上 下
101 / 661
第4章 新たなる旅立ち

第97話 始まる冒険

しおりを挟む
 街から外に出ると見渡す限りの平原が広がっていた。遠くの方には森まであるようだ。押し寄せる大自然に不思議と笑みもこぼれる。

「よし、冒険の始まりだ!」

 高揚する気分を抑えもせず、意気揚々と街道を歩いて行くが、暫くすると先程の高揚が嘘かのように、意気消沈していた。

「冒険しようにもここが何処だかわからない……」

 当たり前のことではあるが、この世界で生きてきた記憶を失っているため、地理が全くわからないのだ。

「どうするべきか……そういえばお金もないし、異世界転生って憧れてたけど、実際経験すると初っ端から行き詰まるな」

 うんうん唸りながら考え込むこと数分……

「そうだ! そういえばステータスの確認をしていなかった。先ずはそれからか。えぇと、ステータス……」

 すると、面前にステータスボードが映し出された。



ケン・カトウ?
男性 8歳
種族:人間
職業:Fランク冒険者
状態:記憶喪失

Lv.1
HP:270
MP:520
筋力:150
耐久:120
魔力:270
精神:250
敏捷:500

スキル
【言語理解】【創造】【センス】
【隠蔽】【偽装】【千里眼】
【完全鑑定】【剣術適性】【魔法適性】
【体力増大】【魔力増大】【無限収納】
【無詠唱】【並列詠唱】
【胆力 Lv.3】【剣術 Lv.6】
【身体強化 Lv.6】【属性強化 Lv.6】
【完全探知 Lv.8】【生命隠蔽 Lv.8】
【状態異常無効】【魔力操作 Lv.EX】

魔法系統
【火魔法 Lv.5】【水魔法 Lv.6】
【雷魔法 Lv.5】【土魔法 Lv.5】
【風魔法 Lv.7】【光魔法 Lv.2】
【闇魔法 Lv.1】

加護
女神の寵愛
原初神の加護

称号
アキバの魔法使い
女神の伴侶
ゴロゴロの同志
舐めプの達人
逃走者
憤怒



『レベル1なのに、このステータスは何だ? 欠かさず鍛錬したって事なのか? それなら何で筋力と耐久が少ないんだ? 魔法系統の方が強い気がする。以前の俺は魔法使いを目指していたのか? 気持ちはわからんでもないが、出来ればバランスよく鍛えて欲しかった……』

 自分のステータスを眺めて、自問自答を繰り返してある程度の納得を得るが、問題があるとすればこれからだった。お金を稼がないと、宿にも泊まれないしご飯さえ食べられない。

「死活問題だ……」

 色々考えた挙句、お金を得る方法として、ギルドでのモンスター買取を選んだ。善は急げと早速行動に移す。

「確か、スキルに丁度いいのがあったな」

 そう思い、使ったスキルは【完全探知】と【千里眼】。2つを併用して使う事は誰に教わったでもなく、直感的に感じ取り使っただけだった。

 それによりゲームで言うような【マップ】に酷似した、あえて言うなら下位互換の仕上がりになった。

「これなら【マップ】を作った方が早いな。【千里眼】だと焦点を合わさないと見れないし、俯瞰したものが見たいから……てことで、【創造】……」

 【創造】を使おうとしたら、頭の中に使い方が流れ込んできて、何が必要かも把握出来た。

 イメージするのはゲームにある様なマップ。【鷹の目】と【千里眼】を元にして詳細機能搭載、任意で切り替え可能、オプションで【完全鑑定】付与。

 良いものが出来上がったと思った瞬間、身体から力が抜け目眩を引き起こして、その場で仰向けに倒れた。

「魔力が枯渇したのか? ……『ステータス』」

 映し出されたステータスに驚愕する。HPが250も減っていたのだ。当然、MPは0だ。

「魔力だけじゃ足りなくて、生命力も使われたってことか……250も消費されるなんて【創造】は思ったよりもヤバいスキルだな。迂闊に創って死んだらとんだ笑いものだ」

 今回は自分でマップ機能に色々と高望みしたから、それだけの消費となった事を本人は知らない。

「気怠いし、暫く横になっておくか」

 広がる草原の上で気持ちよさそうに、風を浴びる一人の少年。傍から見れば絵になる様だが、実際は疲れ果ててゴロゴロしているだけだった。

 称号の恩恵でみるみるうちに回復していく。気怠さが抜けてきたところで、次の行動に出た。

「もう少しすれば完全回復するな。称号様様だな。取り敢えず創ったものを使ってみるか。【マップ】」

 すると、視界の端に周辺の地図が表示される。

「こりゃいいな。迷子にならなくて済む。さて、ギルドに売る為のモンスター表示っと」

 マップ上には赤いマーカーで、▼が表示されていった。

「やっぱり草原地帯にはあまりいないか。見晴らしがいいから仕方ないけど。近くだとやっぱり森になるな……よし、森に行って狩りをしよう」

 動けるほどに気力が回復すると、森の方へと方向転換し歩いて行く。

 暫く歩き続けると森の端までやって来た。

「よし、とりあえず弱いモンスターから戦ってみよう。さすがにスライムはいないか……仕方ないからゴブリンでも倒して戦い方を学ぶとするか」

 マップ上に映るマーカーに注視すると、ゴブリンという名称が出た。どうやら、獲物を探して彷徨っているようだ。

 マーカーを頼りにゴブリンのいる方へと進み出す。視認できるくらいまで近づくと、獲物を探してキョロキョロしていた。武器は錆びれた剣を持っており、血糊がべっとり付いてる。

『どうやって倒そうか……武器がないから魔法で倒すしかないけど、森にいるから火はやめておいた方が良さそうだな。そうなると……風でやるか』

 どの属性を使うか決めたところでイメージする。そんなことをしているとゴブリンがこちらに気付く。

「ギャギャッ!」

 こちらを弱いと思っているのだろう。明らかに下卑た笑いを浮かべながら、剣を掲げて威嚇している。

「《ウインドカッター》」

 三日月状の風の刃がゴブリンを襲い、通過した刃はそのままゴブリンの後ろの木まで到達し、綺麗な断面を残して切り倒していた。

(バキバキバキッ……ドオォォン……)

「グ……ギャ?……」

 その言葉を最後に、ゴブリンの頭と体がサヨナラした。

「もうちょっと威力を抑えないと、周りの木々に迷惑がかかるな」

 初戦闘を難なく終わらせ、とりあえずは武器がなくとも戦えることがわかったので、次のモンスターを探しに歩き出した。

 それから、モンスターを見つけては魔法の練習台になってもらい、丁度いい手加減というものを把握していった。

 かれこれ2時間はモンスターを倒しただろうか。魔法を使うのが楽しくて時間が経つのも忘れていたようだ。

 しかしながら、そろそろ街へ戻らないと、日が暮れる前に到着できそうにない。何の準備もなく野宿するのは嫌なので、そそくさと帰ることにした。

 街の入口に到着すると、ギルドカードを提示して街中へと入る。ギルドが何時まで開いているのかわからないが、早めに向かうことにした。

 ギルドに到着しても、どこを尋ねればいいのかわからなかったので、結局、2階受付の登録時に担当してくれた人に話しかけた。もちろん、踏み台を持ってきて。

「こんにちは」

「はい、こんにちは。どうされましたか?」

「素材の買取って何処でやってるんですか?」

「それは1階の奥ですね。本来は1階の受付カウンターにて対応しますが、また同じ事を聞くのも面倒でしょ? 今回は私が案内しますね」

「ありがとうございます」

「では、着いてきて下さい」

 カウンターの横に備え付けられていたドアから、受付嬢が出てきて案内をしてくれた。

「今日の冒険はどうだった? 買取依頼って事は、モンスターでも倒して素材を剥ぎ取ったのかな? ここら辺だと、ホーンラビットね」

 いきなりフランクに話しかけられて困惑するが、とりあえず返答しておく。

「そんなところですね。他にもありますけど」

「そっか。怪我とかはしてなさそうだね。それよりも、手ぶらに見えるんだけど、素材はちゃんと持ってるの?」

「はい、落とさないように持ってます」

「ほら、着いたわ。ここよ」

 ギルドの奥に繋がる通路を歩いていたら、一際大きな広場に出て大人たちが解体作業を進めているのが見えた。

「うわぁぁ……」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ビッチな姉の性処理な僕(R-18)

量産型774
恋愛
ビッチ姉の性処理をやらされてる僕の日々…のはずだった。 でも…

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした

田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。 しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。 そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。 そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。 なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。 あらすじを読んでいただきありがとうございます。 併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。 より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。 え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし

水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ ★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位! ★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント) 「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」 『醜い豚』  『最低のゴミクズ』 『無能の恥晒し』  18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。  優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。  魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。    ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。  プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。  そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。  ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。 「主人公は俺なのに……」 「うん。キミが主人公だ」 「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」 「理不尽すぎません?」  原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...