座ると、ケビンに膝枕をしてもらっているニーナへと視線が向かう。
「マヒナさんも興味があるの?」
「い、いえ、不躾な視線を向けて申し訳ありません」
「別にいいよ。してみたいなら、後でしてあげるから」
「ほ、本当ですか!?」
ガタッと、前のめりになってケビンに聞き返すマヒナに、ティナがすかさずケビンに文句を言った。
「ケビン君、次は私じゃないの?」
「ティナさんは何時でも出来るでしょ? マヒナさんは何時でもできないからその差だよ」
「もう! 絶対私にもしてよね!」
「ケビン君、代わる?」
「ニーナさんは、満足出来たの?」
「また今度してもらう」
ニーナは、立ち上がるとティナの隣へと座りにいき、ケビンは、膝が空いたので、マヒナに向かって手招きをする。
「マヒナさん、ここに来て」
マヒナはおずおずと近寄っていき、ケビンの隣へと腰を下ろした。ケビンが優しく肩を掴むと、そのまま横になるように促す。
「どうかな?」
「はい……幸せです。あの……私も手を握っても、宜しいでしょうか?」
「いいよ、はいどうぞ」
ケビンが手を差し出すと、マヒナはそれを恐る恐る握って、自分の胸のところで大事に抱え込んだ。
「あの、マヒナさん? 胸に当たってるよ?」
「構いません。今はこのままでお願いします」
マヒナが下にいることにより、うるうるした瞳で見上げられるケビンは、ギャップが凄すぎて女性の怖さを知るのであった。
そのまま見ていたら、どうにかなりそうだったケビンは、視線を外しマヒナの頭を優しく撫でながら、心を落ち着かせていた。
マヒナはそんなケビンの行動に、今までにないくらいの幸せを感じており、より一層握っている手を抱きしめるのであった。
「なんだか、マヒナさんとも恋人同士みたいね」
「ケビン君だから仕方ない」
「ケビン様は、女性にお優しいですから」
しばらくそうしていると、再びドアをノックする音が聞こえてきた。
「開いてるから入っていいよ」
いつものマヒナならすぐさま姿勢を正すのだが、今現在、極上の幸せを感じており行動に移すのが遅れてしまい、あらぬ姿を同僚に見られてしまうことになってしまった。
「……」×コンシェルジュたち
ゾロゾロと部屋の中に入ってきたのは、マヒナの同僚である、ケビン専属のコンシェルジュたちだった。
許可を得て部屋に入ったものの、ソファの上では同僚が今まで見たことのない顔つきで幸せそうに、頬を緩めて膝枕をされているのだ。
「マヒナ、ずるい!」×コンシェルジュたち
いきなり名前を呼ばれてビクッと反応したマヒナは、声のした方へと視線を向けると、同僚たちが全員自分を見ていた。
「あ……」
しばらく呆然としていたマヒナは、自分の置かれている状況が頭の中で蘇ってきて、必死に弁明を始めた。
「こ……これは違うのよ! そ、そう! 体調が悪くて休んでいただけなの!」
下手な言い訳をしつつも未だに膝枕は止めず、手も握りしめて抱き寄せていたままのマヒナに、ケビンは苦笑いするしかなかった。
「マヒナ……その状況では、説得力がありませんよ?」
コンシェルジュを代表してケイラが声をかけると、マヒナではなくケビンが返答した。
「ケイラさん、倒れたって聞いたけど大丈夫だった?」
「先程のあれは、倒れたのは倒れたのですが、このフォティアに突き飛ばされて倒れたのです」
「……え?」
ケイラが指をさし、ケビンがそれを視線で追うと、フォティアは顔を逸らして両手を頭の後ろで組み、鳴りもしない口笛を吹いて誤魔化すのであった。
「ヒューヒュー……」
「貴女が……フォティアさん?」
ケビンが声をかけたのは、赤髪のショートヘアで茶色の瞳が特徴の女性だった。その風貌と先程の応答から察するに、元気いっぱいのお調子者なのだろう。
「そこの問題児が、フォティアで間違いありません」
「そうなんだ……ケイラさんも大変だね」
「わかってくれますか! この子にはいっつも手を焼かされてしまい、大変なんですよ!!」
「猫かぶり……」
「何ですって!!」
フォティアが仕返しにボソッと呟いたことを、ケイラは聞き逃さず凄い剣幕で近寄る。
「まあまあ、2人とも抑えましょうよぉ、ケビン様の前ですよぉ」
そう言ったのは、青色のストレートロングヘアで空色の瞳が特徴的な女性であった。喋り方からしておっとりしたタイプなのであろう。
「とりあえず、ケイラさんが猫かぶりなのは後で追求するとして、みんなの自己紹介をしてもらっていい? 誰が誰だかわからない人もいるし」
「ごほんっ! 後での追求はこの際置いておきましょう。では改めまして、私はコンシェルジュのまとめ役であるケイラと申します」
ケイラは、黄色に近い金髪のセミロングヘアで青色の瞳が特徴的である。
「次はボクだね。明日担当になるフォティアだよ。よろしく!」
(ボクっ娘だと!? 元気いっぱいでお調子者のボクっ娘とか、異世界パねえ!)
「次は私ですねぇ。私はネロって言いますぅ。担当になった時はぁ、よろしくお願いしますねぇ」
(この人はさっき仲裁してた人だな。やっぱりのんびりした喋り方なんだな)
「私はシーロ。よろしく」
シーロはどこかボーッとした感じの女性で、緑色のストレートヘアに金色の瞳が特徴的である。
「私はアウルムよ。そこにいる人と同じでエルフなの。よろしくね」
そう言って投げキッスをしてきたのは、金髪のストレートロングヘアを後ろで束ねており、緑色の瞳が特徴的なエルフであった。
投げキッスをした途端に、ティナから不穏な空気を感じたのは言うまでもない。
「私はラウストです。こう見えても成人してます」
最後は茶髪のショートヘアで茶色の瞳が特徴的な、何故か成人していることをアピールする低身長の童顔娘だった。
「以上で、コンシェルジュの紹介を終わります。今後ともよろしくお願いします」
「こちらこそよろしく。もう知ってるかも知れないけど、俺はこの部屋をオーナーから貰ったケビンでAランク冒険者だよ。そっちにいるエルフの女性がティナで、隣にいるのがニーナ。2人とも俺と同じAランク冒険者。そして最後はルル。本来の職務は俺の実家の使用人だけど、今回の旅についてきてくれて、この都市で冒険者登録を済ませた新人冒険者さんだ」
ケビン側の自己紹介も終わり、それぞれがよろしくと一言添えてお辞儀をすると、ケイラが空気と化しているマヒナにツッコんだ。
「マヒナ! いつまでそうしているのよ。いい加減退かないとケビン様に失礼でしょ」
「俺がこうさせたから、マヒナさんは悪くないよ」
「にゅふぅー……」
マヒナが反応していたのは最初の言い訳までで、自分への矛先が別の人へと変わったところで、今までの一連のやり取りもお構いなしにしっかりと膝枕を堪能していた。
もう既に他の人の方に体は向いておらず、ケビンの方へ体の向きを変えていて、ケビンはケビンでマヒナの変わりようが面白くて放置していたのだ。
「さて、軽食でも頼んでパーティーを始めようか? マヒナさん、ちょっと動くからどいてくれる?」
「……わかりました」
ケビンはソファから立ち上がると魔導通信機を使い、軽食類を持ってきてもらうように頼んだ。その際に、ティナからの要望でお酒類もついでに頼むことになった。
さすがに人数が多くてソファには全員座れないので、絨毯の上に直接座ることにして、テーブルとソファを【無限収納】に一旦回収すると、目の前でテーブルとソファがいきなり消えたことに、コンシェルジュたちは驚いていたが、【アイテムボックス】だと伝えると落ち着きを取り戻していた。
全員が思い思いの場所に座りこみリラックスしていると、ようやく食事が届いたのでパーティーを始めることとなり、ケビン以外の者たちにお酒が配られていった。
最初は和やかに進んだパーティーも、ケビン以外が酒を飲んでいることで、いつしか飲めや歌えやの大宴会になり、収拾がつかなくなってきていた。
「ケビン君はぁ、私のことをもっと構うべきだと思いまーす」
完全に酔っぱらいと化しているティナが、ケビンに対し愚痴をこぼし始めると、次々に絡み始める女たちでこの場は埋め尽くされる。
「お姉ちゃんもぉ、もっと構って欲しいなぁー」
「ケビン様はぁ、お優しいんです」
ニーナやルルまでもが好き勝手に騒ぎ始め、コンシェルジュたちも後に続くように騒ぎ始めた。
「ケビン様ぁ、マヒナはぁケビン様のことがぁ、だーい好きです! それでぇ――」
「ケビン様ぁ、初めて会ったときぃ、もうちょっと優しくしてくれてもぉ、良かったと思うのぉ。走って駆けつけたんだよぉ」
マヒナの大告白が始まったかと思いきや、ケイラの初日にあった出来事の愚痴がそれを遮り被さってくる。
「ケビン様ぁ、明日はぁボクがお世話するねぇ」
「ケビンくぅん、お姉さんに甘えてもいいんだよぉ」
フォティアは普通に明日のことを話し、ネロは元々の喋り方から大して変わっていなかった。
「……ヒック……」
「ケビンくぅん、お姉さんと気持ちいいことしようよぉ」
「私はぁ、子供じゃないんです! わかってますかぁ?」
シーロは無言になり、アウルムは誘惑してきて、ラウストは日頃子供扱いを受けている鬱憤が溜まっているようであった。
「はぁぁ……そろそろお開きにするか……」
女性陣が騒ぎ出してから、とうとう日付が変わってしまったので、ケビンは1人でパーティーの後片付けを淡々としながら、みんなの相手を適度にしていた。
「そろそろお開きにして寝るよー。ケイラさんたちは部屋に帰れる?」
「むりぃ、泊めてぇ」
「はぁぁ……」
「ティナさんたちはベッドまで歩ける?」
「抱っこではこんでぇ」
「お姉ちゃんも抱っこぉ」
「ケビン様ぁ、お優しく抱っこしてくらさぁい」
「こっちもか……」
「ずるいぃ、マヒナも抱っこがいぃ」
「私もぉ」
「みんなで抱っこしてもらおー」
「さんせー」
ティナが抱っこを要望したせいか、他の者たちまでそれに相乗りしてきて、ケビンは仕方なく抱っこしてベッドまで運ぶことにした。
リビングにてみんなが散らかしたものを、1人で黙々と綺麗に片付けていくケビン。テーブルとソファを再び配置すると、ソファにドスンっと腰を下ろした。
「だあー疲れたぁ! 酔っぱらいはスゲーな」
ケビンはジュースをコップに注ぎ込み、一気に飲み干す。
「ぷはぁ……生き返るー。さて、片付けも終わったし寝るか」
ケビンが寝室に行くと今まで頑張って運んでいた女性たちが、先にグースカと寝ていた。
「このままだと風邪引くかな?」
ケビンは魔法を掛け合わせて温風を作り上げると、とりあえず解除するまでは効果が続くようにして、ベッドに横になり検証を始める。
「……」
魔力の消費よりも回復量が勝っていることを確認したら、そのまま寝ることにした。
こうして祝勝会とは名ばかりの、女性たちによる酒乱の宴は幕を下ろしたのだった。
「あぁぁ……今から祝勝会のパーティー開くけど、参加する元気がなかったら、部屋で休んでていいからね」
「そうなの? マヒナさんはもう帰ったの?」
「いや、部屋着に着替えてまた来るよ。パーティーに誘ったから。あと、成り行きで、他のコンシェルジュたちも同じように来るから」
「へぇー相変わらず手が早いのね」
「謂れのない非難だね」
「無自覚」
「ニーナさんまで……不満なの?」
「最近、あまり構ってくれない」
「ダンジョン攻略が忙しかったからね。こっちにおいで」
ニーナを手招きすると、自分の隣に座らせて横になるように促した。ニーナの頭は、ケビンの太ももの上に来てケビンは上から覗き込む。
「男版膝枕だよ。堪能してね」
「うん」
「ちょっと! ニーナばかりずるいわよ!」
「ティナさんは、次の機会に」
「ぶぅー」
「ケビン君、手……握ってていい?」
「お安い御用だよ」
ケビンはニーナに手を差し出すと、ニーナはその手を大事そうに握るのであった。
「何だか恋人同士みたいね、妬けてくるわ」
「ティナさんだって、カジノでいい思いしたでしょ?」
ティナはカジノでのことを思い出したのか、頬を赤らめて俯いた。そんな時に、部屋をノックする音がした。
「開いてるから入っていいよ」
中へ入ってきたのは、部屋着に着替えたマヒナである。仕事着のタイトスーツとは打って変わって、大きめのゆったりとした服を着こなしており、そのギャップがまたそそられる要因となっていた。
「その姿も素敵だね。堅い感じから真逆の、柔らかなお姉さんって感じになってる」
「あ、ありがとうございます」
マヒナは頬を赤らめつつルルの隣へと座ると、ケビンに膝枕をしてもらっているニーナへと視線が向かう。
「マヒナさんも興味があるの?」
「い、いえ、不躾な視線を向けて申し訳ありません」
「別にいいよ。してみたいなら、後でしてあげるから」
「ほ、本当ですか!?」
ガタッと、前のめりになってケビンに聞き返すマヒナに、ティナがすかさずケビンに文句を言った。
「ケビン君、次は私じゃないの?」
「ティナさんは何時でも出来るでしょ? マヒナさんは何時でもできないからその差だよ」
「もう! 絶対私にもしてよね!」
「ケビン君、代わる?」
「ニーナさんは、満足出来たの?」
「また今度してもらう」
ニーナは、立ち上がるとティナの隣へと座りにいき、ケビンは、膝が空いたので、マヒナに向かって手招きをする。
「マヒナさん、ここに来て」
マヒナはおずおずと近寄っていき、ケビンの隣へと腰を下ろした。ケビンが優しく肩を掴むと、そのまま横になるように促す。
「どうかな?」
「はい……幸せです。あの……私も手を握っても、宜しいでしょうか?」
「いいよ、はいどうぞ」
ケビンが手を差し出すと、マヒナはそれを恐る恐る握って、自分の胸のところで大事に抱え込んだ。
「あの、マヒナさん? 胸に当たってるよ?」
「構いません。今はこのままでお願いします」
マヒナが下にいることにより、うるうるした瞳で見上げられるケビンは、ギャップが凄すぎて女性の怖さを知るのであった。
そのまま見ていたら、どうにかなりそうだったケビンは、視線を外しマヒナの頭を優しく撫でながら、心を落ち着かせていた。
マヒナはそんなケビンの行動に、今までにないくらいの幸せを感じており、より一層握っている手を抱きしめるのであった。
「なんだか、マヒナさんとも恋人同士みたいね」
「ケビン君だから仕方ない」
「ケビン様は、女性にお優しいですから」
しばらくそうしていると、再びドアをノックする音が聞こえてきた。
「開いてるから入っていいよ」
いつものマヒナならすぐさま姿勢を正すのだが、今現在、極上の幸せを感じており行動に移すのが遅れてしまい、あらぬ姿を同僚に見られてしまうことになってしまった。
「……」×コンシェルジュたち
ゾロゾロと部屋の中に入ってきたのは、マヒナの同僚である、ケビン専属のコンシェルジュたちだった。
許可を得て部屋に入ったものの、ソファの上では同僚が今まで見たことのない顔つきで幸せそうに、頬を緩めて膝枕をされているのだ。
「マヒナ、ずるい!」×コンシェルジュたち
いきなり名前を呼ばれてビクッと反応したマヒナは、声のした方へと視線を向けると、同僚たちが全員自分を見ていた。
「あ……」
しばらく呆然としていたマヒナは、自分の置かれている状況が頭の中で蘇ってきて、必死に弁明を始めた。
「こ……これは違うのよ! そ、そう! 体調が悪くて休んでいただけなの!」
下手な言い訳をしつつも未だに膝枕は止めず、手も握りしめて抱き寄せていたままのマヒナに、ケビンは苦笑いするしかなかった。
「マヒナ……その状況では、説得力がありませんよ?」
コンシェルジュを代表してケイラが声をかけると、マヒナではなくケビンが返答した。
「ケイラさん、倒れたって聞いたけど大丈夫だった?」
「先程のあれは、倒れたのは倒れたのですが、このフォティアに突き飛ばされて倒れたのです」
「……え?」
ケイラが指をさし、ケビンがそれを視線で追うと、フォティアは顔を逸らして両手を頭の後ろで組み、鳴りもしない口笛を吹いて誤魔化すのであった。
「ヒューヒュー……」
「貴女が……フォティアさん?」
ケビンが声をかけたのは、赤髪のショートヘアで茶色の瞳が特徴の女性だった。その風貌と先程の応答から察するに、元気いっぱいのお調子者なのだろう。
「そこの問題児が、フォティアで間違いありません」
「そうなんだ……ケイラさんも大変だね」
「わかってくれますか! この子にはいっつも手を焼かされてしまい、大変なんですよ!!」
「猫かぶり……」
「何ですって!!」
フォティアが仕返しにボソッと呟いたことを、ケイラは聞き逃さず凄い剣幕で近寄る。
「まあまあ、2人とも抑えましょうよぉ、ケビン様の前ですよぉ」
そう言ったのは、青色のストレートロングヘアで空色の瞳が特徴的な女性であった。喋り方からしておっとりしたタイプなのであろう。
「とりあえず、ケイラさんが猫かぶりなのは後で追求するとして、みんなの自己紹介をしてもらっていい? 誰が誰だかわからない人もいるし」
「ごほんっ! 後での追求はこの際置いておきましょう。では改めまして、私はコンシェルジュのまとめ役であるケイラと申します」
ケイラは、黄色に近い金髪のセミロングヘアで青色の瞳が特徴的である。
「次はボクだね。明日担当になるフォティアだよ。よろしく!」
(ボクっ娘だと!? 元気いっぱいでお調子者のボクっ娘とか、異世界パねえ!)
「次は私ですねぇ。私はネロって言いますぅ。担当になった時はぁ、よろしくお願いしますねぇ」
(この人はさっき仲裁してた人だな。やっぱりのんびりした喋り方なんだな)
「私はシーロ。よろしく」
シーロはどこかボーッとした感じの女性で、緑色のストレートヘアに金色の瞳が特徴的である。
「私はアウルムよ。そこにいる人と同じでエルフなの。よろしくね」
そう言って投げキッスをしてきたのは、金髪のストレートロングヘアを後ろで束ねており、緑色の瞳が特徴的なエルフであった。
投げキッスをした途端に、ティナから不穏な空気を感じたのは言うまでもない。
「私はラウストです。こう見えても成人してます」
最後は茶髪のショートヘアで茶色の瞳が特徴的な、何故か成人していることをアピールする低身長の童顔娘だった。
「以上で、コンシェルジュの紹介を終わります。今後ともよろしくお願いします」
「こちらこそよろしく。もう知ってるかも知れないけど、俺はこの部屋をオーナーから貰ったケビンでAランク冒険者だよ。そっちにいるエルフの女性がティナで、隣にいるのがニーナ。2人とも俺と同じAランク冒険者。そして最後はルル。本来の職務は俺の実家の使用人だけど、今回の旅についてきてくれて、この都市で冒険者登録を済ませた新人冒険者さんだ」
ケビン側の自己紹介も終わり、それぞれがよろしくと一言添えてお辞儀をすると、ケイラが空気と化しているマヒナにツッコんだ。
「マヒナ! いつまでそうしているのよ。いい加減退かないとケビン様に失礼でしょ」
「俺がこうさせたから、マヒナさんは悪くないよ」
「にゅふぅー……」
マヒナが反応していたのは最初の言い訳までで、自分への矛先が別の人へと変わったところで、今までの一連のやり取りもお構いなしにしっかりと膝枕を堪能していた。
もう既に他の人の方に体は向いておらず、ケビンの方へ体の向きを変えていて、ケビンはケビンでマヒナの変わりようが面白くて放置していたのだ。
「さて、軽食でも頼んでパーティーを始めようか? マヒナさん、ちょっと動くからどいてくれる?」
「……わかりました」
ケビンはソファから立ち上がると魔導通信機を使い、軽食類を持ってきてもらうように頼んだ。その際に、ティナからの要望でお酒類もついでに頼むことになった。
さすがに人数が多くてソファには全員座れないので、絨毯の上に直接座ることにして、テーブルとソファを【無限収納】に一旦回収すると、目の前でテーブルとソファがいきなり消えたことに、コンシェルジュたちは驚いていたが、【アイテムボックス】だと伝えると落ち着きを取り戻していた。
全員が思い思いの場所に座りこみリラックスしていると、ようやく食事が届いたのでパーティーを始めることとなり、ケビン以外の者たちにお酒が配られていった。
最初は和やかに進んだパーティーも、ケビン以外が酒を飲んでいることで、いつしか飲めや歌えやの大宴会になり、収拾がつかなくなってきていた。
「ケビン君はぁ、私のことをもっと構うべきだと思いまーす」
完全に酔っぱらいと化しているティナが、ケビンに対し愚痴をこぼし始めると、次々に絡み始める女たちでこの場は埋め尽くされる。
「お姉ちゃんもぉ、もっと構って欲しいなぁー」
「ケビン様はぁ、お優しいんです」
ニーナやルルまでもが好き勝手に騒ぎ始め、コンシェルジュたちも後に続くように騒ぎ始めた。
「ケビン様ぁ、マヒナはぁケビン様のことがぁ、だーい好きです! それでぇ――」
「ケビン様ぁ、初めて会ったときぃ、もうちょっと優しくしてくれてもぉ、良かったと思うのぉ。走って駆けつけたんだよぉ」
マヒナの大告白が始まったかと思いきや、ケイラの初日にあった出来事の愚痴がそれを遮り被さってくる。
「ケビン様ぁ、明日はぁボクがお世話するねぇ」
「ケビンくぅん、お姉さんに甘えてもいいんだよぉ」
フォティアは普通に明日のことを話し、ネロは元々の喋り方から大して変わっていなかった。
「……ヒック……」
「ケビンくぅん、お姉さんと気持ちいいことしようよぉ」
「私はぁ、子供じゃないんです! わかってますかぁ?」
シーロは無言になり、アウルムは誘惑してきて、ラウストは日頃子供扱いを受けている鬱憤が溜まっているようであった。
「はぁぁ……そろそろお開きにするか……」
女性陣が騒ぎ出してから、とうとう日付が変わってしまったので、ケビンは1人でパーティーの後片付けを淡々としながら、みんなの相手を適度にしていた。
「そろそろお開きにして寝るよー。ケイラさんたちは部屋に帰れる?」
「むりぃ、泊めてぇ」
「はぁぁ……」
「ティナさんたちはベッドまで歩ける?」
「抱っこではこんでぇ」
「お姉ちゃんも抱っこぉ」
「ケビン様ぁ、お優しく抱っこしてくらさぁい」
「こっちもか……」
「ずるいぃ、マヒナも抱っこがいぃ」
「私もぉ」
「みんなで抱っこしてもらおー」
「さんせー」
ティナが抱っこを要望したせいか、他の者たちまでそれに相乗りしてきて、ケビンは仕方なく抱っこしてベッドまで運ぶことにした。
リビングにてみんなが散らかしたものを、1人で黙々と綺麗に片付けていくケビン。テーブルとソファを再び配置すると、ソファにドスンっと腰を下ろした。
「だあー疲れたぁ! 酔っぱらいはスゲーな」
ケビンはジュースをコップに注ぎ込み、一気に飲み干す。
「ぷはぁ……生き返るー。さて、片付けも終わったし寝るか」
ケビンが寝室に行くと今まで頑張って運んでいた女性たちが、先にグースカと寝ていた。
「このままだと風邪引くかな?」
ケビンは魔法を掛け合わせて温風を作り上げると、とりあえず解除するまでは効果が続くようにして、ベッドに横になり検証を始める。
「……」
魔力の消費よりも回復量が勝っていることを確認したら、そのまま寝ることにした。
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