上 下
165 / 661
第6章 これからの活動に向けて

第161話 報告会

しおりを挟む
――フェブリア学院・応接室

 ここには、ケビンの兄姉とシーラの親友であるターニャが、テーブルを挟んで向かい合い座っていた。

 ケビンに関する新たな情報が入ったために、アインが召集をかけたのだった。

「ケビンのことで、新情報がマイケルから知らされた」

「何か変わったことでもあったのか?」

「かなり滅茶苦茶な内容だから、最後まで落ち着いて聞いてくれ。まず、ケビンが交易都市ソレイユで、ギルドマスターから討伐依頼がかけられた。依頼を受けたのは闇ギルドだ」

「なっ!?」×3

 いきなり突拍子もない話から始まり、アインを除く3人は驚きを隠せないでいた。

「ちょ、ちょっと待てよ!」

「何であの子が、そんな目にあっているのよ!」

「ケビン君は、大丈夫なのですか!?」

 当然、ケビンの兄姉やターニャは落ち着いていられるわけもなく、アインに食ってかかった。

「だから、落ち着いて聞けと言ったよね? 俺だって聞かされた時には、驚いたんだから」

「わ、わりぃ……つい、反応しちまった。兄さんが落ち着いてるってことは、もう問題は解決したってことだろ?」

「その通りだよ。ケビン討伐の話は現地の使用人が伝書鳥を使って、それを受けたカレンから、母さんの耳にも入ったからね」

「そりゃそうか」

「それで、母さんが直接交易都市に乗り込んで、ギルドマスターと受付嬢を処刑寸前まで甚振って、闇ギルドの方は使用人が壊滅させた」

「お母様が動いたのね。当然といえば当然だけど……」

「ちょっと待ってくれ。何で受付嬢が入ってんだ?」

「それは、簡単に説明すると、ことの発端が受付嬢だからだよ。ケビンの強さをギルドカードの討伐履歴で目の当たりにして化け物呼ばわりしたら、一緒にいたパーティーメンバーがその発言に逆上して言い返したんだが、ケビンが事態の収拾のためギルドを立ち去ろうとした時に、ギルドマスターが呼び止めて、ケビンと一悶着があったみたいだ。2人とも裏で悪いことを散々していて、元々繋がりがあったみたいだ」

「あの子を化け物呼ばわりするなんて、許せないわ!」

「よく母さんは殺さずに生かしておいたな。絶対殺すと思うんだけど」

「そのことについて朗報がある。処刑するつもりでやってた母さんを止めたのは、ケビンだ。母さんの姿を見たら、ケビンの記憶が一部戻ったらしい。それで、ギルドマスターと受付嬢は殺されずに生かされたわけだ」

「ケビンの記憶が戻ったのか!?」

「それでも、ギルドマスターたちは処刑されずに、今ものうのうと生きてるんでしょ?」

 シーラは、結果的にケビンの記憶が戻ったとしても、ギルドマスターたちが生きていること自体許せなかったのだ。

「まぁ、死んだ方がマシだっただろうね。ケビンが母さんを止めて、そいつ等を犯罪奴隷に落とした。最後の最後に母さんの目の前で、ケビンを化け物呼ばわりしたから2人とも片腕がなくなっているけどね。私財も没収され、慰謝料としてケビンに渡されたそうだよ」

「こう言っちゃあなんだが、ケビンってお金持ちになったんじゃないか?」

「ケビンは既に、その前からお金持ちだったみたいだよ。冒険者として活動してた時に散財しないから、ものすごい額の貯金が貯まったみたいだ。交易都市に着いてすぐの頃、ドワーフ職人に自分の武器の作製を依頼すると、仲間の内2人分の装備品もその時に依頼して、代金は全てケビンが支払ったらしい」

「マジか……」

「更に今はもう、母さんと同じAランク冒険者になってる」

「ケビン君、凄い……」

「さすが私の自慢の弟ね!」

 ケビンの成長ぶりにそれぞれが驚きを感じてしまい、ギルドマスターの話の時のような、剣呑な雰囲気はなくなっていた。

「その後、母さんが予想通りに駄々を捏ねて、ケビンと冒険するって言い出したから、マイケルがケビンに頼んで母さんと一緒に自宅に帰って来たみたいだ」

「それならケビンは今、自宅にいるってことか?」

「そうだね。あと、冒険者仲間が2人、一緒に着いてきているみたいだよ。さっき言った装備を買ってあげた2人だね。タミアからずっと行動をともにしている、パーティーメンバーの一員だったみたい」

「ケビンがお世話になった人なら、挨拶をしないといけないわ。どんな方なの?」

「ケビンと同じタイミングでAランク冒険者になって、ケビンが自宅に戻る時に、元のパーティーを抜けてケビンとパーティーを組んだようだ。2人とも年上の女性だよ」

「「なっ!?」」

 ケビンとともにいるのが年上の女性と聞いて、シーラとターニャは驚きを隠せなかった。てっきり男の冒険者だろうと、勝手に想像していたからだ。

「ほぉ、ケビンも隅におけねぇな。年上の女性冒険者たちにドワーフが作った装備品をプレゼントか。こりゃ、惚れられても仕方ねぇような行動だな」

「ちょ、兄様! まだ決まったわけではないのよ! もしかしたら、物凄く年上のベテラン冒険者かも知れないじゃない!」

「そ、そうですよ!」

 カインの何気ない一言に、シーラとターニャは焦って反論した。

「ははっ、そんなシーラたちに、もうひとつ重要な情報を教えてあげるよ」

「な、何なの?」

「その2人は、ケビンの花嫁候補みたいだよ」

「「ッ!!」」

 アインのトドメの言葉により、シーラとターニャは絶句した。

「まさか本当に、隅に置けないことをしてるとは……ケビンは今年で9歳だろ? 相手は何歳なんだ?」

「確か……マイケルの話では、エルフの人が8歳年上だから今年で17歳だね、もう1人は人間の魔術師で8歳年上だから同じく17歳だ。あと、うちの使用人たちも、何人か花嫁候補になるみたいだよ。使用人に関しては、母さんが許可を出したらしい。母さんをあてにしないで、自分たちで頑張るのなら認めるってさ」

「ケビンはエルフを嫁にするのか!? エルフって身持ちが固いことで有名なのに、よく子供のケビンが落とせたな。更にはうちの使用人たちもかよ」

「ケビンから何かしたわけじゃないらしい。全員ケビンのことが好きになって、アプローチした結果だってさ。まぁ、ケビンは優しいからね、そこにコロッと惚れてしまうのだろうね」

「ケビンって、無自覚の嫁製造機だな。しかも、全員年上だろ? 年上キラーの嫁製造機とか、行く先々で増えていきそうだな」

「それに関しては、母さんも楽しそうにしているみたいだよ。何人のお嫁さんが来るのかって」

「まぁ、聞いた話レベルのケビンの資産からすれば余裕で養えるんだろうから、心配なんてしてないんだろうな」

「結果的に、僕らの中では1番に自立した形になるね。先を越されてしまって、兄としての威厳がないよ」

 アインとカインが、ケビンの嫁候補について語り合ってる中、壮絶なダメージを負ったシーラとターニャは、モノクロな背景を背負っていた。

「……嫁候補……年上キラー……嫁製造機……」

「……ケビン君の嫁候補……お嫁さん……エルフ……勝てない……」

 そんな2人のことは気にもせず、兄たちは会話に花を咲かせる。

「そういえば、ケビンは学院は辞めるみたいだよ」

「やっぱりな。そもそも、あんなことがあったんだから、来る気も失せるだろ」

「それについては、まだ思い出せてないらしい。思い出したのは実家のことと母さんのことだけだ。俺たちのことは悲しいことに思い出していない。母さんは、自分のことを思い出して貰ってるから、俺たちのことについては、特に何もしてないみたいだ」

「母さんだけズルいな!? かと言って、会いに行った挙句に、『あなたは誰ですか?』なんて言われたらショックだしなぁ……」

「そこは、おいおいでいいんじゃないかな。それに、他国に行くみたいだから、暫くは会えないしね」

「国外に行くのか? 何しに?」

「魔導王国の魔導学院に、入学するみたいだよ」

「あぁ、ケビンは魔法にしか興味がなかったから、その方がケビンにとってプラスになるな」

「タイミングが合えば、親善試合で再会するかもね」

「そういえば、高等部からはそれがあったな」

 アインたちが話している中、シーラとターニャはケビンが学院を去って国外へ行くことを聞いて、さらにどん底へと突き落とされるのであった。

「そんな……折角戻ってきたのに、国外に行くなんて……」

「ケビン君……」

「まぁ、今のところはそんな感じかな。今年は試験を受けるまでの間は、ダンジョンに潜るみたいだよ」

「ダンジョンか……しっかりと冒険者やってるな、羨ましいぜ」

「僕たちも、しっかりと頑張らないとね」

 アインが締めくくると、ケビンに関する報告会は終わりを告げた。兄2人に対して女性2人は、告げられた内容が驚きの連続で、未だ整理できずにいる。

「ケビンに逢いたい……」

「わたしも逢いたい……」

 2人の想いは、人知れず虚空の彼方へと消えていくのだった。
しおりを挟む
感想 773

あなたにおすすめの小説

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...