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第4章 新たなる旅立ち
第98話 討伐報酬
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目に広がる景色は壮観としか言いようがなかった。広場の彼方此方で解体作業が進められていて、まるでベルトコンベアの流れ作業みたいな風景だった。
「ライアットさーん!」
受付嬢が呼びかけると、筋骨隆々とした中年男性が振り返る。
「おっ? サーシャじゃないか。こんな所に来るなんて珍しいな」
ライアットは作業を一旦止めて、サーシャに歩み寄ると傍らにいた子供が目に付いた。
「この坊主はどうしたんだ? お前の倅か?」
「そんなわけないじゃないですか! 私はまだ結婚してないんですよ」
「冗談だよ。で、どうしたんだ?」
「この子が素材を売りたいって言ってたから、連れてきたんですよ」
「へぇ、こいつがねぇ……」
ライアットは訝しげな視線を向け、値踏みするかのような対応をする。
「今日、冒険者登録したばかりだし、荷物も持ってないからホーンラビットだと思うんですけど……」
「なんだ、まだ確認してないのか? それなら坊主、さっさと出してみろ。何のモンスターを狩ってきたんだ?」
「ここで出して大丈夫ですか?」
「汚れることなら心配するな。解体場所ってのは、汚れて当たり前だからな。それに剥ぎ取った後なら、大して汚れないしな」
自分が危惧していた事とは別の回答が戻ってきたが、特に気にせず倒したモンスターを出すことにした。
「では」
ケンが【無限収納】からまず出したのは、ゴブリンの死体20体だった。いきなり目の前に現れた、山積みの魔物の死体に困惑する2人。
次に出したのは、先程から話題に上がってたホーンラビット30体。当然こちらも山積みとなった。
そこまできて、漸くライアットが再起動した。
「ちょ、ちょっと待て、坊主!」
「何か?」
「まさかとは思うが、まだあるのか?」
「まだありますよ。ここに出していいんですよね?」
「それは構わねぇが、坊主はマジックポーチ持ちか? こんだけ入るポーチだと、それなりに金がかかる。さてはお前さん、貴族の子息か?」
「いえ、違いますよ。そもそもマジックポーチなんて持ってませんよ」
「ポーチじゃねぇなら……もしかしてアイテムボックス持ちか!? あのレアスキルの!」
「それも持ってませんが。そんなスキルがあったんですね」
「じゃあ、いったいどうやって収納してるんだよ」
「【無限収納】のスキルを使ってるだけですよ」
「――ッ!そのスキルは勇者が使っていたとされるスキルじゃねぇか! お前、勇者なのか?」
「ありえませんね。ただの子供です。で、残りを出してもいいですか?」
「あ、あぁ……」
最後に出したのは、フォレストウルフ10体だった。
「これで終わりですね。買取をお願いします」
ここにきて、ようやくサーシャも再起動する。
「ケン君、これ、みんな君が討伐したの?」
死体の山をプルプルと震える指で差しながら、サーシャが聞いてくる。
「そうですよ。クエストを受けずに街の外へ出てしまったから、買取額もどうなるかわからなかったので、念の為いっぱい討伐したんですよ」
「えっ? 嘘でしょ!? ケン君がギルドを出てから3時間くらいしか経ってないよね?」
「多分、そのくらいでしょうね」
「話に割り込んで悪いが、買取査定は待ってて貰っていいか? こんだけの量だと、捌くのに時間がかかる」
「今日中には終わりますかね? 一文無しなので宿代が欲しいのですけど。あと、ご飯代も」
「あぁ、それなら俺の知り合いの宿屋を紹介するから、そこに泊まればいい。宿代も奢りだ。当然、夕食と次の日の朝食付きだ」
「そこまでして頂くわけには……」
「気にするな。仕事が終わらないのはこちらの責任だしな。結構、いい宿だぞ。楽しんで来い!」
「では、お言葉に甘えて。ありがとうございます」
「いいってことよ。おい、お前ぇら! こっちのモンスターを大急ぎで片付けるぞ。鮮度が良いうちに、ラビットとウルフの血抜きをするんだ!」
ライアットさんの掛け声と同時に、周りの職員たちは、大急ぎで作業に取り掛かった。
「ケン君、とりあえずカードの更新に行こうか? 私が担当するから」
「更新? ギルドカードって1日しか持たないのですか?」
「そんなわけないじゃない! クエスト達成の更新よ」
そう言って、来た道を歩き出すサーシャさん。すかさず追い掛けてついて行く。
「でも俺はクエストを受注してないですよ」
「クエストの中には、常駐というずっとなくならないクエストもあるのよ。そのクエストはわざわざ受けなくてもいいわ。討伐証明さえ見せればいいから」
「へぇ、便利なものですね」
「さっきケン君が見せたモンスターでは、ゴブリンとホーンラビットが該当するわ。ゴブリンは生かしてて得になることがないからで、ラビットの方は食料として流通するからよ」
「フォレストウルフは?」
「そちらは残念ながら常駐じゃないわね。ゴブリンを餌として食べたりするから、あまりクエストも出ないのよ。程よい益獣ってやつね」
通路から出るとそのまま2階へと上がる。サーシャさんがいたカウンターはそのままだった。固定の持ち場みたいだな。
サーシャさんが脇のドアから中に入ったので、踏み台に上がりカウンターから顔を出す。
サーシャさんは奥の扉へ入って行ったので、そのまま待つこと数分、サーシャさんが戻ってきて定位置に腰掛けた。
「それでは、手続きを始めます」
(おぉ、お仕事モードだ。切り替えが凄い)
「ギルドカードを提示してください」
「どうぞ」
ギルドカードをカウンターに置くと、サーシャさんがそれを引き取る。
「今回、常駐クエストである“ゴブリンの5体討伐”と“ホーンラビットの3体討伐”を達成したことを確認しました。討伐数を鑑みると、ゴブリンの討伐が4回分、ホーンラビットの討伐が10回分に相当します」
「そんな特典があったんですね。1回分しかカウントしてもらえないと思ってました」
「さらに“ゴブリンの5体討伐”はEランクのクエストとなり、同じくEランククエストの“フォレストウルフの3体討伐”も3回分の討伐数を確認しております」
ここまで聞くと、ちょっとやり過ぎた感が否めないが、過ぎてしまったことは仕方がないと割り切ろう。
「よって、冒険者ランクをDランクに上げたいと思います。ギルドマスターの承認は得られています」
「ちょ、ちょっと待ってください。何故いきなり2ランクも昇格したのですか? 上がったとしてもEランクでは?」
「それについては、ちゃんとした理由があります。長くなりますがよろしいですか?」
神妙な面持ちでサーシャさんが答える。
「……お願いします」
「では、……コホン。まず最初に、貴方は本日冒険者登録をしたばかりの駆け出しです。しかも子供。その子供が素材を持って戻ってきます。この時点で、何かしらの討伐を成し遂げたと見ます。まぁ、順当にいってラビットだろうという予測はつきますが……しかも、短い時間帯では精々1体が関の山。1日かければもしかすると3体討伐して、クエスト達成となるかもしれません。子供にとってはその位の難易度なんです」
「はぁ……」
「次にゴブリンの討伐です。これは、Eランククエストで大人たちが対応するようなものです。子供に出来るのは同じ年代の手練のパーティを組み、運よく奇襲が成功し、必死でボコボコにする手段です。そこまでして漸く1体を討伐できます」
「大人たちのパーティに混じるってのはないんですか?」
「愚問ですね。もし貴方がパーティに誰か連れていくとして、赤ちゃんを連れていきますか? 極論ではありますが、大人たちからしてみれば子供の冒険者なんてそんな基準なんです。特別強くなければ、大人たちからしたらリスクしかありません。目の前で子供が死ぬ姿なんて、誰も見たくないということです」
「そう言われると納得ですね。思慮が浅すぎました」
「最後にフォレストウルフの討伐です。この魔物は1体であればEランククエストですが、数にもよりますが群れをなしていた場合、Dランククエストの上位に難易度が上がります。下位のモンスターというのは、1体では大したことなくても群れをなす事で、その脅威度というのが格段に上がったりするものです。これも極論ではありますが、1体を相手にするのと100体を相手にするのでは、全然変わってくるということです。」
「確かに」
「今までの説明でわかったと思いますが、大人と違って子供であるFランクの駆け出しが、達成出来るようなクエストではないのです。それだけで、Eランクに昇格する資格があります。加えて問題となるのが討伐数と掛かった時間です」
「短時間で討伐し過ぎたからですか?」
「その通りですね。およそ3時間の間にラビット30体、ゴブリン20体、ウルフ10体を討伐するのは、大人でさえFランクでは無理です。森を焼き払うような、大魔法を使えば話は別ですが、焼き払ってないですよね? そんな報告は上がってきてないですから」
「はい、森だったので火魔法を使うのは止めて、風魔法にしました」
「それは良かったです。自然は大事ですからね。で、行き帰りの時間を省くとおよそ2時間弱の間に、それだけの事をFランクである子供が、成し遂げたという結論に至ります。ありえないんです。でも、証拠であるモンスターの死体を確認した以上、事実であると認めるしかありません。よって、ギルトマスターに陳情して、ランクアップを認めてもらいました。EランクではなくDランクなのはギルトマスターが決めたことです」
「Dランクになった経緯はわかりました」
「それでは、これをどうぞ」
そう言って出されたのは、新しいギルドカードと小袋だった。小袋の中には報酬が達成回数分あるみたいで、宿代も飯代も何とかなりそうだ。今日のところは奢ってもらうが……
「今日からFランク改めDランクですので、ギルドカードもブロンズに変わります。受けられるクエストもC~Eランクになります。昇格おめでとうございます。ちなみにCランクへの昇格の際は試験があります」
「試験?」
「無闇矢鱈に素行の悪い人を、Cランク以上にしないための措置です。Cランクからは、その人の腕と人間性を審査されます。高位ランカーが悪い事をしたら、困るのはギルドですので。信用問題に関わってきますからね」
「そういう事なんですね。色々とありがとうございます」
「ふぅ……」
漸く長い長い説明が終わったので、サーシャさんも一呼吸ついた。
「で、これから宿屋に行くのですか?」
「はい、今日のところはそうしようと思います」
「では、次からは忘れずにクエストを受けに来て下さい。常駐クエストは下位ランクしかありませんから」
「あ……はは……」
ケンは痛いところをつかれ、こめかみを掻きながら苦笑いするしかなかった。
「ライアットさーん!」
受付嬢が呼びかけると、筋骨隆々とした中年男性が振り返る。
「おっ? サーシャじゃないか。こんな所に来るなんて珍しいな」
ライアットは作業を一旦止めて、サーシャに歩み寄ると傍らにいた子供が目に付いた。
「この坊主はどうしたんだ? お前の倅か?」
「そんなわけないじゃないですか! 私はまだ結婚してないんですよ」
「冗談だよ。で、どうしたんだ?」
「この子が素材を売りたいって言ってたから、連れてきたんですよ」
「へぇ、こいつがねぇ……」
ライアットは訝しげな視線を向け、値踏みするかのような対応をする。
「今日、冒険者登録したばかりだし、荷物も持ってないからホーンラビットだと思うんですけど……」
「なんだ、まだ確認してないのか? それなら坊主、さっさと出してみろ。何のモンスターを狩ってきたんだ?」
「ここで出して大丈夫ですか?」
「汚れることなら心配するな。解体場所ってのは、汚れて当たり前だからな。それに剥ぎ取った後なら、大して汚れないしな」
自分が危惧していた事とは別の回答が戻ってきたが、特に気にせず倒したモンスターを出すことにした。
「では」
ケンが【無限収納】からまず出したのは、ゴブリンの死体20体だった。いきなり目の前に現れた、山積みの魔物の死体に困惑する2人。
次に出したのは、先程から話題に上がってたホーンラビット30体。当然こちらも山積みとなった。
そこまできて、漸くライアットが再起動した。
「ちょ、ちょっと待て、坊主!」
「何か?」
「まさかとは思うが、まだあるのか?」
「まだありますよ。ここに出していいんですよね?」
「それは構わねぇが、坊主はマジックポーチ持ちか? こんだけ入るポーチだと、それなりに金がかかる。さてはお前さん、貴族の子息か?」
「いえ、違いますよ。そもそもマジックポーチなんて持ってませんよ」
「ポーチじゃねぇなら……もしかしてアイテムボックス持ちか!? あのレアスキルの!」
「それも持ってませんが。そんなスキルがあったんですね」
「じゃあ、いったいどうやって収納してるんだよ」
「【無限収納】のスキルを使ってるだけですよ」
「――ッ!そのスキルは勇者が使っていたとされるスキルじゃねぇか! お前、勇者なのか?」
「ありえませんね。ただの子供です。で、残りを出してもいいですか?」
「あ、あぁ……」
最後に出したのは、フォレストウルフ10体だった。
「これで終わりですね。買取をお願いします」
ここにきて、ようやくサーシャも再起動する。
「ケン君、これ、みんな君が討伐したの?」
死体の山をプルプルと震える指で差しながら、サーシャが聞いてくる。
「そうですよ。クエストを受けずに街の外へ出てしまったから、買取額もどうなるかわからなかったので、念の為いっぱい討伐したんですよ」
「えっ? 嘘でしょ!? ケン君がギルドを出てから3時間くらいしか経ってないよね?」
「多分、そのくらいでしょうね」
「話に割り込んで悪いが、買取査定は待ってて貰っていいか? こんだけの量だと、捌くのに時間がかかる」
「今日中には終わりますかね? 一文無しなので宿代が欲しいのですけど。あと、ご飯代も」
「あぁ、それなら俺の知り合いの宿屋を紹介するから、そこに泊まればいい。宿代も奢りだ。当然、夕食と次の日の朝食付きだ」
「そこまでして頂くわけには……」
「気にするな。仕事が終わらないのはこちらの責任だしな。結構、いい宿だぞ。楽しんで来い!」
「では、お言葉に甘えて。ありがとうございます」
「いいってことよ。おい、お前ぇら! こっちのモンスターを大急ぎで片付けるぞ。鮮度が良いうちに、ラビットとウルフの血抜きをするんだ!」
ライアットさんの掛け声と同時に、周りの職員たちは、大急ぎで作業に取り掛かった。
「ケン君、とりあえずカードの更新に行こうか? 私が担当するから」
「更新? ギルドカードって1日しか持たないのですか?」
「そんなわけないじゃない! クエスト達成の更新よ」
そう言って、来た道を歩き出すサーシャさん。すかさず追い掛けてついて行く。
「でも俺はクエストを受注してないですよ」
「クエストの中には、常駐というずっとなくならないクエストもあるのよ。そのクエストはわざわざ受けなくてもいいわ。討伐証明さえ見せればいいから」
「へぇ、便利なものですね」
「さっきケン君が見せたモンスターでは、ゴブリンとホーンラビットが該当するわ。ゴブリンは生かしてて得になることがないからで、ラビットの方は食料として流通するからよ」
「フォレストウルフは?」
「そちらは残念ながら常駐じゃないわね。ゴブリンを餌として食べたりするから、あまりクエストも出ないのよ。程よい益獣ってやつね」
通路から出るとそのまま2階へと上がる。サーシャさんがいたカウンターはそのままだった。固定の持ち場みたいだな。
サーシャさんが脇のドアから中に入ったので、踏み台に上がりカウンターから顔を出す。
サーシャさんは奥の扉へ入って行ったので、そのまま待つこと数分、サーシャさんが戻ってきて定位置に腰掛けた。
「それでは、手続きを始めます」
(おぉ、お仕事モードだ。切り替えが凄い)
「ギルドカードを提示してください」
「どうぞ」
ギルドカードをカウンターに置くと、サーシャさんがそれを引き取る。
「今回、常駐クエストである“ゴブリンの5体討伐”と“ホーンラビットの3体討伐”を達成したことを確認しました。討伐数を鑑みると、ゴブリンの討伐が4回分、ホーンラビットの討伐が10回分に相当します」
「そんな特典があったんですね。1回分しかカウントしてもらえないと思ってました」
「さらに“ゴブリンの5体討伐”はEランクのクエストとなり、同じくEランククエストの“フォレストウルフの3体討伐”も3回分の討伐数を確認しております」
ここまで聞くと、ちょっとやり過ぎた感が否めないが、過ぎてしまったことは仕方がないと割り切ろう。
「よって、冒険者ランクをDランクに上げたいと思います。ギルドマスターの承認は得られています」
「ちょ、ちょっと待ってください。何故いきなり2ランクも昇格したのですか? 上がったとしてもEランクでは?」
「それについては、ちゃんとした理由があります。長くなりますがよろしいですか?」
神妙な面持ちでサーシャさんが答える。
「……お願いします」
「では、……コホン。まず最初に、貴方は本日冒険者登録をしたばかりの駆け出しです。しかも子供。その子供が素材を持って戻ってきます。この時点で、何かしらの討伐を成し遂げたと見ます。まぁ、順当にいってラビットだろうという予測はつきますが……しかも、短い時間帯では精々1体が関の山。1日かければもしかすると3体討伐して、クエスト達成となるかもしれません。子供にとってはその位の難易度なんです」
「はぁ……」
「次にゴブリンの討伐です。これは、Eランククエストで大人たちが対応するようなものです。子供に出来るのは同じ年代の手練のパーティを組み、運よく奇襲が成功し、必死でボコボコにする手段です。そこまでして漸く1体を討伐できます」
「大人たちのパーティに混じるってのはないんですか?」
「愚問ですね。もし貴方がパーティに誰か連れていくとして、赤ちゃんを連れていきますか? 極論ではありますが、大人たちからしてみれば子供の冒険者なんてそんな基準なんです。特別強くなければ、大人たちからしたらリスクしかありません。目の前で子供が死ぬ姿なんて、誰も見たくないということです」
「そう言われると納得ですね。思慮が浅すぎました」
「最後にフォレストウルフの討伐です。この魔物は1体であればEランククエストですが、数にもよりますが群れをなしていた場合、Dランククエストの上位に難易度が上がります。下位のモンスターというのは、1体では大したことなくても群れをなす事で、その脅威度というのが格段に上がったりするものです。これも極論ではありますが、1体を相手にするのと100体を相手にするのでは、全然変わってくるということです。」
「確かに」
「今までの説明でわかったと思いますが、大人と違って子供であるFランクの駆け出しが、達成出来るようなクエストではないのです。それだけで、Eランクに昇格する資格があります。加えて問題となるのが討伐数と掛かった時間です」
「短時間で討伐し過ぎたからですか?」
「その通りですね。およそ3時間の間にラビット30体、ゴブリン20体、ウルフ10体を討伐するのは、大人でさえFランクでは無理です。森を焼き払うような、大魔法を使えば話は別ですが、焼き払ってないですよね? そんな報告は上がってきてないですから」
「はい、森だったので火魔法を使うのは止めて、風魔法にしました」
「それは良かったです。自然は大事ですからね。で、行き帰りの時間を省くとおよそ2時間弱の間に、それだけの事をFランクである子供が、成し遂げたという結論に至ります。ありえないんです。でも、証拠であるモンスターの死体を確認した以上、事実であると認めるしかありません。よって、ギルトマスターに陳情して、ランクアップを認めてもらいました。EランクではなくDランクなのはギルトマスターが決めたことです」
「Dランクになった経緯はわかりました」
「それでは、これをどうぞ」
そう言って出されたのは、新しいギルドカードと小袋だった。小袋の中には報酬が達成回数分あるみたいで、宿代も飯代も何とかなりそうだ。今日のところは奢ってもらうが……
「今日からFランク改めDランクですので、ギルドカードもブロンズに変わります。受けられるクエストもC~Eランクになります。昇格おめでとうございます。ちなみにCランクへの昇格の際は試験があります」
「試験?」
「無闇矢鱈に素行の悪い人を、Cランク以上にしないための措置です。Cランクからは、その人の腕と人間性を審査されます。高位ランカーが悪い事をしたら、困るのはギルドですので。信用問題に関わってきますからね」
「そういう事なんですね。色々とありがとうございます」
「ふぅ……」
漸く長い長い説明が終わったので、サーシャさんも一呼吸ついた。
「で、これから宿屋に行くのですか?」
「はい、今日のところはそうしようと思います」
「では、次からは忘れずにクエストを受けに来て下さい。常駐クエストは下位ランクしかありませんから」
「あ……はは……」
ケンは痛いところをつかれ、こめかみを掻きながら苦笑いするしかなかった。
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