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第4章 新たなる旅立ち
第101話 ゴブリンキングダム②
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死体の山の中、場違いなぐらいにくつろいで休憩を取りながら、物思いに耽けっていた。
「傷をつけずに倒すのって、集団戦ではかなりきついな。ま、達成感は一入だけど……あぁ、動くのがしんどい……死体を回収して回るのが面倒くさいし、楽できる方法を今の内に考えよ」
そもそも【無限収納】へ入れるのに、手で触れなきゃいけないのが面倒くさいんだ。そんな決まり事は誰が作ったんだ? 誰が決めたかは知らないけど【創造】があるんだし改造しよう。
そこからは楽するための努力を開始した。まずは【無限収納】をベースとして、手で触れなくてもいいように作り変える。
実際、死体とかにあまり触りたくなかったのだ。普通に考えてグロいでしょ。こちとら普通の日本人だよ? 今は中身だけなんだけど。
「よし、試作1号完成。試しにそこの死体を……出来た!」
次は、距離の無効化だった。手で触れなくても、近くまで行かないと回収できないのでは、効率があまりにも悪すぎた。これは無駄に範囲を指定するよりも、視界内に入っていれば出来るように改造した。
「試作2号完成。では、さっそく……よし! ここまで出来たら上出来だな。でも、欲を出すのが人間というものだ。視界内に収めても、見えていなければ回収できないなら、見えていなくても回収出来るようにしてみたい」
出来るかどうか分からなかったが、物は試しと思いつつ、どうやって見えない物を収納するか考えた。
「こういうのは死体に限らず、ありとあらゆる物を収納出来るようにしたいな。そうなると……見えない物を見るのだから透視能力が必要か? いや、透視のシステムがわからないから、作るのに難儀しそうだな。それなら、対象を指定して回収する方法なら難易度は下がるかな? 対象の指定は元々【無限収納】についてる機能だし」
色々と思いつく限りの方法を考えつつ、プランを練っていく。
「やっぱり【マップ】を使いつつ、回収するのが1番楽かな。【マップ】に対象を指定する機能を付けておいたし。そうなると、【マップ】と【無限収納】の結び付けだけで、出来るようになるかな?」
さっそく【マップ】と【無限収納】が連動出来るように、【無限収納】改造していく。
「よし、試作3号完成! では、【マップ】でゴブリン種の死体を検索して……」
視界内に映るマップに、灰色で▼のマーキングがついていく。
「おぉ、結構見えない場所にもあるな。これに【無限収納】を使えば……」
マップ上で認識している▼が次々と消えていく。
「やった! 成功した!! これで回収が楽になるし、わざわざ視界内に収めなくても済む。これを完成形にしよう」
『【無限収納】が【創造】スキルによる改造により、バージョンアップされました』
「ん? そういえば、戦闘中もこの変なアナウンスが頭の中に流れたな。あの時は頭が痛いのに、傍迷惑なアナウンスだと思ったが……あなたは誰ですか? それとも、この異世界はそういう仕様なのか?」
『……』
「反応がないな……レベルアップみたいなイベントが起きないと、アナウンスが流れないのか? やっぱりそういう仕様か? 考えても仕方ないし、スキル改造で時間もかなり掛けてしまったから、早くキングを倒しに行くとするか」
頭のアナウンスは反応がなくなったので、洞窟の中に残っているゴブリン種の残党狩りへと向かった。
洞窟の入口には変な骨の頭部が飾ってあり、如何にもな雰囲気を醸し出していた。
「明らかに外とは別ですよ的な飾りだな。キングのいる場所って考えると納得もできるが」
洞窟内に入ると暗闇が広がっており、いくら外から太陽光が差し込んでいても奥までは光が届いていなかった。
「暗いな。《ライト》」
空中に光の玉が出てきて辺りを照らす。すると、奥まで続く道の他に、横道なども存在していたことがわかった。
「へぇ、結構入り組んでるんだな。隠し通路とかあるかな? 財宝溜め込んでたりして。【マップ】を使えば全部わかるんだろうけど、それじゃ味気ないしな。とりあえずこのまま適当に進んで、キング倒した後にゆっくり探索するか」
そのまま真っ直ぐ奥へと進む道を選んで、脇道には帰りに寄ろうと心に決めた。途中で、ゴブリンナイトと遭遇したが、仲間を呼ばれても面倒なので瞬殺する。
「やっぱりキングの根城はナイトで固めてあるな。本当に国みたいだ……大方、キングの傍にはジェネラルがいるんだろうな。メイジも控えてそうだ」
そんなお決まりみたいなフラグを立てつつ、最奥へと歩みを進めた。ひときわ大きな広場に出ると、予想通りのメンツが揃ってた。
中央にはこれ見よがしに、手作りの禍々しい玉座に座るキング、右手側にはジェネラル、左手側にはメイジが控えていた。
そこに至るまではナイトが整列しており、まさに、人間の真似事みたいな風景だ。
「ここまでくると、高い知性を感じずにはいられないな」
「ほう、人間にしては見る目があるようだ」
独り言ちたつもりで呟いた言葉に、キングが返してきた。
「お前、喋れるのか!?」
まさか喋れるまでの知性があるとは思わず、普通に聞き返してしまった。
「当たり前だ。俺様は歴代最高のキングだぞ。そんじょそこらの下等な魔物と一緒にされては困る」
「そんなに高い知性があるなら、何故人間が住まう地域の近くに、国を構えたんだ? 王国騎士に攻めこまれるのがオチだろ?」
「そんなのは簡単だ。ゆくゆくは支配地域を拡大し、人間の国を攻め滅ぼすためだ。男どもは殺し、女は苗床にする。まぁ、多少の男は残すがな……家畜が女だけになったらそれ以上増えないから、苗床の確保が面倒になる」
「そうか……高い知性を持っていても、所詮は魔物ということか」
人間を家畜にするという言葉に、ケンは酷い不快感を感じるが、そもそも魔物だから価値観が違うのだろうと、無理やり自身を納得させる。
「ここまで来たんだ。お前はそれなりに強いのだろう? 俺様の配下になるつもりはないか? 女なら掃いて捨てるほど与えてやるぞ? お前ら人間の男はハーレム願望があるのだろう?」
「まぁ、確かにハーレムは男の浪漫だが、人から与えられたものじゃ満足できないな。あぁ、人じゃなくて下等な魔物だったな」
「ふん、活きのいいガキも悪くはないが……だが、俺様をそこらの下等な魔物と同じに語ったことは許さん。お前はもう必要ない、配下どもの餌になるがいい……殺れっ!」
その言葉を皮切りに、整列していたナイトたちが一斉に襲いかかってくる。背後に控えるメイジが魔法を唱えているが、キングの側近とあってか、今までのメイジとは格が違うようだ。発動までの時間が短い上に、威力も高そうに見える。
「俺様に楯突いたことを、後悔するがいい!」
勝利を確信して揺るがないキングは、余裕の笑みを浮かべている。
「お前は俺に出会ったことを後悔するがいいさ。《酸素消失》」
魔法を受けたナイトは苦しみもがきながら倒れ、ピクピクと痙攣している。そんなのもお構いなしに、次から次へとやってくるナイトに辟易しながらも回避行動をとるが、回避先に魔法を撃ってくる、メイジのいやらしさに冷や汗をかく。
素材を傷つけないという縛りプレイを、自らに科しているケンは、普通の冒険者たちが戦いに挑むよりも、格段に難易度が高い状態での戦闘を繰り広げていた。
それでも確実と言える場面では魔法を放ち、敵の数を減らしては逃げての繰り返しをしていた。
傍から見れば無様な戦い方だが、確実に数は減っていった。しかしながらメイジのいやらしい魔法を、完全に避けきることはできずに、時折被弾はしている。
とうとう最後のナイトを倒したところで、多勢に無勢の状態から、たった3匹まで減ってしまったゴブリン種たち。残るはキングとその側近であるジェネラルとメイジだけだった。
「はぁ……はぁ……で、後悔したか? 俺様野郎」
「ふざけるなぁ! お前ら殺れっ!」
ジェネラルとメイジが連携を取りつつ攻めようと動くが、今回は数が少ないので、厄介なメイジを先に倒すことにして魔法を放つ。
「《酸素消失》」
メイジが倒れても気にすることなく、ジェネラルが襲いかかってきた。身の丈2メートルは確実にあるであろう、その剛腕から振り下ろされる斬撃を、余裕を持って回避する。
ナイトたちの戦いで動き回ったから、体力的な心配もあり長引かせるわけにはいかなかったので、メイジを先に倒しておいたのは正解だったと認識しながらも、残るジェネラルを倒した。
「とうとうお前だけになったな。キング」
玉座へ振り向くと、キングはわなわなと両腕を震わせていた。
「な、な……」
「お前が持ってる高い知性を活かして、ここから離れるんだったら、見逃しても良かったんだがな。人間を家畜にすると聞いてしまった以上、生かしておくわけにはいかない」
「おのれぇぇっ!」
キングが怒りを顕にすると、傍らに掲げてあった大剣を掴み取り、玉座から立ち上がる。やはりキングだけあって体躯はかなりのものだ。
だが、空気を読まない俺は、わざわざキングと剣を交わすような熱きバトルはしない。そう、しないのだ! 理由は、無駄に縛りプレイをして疲れたから!
「《酸素消失》」
たったそれだけで、キングは倒れた。この魔法を作るのに大分頭を悩ませたものだが、酸素を必要とする生き物に対しては、絶対的なアドバンテージが取れる、無双の魔法だ。……多分。
「まだまだクエストが残ってるんでな。お前だけに時間をかけるわけにはいかないんだよ。縛りプレイで疲れている上に、余計に時間がかかっているからな」
空気を読まない戦法に、誰に対してでもなく言い訳っぽく独り言ちる。
「さて、ゴブリン種を回収して探索するか。キングの剣は良さげだから貰っておこう。高値で売れるかもしれないし、他の奴らのも貰っておくか」
一通り回収し終わったら、洞窟の残りの区画を探索するため、広場を後にする。
「まだ昼だけど巻きで進めよう。本当はじっくり探索したいけど、まだ残りのクエストが終わってないしな。さすがに門が閉まるまでには街に戻りたい」
ケンは【マップ】を使って、洞窟内の見取り図を表示させる。完全なイージーモードで広い区画を順次回っていき、ゴブリン達が貯めてたであろうお宝を回収する。
「てっきり苗床にするために、女性を攫ってると思っていたが、1人もいなかったな」
俺的にはテンプレの、くっころさんがいるかと思っていたんだが、然う然う上手くはいかないようだ。
ケンが洞窟の外に出ると、この場所をゴブリンに再利用させないために、洞窟の入口を土魔法でしっかりと固めて塞いだ。
作業が終わったら、次の目標を決めるために思考を巡らせる。
「ここから近くにいるモンスターは……オークか。その後に、キラーアントの殲滅に入るかな」
ケンは、時間も押していることもあってか、早々にその場を立ち去り、次の目的地へと行くのであった。
「傷をつけずに倒すのって、集団戦ではかなりきついな。ま、達成感は一入だけど……あぁ、動くのがしんどい……死体を回収して回るのが面倒くさいし、楽できる方法を今の内に考えよ」
そもそも【無限収納】へ入れるのに、手で触れなきゃいけないのが面倒くさいんだ。そんな決まり事は誰が作ったんだ? 誰が決めたかは知らないけど【創造】があるんだし改造しよう。
そこからは楽するための努力を開始した。まずは【無限収納】をベースとして、手で触れなくてもいいように作り変える。
実際、死体とかにあまり触りたくなかったのだ。普通に考えてグロいでしょ。こちとら普通の日本人だよ? 今は中身だけなんだけど。
「よし、試作1号完成。試しにそこの死体を……出来た!」
次は、距離の無効化だった。手で触れなくても、近くまで行かないと回収できないのでは、効率があまりにも悪すぎた。これは無駄に範囲を指定するよりも、視界内に入っていれば出来るように改造した。
「試作2号完成。では、さっそく……よし! ここまで出来たら上出来だな。でも、欲を出すのが人間というものだ。視界内に収めても、見えていなければ回収できないなら、見えていなくても回収出来るようにしてみたい」
出来るかどうか分からなかったが、物は試しと思いつつ、どうやって見えない物を収納するか考えた。
「こういうのは死体に限らず、ありとあらゆる物を収納出来るようにしたいな。そうなると……見えない物を見るのだから透視能力が必要か? いや、透視のシステムがわからないから、作るのに難儀しそうだな。それなら、対象を指定して回収する方法なら難易度は下がるかな? 対象の指定は元々【無限収納】についてる機能だし」
色々と思いつく限りの方法を考えつつ、プランを練っていく。
「やっぱり【マップ】を使いつつ、回収するのが1番楽かな。【マップ】に対象を指定する機能を付けておいたし。そうなると、【マップ】と【無限収納】の結び付けだけで、出来るようになるかな?」
さっそく【マップ】と【無限収納】が連動出来るように、【無限収納】改造していく。
「よし、試作3号完成! では、【マップ】でゴブリン種の死体を検索して……」
視界内に映るマップに、灰色で▼のマーキングがついていく。
「おぉ、結構見えない場所にもあるな。これに【無限収納】を使えば……」
マップ上で認識している▼が次々と消えていく。
「やった! 成功した!! これで回収が楽になるし、わざわざ視界内に収めなくても済む。これを完成形にしよう」
『【無限収納】が【創造】スキルによる改造により、バージョンアップされました』
「ん? そういえば、戦闘中もこの変なアナウンスが頭の中に流れたな。あの時は頭が痛いのに、傍迷惑なアナウンスだと思ったが……あなたは誰ですか? それとも、この異世界はそういう仕様なのか?」
『……』
「反応がないな……レベルアップみたいなイベントが起きないと、アナウンスが流れないのか? やっぱりそういう仕様か? 考えても仕方ないし、スキル改造で時間もかなり掛けてしまったから、早くキングを倒しに行くとするか」
頭のアナウンスは反応がなくなったので、洞窟の中に残っているゴブリン種の残党狩りへと向かった。
洞窟の入口には変な骨の頭部が飾ってあり、如何にもな雰囲気を醸し出していた。
「明らかに外とは別ですよ的な飾りだな。キングのいる場所って考えると納得もできるが」
洞窟内に入ると暗闇が広がっており、いくら外から太陽光が差し込んでいても奥までは光が届いていなかった。
「暗いな。《ライト》」
空中に光の玉が出てきて辺りを照らす。すると、奥まで続く道の他に、横道なども存在していたことがわかった。
「へぇ、結構入り組んでるんだな。隠し通路とかあるかな? 財宝溜め込んでたりして。【マップ】を使えば全部わかるんだろうけど、それじゃ味気ないしな。とりあえずこのまま適当に進んで、キング倒した後にゆっくり探索するか」
そのまま真っ直ぐ奥へと進む道を選んで、脇道には帰りに寄ろうと心に決めた。途中で、ゴブリンナイトと遭遇したが、仲間を呼ばれても面倒なので瞬殺する。
「やっぱりキングの根城はナイトで固めてあるな。本当に国みたいだ……大方、キングの傍にはジェネラルがいるんだろうな。メイジも控えてそうだ」
そんなお決まりみたいなフラグを立てつつ、最奥へと歩みを進めた。ひときわ大きな広場に出ると、予想通りのメンツが揃ってた。
中央にはこれ見よがしに、手作りの禍々しい玉座に座るキング、右手側にはジェネラル、左手側にはメイジが控えていた。
そこに至るまではナイトが整列しており、まさに、人間の真似事みたいな風景だ。
「ここまでくると、高い知性を感じずにはいられないな」
「ほう、人間にしては見る目があるようだ」
独り言ちたつもりで呟いた言葉に、キングが返してきた。
「お前、喋れるのか!?」
まさか喋れるまでの知性があるとは思わず、普通に聞き返してしまった。
「当たり前だ。俺様は歴代最高のキングだぞ。そんじょそこらの下等な魔物と一緒にされては困る」
「そんなに高い知性があるなら、何故人間が住まう地域の近くに、国を構えたんだ? 王国騎士に攻めこまれるのがオチだろ?」
「そんなのは簡単だ。ゆくゆくは支配地域を拡大し、人間の国を攻め滅ぼすためだ。男どもは殺し、女は苗床にする。まぁ、多少の男は残すがな……家畜が女だけになったらそれ以上増えないから、苗床の確保が面倒になる」
「そうか……高い知性を持っていても、所詮は魔物ということか」
人間を家畜にするという言葉に、ケンは酷い不快感を感じるが、そもそも魔物だから価値観が違うのだろうと、無理やり自身を納得させる。
「ここまで来たんだ。お前はそれなりに強いのだろう? 俺様の配下になるつもりはないか? 女なら掃いて捨てるほど与えてやるぞ? お前ら人間の男はハーレム願望があるのだろう?」
「まぁ、確かにハーレムは男の浪漫だが、人から与えられたものじゃ満足できないな。あぁ、人じゃなくて下等な魔物だったな」
「ふん、活きのいいガキも悪くはないが……だが、俺様をそこらの下等な魔物と同じに語ったことは許さん。お前はもう必要ない、配下どもの餌になるがいい……殺れっ!」
その言葉を皮切りに、整列していたナイトたちが一斉に襲いかかってくる。背後に控えるメイジが魔法を唱えているが、キングの側近とあってか、今までのメイジとは格が違うようだ。発動までの時間が短い上に、威力も高そうに見える。
「俺様に楯突いたことを、後悔するがいい!」
勝利を確信して揺るがないキングは、余裕の笑みを浮かべている。
「お前は俺に出会ったことを後悔するがいいさ。《酸素消失》」
魔法を受けたナイトは苦しみもがきながら倒れ、ピクピクと痙攣している。そんなのもお構いなしに、次から次へとやってくるナイトに辟易しながらも回避行動をとるが、回避先に魔法を撃ってくる、メイジのいやらしさに冷や汗をかく。
素材を傷つけないという縛りプレイを、自らに科しているケンは、普通の冒険者たちが戦いに挑むよりも、格段に難易度が高い状態での戦闘を繰り広げていた。
それでも確実と言える場面では魔法を放ち、敵の数を減らしては逃げての繰り返しをしていた。
傍から見れば無様な戦い方だが、確実に数は減っていった。しかしながらメイジのいやらしい魔法を、完全に避けきることはできずに、時折被弾はしている。
とうとう最後のナイトを倒したところで、多勢に無勢の状態から、たった3匹まで減ってしまったゴブリン種たち。残るはキングとその側近であるジェネラルとメイジだけだった。
「はぁ……はぁ……で、後悔したか? 俺様野郎」
「ふざけるなぁ! お前ら殺れっ!」
ジェネラルとメイジが連携を取りつつ攻めようと動くが、今回は数が少ないので、厄介なメイジを先に倒すことにして魔法を放つ。
「《酸素消失》」
メイジが倒れても気にすることなく、ジェネラルが襲いかかってきた。身の丈2メートルは確実にあるであろう、その剛腕から振り下ろされる斬撃を、余裕を持って回避する。
ナイトたちの戦いで動き回ったから、体力的な心配もあり長引かせるわけにはいかなかったので、メイジを先に倒しておいたのは正解だったと認識しながらも、残るジェネラルを倒した。
「とうとうお前だけになったな。キング」
玉座へ振り向くと、キングはわなわなと両腕を震わせていた。
「な、な……」
「お前が持ってる高い知性を活かして、ここから離れるんだったら、見逃しても良かったんだがな。人間を家畜にすると聞いてしまった以上、生かしておくわけにはいかない」
「おのれぇぇっ!」
キングが怒りを顕にすると、傍らに掲げてあった大剣を掴み取り、玉座から立ち上がる。やはりキングだけあって体躯はかなりのものだ。
だが、空気を読まない俺は、わざわざキングと剣を交わすような熱きバトルはしない。そう、しないのだ! 理由は、無駄に縛りプレイをして疲れたから!
「《酸素消失》」
たったそれだけで、キングは倒れた。この魔法を作るのに大分頭を悩ませたものだが、酸素を必要とする生き物に対しては、絶対的なアドバンテージが取れる、無双の魔法だ。……多分。
「まだまだクエストが残ってるんでな。お前だけに時間をかけるわけにはいかないんだよ。縛りプレイで疲れている上に、余計に時間がかかっているからな」
空気を読まない戦法に、誰に対してでもなく言い訳っぽく独り言ちる。
「さて、ゴブリン種を回収して探索するか。キングの剣は良さげだから貰っておこう。高値で売れるかもしれないし、他の奴らのも貰っておくか」
一通り回収し終わったら、洞窟の残りの区画を探索するため、広場を後にする。
「まだ昼だけど巻きで進めよう。本当はじっくり探索したいけど、まだ残りのクエストが終わってないしな。さすがに門が閉まるまでには街に戻りたい」
ケンは【マップ】を使って、洞窟内の見取り図を表示させる。完全なイージーモードで広い区画を順次回っていき、ゴブリン達が貯めてたであろうお宝を回収する。
「てっきり苗床にするために、女性を攫ってると思っていたが、1人もいなかったな」
俺的にはテンプレの、くっころさんがいるかと思っていたんだが、然う然う上手くはいかないようだ。
ケンが洞窟の外に出ると、この場所をゴブリンに再利用させないために、洞窟の入口を土魔法でしっかりと固めて塞いだ。
作業が終わったら、次の目標を決めるために思考を巡らせる。
「ここから近くにいるモンスターは……オークか。その後に、キラーアントの殲滅に入るかな」
ケンは、時間も押していることもあってか、早々にその場を立ち去り、次の目的地へと行くのであった。
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